私は初老男である。
三笑亭笑三が亡くなったという。
私の数少ない「生」で聞いた落語家の一人である。
92歳だったという。
「最長老」と思っていたら桂米丸が93歳で現役だった。
最長老であろうがなかろうが、落語家三笑亭笑三の重みが変わるわけではない。
彼の落語を聞いたのは、どれくらい前だったろう?
10年以上も前だったかもしれない。
演じていたのは彼の十八番
「異母兄弟」
だった。
10年以上前であったにしても、彼は80歳に手が届く年だったはずだ。
「異母兄弟」は、バレ噺(エロ落語)に近い話だ。
この噺を早齢の噺家がやってしまうと「イヤラシサ」が倍増してしまう。
バレ噺をイヤラシクしないのは、実は大変むずかしいことなのだ。
笑三は、80間近になってその域にたどり着いたって気がするのだ。
無言の顔の表情だけで、客を(しかも落語に慣れていない田舎の客)笑わすことできるのを目の当たりにした。
落語というものの奥深さを彼の噺で知った。
歳を取る度に飄々としていった三笑亭笑三を私は忘れることは無いだろう。
今回も最後までお付き合いいただきありがとう。これを読んでいる皆さんも、生涯現役でいることのむずかしさを認識しますように。
May
私個人のイメージで申し訳ないが、笑三氏より大々的にその死を報道された桂歌丸氏の「紙入れ」(やっぱりバレ噺に近い気がする噺)には、イヤラシサを感じてしまった。それ自体がどちらの噺家の価値を計るものでは無いだろうけれど。