3年生には卒業式を前にして考えてほしいことがある。
在校生には、今年度を終えて考えてほしいことがある。
それは、
今までの生活を振り返って、もし誰か一人、感謝の気持ちを伝えるとしたら…。
誰に、どんな言葉を伝えたいか?
と、いうこと。
僕らは日々、誰かに支えられ生きている。
親、家族、友人、先輩、後輩、先生方、以外にも様々な場面でお世話になっている人たち。
あるいは、物や動植物たちにも当てはまるかも知れない。
身近な人達、お世話になっている人たちに対する感謝の気持ちは当たり前だ、という人もいると思う。
誰も思いつかない、なんて人がいたら寂しいですね。
だから、誰か一人で良いので考えてみてください。
僕の場合。
親や家族にはだいぶ負担もかけてしまったし、様々な場面で支えてもらったので申し訳ないくらいの感謝の気持ちでいっぱいでした。
ともに多くの時間を共有した友人には、なかなか照れくさいけれど心をこめて「ありがとう」と伝えたい。
沢山の知識と経験を与えてくださった恩師の先生方には、もう頭も上がらないくらいに感謝しています。
その他にも多くの人達にお世話になりました。
その中でも、大学を卒業するに特別に感謝の気持ちを伝えたい人がいました。
それは誰か…、
実は大学構内を清掃していたおばちゃんです。
出会いからの話は機会があればお話ししますが、本当に親身になって接してくれました。
大学の構内ですれ違う時はこちらがびっくりするくらい元気に、満面の笑みで挨拶をしてくれる。
悩むことが多かった頃には、その笑顔だけでも自然と元気になれました。
また、他にも食事に誘われたり、何か食べたいものはー?なんて聞かれて、遠慮がちに答えると食べたい物を作ってくれたり。
~作ったからおすそ分けー。なんて美味しい料理を届けてくれたり…。
遊びに行こうなんて約束もしたなぁ。
そのおばちゃんには、高校生になる息子さんがいました。
僕は本当の息子ではないけれど、地元を離れて暮らしている僕らにとってはまさに母のような存在になっていたのかも知れません。
次第には「岩手の母」なんて言ってみたり。
暖かかったなぁ、なんて心底思います。
よく、「たいして美味しくもない料理を食べてくれてありがとう」、なんて言われました。
どうしてそんなことを言うのだろう?と思ったことがあります。
おばちゃんの料理は本当に美味しかったし、いただいてばかりで何もお返ししていませんでした。
むしろ「美味しい料理を作ってくれて、ありがとうございます」という気持ちでいっぱいです。
寒い時期は体だけでなく心も暖かくなり、何度も助けていただきました。
「だからそんなこと言わないで」と思ったものです。
今でも思い出すと涙が出てきます。
そんなおばちゃんに卒業式に出席してもらいたかったのですが、残念ながら仕事の都合上出席することができませんでした。
ですが、卒業式当日の朝にお会いする機会があり、少しの間お話することができました。
他愛ない話から始まり、一言。
「卒業おめでとう」
その一言を聞いただけでもう言葉は出てきませんでした。
誰の、どんな言葉よりも心に響き、嬉しくて涙が止まりませんでした。
そのため、本当に伝えたい言葉は全く出てこず、その場はあふれ出る涙をこらえ、ただうなずきを繰り返すのみでした。
けれども後にしっかりと、自分の感謝の気持ちを伝えることは出来ましたよ。
この季節になってふと思いだしました。
もし、誰かに思いを伝えるとしたらあなたならどうしますか?
心からの気持ちを届けてあげてくださいね。
本当に思うことならば、上手に話せなくても気持ちは伝わります。
もちろん、話ではなくて、手紙やメッセージでも良いと思いますよ。
時間はあります。
少し、考えてみてくださいね。
たき