すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ロシアW杯最終予選】ハリルジャパンはなぜうまく行かないのか?

2016-09-09 13:18:26 | サッカー日本代表
アジアの予選では過去の積み上げが生きない

 ハリルジャパンはアジア最終予選でなぜ苦戦しているのか?

 ひとことでいえば「サッカーには相手がある」ということだ。日本の志向するサッカーが、相手と噛み合っていない。

 ハリルが金科玉条にしてきたのは、ハイプレスからのショートカウンター。つまり「縦に速いサッカー」はワールドカップの本大会で強豪国とやるとき生きるスタイルだ。

 たとえばドイツやスペインなど強豪国はポゼッションしてくる。これを日本の側からみればどうか?「相手にボールを持たせ」て高い位置からプレスをかける。で、ボールを奪ってショートカウンターをかける、という発想が成り立つ。

 ヨーロッパ至上主義のハリルからみれば、倒すべき相手はドイツやスペインだ。彼にとってはワールドカップの「本大会」でドイツやスペイン相手に勝って初めて「勝った」といえる。それこそがハリルにとっての自己実現である。ゆえに彼は強豪国を倒すための戦術、すなわち「縦に速く」、「前からプレスを」、「ボールを取ったら少ないタッチ数で攻めろ」というコンセプトを組み上げ、選手に注入してきた。

 逆にいえばハリルにとってアジアなどという「世界の辺境」はもともと頭になく、ゆえにアジアの国を倒すための戦術なんぞは考えたくもない、いや眼中になかった。だから監督就任以降、彼がくり返していたのはひたすら対強豪国用の戦術、つまりハイプレスからのショートカウンターだった。

アジアでは「本大会」と正反対の戦い方を要求される

 だがアジアの国々はドイツやスペインと違い、日本をリスペクトして「専守防衛」でくる。日本ボールのときにはリトリートして自陣にブロックを作りじっくり構える。逆にこれを日本の側からみれば、相手がボールを握ろうとしないのだから必然的に日本がポゼッションすることになる。練習と逆だ。

 すると本田や香川の遺伝子に組み込まれた「虫」がうずき出し、ゆっくりボールを横につなぎながら真ん中へ、真ん中へ。ワンツーを使って中央を崩すようなスタイルのサッカーになってしまう。つまり彼らの「虫」を抑え込み、ハリルがいままで準備してきた戦術とまるで正反対のやり方になる。

 ハリルは強豪国相手にボールを持たせ、高い位置でボールを奪い返して少ない手数で速攻カウンターをかけるサッカーを志向している。だがアジアの予選では、逆に日本がボールを「持たされ」、ポゼッション「させられ」、じっくり手数を「かけざるをえず」ボールを握って引いた相手を崩す「遅攻」を強要させられる。

 すなわちアジアではハリルが丹精込めて作ってきた土俵は吹っ飛び、「別の土俵」でサッカーをさせられる。これが、ハリルジャパンが最終予選で苦戦している理由である。

 自分たちのやろうとしているスタイルが相手と噛み合っていないのだ。

打開策はあるか?

 では日本代表がアジアの壁を突破するには、どうすればいいのか? 決まっている。最終予選の間だけ、手倉森さんが指揮すればいい(いや冗談だ)。

 最終予選を勝ち抜けるのに、特効薬はない。基本に忠実にやるだけだ。

 相手が自陣に引いたら敵が密集する真ん中は避け、サイドを使って攻める。クロスが有効だ。クロスを入れてもし一発で決められなくても、(サッカーは手を使えないスポーツだから)ボールは必ずゴール前でリバウンドする。で、このセカンドボールを詰めればいい。つまりクロスは2度おいしい。

 また同じサイドを使うのでも、事前に「仕込み」をするかどうかで威力が倍増する。たとえばまず真ん中に張っているFWや二列目の味方にクサビのボールを当てる。すると敵のDFは中央へ絞る動きをする。これでサイドが開くので、すぐにボールをサイドへ展開する。すると今度は敵がボールサイドをケアするためにまた重心を移すーー。つまり敵のディフェンスラインをアコーディオンのように、絞らせたり開かせたりさせるわけだ。

 こんなふうにボールが動くたび、敵のDFはその都度ポジショニングを修正し、ボールとマークする相手および自ゴールをそのたび視野に入れ直さなければならない。集中力もすり減る。疲れが倍増する。敵のDFにとって、この揺さぶりがどんなにキツイか? そのうち必ず網の目のどこかに「ほころび」ができるはずだ。そこを狙えばいい。

 では日本代表はどうか? 攻めがまるで単調だ。真ん中を崩したいときには執拗に真ん中ばかり。これでは敵はサイドを捨て、DFを中央に固めておくだけでいい。逆にサイドを使うにせよ、前述のような「仕込み」をやらないからカンタンに弾き返されてしまう。

 結論をいえば、アジアを突破するには「アジア用の戦い方」をすること。当たり前の話だが、ハリルジャパンはこれができていない。10月6日のイラク戦までに頭を切り替え、選手はアジア・バージョンのソフトをインストールしておいてほしい。
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