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インドでなぜ?ワクチン不足

2021-06-30 08:55:12 | 報道/ニュース

2021年6月8日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


インドは4月以降感染者が増え続け
5月上旬には連日40万人を超える爆発的な感染拡大が起きた。
その後各地で厳しい外出制限が導入されたことで
最近はピーク時の4分の1ほどに減ってきている。
しかし専門家は
再び感染拡大の波が来るおそれがあると指摘している。
その理由がワクチンの不足である。
13億の国民のうち接種が完了したのは3%余にとどまっている。
生産拠点として知られ“ワクチン大国”とも言われるインドで何が起こったのか。

インド西部のマハラシュトラ州のワクチン接種会場。
入り口には“接種中止”を示す案内が掲げられている。
(市民)
「2回目の接種が必要で昨日も今日も来たのですが
 ワクチンがなく
 別の日に来るように言われました。」
インド各地でワクチンの不足によって一時的に閉鎖される会場が相次いでいる。
その結果
接種のペースも減少。
4月上旬には1日当たり平均350万回行われたが
5月下旬には130万回ほどに落ち込んだ。
インドでワクチン接種が始まったのは2021年1月だった。
政府は
夏までに医療従事者や高齢者など3億人の接種する“世界最大規模の接種計画”だとしていた。
この計画を支えていたのが
世界で流通する6割を生産するインドのワクチン製造能力である。
新型コロナウィルスについても
国内最大手のメーカーがイギリスのアストラゼネカと契約し大量に製造してきた。
アジアやアフリカなど海外にも積極的に輸出。
その数は90か国以上で6,000万回分にのぼる。
政府も
インドは世界の薬局だとアピールしてきた。
(インド モディ首相)
「インドのワクチンは世界をより大規模により早く助けることができる。」
ところがワクチン不足から輸出も4月中旬を最後にストップしている。
不足に陥った背景の1つが需要の高まりである。
当初は接種をためらう人もいたが
爆発的な感染拡大を受けて希望者が急増した。
さらに
政府の計画のずさんさを問う声も出ている。
政府は接種を加速させるため5月から対象を18歳以上に拡大。
6億人も増えた。
専門家は
必要な数のワクチンを確保しないまま対象を広げたことで不足に拍車をかけたと指摘する。
(ラハリヤ医師)
「目標の3億人分も不足しているのに
 6億人増やすのは賢明ではありません。
 我々は異なる戦略を推奨しましたが
 政治的な判断で決定されたのです。」
政府は不足分を少しでも補おうと輸入を開始。
ロシア製のワクチンの緊急使用を許可し
欧米のメーカーとも輸入に向けた協議を進めている。
さらに政府は国内メーカーに資金提供し
大規模な増産や新たなワクチンの開発を後押ししている。
(保健省の担当者)
「今後5か月で20億回分のワクチンを製造する。」
しかし専門家は政府のこの計画についても
現実を直視していないと指摘している。
(ラハリヤ医師)
「ワクチン製造は工程が複雑で
 増産は簡単ではありません。
 実際に増産を約束していた企業が苦戦しています。
 年内に20億回分製造するのは難しいです。」


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その場所で旅をする

2021-06-29 07:52:36 | 編集手帳

2021年6月7日 読売新聞「編集手帳」


 絵にしたいと感じた情景はあるのでしょうか? 
ダンサーの田中泯さんが質問を受けた。
描くのではなく体の中に記憶として残したい、
と答え、
言葉を継いだ。
「大きな木を見るのが好きです」

映画「HOKUSAI」の封切りに合わせたテレビのインタビューだった。
田中さんは老年期の葛飾北斎を演じている。

さっそく映画館に行った。
全身で喜びを表す北斎がスクリーンに映し出された。
一瞬、
たしかに老木のようにも見えた。
年齢が刻まれた皮膚から、
生命力がほとばしる。
帰宅後、
ものの本で植物について復習した。
動物と違い、
食物を求めて移動することはしない。
その生きる場所で、
葉から二酸化炭素を、
根から水を取り込む。
光のエネルギーを使って栄養を作り出す。

長田弘さんは「空と土のあいだで」という詩の中で〈白い雲〉と〈黒い〉に対話させている。
雲が問う。
なぜ自由に旅をしようとしないのか。
樹は答える。
〈三百年、
 わたしはここに立っている。
 そうやって、
 わたしは時間を旅してきた。〉

手元の手帳を見る。
旅行の予定はまだ書き込めない。
今は詩をかみしめて暮らそう。

 

 

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ぜいたく品の線引き

2021-06-28 08:07:59 | 編集手帳

2021年6月6日 読売新聞「編集手帳」


1989年の消費税導入まで、
ぜいたく品に課された物品税は線引きが悩ましかった。
「コーヒーと紅茶」
「ゴルフ用具とテニス用具」
「扇風機と電気こたつ」。
いずれも前者は課税、
後者が非課税だ。

奇妙な区分である。
ぜいたくの感覚は時とともに移ろい、
豊かになれば価値観も多様化していく。
何が奢侈(しゃし)かと論争が絶えなかったのは当然で、
一律に線を引くのは難しい。

コロナ禍の3回目の緊急事態宣言でも、
生活必需品とぜいたく品の区分で混乱があった。
東京都が「高級ブランドは『豪奢品』なので休業に協力してほしい」と百貨店に要請したためだ。

豪奢品が何か問われても戸惑いは大きいだろう。
百貨店は頭を痛めながら受け入れたが、
「高級品の線引きは、
 お客様の心の中にある」とぼやいた。
今月に入り平日の販売は戻ったものの、
都が無理を頼むにしては丁寧さを欠き、
後味の悪さが残った。

そもそも豪奢とは古めかしい。
文豪の書で探すと「侏儒(しゅじゅ)の言葉」(芥川龍之介)に、
「クレオパトラは豪奢と神秘とに充(み)ち満ちたエジプトの最後の女王ではないか?」とある。
並のぜいたくではなさそうだ。

 

 

 

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スタンド・バイ・ミー

2021-06-26 21:35:52 | 編集手帳

2021年6月3日 読売新聞「編集手帳」


 一夏の子供たちの冒険を描く米映画『スタンド・バイ・ミー』(1986年)が先週、
地上波で放送された。
また見てしまった。
大人になった主人公が冒険の旅で心を開いて打ち解け合った友の訃報に接し、
思い出と共に悼む場面が有名だ。
心の中でつぶやく。
「12歳だったあの時のような友達はそれからできなかった。
 誰でもそうなのではないだろうか?」

この問いは何も、
「12歳」という年齢に狭くかかるものではあるまい。
少年期には大なり小なり、
人生に影響する友達との出会いが「誰でも」あるということだろう。

3人組の人気バンド「いきものがかり」のうち水野良樹さん(38)と山下穂尊さん(38)は小学生の頃、
金魚にエサをやる「生き物係」をしていた。
バンド名はそこから来ている。
『ありがとう』などのヒット曲の向こうに、
「スタンド・バイ・ミー(そばにいて)」を地でいく友情を浮かべてきたファンにはさみしいニュースだろう。

2人がそれぞれの道を歩むことになった。
山下さんが脱退し作曲などの活動に専念するという。
いい別れになってほしい。
出会いのまぶしさが消えないように。

 

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アメリカ“17年ゼミ” 生存戦略の謎に迫る

2021-06-24 07:00:39 | 報道/ニュース

2021年6月2日 NHKBS1「国際報道2021」


17年に1度だけ大量に発生する“17年ゼミ”。
今年が大発生の年で
アメリカでは5月から各地でセミの大合唱が始まっている。

おびただしい数のセミ。
首都ワシントンは連日セミの鳴き声に包まれている。
(市民)
「とてもうるさいです。
 耳にもよくないそうよ。」
「玄関先や歩道に抜け殻が落ちているのが気になるけど
 まあ しょうがないわね。」
体調は2~4センチほど。
黒い体に赤い目が特徴の17年ゼミ。
この夏 発生する数は数兆匹にのぼるという研究者もいる。
17年間過ごした地中を出て
数時間かけて羽化。
成虫の寿命は3~4週間とされる。
なぜ決まった周期で大量に発生するのか。
鳥などの天敵に食べ尽くされることを防ぎ生き延びる確率を高めるためと考えられている。
初めて見る17年ゼミに子どもたちは大はしゃぎ。
「あそこにたくさんいるよ!」
抜け殻も大人気。
一方 大人の楽しみ方はー
肉の代わりに茹でたセミを使ったタコスをメニューに加えたレストラン。
(レストランのシェフ)
「一握りのセミから1日分のタンパク質がとれ
 ミネラルやビタミンも豊富です。」
ヘルシーな昆虫職。
そのお味は
「パリパリしたスナック菓子のような。
 うまみもあるので美味しいです。」
この17年ゼミの発生周期に変化が起きている可能性を指摘する研究者がいる。
約40年にわたって生態を研究している
コネティカット大学 サイモン教授である。
4年前ワシントンでセミが見つかった。
本来ならば今年羽化するはずだったセミである。
同様の現象は各地で報告された。
サイモン教授は
これは17年ゼミが数百万年かけて獲得してきた“生存戦略“によるものと考えている。
幼虫の間
気温が高く成長が速い時は4年早く13年で羽化し
気温が低く成長が遅れる時は4年遅く21年で羽化するというように
気候の変化に応じて“発生周期を変える能力“を備えているというのである。
しかし今後あまりに極端に気候が変動すると
17年ゼミの生態や繁殖にも大きな影響が出かねないと懸念している。
(コネティカット大学 サイモン教授)
「温暖化による気候変動は
 気温の上昇だけではなく乾燥や雨量の増加も起こりえます。
 セミの繁殖に影響が出る可能性があります。」
17年に1度地上に現れ存在感を示すセミたち。
17年後も
その先も
鳴き声を響かせるのか。
再来が待たれる。



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バスマティライスを日本へ パキスタンの家庭の味

2021-06-23 07:08:15 | 報道/ニュース

2021年6月2日 NHK「おはよう日本」


パキスタンで栽培されている細長いお米
バスマティライス。
良い香りがすることからパキスタンでは「香りの女王」とも呼ばれ人気を集めている。

パキスタンで人気のメニュー ビリヤニ。
肉とスパイスをふんだんに使ったカレー風味の炊き込みご飯である。
その味を引き立てるのがバスマティライス。
パラパラとした細長い米粒が肉のうまみを吸い込み芳醇な香りを放つ。
(客)
「とてもおいしいので週に2~3回食べないと気持ちがおさまりません。」
店先に並んでいるものの多くは各地から取り寄せたバスマティライスである。
1~2年かけて熟成させ風味を高めたものもある。
高給な品種は10キロあたり日本円で2,000円以上になる。
パキスタンの米どころ
東部パンジャブ州。
バスマティライスの輸出拡大を目指す会社も出てきている。
大手流通業者 統括責任者 ザファールさん。
各地の農家と契約を結び
仕入れた米を国内外に販売している。
(大手流通業者 統括責任者 ザファールさん)
「こちらが一番いいバスマティライスです。」
30年以上前から中東やヨーロッパに輸出しているが
いま販路拡大を狙っているのが日本である。
(大手流通業者 統括責任者 ザファールさん)
「日本の市場はとても魅力的で
 将来性があります。
 少量の輸出を始めましたが1,000トンまで拡大させたいです。」
この会社では日本の市場で好まれる米を作ろうと品種改良を重ねてきた。
苦労したのは米の色。
もともと黄ばんでいる色をより白くして
日本の米と同じにすることを目指した。
さらに米の長さも重要だった。
バスマティライスは炊くと米が長くなるのが特徴だが
長くなりすぎると風味が落ちてしまう。
炊くと2倍程度になる品種を追求した。
思考錯誤を繰り返して約5年。
ようやく新しい品種が完成し
初めて収穫の時期を迎えた。
今年は3万5,000トンの生産を見込んでいる。
(大手流通業者 統括責任者 ザファールさん)
「私たちの米は世界でも最高レベルの品種です。
 ぜひ最高の風味を日本の人たちにも味わってもらいたいです。」
パキスタンの食卓の味を日本の人たちにも届けたい。
販路開拓に向けた模索が続く。

 

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絵本『二平方メートルの世界で』 

2021-06-22 07:13:46 | 編集手帳

2021年6月2日 読売新聞「編集手帳」


 病院のベッドの広さは約2平方メートルだという。
脳神経の難病を患う札幌市の小学5年、
前田海音(みおん)さんの闘病記が絵本『二平方メートルの世界で』(小学館)になった。

3歳から大学病院への入退院を繰り返している。
「もういや」
「一日でいいから薬を飲まなくていい日をください」…
多くの言葉をベッドの上でのみこんできた。

<入院のため休みをもらわなければならない母も、
 仕事であまり面会に来られない父も、
 一人ですごさなければいけない兄も言葉をのみこんでいる。
 本当の気持ちを言ってしまったら…
 もうがんばれなくなる気がして>

絵本作家・はたこうしろうさんとの作業は去年秋に始まった。
3年生時の作文が原案となる。
それを読んだ編集者が出版を依頼したところ、
「病と生きる仲間がいること、
  いたこと、
 を代表して伝えられるなら」と手紙が届いたという。
感染の猛威のなかの病院で、
人助けに奔走したのは医師や看護師ばかりではなかったらしい。

巻末近くに花にとまるチョウを見つめ、
つぶやく場面がある。
<生きていることのすばらしさは気づきにくいということを、
 私は知っている>

 

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古典の魅力をマンガで発信

2021-06-21 07:00:46 | 報道/ニュース

2021年6月1日 NHK「おはよう日本」

日々の暮らしで起こりがちな出来事
いわゆる“あるある”を浮世絵風の絵で紹介したイラストが
いまネット上で話題になっている。
作者は福岡市のイラストレーター。
古風な絵柄を入り口に
若者に日本文化の魅力を発信している。

理不尽あるある
「怒らないから言ってみろ」と言われたので言ったら怒られた
片思いあるある
付き合ってもいないくせに別の人と話していると失望
寝すぎたときあるある
しっかり寝たのに逆に疲れている謎
次々に投稿される“あるある”と浮世絵風のイラスト。
地下鉄の車内など福岡市民に身近なところにも。
街で聞いてみると
「インスタで見たことある。」
「母が見たりして
 いろいろ教えてもらった。」
「山田さん クスッと笑えておもしろいです。」
イラストレーター 山田全自動さんのインスタグラム。
現代の些細な“あるある”と
レトロな絵柄のギャップが人気を集め
今年フォロワーは一時100万人を超えた。
山田さんはウェブデザイン会社の経営者。
もともと冗談半分だったという情報を
5年間ほぼ毎日続けた結果
企業や自治体からもイラストの依頼が来るようになった。
(イラストレーター 山田全自動さん)
「浮世絵っぽい絵を描いてみたら評判がよかったので
 休憩時間に見て爆笑はしないけどクスッと笑ってもらえたらなと。」
山田さんが新たに取り組んでいるのが古典文化を分かりやすく発信することである。
5月に出版した本
古典落語の定番 29の演目のあらすじを漫画で紹介している。
初心者でも理解できるように用語の解説もついている。
(六本松 蔦屋書店 書店員)
「漫画で読むとすごく分かりやすくて
 山田さんの絵でスッと入ってくるので
 まったく落語のことを知らない人にぜひ手に取ってほしい。」
いま書き進めているのは古典文学を漫画にした作品である。
(イラストレーター 山田全自動さん)
「森鴎外の山椒大夫とか高瀬舟とか
 芥川龍之介の蜘蛛の糸みたいな。」
コロナ禍で生まれた余暇をきっかけに浴びるように本を読んだという山田さん。
あえて時代も文化も違う古典に触れることが
ふだん考えないようなことを考えるきっかけになったという。
(イラストレーター 山田全自動さん)
「たとえば高瀬舟とかはテーマとしては安楽死の是非というところですので
 いまは役に立たなくても
 いつかは考えるとか
 考えてよかったと思うことになるタイミングがあるかもしれない。」
自宅で過ごす時間が増えている今こそ若者に読んでほしい。
今年中の書籍化を目指している。
(イラストレーター 山田全自動さん)
「文化とかはいろいろ違うんですけど
 結局考えることは今も昔も同じだなみたいな
 そういうのはためになるかなと思います。
 自分が漫画にすることで
 その内容を若者が知ることができたらいいなと。」


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シビックハッカーたちの革命

2021-06-20 08:55:03 | 報道/ニュース

2021年5月31日 NHKBS1「国際報道2021」


シビックハッカー(civic hacker)
市民を意味する シビックとITやコンピューターに精通するハッカーをかけ合わせた造語である。
ハッカーといってもコンピューターなどで違法な活動を行うのではなく
シビックハッカーは
社会の課題に対してネット上でアイデアやデジタル技術を集め便利なサービスを開発したりして解決策を探る人たちのことである。
たとえば去年注目を集めた台湾のマスクマップ
この薬局ではマスクの在庫が残り40というように
マスクがどこなら売っているのかがすぐに分かるというもの。
これもシビックハッカーの開発したものである。

台湾北部の農村。
5年前 水田から汚染物質が見つかり作付け禁止を余儀なくされた農家。
近くの金属加工場が原因だと考えてきた。
(通報者)
「排水によって汚染されたのだと思います。
 農地が7年も使えなくなってしまいました。」
自治体に通報しようとしたが名前や住所を申告しなければならない。
告発者と分かると嫌がらせを受けかねないとあきらめてきた。
そんなとき見つけたのが匿名通報サイトだった。
「このサイトは簡単で安全です。」
違法性が疑われる農地や工場を匿名で通報できる農地違法工場マップ
通報者がサイトの地図上に位置や画像 被害状況などを記入する。
サイトで集まった通報者からの情報は
運営するシビックハッカーが代理で自治体に報告。
そして現地調査や対策を求めていく仕組みである。
シビックハッカーの蔡さん。
ときには現地に赴いて通報の詳細を確認している。
(シビックハッカー 蔡さん)
「現地を訪ねると細かいところまで見えてきます。
 自治体に事態の深刻さを伝えることが大切です。」
農地の不正利用が後を絶たない一方で
行政の対応は鈍いと考えた蔡さん。
解決策としてサイトを起ち上げた。
開設から1年。
行政側からの理解も少しずつ得ることができ
手ごたえを感じ始めている。
実は蔡さんはプログラミングはできない。
技術を持つ他のシビックハッカーたちと協力している。
(蔡さん)
「違法工場の撮影を農村以外の人にも手伝ってもらえる機能を作りたいです。」
(仲間のシビックハッカー)
「農地だった場所に工場を建てたかは写真の照合などで調べられます。」
(シビックハッカー 蔡さん)
「情報や技術をシビックハッカーたちと共有しながら
 社会をより良くしていきたいです。」
いま蔡さんたちシビックハッカーの交流の場となっているのが
ガブゼロ(g0v)と呼ばれるサイトである。
技術者や社会人 学生など1万人以上が登録し
ボランティアで動いている。
#環境問題
#学校教育
#違法工場
#フェイクニュース
などテーマごとに集結。
さまざまなスキルや公開された情報をもとに解決策を探り
行政や政治の場に反映してもらおうと提案する。
「g0v」を起ち上げた高さん。
権力に対し情報公開や透明性の担保を求めを求めてきた。
その原点となった経験がある。
(高さん)
「ここで撮影していました。
 この入り口付近です。」
2014年
議会にあたる立法院に若者たちが集った。
中国との協定に反発した若者による大規模な抗議活動
ひまわり学生運動。
若者たちが議会を占拠し
手続きを一方的に進めようとした当時の政権への強い不信を示した。
当時 選挙した議会内の様子や若者の声をネットで配信していた高さん。
最終的に政策を撤回させたか“市民の力”を間近で感じた。
(高さん)
「“自分たちは社会の一員だ”と証明したいという思いでした。
 市民が影響力を持っていることを実感できたのです。」
去年 シビックハッカーの力が行政を動かした象徴的な出来事があった。
新型コロナの対策として使われたマスクマップである。
地図上にマスクの販売店が記され
クリックすると
その時点の大人用や子ども用のマスクの在庫数が確認できる。
IT政策の担当閣僚 オードリー・タン氏らが大きな成果として報告してきたこのマスクマップ。
シビックハッカーの発案が出発点だった。
プログラマーの呉さん。
去年 街なかでマスクを求める行列を目撃した。
(プログラマー 呉さん)
「長蛇の列でした。
 みんな不安を抱えているみたいでした。」
呉さんは
事前にマスクの在庫数が確認できれば行列は減らせると
マスクマップを考案。
ところが在庫数を調べる術がなく
ネットの情報を頼りに
完売・残りわずか・十分ある
とあいまいなままサイトを発表するしかなかった。
すると翌日 オードリー・タン氏からガブゼロサイトに書き込みがあった。
SNSでの公開を急がないでください
台湾当局はマスクマップが市民に使いやすいサイトだと判断。
活用してもらおうと
開発に必要な販売データを公開に踏み切った。
それによって在庫数が常時確認できるマスクマップが生まれたのである。
(中央健康保険署 情報グループ 陳氏)
「このような販売データの活用は私たちには出来ませんでした。
 公開できる情報はできる限り公開していきます。」
(プログラマー 呉さん)
「行政の情報公開の姿勢に市民は賛同しました。
 それでマスクマップが生まれたのです。」
“市民の積極的な関与は権力の監視にもつながる“という高さん。
これからも継続していくことが大切だという。
(高さん)
「声は遠慮なく上げるべきです。
 普段から改革を進め皆に参加してもらうことが大切ですが
 簡単なことではありません。
 それが自分たちの手で民主主義を守ることになるのです。」

 

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ウニの殻を新たな器に 

2021-06-18 07:19:21 | 報道/ニュース

2021年5月31日 NHK「おはよう日本」


岩手県洋野町の飲食店で5月から提供が始まった生ウニ丼。
この時期一番の人気メニューである。
今回注目するのはウニ丼の器。
ウニを剥いた後の殻を再利用して作っている。
(客)
「ウニの殻からこういう色が出るのかって
 不思議な感じです。」
ウニの産地として知られる洋野町。
十数キロにわたって続く浅瀬で育ったウニは
甘さが際立つ最高級品として全国で人気を集めている。
ただ課題となるのは
ウニを剥いた後に残る大量の殻である。
町の水産会社の推計では年間85トン以上にのぼる。
これまで産業廃棄物として捨てられてきた。
(水産会社 眞下取締役)
「ウニ殻がたくさん出ているなかで
 我々も産業廃棄物として捨てるしかない。
 コストをかけて廃棄している状況。」
そこに注目した町内に住むASAHIさん。
今年3月まで町の地域おこし協力隊員を務め
いまは企業を目指している。
ウニの殻がどのように器に変身するのか。
この日水産会社を訪れたASAHIさんは
加工された後に残った殻を受け取った。
殻はすぐに釜へ入れられ700度の高温で焼かれる。
すると
真っ白な灰になった。
水や木の灰などと調合すると
出来たのは陶芸で使う釉薬(うわぐすり)である。
それを地元の陶芸家が1枚1枚丁寧に作った器に塗り
本焼きすると
ベージュ色の器が完成した。
よく見てみると底の方にはオレンジ色の部分が。
まるでウニの実の色のようで
黒い殻からは想像できない色合いになった。
(ASAHIさん)
「ウニの殻って真っ黒だしトゲトゲだし空っぽだしグロテスクな感じですけど
 釉薬(うわぐすり)にして成功したものが初めて窯から出されたときに
 ウニの殻からできたというのとは想像ができないような新しい質感の器ができたので
 すごく興奮したのを覚えています。」
さらに地元で採れた土で作った陶器に同じ釉薬を塗ってみると
今度はところどころ黄色がかった
こげ茶色で光沢のある美しい陶器に仕上がった。
(ASAHIさん)
「より重厚感があるような
 いま出来たばかりの器だけれども
 すごく古い時代に作られたみたいな
 全く同じ釉薬なのに
 素材の土の違いで全然変わったものになるので
 陶芸の面白さだなと思いました。」
まったく違う2種類に色合いの陶器で新たな挑戦を始めたASAHIさん。
SNSでの販売やネットショップを展開する準備も進めていて
全国に町の魅力を発信しようとしている。
(ASAHIさん)
「ほぼ捨てられてしまうものだったけれども
 人の喜ぶものに生まれ変わったというのが私の1番の喜びポイントでもあるので
 そういうところも器を通して伝わればいいなと思いますし
 日常の中に1つ1つ大切に作ったもの
 それがときめくものであってほしいなと思います。」

 

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特産のコメを活用 二酸化炭素の排出抑制へ

2021-06-17 07:05:51 | 報道/ニュース

2021年5月29日 NHK「おはよう日本」


二酸化炭素排出の原因となる化石燃料から作られるプラスチック製品を少しでも減らそうという“脱プラ”の動きが広がっているが
すぐにプラスチック無しの生活は難しい。
新潟県の企業では地元ならではのあるものを使って
従来のプラスチックよりも環境にやさしい商品を作っている。

新潟市の百貨店。
並んでいるのは
スプーンやカラフルなおちょこまで。
これらの商品はコメをプラスチックに混ぜて作られている。
(新潟三越伊勢丹 バイヤー)
「匂いをかいでみるとほんのりとせんべいや餅のにおいがする。
 すごくおもしろい素材だなと思った。」
珍しい商品を前に足を止める人も。
(客)
「プラスチックだけよりも
 ちょっと罪悪感がない感じもするし
 軽くてなめらかで使いやすそうだなと思って。」
新潟県有数の米どころ南魚沼市に4年前設立された会社。
「こちらが原料となります。
 資源米になっています。」
使われているのは家畜の飼料にも利用されず廃棄されてしまうコメ。
「こちらが原料のお米と混ぜる石油系の樹脂です。」
ごく児の技術を使ってコメと樹脂を混ぜ合わせ
コメが含まれたプラスチックを製造している。
開発のきっかけとなったのはSDGsへの貢献である。
現在 国内で消費されているプラスチックの多くは
石油のもとである原油を加熱して分解したものを主な原料にしている。
国内では年間850万トンもののプラスチックが使われているが
植物由来の原料を混ぜれば
その分 二酸化炭素の排出量が減る。
そこで会社では全国的に需要が減っているコメに注目。
植物由来のプラスチック
バイオマスプラスチックを作ったのである。
(バイオマスレジンマーケティング 企画営業部長)
「いま主流のバイオマスプラスチックは
 とうもろこしやさとうきびといった 海外由来のもの。
 日本はお米の国なのでお米だったらできるんじゃないかと。」
商品を展示していた百貨店の従業員食堂でも
箸やスプーンはコメ由来のものである。
従業員にもSDGsに理解を深めてもらおうと導入された。
(従業員)
「お米がまさか入っているだなんて思わない。
 びっくり。
 少しずつこうやって形にしていって広めていくのが大事だと思う。」
(バイオマスレジンマーケティング 企画営業部長)
「身の回りのことを1つずつ変えていくことで
 SDGsに貢献する事業を展開していきたい。」
少しでも環境にやさいいものを。
米どころ新潟から
脱プラスチックの取り組みが進んでいる。


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本棚には「あおむし」がいた

2021-06-16 09:48:15 | 編集手帳

2021年5月28日 読売新聞「編集手帳」


かわいい大きな目をした青虫がリンゴやケーキをどんどん食べて育っていく。
サナギになり、
やがては美しいチョウへ――。
エリック・カールさんの絵本『はらぺこあおむし』である。

世界的なロングセラーとなるこの本は1969年、
じつは日本で初版本が印刷された。
子供たちが触れて喜ぶようにと、
絵のところどころに穴を開ける凝った仕掛けに当時の米国の出版社は尻込みした。

困ったすえに印刷技術の高い日本の出版社に企画を持ち込み、
世に出たという経緯がある。
「色彩の魔術師」と呼ばれたカールさんが91歳で亡くなった。

本棚に「あおむし」のいた思い出のある方は多かろう。
『パパ、お月さまとって!』や『くまさん くまさん なにみてるの?』も息長く読まれている名作だ。
飛行機が苦手なのに「日本のすべてが好き」と語り、
何度も来日したカールさんは4年前、
読者への手紙を本紙に寄せた。

<長年、
 私の本と絵を子供たちと大切に分かち合ってくれていること、
 そして親から子へ、
 希望とともに絵本を受け継いでくれていることに感謝の気持ちをげます。
 ありがとう>。
こちらこそ。

 

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中国サッカー “爆買い”から一転 地道な取り組みへ

2021-06-15 07:06:27 | 報道/ニュース

2021年5月27日 NHKBS1「国際報道2021」


中国サッカー界はこれまで巨額の資金で外国の有名選手を獲得する
いわゆる“爆買い“が注目されてきたが
いま一転して地道な取り組みが始まっている。

去年中国リーグで優勝したチームのグラウンドはいま放置され誰もいない状態になっている。
昨シーズン トップリーグで優勝を果たした「江蘇FC」。
その強豪クラブに何が起きたのか。
事情を聞こうとクラブを訪ねると
(記者)
「解散したのですか?」
(警備員)
「撮影はやめて!」
(解散したのですか?」
(警備員)
「公式の通知はもう出ています。」
ウェブサイトでクラブからファンに通知されたのは“運営停止“の文字。
詳細な説明は無い。
中国政府肝いりのサッカー強化政策のもと
多くのクラブが行なってきたのが外国の有名選手や監督の“爆買い”。
たとえば
元ブラジル代表 オスカル選手は推定年俸30億円。
元アルゼンチン代表 テベス選手は推定年俸46億円。
“サッカーバブル”とも言われ
スポンサー企業が過剰投資を続けてきた。
しかしこうした放漫な経営や新型コロナの影響なども加わり
業績が悪化。
現在は1部から3部まで57クラブがある中国リーグだが
この3年で約20が解散やリーグの脱退を余儀なくされている。
(スポーツ評論家 顔強さん)
「中国のクラブはファンより商業目的を大事にしてきました。
 企業がクラブに投資するのは市場戦略で利益を得るためです。
 サッカーはただ道具として利用され
 これでは長続きしません。」
そんなサッカー界に今新たな動きが起きている。
5年前に設立され現在2部リーグに所属する「南通支雲」。
クラブが掲げる経営方針は“地域密着”である。
シーズン前には地元 江蘇省南通市のファンに向けたイベントを開催。
日頃応援してくれているファンを表彰式でねぎらった。
ファンクラブの会員数は5年で3倍以上に増加。
活動資金の補強に一役買っている。
(ファン)
「チームとファンは“水と魚の関係”です。
 水と魚は切り離せません。
 地元チームを応援し続けますよ!」
さらにコンビニエンスストアは店内にグッズコーナーを設置。
壁一面を使ってクラブを紹介し
さらなるファン獲得に力を入れている。
(「南通支雲」謝監督)
「クラブを支えるのはファンの応援です。
 勝ち負けやお金もうけだけではなく
 多くの社会的責任を負っています。
 企業の広告看板として存在するだけでは社会的責任を失ってしまいます。」
そして今サッカー人口のすそ野を広げようと地道な取り組みも始まっている。
子ども向けのサッカー教室。
教室を開いた1人 元Jリーガーの楽山孝志さんは中国のスーパーリーグでプレーした経験もある。
教室には現在200人余が参加している。
楽山さんは
サッカーを楽しむ環境をつくることこそがサッカーの健全な発展につながると考えている。
(TGF楽山サッカー塾 楽山孝志コーチ)
「これまでは広告媒体のひとつとしてサッカーをやる。
 本来のそれ以外のところで
 クラブが成り立つための収益やどうしなければならないという部分がすっぽりなかった。
 サッカーが好きな文化を小さい時から感じて育ち
 その子たちが将来サポーターに
 好きなチーム 地域のチームのために何かしよう
 そうなっていくと本当に思う。」


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今夜は天体ショー

2021-06-14 07:03:22 | 編集手帳

2021年5月26日 読売新聞「編集手帳」

 

なぞなぞを一つ。
太陽とお月さまが寄り添うと、
世界はどうなる? 
二つの星がくっつくことはありえない。
なぞなぞ本を開いたまま、
うんうんって答えをのぞくと、
ほおがゆるんだ。

太陽を「日」に換えて「月」を横に並べると、
世界は「明」るくなるとか。
今晩の天体ショーには太陽と月に加え、
地球も参加する。
よりいっそう明るい催しになるといい。
三つの星が一列に並ぶことで起こる皆既月食は、
午後8時9分ごろにはじまる。

しかも今晩の主役は普通のお月さまではない。
一年のうち最も地球に近づき、
大きく見える「スーパームーン」である。

国立天文台によると、
皆既食の間は月が地球の影のなかに完全に入り込む。
だが月は真っ暗になって見えなくなるわけではなく、
「赤銅色」に見える。
太陽の波長の長い赤い光だけが届くためで、
朝焼けや夕焼けと同じ原理とされる。
もう一つ、
地球が間にあるのに月が照る不思議もある。
これは赤い光が地球の大気に触れて、屈折して届く現象だという。

<抱き上げて子に鼓動あり月赤し>(山口優夢)。
ベランダの情景も、
明るい夜になりそうである。

 
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敵を倒すつもりなら、縦パスを

2021-06-13 07:02:47 | 編集手帳

2021年5月25日 読売新聞「編集手帳」


20世紀を代表するサッカー選手の一人、
オランダのヨハン・クライフ氏は指導者としても名をはせた。
名門バルセロナの監督に招かれ、
現在もチームが受け継ぐ攻撃サッカーの基礎を築いたといわれる。

日本のプロ野球でいえば、
野村克也さんのような人で至言にこと欠かない。
その一つに<横パスは問題の解決にならない>がある。
要は、
敵を倒すつもりならなぜ縦パスを蹴らないのかと、
皮肉と鼓舞の両方を短いことばに込めたらしい。

縦パスを早いうちに蹴っていたかどうか。
英国をはじめ、
ワクチン接種の進む国から届く映像にうらやましいと思わない日はない。

ロックダウンから解放され、
カフェで口元を気にせず談笑したり、
夕暮れのバーで祝杯を上げたり…。
日本とは対照的な光景だろう。
他の先進国に比べて調達が遅れたうえ、
市町村の集団接種がなかなか加速しない。
東京、大阪で自衛隊を活用した大規模な接種が始まったほか、
宮城、群馬、愛知では県が特設会場を設けるなど市町村任せにしない動きも広がる。

現状は何とか縦パスを蹴った段階だろう。
次はどう効率よくゴールを決めていくか。

 

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