軽井沢からの通信ときどき3D

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シャグマアミガサタケ

2020-05-08 00:00:00 | キノコ
 タチツボスミレが咲き始めた散歩道を歩いていた時、その道の脇に不思議なキノコらしいものを見つけて写真を撮り、自宅に帰ってから調べてみると「シャグマアミガサタケ」だろうということになった。実物の外観も奇妙だが、名前もまたとても変わった種である。

 漢字で書くと「赭熊網笠茸」となり、学名はGyromitra esculentaである。この和名は、大脳状で赤褐色ないし紫褐色の頭部を「赭熊」(赤褐色のクマの毛皮を思わせる色調に染めたヤクの尾の毛。あるいはそれに似た色調のかもじ)にみたてたものであるとされる(ウィキペディア)。

 また、学名にある種小名esculentaは、ラテン語で「食用になる」の意であるという(同)。

 キノコ類は夏から秋にかけて生えてくるものと思っていたが、春のこの時期にも生える種があるようで、きのこ図鑑には「春は発生しているキノコの種類や数では定番のキノコ狩りシーズンである『秋』には遠く及びませんが、春という季節は気候的にも良好で特有のキノコも発生しており、山に行く事によって季節の訪れなども身近に感じる事ができると思いますので、春のキノコ狩りも面白いかもしれません。」とあって、春に見られるキノコもあるとのこと。

 今回最初に歩道脇の苔の中に見かけたシャグマアミガサタケは次のようなものである。傘部分の大きさは3-4cmくらいで、傘の部分の質感はキクラゲに似ているようにも思う。

苔の中に出てきたシャグマアミガサタケ 1/3(2020.4.23 撮影)

苔の中に出てきたシャグマアミガサタケ 2/3(2020.4.23 撮影)


苔の中に出てきたシャグマアミガサタケ 3/3(2020.4.23 撮影)

 数日後散歩コースを広げて、あたりを探してみると、別荘地の道路沿いや庭の中にも多数見つかった。大きさも様々で、傘部分の径は2cmくらいの出始めのものから大きく育ち10cmくらいまである。下記図鑑の解説からすると、全体的にはまだ出始めで、今後さらに大きく成長するのであろうと思える。

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 1/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 2/11(2020.4.27 撮影)


別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 3/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 4/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 5/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ6/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 7/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 8/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ9/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 10/11(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに出ているシャグマアミガサタケ 11/11(2020.4.27 撮影)

 多くはこのように単独で生えているが、時々数個がまとまって生えているところもある。

別荘地の道沿いに並んで出ているシャグマアミガサタケ 1/3(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに並んで出ているシャグマアミガサタケ2/3(2020.4.27 撮影)

別荘地の道沿いに並んで出ているシャグマアミガサタケ 3/3(2020.4.27 撮影)


別荘地の庭に並んで出ているシャグマアミガサタケ(2020.4.27 撮影)

 このシャグマアミガサタケを図鑑「きのこ」(小宮山勝司著 2007年永岡書店発行)で調べると、発生は春、有毒との記載があり、さらに次のような解説がある。

 「春、マツやトウヒなどの林内に発生する。傘は茶褐色で大人のゲンコツくらいの大きさをしている。クチャクチャしていて脳ミソを思わせる。高さは15cmくらい。柄は黄土白色で、中は全体が空洞になっている。
 学名のesculentaは『食用』という意味らしいが、実は猛毒のきのこ。中毒して死亡した事故もあったと聞く。しかし、ドイツではおいしいきのことされ、毒抜きをして食べる風習がある。『ロルシェル』の名前で親しまれ、季節にはごく普通に店にも並ぶそうだ。」

 学名に食用という文字が用いられているにもかかわらず、実際には猛毒というのもおかしな話だが、上手に毒抜きさえすれば、美味しく食べることができるからなのだろう。意味合いは異なるが、日本のフグと似たような扱いなのかと思う。

 ドイツ以外ではどうかと思い調べてみると、ウィキペディアに北欧のフィンランドでの事例があった。
 「フィンランドではシャグマアミガサタケをKorvasieni(コルヴァシエニ、『耳キノコ』の意)と呼び、比較的よく知られた食材であり、毒性の明示と調理法とに関する説明書きの添付とを条件に、例外的に販売が許可されている。 
  しかし、多くの外国人は正しい調理方法を知らず、興味本位で購入して中毒する恐れが高いため、フィンランド食品安全局(Evira)では、外国人向けの数ヶ国語のパンフレットを配布し、正しい食べ方の周知を呼びかけている。 」という。
 
 調理法については、「フィンランド料理では、毒抜きしたものをオムレツ・バターソテー・肉料理などに使うベシャメルソースなどの素材として用いる。フィンランドでは缶詰品も市販されているが、煮沸処理が施されたものとそうでないものとがあるので、缶の記載を精読して確認するべきである。 」とされる。

 以前紹介した「ベニテングタケ」(2019.10.18 公開)のわが国での位置にも似ているが、とてもおいしいのであろう。ただ、このシャグマアミガサタケの方が海外ではよほど広く流通しているようである。

 散歩中にこのように普通に見つかる種であるが、日本でのきのこ狩りの季節とはかけ離れた春季に多く発生することや、外観が奇怪であることなどから考えて、食習慣には結びつかなかったのだろうとされる。これを反映してか方言名も少なく、「ぐにゃぐにゃ」(秋田県南部)・「しわあだま」(秋田県北部)・「しわもだし」(東北地方の各地)などの呼称が知られている程度であるという。

 一方、 栃木県下では、「要注目種」としてレッドデータブックに収録されているという一面もあるから面白い。 

 同じころ、散歩道の脇でもう一種のきのこを見つけた。こちらは「アミガサタケ」という種で、やはり春に発生する。
 
 このアミガサタケも微量ながらシャグマアミガサタケと同種の毒成分を持っていて、注意しなければならないが、海外では高級キノコとされ、乾燥品や缶詰などが市販されているというから、シャグマアミガサタケと同様の扱いである。

道路沿いの樹下に出ているアミガサタケ 1/2 (2020.4.28 撮影)


道路沿いの樹下に出ているアミガサタケ 2/2 (2020.4.28 撮影)

 ところで、このシャグマアミガサタケの毒成分であるが、ヒドラジン類の一種であるギロミトリン、およびその加水分解によって生成するモノメチルヒドラジン(単にメチルヒドラジンとも)であるとされる。ギロミトリンの含有量は、シャグマアミガサタケ 100 g中 120-160 mg程度であるという。 


 ギロミトリンの沸点は143℃で、揮発性はないが、沸騰水中ではすみやかに加水分解されてモノメチルヒドラジンとなる。後者の沸点は87.5℃で蒸気圧も高く(20℃において37.5 mmHg)、煮沸すると気化し、調理中にこれらを吸い込むと中毒を起こすという。

 また、煮沸によって煮汁の中にも溶出する。10分間の煮沸によって、モノメチルヒドラジンの99-100パーセントが分解・失活するという。また、生鮮品を10日間ほど乾燥することによっても、ギロミトリンを90パーセント程度分解できるとされている。

 このモノメチルヒドラジンはヒドラジン(N2H4)の4つある水素の1つをメチル基(CH3)で置き換えたもので、両者ともにロケットやミサイルの燃料物質であるという意外な面もある。 

 我が家でもキノコ類は大の好物である。特に妻などポルチーニには目がない方で、種々料理に利用している。トリュフ入りのチーズも売られているが、スーパーなどでこれを見つけると買い占めに走るといったはしたないこともするくらいである。

 このシャグマアミガサタケやアミガサタケにも興味はあるが、これらの種に限らず多少なりとも毒があるとなると、やはり手は出せない。まだまだ命が惜しいのである。











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