松実ブログ

松実の教員が書き込んでいます。面白い先生がたくさんいますよ☆

ウイルスから身を守るには

2020年03月16日 14時18分25秒 | Weblog

生物は細胞を基本単位としていると教科書には書かれています。しかし、ウイルスには遺伝子はありますが、細胞と呼べる器官はありません。したがって、そのままでは自己増殖はできません。しかし、遺伝子は持っているので、自分の複製を作る能力は持っています。

では、どうやって自分の複製を作ったり、子孫を増やしたりしているのでしょうか。ウイルスは他の生物の細胞中に自分の遺伝子を注ぎ込み、その細胞を乗っ取ってしまいます。つまり、その細胞の本来の司令塔である遺伝子を無効化し、自分が注ぎ込んだ遺伝子の指令のみを実行するようにしてしまうのです。

乗っ取られた細胞はその能力のある限りウイルスの遺伝子を爆発的に増殖させます。しかし、その細胞が生きていくために必要な活動はすべて放棄されていますから、いずれその細胞は死んでしまいます。そして、乗っ取った細胞が死んでしまうとウイルスは元の姿に返って細胞外へ放出されます。

このように、ウイルスは他の細胞中では生物として、細胞外では遺伝子とそれを守るためのタンパク質の殻からなる単なる物質になります。ですから、ウイルスは生物と非生物の中間にあると言われます。

ウイルスには大きく分けて2種類あります。一つは他の生物と同じように遺伝子がDNAからできている物です。もう一つは、RNAと呼ばれる他の生物ではDNAの情報を伝える役割の遺伝子からできているウイルスがあります。RNAを遺伝子として持っているウイルスはレトロウイルスとも呼ばれます。

レトロとは元に戻るという意味です。レトロウイルスは自分のDNAを直接宿主となる細胞に注入するのではなく、相手の細胞の器官を使って自分のRNAからDNAを合成させてしまうという狡猾さぶりです。

エイズを発症させるHIVウイルスはレトロウイルスですし、今回世界的な肺炎を起こしているコロナウイルスもレトロウイルスです。

コロナウイルスが悪辣なのは、自身のRNAが相手の細胞のmRNAと呼ばれるDNAの情報を読み取って必要なたんぱく質を作る役目のRNAと直接置き換わってしまうところです。乗っ取られた細胞は自分に必要なたんぱく質を作らず、コロナウイルスが細胞外で必要な殻の成分のタンパク質をひたすら作り出すようになります。コロナウイルスの殻のタンパク質は細胞の細胞膜ととても良く似た成分なので、感染力が強いのです。

ウイルスは細胞外では生き物ではありませんから、いわゆる「消毒」はできません。「物理的に除去する」必要があります。これには、十分な手洗いと接触部分の清浄しかありません。ですから、消毒薬を噴霧することは余り効果がありませんから、石鹸で手を入念に洗い、食物や食器などが外気に触れるのはできるだけ避け、アルコールで十分に拭って除菌することが必要です。


最新の画像もっと見る