私の住んでいる浜松市北区は過疎対策指定地域ではありませんが、同天竜区はその対象地域であり、北区でも天竜区に接している所は事実上、過疎対策が必要な所です。現に、幼稚園の統合は進んでおり、小学校の統合が問題になっています。
しかるに、その統合の話し合いの会に教育委員会が提出した文書を見ますと、5歳児が現在4人の学年は来年度の小1が4人、4歳児が現在3人の学年は再来年度の小1が3人と前提しています。
これは、要するに、
静岡県の過疎対策や
浜松市の過疎対策は効果がなく、子どもはこの1~2年の間に1人も転入してこない、と考えていることを示していると思います。実に正直と言うか、行政をバカにしたと言うか、笑ってしまいます。
報道によると、先日、県知事と静岡市長と浜松市長とが、過疎対策の研究会か何かを立ち上げることで合意したとか。暗闇でも3人で手をつないで歩けば怖くない、ということでしょうか。本当の研究会というのは、それぞれが独自に対策を実施し、それなりの成果をあげている者同士が集まるものだと思います。
朝日新聞の社説も同じです。それを引用します。
記(朝日、社説)
高齢化と過疎化で町や村はますます住みづらくなり、人口減に拍車がかかるばかり。そんな状況になんとか歯止めをかけようという「定住自立圏構想」が来年度から具体化する。
小さな町や村、あるいは市でも、自前であらゆる行政サービスを提供するのは難しい。それなら人口5万人以上の市を「中心」にして周辺の市町村と協定を結んでひとつの圏域とし、その内で役割分担しようという構想だ。
まず18の圏域で来年度から先行的に取り組む。役割分担の中身は自治体側のアイデアに任せ、総務省が財政面や権限の移譲などで支援する。
中心市に都市機能を集約し、周辺の住民が共同利用することで生活の利便性を高めていく。それによって大都市圏へのこれ以上の人口流出を食い止めようというわけだ。
この構想を提唱した総務省の研究会は、限界集落をはじめ地方で進行する疲弊の深刻さを強調し、「もはや、すべての市町村にフルセットの生活機能を整備することは困難だ」と認めた。横並びから役割の分担し合いへ、発想の転換が必要だと求めた。
総務省の公募に応じた30以上の自治体の中から実施が決まったのは、例えばこんなプランだ。
長野県飯田市などでは、中心市の病院に総合病院の機能を集約し、圏域内の町村には診療所を整備して医師を派遣したり、総合病院には圏域内の住民のための病床を確保したりする医療連携に取り組む。周辺のお年寄りらが中心市に通院や買い物に行きやすいよう、バス路線を整備する。
岡山県備前市と兵庫県赤穂市のように県境をまたぐ圏域もあり、生活実態に合わせることを優先しているという。滋賀県彦根市では、地域の農産品などを使う学校給食センターを中心市につくり、圏域内の学校に提供するという計画もある。
いずれも今、町村に残っている住民の安心や暮らしを考えたものだ。
だが、人口流出を食い止め、さらには逆転させる最大の手だては何といっても雇用、働き場の確保だ。中心市の多くは人口5万~10万人だが、その規模で新たな雇用を生み出すにはよほど知恵を絞らねば苦しいだろう。
この構想の限界ではあるけれど、かといって手をこまぬいていれば地域はさらに衰えてしまう。まずは踏みとどまるための足場をつくることの意味は小さくない。合併しなかった小さな町村も地方分権の権限移譲の受け皿になれるという効用もある。
人口減に財政難、医師や介護の担い手不足など、地方の厳しい現状は一朝一夕に解決できるものではない。分権改革と同時に、自治体の側もそれにあわせて工夫し、変身する。地域の再生はそれなしに進まない。(朝日、2008年11月05日)(引用終わり)
定住自立圏構想も悪いとは言いませんが、人口増、特に子どもの増加は期待できないことを前提した対策です。
では、なぜ若者と子どもが増えないのか。もちろん「仕事がないから」です。従って本当の対策は仕事を作り出すことです。
それでは仕事を作り出している例はないのでしょうか。あります。有名な例としては北海道の十勝の花畑牧場と徳島県の上勝町の葉っぱビジネスを挙げましょうか。
前者はタレント、ないし特技を持った人が自分が中心になってやっている例です。今では地域の住民の4分の1に当たる500人を雇っているとか。
後者は農協の指導員がユニークなビジネスを開発して地元の人たちを指導して大成功した例です。60や70のお婆さんが年商1000万円を達成しているとか。今では他所へ出て行っていた子どもたちも帰ってきて、家の新築ブームが起きているとか。
前者のような例はほかにも沢山あると思います。長野県のワイナリーで人気を博している玉村豊男さんもそうです。しかし、こういう方法は中心になる特別すごい人が現れてくれなくてはならないので、普遍性がないと思います。自分だけは成功したというのなら、TBSの「人生の楽園」で放映されている夫婦など、かなりあるとは思います。
その後、11月19日には「高齢化、崩れる集落」と題するミニ特集記事が載りました。そこに次の文がありました。
記(住民の声欠く再生策)
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2035年までに人口が転入超過となるのは東京、神奈川、愛知など6都県に過ぎない。人口減少が顕著になる今後、さらに地方の若年層は減っていきそうだ。
麻生首相は10月末、地域活性化対策を打ち出した。ただ、2009年度予算で、一般財源化する道路特定財源から地方に交付すると表明した「1兆円」の行方は、いまだ不透明だ。
すでに自治体の道路建設向けに毎年配る臨時交付金7000億円がある。これと別枠で計1兆7000億円になるのか、それとも7000億円と合わせて1兆円なのか。交付金などの形で、地方が自由に使えるように1兆円を別枠で用意するとなると、自民党道路族などから激しい抵抗が予想される。
そもそも、人口減少に歯止めがかからない状況では、地方に配るカネを増やしても「砂漠に水をまく」だけに終わりかねない。
東北大大学院の河村和徳・准教授(地方政治論)は「住民がそれぞれの地域にあった再生策を考えて、地域の強みを再確認した上で、国は投資や支援をすべきだ」と指摘する。国主導の地方再生策を打ち出しても、車が通らない道路や漁師のいない漁港の整備が進むだけというわけだ。
例えば、各市町村が主体となってNPOや町内会などを中心に住民との協働作業を通じて、地域の再生策を形件る必要があるという。河村准教授はいう。「人口減少に歯止めをかけるのが地方再生の第一歩。そのためには地方が自分たちにあった再生策を考えるという発想が必要だ」
(朝日、2008年11月19日。橋田正城)(引用終わり)
この大学教授の案は「今いる住民がやるのを行政が支援する」という第3の道ですが、実効性がないと思います。「再生策を考えたり実行したりする住民」がいないのですから。
結論として、行政がやって確実にある程度の成果が見込める方法はやはり後者のようなマネージャーを生み出す道だと思います。
では、葉っぱビジネスの横石さんはどのようにしてこれを成し遂げたのでしょうか。先にも触れましたように、彼は農協の指導員でした。地域の組合員の指導をすることが仕事だったのです。それで給料をもらっていました。
しかし、沈滞した村とそこの人々を動かすのは大変でした。失敗も試行錯誤も沢山ありました。自分の給与は家に入れず、奥さんとその実家に支えられたそうです。
そこで私の案が出てきます。それは次の通りです。
① 中学生以下の子どもの2人以上いる夫婦で、一芸のある夫婦を、夫婦共に、それぞれ、年収240万円(他の手当、期末、昇給などは一切なし。年金は国民年金。但し産休時も給与は減額しない)で「ロハス職員」として採用し、生徒の減っている地域に住んでもらう(世帯収入は480万円になるから充分でしょう)。屯田兵ならぬ屯田職員とでも言うべきでしょうか。
② 仕事(職員としての仕事)は週に3日とし、残業等はなしとする(これだと、いつも夫婦のどちらかが在宅できるから、子育てに支障がない)。
③ 他の時間はロハス的な活動をしてもらう。つまり、「地域社会の再生」のための事業(ビジネス)を考え出し、実行してもらう。どんな仕事でもよい。それで金を稼いでよい。但し、どこかでアルバイトをするのはダメ。
この案には即効性があります。つまり、直ちに子どもが増えるのです。仕事を考え出して、事業として成立させるのは大変でしょうが、こういうロハス職員を何組も雇うのですから、皆で話し合い、協力しあい、刺激しあってやっていくといいでしょう。
私の推測では、田舎でロハス生活をしたいという若者は決して少なくないと思います。しかし、それを実行する(実行できる)人はきわめて少ないです。なぜか。現金収入の見込みが立たないからです。
私案は、最低の生活を保障することで、やる気のある若夫婦にチャンスを与えるものです。募集したら、応募する人はかなりいると思います。
本当は過疎地の教員もこういう「ロハス教師」だけにすると更に効果が上がると思いますが、それは次の段階とします(県政と教育行政は一応別ですし)。
こういう職員は市町村と県で重なっていいと思います。市町村もこういうロハス職員を作るべきです。正直に言うと、全ての職員をロハス職員にするというのが歴史の方向だと思います。過疎は近代社会の行き着いた結果であり、従ってこれまでの近代社会を根本的に変えてロハス社会に舵を切るしか解決策はないと思います。
私案に反対する人は対案を出してください。多分、出せる人はいないでしょう。私案には細かい点では修正の余地がありますが、根本的にはこれしか、過疎対策はないと思います。
当面の対策としては、民主党の提唱している「農家への戸別補償」を「農林漁業者への戸別補償」にして実行することも有意義でしょう。しかし、根本的には若い夫婦が新たに入ってくる方策を考えなければ未来は開けないでしょう。それに、両者は矛盾しません。国は戸別補償、県と市町村はロハス職員、皆が協力すればいいと思います
参考
雑誌「ソトコト」によると、ロハスの発想とは次のようです。
・質素な生活を目指すのは素晴らしい
・異文化に興味がある
・持続可能な地球環境を支持する
・地域社会を再生したい
・政治にあきらめを感じていない
・創造的時間を大切にしたい
・女性の社会進出は当然だ
・私は理想主義者だ
関連項目
ロハス
PS
知事選の争点(その4・地震対策)に関係して新たな事情が出てきました。まず、新聞記事を読みましょう。
記(簡易耐震工法)
戸建て住宅の耐震改修の費用を従来の10分の1程度に抑えた簡易工法が開発された。
この工法は、広島県福山市の建設会社「リバース」の沖浦広文社長(67)が「震災で亡くなる人が少なくなるようにしたい」と考案した。1階の外壁に筋交いに金具を取り付けるだけで、工期は1~2日。材料をほぼ実費で提供することで、工事代を含めて1戸あたり20万~30万円で耐震強化ができるという。
実験をした福山大学工学部の中山昭夫教授(建築構造)は「住宅によって補強の強さは一概に言えないが、震度7程度の揺れに耐えるという結果が出た」という。
国土交通省によると、現状の耐震改修は、木造の戸建て住宅で300万円程度。国と自治体からの補助は収入によって異なるが、最大でも23%なので、200万円以上は自己負担になる。
この工法を採用する自治体を探しているNPO「ピースウインズ・ジャパン(PWJ)」の代表理事の大西健丞さんは、「この工法なら、住宅倒壊で発生する負担よりも少なくてすむ」と話す。
(朝日、2008年11月18日。神田明美)(引用終わり)
私の先の提案は「1戸100万円平均」を前提してそれを全額公費で負担してやる方法でした。業者にやってもらっても1戸30万円なら、ますます楽勝だと思います。
リバース社に電話して聞いたところ、全部で約40万円くらいで済むとのことでした。30万円が40万円になっても100万円よりははるかに安いですから、同じです。