すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ロシアW杯最終予選・サウジ戦】進化した試合運びと頻発する守備のミス

2016-11-18 07:07:21 | サッカー戦術論
流れの中で初めて失点する

 15日に行われたロシアW杯アジア最終予選・サウジアラビア戦は、2-1で日本が勝ち切った。あらためてサウジ戦の映像を繰り返し再生し詳細に分析すると……点差に応じて押し引きする日本の試合運びのうまさが浮かび上がってきた。だが反面、後半はゾーンを下げて守備的にし、相手にボールを握らせて先行逃げ切りを図ったが守備のミスが目立った。ここが課題だ。

 この試合、日本は最終予選で初めて流れの中から失点した。特に本田は2点目の起点になったことばかりが報道されているが、逆に失点の原因も作っている。1勝1敗だ。日本がW杯本大会でグループリーグ突破を目指すなら、いま一度、守備の基本を精査する必要がありそうだ。

「ハリル・マインド」で日本は狡猾になった

 日本は前半立ち上がりからアグレッシブにハイプレスをかけて高い位置でボールを奪い、ショートカウンターを狙った。だが1-0でリードして後半に入ると、一転して自陣に4-4-2のブロックを敷き、ゾーンを低くして相手を待ち構える守備に切り替えた。つまり後半は守備的にしてハイプレスで先行した1-0のリードをしっかり維持し、あわよくばカウンターで追加点を、というゲームプランである。

 結果、相手のポゼッション率は高まるが、「やられている」わけではない。相手にボールを持たせているだけだ。この流れから狙い通り2点目を奪っている。こういう戦い方の切り替えはハリル以前の日本にはなかったものだ。その意味で日本代表は「ハリル・マインド」により狡猾になったといえる。

 またこの試合、日本は局面に応じて速攻と遅攻、ポゼッションとカウンターをうまく使い分けた。ハリルが考えるタテへの速さに加え、選手が自主的にアレンジして「タメ」を効かせパスワークを増やした。そもそもサッカーでは相手が前がかりでくれば速いカウンターのチャンスだし、自陣に引かれてしまえば時間をかけて遅攻にせざるをえない。90分間、単一の戦術を取るという一辺倒な戦い方はありえない。

 このあたり、イラク戦に代表されるように今までの日本はややもすると戦い方が一本調子だったが、この試合ではスコアに応じて変化をつけられるように進化していた。ただし守備面には課題が多いのだが……。

失点シーンの発端は本田だった

 サウジ戦、日本はアジア最終予選で初めて流れの中から失点した。その失点シーンは日本のクリアボールをキープした敵に対し、本田が食いついて前に出たのが発端だった。彼が飛び出したことで、3ラインのうちMFラインのゾーンに穴が開いた。

 近づいてくる本田を避けて敵ボールホルダーはいったんバックパス。それを見て本田は安心したように前へ出たまま足を止めてしまう。ここでMFのラインに戻らなかったのが致命的だった。その瞬間、すかさず中央にパスを出されて本田は置き去りにされる。このときパスを受けた敵ボールホルダーには山口がプレスをかけたが、本田はそもそも山口に対しディアゴナーレのポジション(斜め後ろの位置)を取り、山口に中を切らせるべきだった。

 だが時すでに遅し。本田はのんびり歩いてプレスバックをサボる。かたや山口はボールにただ食いつくだけで、中を切りパスコースを外に限定しようという発想がない。加えて山口の真横にいた長谷部もディアゴナーレ(山口の斜め後ろについてカバー)を怠り、足を一瞬止めたため前斜めへのパスコースを作ってしまう。結果、カバーのない山口はボールホルダーにあっさり中へ向き直られ、ゴール前のド真ん中に深刻なパスを出された。これが失点の契機だ。

 3人続けて守備のミスをすればひとたまりもない。まず直接的には、最初にボールに食いつきそのあとプレスバックしなかった本田のミス。彼は確かに2点目の起点になったが、「失点の起点」にもなってしまった。本田が考えるサッカーは「ボールを出し入れして敵を食いつかせる」バルサ流だが、あのシーンではまさに本田自身がその餌食になりボールに食いついている。

ファウルでごまかしFKで失点するか、流れの中で失点するかの違い

 このようにハリルジャパンは自分たちのミスからピンチを招きがちだ。いつもならそのミスを取り返すためファウルで逃げ、FKやPKから失点するのが恒例のパターンだ。それがこの試合ではたまたま流れの中から失点した。ハリルは「最終予選では流れの中から一度も失点していない。しっかりオーガナイズされている」というが、単なる詭弁だ。致命的なミスをファウルでごまかし直後のセットプレイで失点するか、流れの中で失点するかの違いにすぎない。

 現にその後もゴール前で吉田がクロスをかぶるなど日本は致命的な守備のミスを連発し、いつ同点にされてもおかしくなかった。意図的にゾーンを低くし、相手を待ち受ける「やってこい」のディフェンスができるほど日本の守備は安定していない。

 もしこの形を続けるならひとつ提案だが、あのオーストラリア戦前半のような、待ち構えるコンパクトな守備をする練習をくり返しやるべきだ。相手ボールのとき、「この瞬間にディアゴナーレはできているか?」を常に意識すること。今後も迂闊な失点を続けないよう、日本はチャレンジ&カバーの守備の基本に立ち帰って修正点を確認すべきだ。

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