軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

雲場池の水鳥(4)オオバン

2020-11-27 00:00:00 | 野鳥
 冬から春にかけて、雲場池で見ることができた種のひとつに今回紹介するオオバンがいる。灰黒色の体に白色のくちばし、そして額にはくちばしから続く額板と呼ばれる特異なものがつく。時々陸に上がっている姿を見かけたが、その時見る足の色は鉛色で、特異なひれが見られる。雌雄は同色。

 マガモ、コガモ、そしてキンクロハジロは秋になって10月下旬までには再び戻ってきているが、このオオバンの姿はなかなか見られなかった。それが11月下旬の朝出かけた時、多くのマガモに混じりようやく1羽の姿が見られた。これで年間を通じて、雲場池の水鳥たちが、いつやってきていつ去っていくかがわかってきた。

 さて、このオオバン、池面を泳いでいる姿は、なにかぎこちなく、マガモやカルガモなどは滑るように移動していくのであるが、このオオバンは首を前後に振りながら前に進んでいく。
 
 陸に上がったときの歩き方も、体に似合わない大きな足を持て余しているように感じる。カルガモやマガモの方がよほど歩き方が上手である。

 飛び立つところを見ることは稀だが、水面をかけるようにして飛び立つところを一度だけ撮影できた。

 このオオバンはいつもの「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年保育社発行)に次のように紹介されている。

 「クイナ科の中では大型。額板白色。嘴峰40~52mm、翼長194~220mm、尾長52~62mm、跗蹠36~52mm、頭頸部黒。背以下の上面、翼、尾は石板黒色で次列風切の先端に白色はんあり。下面灰黒色。嘴白色。脚暗青緑色。幼鳥は上面かっ色を帯び下面は淡色。
 広く欧亜大陸及び北アフリカに分布する。我国では北海道・本州中部以北(南限千葉県)で繁殖し冬期多くは中国南部・フィリピンなどに渡るが本州中部以南には冬季も少数滞留する。広い湖沼に生息し遊泳は巧みである。」

 雲場池では、入り口にある小さい池にいることも多く、大きい方の池との間を徒歩で行ったり来たりしている姿をよく見かけた。潜水は得意なようで、大きな水かきのある足が役立っているようである。

 よく似た種の「バン」はくちばしが赤く、オオバンとの区別は容易である。バンの姿はラウンドアバウトから雲場池に通じる道路沿いの別荘地内で一度だけ見かけたことがあるが、雲場池で見ることはなかった。

 以下、雲場池で撮影した写真を紹介する。


雲場池を泳ぐオオバン(2020.1.24 撮影)

雲場池の縁でマガモのペアと一緒のオオバン(2020.1.24 撮影)

マガモ♂とすれ違うオオバン(2020.2.9 撮影)


カルガモとオオバン(2020.2.25 撮影)

小雪の降る中の2羽のオオバン(2020.3.17 撮影)

雲場池のオオバン 1/4(2020.3.11 撮影)

雲場池のオオバン 2/4(2020.3.5 撮影)

雲場池のオオバン 3/4(2020.2.22 撮影)

雲場池のオオバン 4/4(2020.2.22 撮影)

 潜水は得意なようである。次はその連写画像。
 
潜水するオオバン(2020.3.17 撮影)

飛び立つ2羽のオオバン(2020.3.14 撮影)

 雲場池の入り口にある小さい池と雲場池との間は歩いて行き来していて、時々その姿が見られた。体には不釣り合いに見える大きめの足には独特の形をした水かきが見える。

歩くオオバン(2020.1.26 撮影)


歩いて雲場池に向かうオオバン(2020.1.22 撮影)

 冒頭紹介したように、夏の間姿を消していたオオバンは、マガモ、キンクロハジロに遅れること1ヶ月余、11月下旬にようやく姿を見せた。

秋になり戻ってきたオオバン(2020.11.24 撮影)
 
マガモと共に泳ぐオオバン(2020.11.24 撮影)

 今日、原稿を書き終わって投稿予約をして準備をしていたところ、ヤフーのホームページに「あなたにおすすめの商品」ということで、今回のテーマの「オオバン」のぬいぐるみが登場した。

 そのページの写真は次のようなもので、余りのタイミングの良さに驚いたが、さしものAIも公開前の情報は得られないであろうから、偶然の一致というところであろう。

 それにしても「オオバン」がこれほど親しまれているとは思わなかった。意外な発見である。





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新型コロナウィルス情報(32)11/20-11/26

2020-11-26 12:00:00 | 新型コロナウィルス
 特に断りの無いものは読売新聞からの情報。

11/20
 ・都「感染拡大」警戒最高 政府要請「イート」4人以下
   東京534 大阪338 北海道267人。
 ・助言機関 医療維持へ感染者減必要
 ・コロナ最前線㊥ 経路変化 時短要請せず
 ・保健所の支援 態勢整備 人手不足 速やかに派遣
 ・大阪府知事方針 病50%超で休業要請 飲食店などに
 ・米コロナ死者 25万人超す 累計感染者数1150万人超 共に世界最多
 ・米ワクチン高い効果 副作用・持続期間 不明点も 「9割超」衝撃
 ・【社説】コロナ最多更新 感染対策を見直すべき局面だ
 ・G20 目立つ「対立の構図」 コロナ禍 求められる協調
 ・ボージョレ解禁 様変わり 外飲み不振 輸入3割減見通し
 ・飲食倒産最多ペース コロナ拡大 小規模店中心 商工リサーチ
   1~10月倒産件数 前年同期比9.2%増の730件
 ・会食の感染防止徹底 「イート」4人以下 飲食店「客頼み」困惑も
 ・全国2386人感染 8都道府県で最多 死者は18人
 ・話さず食べる「マスク会食」 はす向かいに座る
 ・長野 GoToイート 人数制限しない方針 知事「長時間の宴会避けて」
 ・長野 コロナ感染 新たに20人 長野の会食参加 12人陽性

11/21
 ・3連休 感染防止徹底 政府 きょう対策本部 全国2423人 3日連続最多
 ・「イート」制限 9都道府県
 ・GoTo見直し提言議論 分科会
 ・コロナ最前線㊦ ウイルス解明 長期戦 地道な研究が続いている
   リスク低減 重視 飛沫防止 重要性鮮明に 経済 緊張感と工夫
   *マスクは気休め程度と思われていたが、感染の防御や拡大防止に効果あり。
   *耳にタコでも3密回避、マスク、手洗い、換気重要。
 ・治療法確立 死亡率は低下 10・11月0.9%
 ・印、感染900万人超す ロシア200万人超え、ブラジルは600万人に迫る
 ・WHO レムデシビル「推奨せず」 官房長官「承認見直さない」
 ・コロナワクチン 「高齢者にも強い免疫」 アストラゼネカ中間段階発表
 ・JTB6500人削減へ 9月中間 赤字781億円 過去最大
   国内旅行売上高85%減、訪日外国人も消滅
 ・コロナ 解散戦略に影 GoTo見直し慎重 与党、感染拡大に危機感
 ・カリフォルニア 夜間外出を禁止 1日1万人感染
 ・イオン、年末商戦の始まりを告げる「ブラックフライデー」開始 密回避 セール期間倍に
 ・10月消費物価0.7%下落 GoTo宿泊料が影響
 ・米コロナ経済支援一部終了へ 財務長官表明 FRBは反発
 ・GoToイート 都内飲食店 対策を徹底 食事券販売始まる 神奈川一時停止
 ・都内感染500人超2日連続
 ・劇場出演者ら15人感染確認 東京・日比谷
 ・家で感染4割超 都内今月拡大続く 空気清浄機売り上げ増
   会食後 手指消毒を徹底・入浴は最後
 ・長野 新たに22人感染 中等症2人、軽症16人、無症状4人 3密状態回避呼びかけ

11/22
 ・感染拡大地へ旅行停止 首相表明 「GoTo」見直し 判断は知事
   イートも停止検討要請へ。
 ・GoTo 苦渋の修正 「トラベル」 「感染増の元凶」風評懸念
 ・ワクチン緊急使用申請 ファイザー、米で 日本でも承認手続きへ
 ・G20 コロナ対策議論へ 首相 特許権プール推進
 ・コロナ再燃 米 感染対策に濃淡 権限は州 統一規制困難
 ・欧州「第2波」危機続く
 ・終盤国会 コロナ攻防へ 野党「GoTo」に照準
 ・コロナ差別解消へ議員立法 感染の高鳥議員ら月内にも法案提出
 ・あすへの考 【人類史におけるコロナ禍】歴史家/ユヴァル・ノア・ハラリ氏
   IT独裁 感染監視に潜む芽、その先にAIが「最適解」を出し、思考と行動を操作する未来。
   それでも私は民主主義の力を信じる。歴史を定めるのは人間です。
 ・「自治体が判断」賛否 都知事「国の責任」
 ・新規感染 初の2500人超 8都府県で最多 都内539人、大阪415人
 ・「また客減ってしまう」 GoTo見直し 感染拡大も不安 観光業者ら複雑
 ・政府感染リスクが高まる会食・職場 5場面提示
   飲酒、マスクなし会話・・
 ・長野 善光寺にぎわう 連休初日 感染対策しつつ
 ・長野 コロナ25人感染 いずれも既確認感染者の濃厚接触者で軽症か無症状

11/23
 ・GoTo 札幌除外へ 北海道方針、26日にも
   旅行停止 再生相「数日中に詳細」。
 ・GoToイート「何とか続けて」 飲食店 感染拡大で客足減
 ・G20首脳宣言へ ワクチン・治療薬 連携 コロナ対策 経済下支えも
 ・米政権移行 足踏み2週間 コロナ・外交 空白の恐れ トランプ氏抵抗
 ・国内死者2000人超す 
 ・観光地 混雑続く 3連休
 ・宮城県議55人に一斉PCR検査
 ・コロナ下「認知症進行」85% 介護指導者回答 外出・面会自粛
 ・長野 コロナ14人感染 中等症1人、軽症7人、無症状6人

11/24
 ・GoTo 大阪除外へ 知事意向 札幌も検討表明
   GoTo停止 仕組み明示を 知事会、政府に提言へ 首相「焦点絞り対策」。
 ・ワクチン既に奪い合い G20 首脳「普及へ連携」宣言 途上国供給 協調に不安
 ・コロナ対策・WHO改革 欧州、対米協調に軸足 「トランプ後」見据える
 ・米、ワクチン接種開始へ CNN報道 コロナ来月11日にも
 ・EV コロナ禍に加速 トヨタ社長「テスラに学ぶ点」
 ・風薬が売れない マスク、手洗い・・・流行抑制か 成分見直しやPR苦心
 ・政治意識を探る 高齢者 コロナ重視 70歳以上「経済より感染対策」88%
 ・【広告】免疫機能で日本初! 機能性表示食品が登場
   キリンIMUSE  プラズマ乳酸菌配合飲料3種発売。
 ・重症者 最多331人 岩手 初の死者 死者計8人 宮城県議の感染10人に
 ・郊外の街 再び脚光 コロナの新潮流 在宅勤務増え「脱都心」 横浜市郊外上郷
 ・3連休 控えめの外出 最終日 行き先限定・近場で
 ・長野 コロナ感染新たに12人 軽症6人、無症状6人
 
11/25
 ・GoTo 大阪・札幌市15日まで除外 「予約済み」も キャンセル、旅行者負担なし
   キャンセル 事業者に35%補償。
 ・コロナ重症増加 感染対策を議論 厚労省助言機関
 ・【社説】GoTo見直し 政府は混乱回避へ責任果たせ
 ・生保大手4社減収 コロナで対面販売落ち込み 9月中間決算
 ・民泊登録物件数 半年で1万超減 新型コロナ影響
 ・GoTo除外 札幌のホテル「厳しい」
 ・国内感染1228人 死者19人
 ・宮城 3市長感染 大崎、白石、富谷 会食が原因の可能性
 ・都内重症者50人上回る 5月以来 時短要請きょう検討
 ・長野 8広域圏 警戒引き上げ 県、レベル3に 「正念場」予防喚起
 ・長野 新たに11人感染 軽症9人 無症状11人

11/26
 ・都、飲食店に時短要請 午後十時まで 28日から20日間 協力金40万円
   小池知事「不急の外出自粛を」、大阪あすから、札幌は延長へ。
 ・【社説】予算委集中審議 感染対策の明確な指針が要る
 ・【広告】ザ・パンデミック 濱嘉之著 講談社文庫
 ・衆参予算委 GoTo継続是非 論戦 首相「経済下支え」
 ・英 交流制限 クリスマス緩和 コロナ対策特例 発表、独仏も配慮
 ・消毒スタンド「トヨタ方式」 相場の半額で販売
 ・「財政健全化」重要視 財政審議会 支援常態化に警鐘
 ・コロナを逆手に 企業奮闘 仕事+余暇「脱都会」に商機
 ・コロナ融資 12兆円 日本政策金融公庫
 ・スパコン速度連覇 「富岳」新研究にも即応 コロナ 飛沫予測など成果
 ・コロナ禍 不登校が急増 ゲームで昼夜逆転 引きこもり増 懸念
 ・国内1945人感染 都内401人 死者は21人
 ・飲食店 苦しい年末 書き入れ時に・・・「またか」 都が時短要請
 ・長野 お正月ぐらいはふるさとに 飯田市 学生の帰省応援
   コロナ検査費、旅費援助 市議会で事業費可決
 ・長野 9人感染 中等症1人、他は軽症
 ・長野 コロナ対応 地裁が感染防止対策議論
 ・長野 しな鉄6億1100万円赤字 上期決算、通期11億円見通し
 ・長野 コロナ対策ルール 実施施設に認定証 阿智村 村内の旅館・ホテル、スキー場など

 ・Johns Hopkins Univ. 公表情報 世界と日本の累計感染者数推移


世界の累計感染者数推移 2020.11.26 現在 


日本の累計感染者数推移 2020.11.26 現在
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山野で見た鳥(6)キジ

2020-11-20 00:00:00 | 野鳥
 今回はキジ。いわずと知れた日本の国鳥である(1947年指定)。姿が美しく、軽井沢でも見かける機会が多い。また、遠くにいて姿が見えなくても鳴き声でそれと知れるので、キジがいると認識することができる。

 「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年保育社発行)には次のように記されている。
 「形態 尾長く♂は頸側、胸側、下面全体金属緑黒色で美麗。♀は♂に比し小さい。嘴峰♂29~36mm、♀25~31mm、翼長♂215~245mm、♀195~207mm、尾長♂270~425mm、♀202~275mm、跗蹠♂64~73mm、♀55~64mm、♂は眼の周囲の皮膚裸出して赤色。後頭の両側には金属緑黒色の飾羽がある。背には栗色、黄色などの複雑な模様があり、雨覆、腰、上尾筒は灰青色で上尾筒の羽毛は分岐して房状となる。尾は暗緑色で黒色帯状のはん点があり羽縁は細く分岐して紫かっ色である。♀は全体黄かっ色で一面に黒かっ色はんがある。
 本州・四国・九州及びその属島に分布するキジは下記の4亜種に分かたれているが、どれも類似しており、大陸産の亜種(コウライキジ)のように♂には白色の頸輪がなく日本特産の亜種である。
 ・キ タ キ ジ・・・本州北部(新潟県・福島県以北)及び佐渡
 ・キ     ジ・・・本州中西部及び四国
 ・キユウシユウキジ・・・九州及び本州西部(山口県)
 ・シ マ キ ジ・・・本州南部(三浦半島・伊豆半島・紀伊半島)・伊豆七島
            (大島・新島)・種子島・屋久島
 なおコウライキジは元来朝鮮産であるが1750年ごろ朝鮮から輸入され現在対馬に多数増殖している。また1920年ごろから本州・九州にも放鳥され土着のキジと雑交したが雑種は繁殖力弱く現在ではほとんど跡を絶ってしまった。北海道にはキジが生息していないので放鳥されたものはよく繁殖し、特に日高地方では農耕地や草原に多数増殖している。」

 これによると軽井沢で見られる種はキジと考えてよいであろう。以下紹介する写真で見ても、本の説明のとおり背から尾にかけての色は複雑でなかなか美しい。

 国鳥に指定されている一方で、肉は美味とされ食用であり、狩猟対象ともなっていて、毎年、愛鳥週間や狩猟期間前などの時期に大量に養殖キジが放鳥されている。
 2004年(平成16年)度には全国で約10万羽が放鳥され、約半数が鳥獣保護区・休猟区へ、残る半数が可猟区域に放たれているという。
 放鳥キジには足環が付いており、狩猟で捕獲された場合は報告する仕組みになっているが、捕獲報告は各都道府県ともに数羽程度で、一般的に養殖キジのほとんどが動物やワシ類などに捕食されていると考えられているとのこと。

 今年、軽井沢で最初にキジ♂を見かけたのは雲場池を散歩しているときで、遊歩道横の別荘地内の流れのそばで水を飲んでいた。この時は、しばらく水を飲んだ後、ゆっくりと別荘地の林の中に消えていった。

 その後、もう一度見かけているので、その時の写真も載せておく。

別荘地内の流れで水を飲むキジ♂ 1/2(2020.3.23 撮影)

別荘地内の流れで水を飲むキジ♂ 2/2(2020.3.23 撮影)

別荘地の林の中に歩き去るキジ♂(2020.3.23 撮影)


雲場池横の別荘地内で見かけたキジ♂ (2020.4.16 撮影)

 次の写真は南軽井沢に広がる畑地の中の農道を車で走っていてキジの親子を見かけたときのもので、車を止めて撮影した。

 雌雄2羽の親鳥と共にすぐそばに2羽の子どもが見られた。

南軽井沢の畑地で見かけたキジの♂(左)と♀(右) (2020.6.24 撮影)

南軽井沢の畑地で見かけた2羽のキジの子ども(2020.6.24 撮影)

 この時は、上掲の親子のいた場所とは農道の反対側にも、別の1羽の♂キジがいた。車で近寄り窓から撮影したのが次の写真である。

南軽井沢の畑地で見かけたキジ♂1/4(2020.6.24 撮影)

南軽井沢の畑地で見かけたキジ♂2/4(2020.6.24 撮影)

南軽井沢の畑地で見かけたキジ♂3/4(2020.6.24 撮影)

南軽井沢の畑地で見かけたキジ♂4/4(2020.6.24 撮影)

 冒頭、このキジの鳴き声について書いたが、「ケーン」と響きわたるこの鳴き声は繁殖期の♂のものとされる。

 この鳴き声についてはずいぶん前にTVで見た「まんが日本昔話」の「キジも鳴かずば」の話を思い出す。
 貧しい父娘の話だが、ある時父親が、食べ物をろくに食べることが出来ない貧しい暮らしの中、病に倒れた娘を不憫に思い、ひと掬いのコメと一握りのアズキを地主の蔵から盗んで「アズキマンマ」をつくり娘に食べさせた。
 しばらくして、元気になった娘はそのことをてまり歌にして「アズキマンマ」を食べたと口ずさむ。これが村人に聞きとがめられて、川が氾濫した災害時に父親が捕えられて人柱にされてしまう。悲しんだ娘はそれ以降口を閉ざし、一言もはなさなくなってしまう。
 そうしたある時、「ケーン」と鳴いたキジが猟師に撃たれるという出来事が娘の目の前で起きる。娘はそのキジを抱いて「キジよ、お前も鳴かなければ撃たれることもなかったのに」とつぶやく・・・といった話であった。

 「キジも鳴かずば撃たれまい」というこの諺の基になった話は、長野県の民話だということで、調べてみると、信州新町を流れる犀川のほとりにある「奈津女公園」には、この民話にちなんだ娘のブロンズ像が建てられていることがわかった。

 コロナ禍で、外出する機会も少なくなっているので、先日思い立って現地に出かけてきた。軽井沢からは高速道路に乗り更埴ICで下りるルートで約1時間半で現地に着く。

 途中立ち寄った「道の駅」で案内地図を確認したところ、目指す「奈津女橋」は国道19号線に平行して流れる犀川を横切る橋と描かれていたので、その地図を写真に撮り、そのつもりで車を走らせていた。現地近くまで来て赤信号で止まった時、何気なく道路の右側を見ると、そこにブロンズ像が見えた。これが目指す「キジも鳴かずば」の像であった。

 確かめると橋はあったが、犀川の細い支流にかかる橋で、危うく見過ごしてしまうところであった。すぐ左側の河原にある駐車場に車を止めて公園に向かった。

 ちなみに、帰路すぐ近くにある信州新町美術館で入手した信州新町の地図と、道の駅に掲示されていた地図(北が下に描かれている)を次に示す。もし現地に行かれるのであれば、参考にしていただきたい。


信州新町ウォーキングMAPから


道の駅に掲示されていた信州新町地図

 ブロンズ像の少女は死んだキジを両手で抱き、泣いているように見える。台の前面には「雉子も鳴かずば」との文字が刻まれているが、それ以外にはこの像の由来を示すものは何もなく、意外な感じを受けた。信州新町美術館で入手した「信州新町ウォーキングMAP」にはこのブロンズ像は、上の写真の通り「お菊の像」として紹介されていた。

 像の後ろに回ると、製作 寄贈 宮尾応栄、ブロンズ寄贈 黒岩峯雄 と記されたプレートが埋められている。

 奈津女公園はとても小さく、この娘のブロンズ像の横には「母さんの歌」の碑と羊の像が設置されていた。

 現地で撮影した写真は次のようである。

「雉子も鳴かずば」のブロンズ像のある奈津女公園風景(2020.11.11 撮影)


「雉子も鳴かずば」のブロンズ像 1/5(2020.11.11 撮影)

「雉子も鳴かずば」のブロンズ像2/5(2020.11.11 撮影)

「雉子も鳴かずば」のブロンズ像 3/5(2020.11.11 撮影)

「雉子も鳴かずば」のブロンズ像 4/5(2020.11.11 撮影)


「雉子も鳴かずば」のブロンズ像 5/5(2020.11.11 撮影)

ブロンズ像の台に刻まれた文字(2020.11.11. 撮影)

ブロンズ像の台の裏側に刻まれた寄贈者と制作者名(2020.11.11. 撮影)

ブロンズ像の3D画像・交差法(2020.11.11. 撮影)


ブロンズ像の3D画像・平行法(2020.11.11. 撮影)

 この少女の像の背後に回ると、ブロンズ像の前には今は穏やかな犀川の流れが見えた。

「雉子も鳴かずば」のブロンズ像 と犀川の流れ(2020.11.11 撮影)

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新型コロナウィルス情報(31)11/13-11/19

2020-11-19 12:00:00 | 新型コロナウィルス
 特に断りの無いものは読売新聞からの情報。

11/13
 ・コロナ、変異で感染力強く 東大がハムスターで実験(共同通信社)
 ・検査体制1日54万件(抗原検査やPCR検査) 厚労省発表 指定機関3倍に
   身近なかかりつけ医などで迅速に診療や検査を受けられる仕組みに転換。自治体により差。
 ・国内感染最多1645人 死亡率は低下
 ・バイデンの試練㊦ コロナ・景気両にらみ
   コロナと失業率 経済再開 再び感染増
 ・日産 赤字6150億円に縮小 3月期予想 需要回復、上方修正
 ・日航 冬ボーナス8割減 国際線需要戻らず
 ・海外客受け入れ 来春までに判断 東京五輪
 ・露のワクチン 効果は92% 米ファイザーに対抗?
 ・英の累計死者5万人 
 ・不動産 コロナで明暗 商業施設・ホテル打撃、オフィスビル賃貸 堅調
 ・民放キー局全社減収 中間決算 イベント事業不振
 ・ビール系飲料 販売量7%減 大手4社、10月
 ・私鉄主要15社 赤字 9月中間 事業構造見直し急務
 ・車4社 回復基調 3月期予想 上方修正相次ぐ インド・東南ア 苦戦続く
 ・すかいらーく200店閉店 来年末までに 宅配拡大に活路
 ・PS5 巣ごもり追い風 販売開始 ゲーム市場 競争激化
 ・英GDP 年78%増(前四半期比、年率換算) 7~9月期 行動制限緩和 急回復
 ・コロナ差別防止へ提言 相談体制の強化・公表基準統一 政府分科会
 ・搭乗者 抗原検査補助へ ピーチ 自己負担1万円超→3000円
 ・都内感染者393人 北海道・神奈川など最多
 ・観客50% 2月まで継続 政府
 ・ツアー感染防止へ検討委 読売旅行 リスク最小化に指針
 ・ワクチン試験 抗体を確認 田辺三菱子会社
   カナダ「メディカゴ」2021年内の実用化目指す。
 ・臨時交付金増額を要望 計1兆2000億円
 ・コロナ疑い 受診何処で・・・
   指定医療機関 多い非公表 全て公表、埼玉・高知2県だけ。
   患者殺到や風評 懸念。
 ・長野 新たに13人感染 2広域圏で警戒引き上げ 
   長野市9人、須坂市3人、大分県からの帰省者1人。

11/14
 ・首相GoTo継続強調 感染1695人、2日連続最多
 ・地銀6割が減益・赤字 貸し倒れ備え 重荷
 ・GoToイート 週末にも終了 5000万人以上予約 予算上限
 ・コロナ対策司令塔 ポスト新設 政府方針
 ・【社説】コロナ感染拡大 冬に備え万全の対策が必要だ
 ・野党、感染急増を追及へ 枝野代表「完全な人災」
 ・コロナウイルス変異で感染加速 東大教授ら実験 欧州型・日本にも
 ・都内感染374人 国内1695人
 ・コロナ差別 条例で防ぐ 「恐れるべきはウイルス」制定進む 17都府県20自治体   
 ・長野 コロナ最多23人感染 長野の飲食店では集団感染 軽症か無症状

11/15
 ・コロナ対策 支援約束 日韓中ASEAN首脳会議 菅首相表明
 ・図書館蔵書「送信」で波紋 コロナで加速
 ・運輸・観光 異業種に挑戦 コロナ禍 苦肉の策 
   空港から農地へ・旅行会社がそば店
 ・GDP 民間予測平18.4%増 7~9月(前期比年率換算) 前期落ち込み半分回復
 ・ワクチン「NY州除外」 知事、安全性懸念表明で
 ・修学旅行 東京やめ東北へ コロナを懸念 変更
 ・国内感染1731人 3日連続最多 死者は計3人
 ・東京五輪 ホストタウン もてなし不安 五輪前の接触禁止 「陽性」対応難しく
 ・長野 長野広域圏 警戒レベル4に 7広域圏「2」に引き上げ
 ・長野 新たに19人感染 中等症1人、18人は軽症か無症状

11/16
 ・【広告】新型コロナ「正しく恐れる」 西村秀一著、ウイルスとは何か
    中村桂子ほか著 藤原書店発行。
 ・コロなミンクカラ変異 デンマーク 1700万匹殺処分
   ミンクの感染は200か所以上の農場で確認され、ワクチンが効かないお
  それのある変異型ウイルスが5か所で見つかっている。
 ・コロナ5日連続1400人超 東京255人、大阪266人
   怖いけど・・・にぎわう行楽地
 ・長野 感染 新たに13人 9人軽症、2人無症状

11/17
 ・コロナ対策本部 自治体の時短要請時、国が財政支援 「イート」制限検討求める
 ・五輪「安全」アピール IOCバッハ会長・首相会談
   会長選、経済再建・・・思惑一致。ワクチン接種を支援、来春が焦点に。
 ・7~9月 年21.4%増 GDP水準、コロナ前遠く 感染再拡大で減速懸念
   賞与減で消費停滞も 年末商戦に逆風
 ・感染対策と両立 観光振興へ協調 首相、観光戦略実効推進会議で
 ・武漢遺族、習氏に請願書 市政府の法的責任追及求め 「感染情報隠蔽があった」
 ・APEC閣僚会議 コロナ後の経済、地域の将来議論
 ・東証一部 企業最終利益4割減 9月中間決算 1/4が赤字に
 ・株500円超高 29年ぶり高値 更新
 ・コロナ下で学び未来の医療創る 高校生向けオンラインセミナー 国内外から1000人
   順天堂大、大阪大、東京医科歯科大、東北大、長崎大。
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続・新型コロナウイルス(3)免疫と老化

2020-11-13 00:00:00 | 新型コロナウィルス
 新型コロナウイルス関連の情報を調べていると、どうしても「免疫」についてもっと知らなければという気になる。

 これまでに当ブログにアップした話題の中にも、何度か免疫に関する用語が登場した。「集団免疫」、「T細胞免疫」、「抗体」などであった。私自身は用いなかったがTV報道などで頻繁に登場する用語には「自然免疫」、「獲得免疫」、「IgM抗体」、「IgG抗体」、「サイトカインストーム」といったものも出てくる。

 ウイルスなどの外敵と戦う我々の体の働き、それが免疫であるということは理解するものの、その具体的な仕組みはとなると私はよくわからない。

 感染者数と死者数のデータを見ていると、今回の新型コロナウイルスに限らないが、糖尿病、高血圧、肥満などの基礎疾患を患う人や老人は、健康な若者に比べて致死率が著しく高いとされているが、それはどのような理由によるものか、といったことなどを知りたくなる。

 そうしたことを改めて勉強してみようと思い、書棚を探して、「免疫の意味論」(多田富雄著 1993年青土社発行)を見つけた。見つけたというのは変な話だが、以前堀文子さんの随筆を読んでいて、著者の多田富雄さんのことを知り、ある時古書店でこの本を見つけて買ったのであったが、内容が難しすぎて、すぐに本棚にしまい込んでいた。

 今回は、新型コロナウイルスと免疫という具体的な課題が出来たので、あらためて読み直すことになった。進歩の著しい免疫分野のことなので、内容がやや時代遅れになっているのではと著者に失礼なことを思ったりしたが、まずは基本的なことを知っておこうと、読み始めた。

 相変わらず難解ではあるが、読書100篇、繰り返すうちに次第に用語にも慣れてくるであろう。

 この本のずいぶん後の方に、気になっていた、若者と老人との違いを、インフルエンザウイルスへの感染を例にとり比較した文章があるので、まずそれを紹介すると、次のようであった。

 「冬の朝、同じバス停でバスを待っている青年と老人が、同じインフルエンザウイルスに曝されたとしよう。青年がインフルエンザウイルスに曝された場合、青年はインフルエンザにかかりにくいが、かかったとしても、定型的な一次免疫反応の経過をたどって、数日のうちに治癒してしまう。一時免疫反応というのは、はじめてこの抗原(インフルエンザウイルス)に出会った時の定型的な反応である。
 ウィルスが細胞内に入り込み自己複製を開始すると、まずインターフェロンの合成が始まり、ウィルスの増殖を抑えようとする。
 マクロファージが異常を察知して、IL1などの炎症性物質を出す。IL1は発熱物質なので、熱が出、体は汗をかく。ウィルスの粒子や蛋白はマクロファージに取り込まれ、消化された断片はクラスⅡ抗原に結合してヘルパーT細胞を刺激する。
 ヘルパーT細胞からは、B細胞やキラーT細胞を刺激したり、炎症を引き起こすインターロイキン群が生産される。
 ウィルスが感染した細胞では、ウィルスの構造蛋白がクラスⅠ抗原に結合して細胞の表面に提示される。それをキラ-細胞が認識、刺激を受ける。ウィルスを発見したB細胞も動員されるが、それはまだ、ウィルス中和能力の低いIgM抗体を遊離するばかりである。
 とにかくこうして起こった免疫系の大騒動によって、インフルエンザの症状はクライマックスに達する。
 しかし間もなく、B細胞はヘルパーT細胞の指令(その多くはインターロイキンの働きに帰せられる)を受けて、ようやく中和能力の高いIgG抗体を大量に分泌しはじめる。
 IgG抗体はウィルスに直接取り付き、他の細胞への感染性などの動きを抑えてしまう。これがウィルスの中和である。インターロイキンの影響下で、キラーT細胞はウィルス感染細胞を次々に殺してゆく。壊された細胞から飛び出したウィルスにはIgG抗体が待ちかまえて中和する。
 やがて炎症はおさまり、サプレッサーT細胞が、それ以上免疫反応が過剰にならないようにヘルパーT細胞の働きを抑え、反応は終息する。青年は、再び青空のもとを疾走し、病気の残骸を吹き飛ばすかのようにサッカーのボールを蹴る。」

 これが、若者がインフルエンザウイルスに感染し、治癒するまでの流れである。このところTVなどでよく取り上げられるようになったIgM抗体、IgG抗体が登場してきたが、そのほかにも多くの専門用語が出てきた。

 さて、次に青年と比較して、我々老人がインフルエンザウイルスに出会ったときの体の反応は次のようになるという。

 「老人のインフルエンザはいささか違う。それほど高い熱が出ないのに、全身がけだるい。初期の防衛反応であるインターフェロンやIL1の生産が悪く、ウィルスは広範に広がる。
 T細胞の反応もおかしく、インターロイキンのいくつかは過剰に作られるが、あるものはあまり作られない。そのために片寄った炎症が肺などに現われ、通常は問題にならないような細菌が増殖して肺炎を起こしたりする。
 B細胞は、ウィルスを中和できるような抗体をあまり作らない。病気は長引き、肺炎などの二次的な合併症を起こすようになり、それはしばしば致命的である。
 インフルエンザが治ったとしても、血液中のガンマグロブリンの濃度は異常に高く、炎症性のインターロイキンもなかなか消失しない。ときにはひそんでいた免疫異常、たとえば自己組織を破壊するような抗体による障害が、風邪を契機に出現することもある。・・・ 」

 なんとも悲しくなる老化に伴う免疫反応の変化であるが、この二つの話の中に登場した専門用語を並べると、次のようである。

 インターフェロン、マクロファージ、IL1、クラスⅡ抗原、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞、クラスⅠ抗原、中和抗体、IgM抗体、IgG抗体、インターロイキン、ガンマグロブリン、サプレッサーT細胞 などである。

 それぞれの役割は書かれているが、さっと読んだだけではよくわからない。これらの物質をもう少し整理し、理解しなければならないようである。

 ところで、上の話は若者にとっては、致命的でない季節性インフルエンザの場合の話であるが、老人にはとても危険なものであることがわかる。

 今、世界中を混乱に陥れている新型コロナウイルスの場合は、季節性インフルエンザに比べると、より致死率が高いことが分かっているが、それでもこれまでの日本におけるデータを見ると若者が死亡するほど悪性のものではない。

 厚労省のホームページで公開されている「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(令和2年10月21日18時時点)」には3種類のデータが示されている。

 この中の、年齢(階級)別のデータは次のようである。

年齢階級別陽性者数(厚労省HPより 2020.10.21付情報)

年齢階級別死亡数(厚労省HPより 2020.10.21付情報)

 致死率(死亡率)については次表のようにまとめられている。


 
 30代以下の年齢層をみると、累計陽性者数では全体の52.3%を占めているが累計死亡者数での割合は0.48%であり、年齢別に見た累計の死亡者数の累計陽性者数に対する割合は実質ほぼゼロと、新型コロナウイルスは若者にとってはそれほど恐れる必要のないものであることがわかる。他方、インフルエンザウイルス同様、新型コロナウイルス感染も老人にはとても危険なものである。

 こうしたことを知ったうえで、改めて先ほどの「若者と老人」のストーリーに出てきた専門用語の意味するところと、それらが体内でどのようにして作られているか、またそれらの働き、相互作用について、確認していこうと思う。

 実は、この1993年発行の「免疫の意味論」では用いられていない表現であるが、最近の免疫についての解説を見ていると、まず「自然免疫」と「獲得免疫」についての説明から始まることが多い。また、これ以外にも、例えば「インターフェロン」という用語が登場するなど、最近の解説とは表現の異なる個所もいくつか見られる。そこで、ここでは「免疫の意味論」から離れて、先ずこの「自然免疫」と「獲得免疫」がどのように解説されているかを見ていく。そのうえで、改めて先の若者と老人の話を読み直すとより理解が深まるはずである。 

 我々に備わるこの2種類の免疫にかかわる細胞(白血球)は次の様にまとめられる。

 「自然免疫は」細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入した時に真っ先にこれらを排除するために働くもので、下表にある、「マクロファージ」、「樹状細胞」がいち早く異物を食べて分解・消化する。「マクロファージ」からはサイトカインが放出されこれ、これを受けて「好中球」が参加し、異物を食べる。ウイルスなどを食べた好中球は死んで膿となる。ウイルスが細胞内に侵入した場合には「NK細胞」がその細胞ごと食べてしまうことで、感染を防止する。
 
自然免疫と獲得免疫で働く細胞の種類

 自然免疫の力だけで対処しきれない場合には、次の段階のより強力な「獲得免疫」システムが働く。上で青年がインフルエンザに感染した話を紹介したが、ここでは自然免疫については触れられておらず、獲得免疫の話から始まっていた。もう一度見ておくと、次のようであった。

 「青年がインフルエンザウイルスに曝された場合、青年はインフルエンザにかかりにくいが、かかったとしても、定型的な一次免疫反応の経過をたどって、数日のうちに治癒してしまう。
 一次免疫反応というのは、はじめてこの抗原(インフルエンザウイルス)に出会った時の定型的な反応である。
 ウィルスが細胞内に入り込み自己複製を開始すると、まずインターフェロンの合成が始まり、ウィルスの増殖を抑えようとする。・・・」

 自然免疫だけでウイルスを退治できた場合には、そもそもインフルエンザにかかったことにはならないので、その段階の話は省略されているのかと思う。
 
 ウイルスが我々の体細胞に侵入し、そこで増殖を始めると感染したことになるが、そうなると「獲得免疫」システムが働き始める。その働きを見ていこうと思う。

 表で、樹状細胞が自然免疫と獲得免疫の両方に上げられているが、樹状細胞はウイルスを食べて排除するだけではなく、別の重要な役割を担っている。樹状細胞がウイルスなどを食べて分解すると、ウイルスの一部を細胞の外に出して、ウイルスの情報を伝達する役割である。これは「抗原提示」と呼ばれる働きである。

 樹状細胞から抗原提示という形で情報を受けて2つのシステムが動き出す。ヘルパーT細胞と細胞障害性T細胞(キラーT細胞)の働きである。

 キラーT細胞が発見されたウイルスについての情報を受け、更に同様に情報を受け取ったヘルパーT細胞からの刺激を受けると増殖を始め、このウイルスの侵入を受けた細胞をまるごと食べてしまう。これは表中の細胞性免疫と呼ばれるものである。

 ヘルパーT細胞は、体内に100万種類以上はあるとされるが、その中のただ1種類だけが、提示された抗原に対応するものであり、この特定のヘルパーT細胞に情報が伝わると、ヘルパーT細胞は増殖を始め、この情報はさらにインターロイキンを通じてB細胞に伝達される。

 B細胞もまた表面に出ている受容体の構造が僅かに異なる多くのものがあるが、その中で1種類だけがヘルパーT細胞からのウイルスの情報を受け取り、活性化され抗体産生細胞(形質細胞)へと変化する。
 B細胞はその表面に現れている受容体構造と同じ構造を持つ抗体を産生して細胞の外に分泌する。

 こうして作り出された抗体はIgG抗体と呼ばれるもので、あらかじめヘルパーT細胞が確認した情報に基づいて作られるので、抗原であるウイルスと反応することが出来るが、これは抗原抗体反応と呼ばれる、選ばれたB細胞由来の抗体だけが示す特異的なものである。

 抗体と反応した抗原(ウイルス)は、体細胞への侵入ができなくなると共に、マクロファージの食作用を促進し、食べられてしまう。こうしてウイルスは体内から排除されていき、症状は治癒に向かう。また、サプレッサーT細胞からの信号により、B細胞は抗体産生を停止し、過剰な抗体産生を行うことはない。

 増殖していたB細胞は、次第に死滅して数を減らしていくが、完全に消えることはなく一部は長期間(30年以上)残り、免疫記憶細胞と呼ばれている。
 ヘルパーT細胞、キラーT細胞も同様に今回感染したウイルスを記憶する。

 この免疫記憶細胞こそが、本来の免疫作用といえるもので、次に同じ種類のウイルスに感染した時に、IgG抗体を短時間のうちに、多量に産生するなどして、ウイルスに立ち向かうというものである。

 ここまでの獲得免疫システムの働きをまとめて図示すると次のようである。最近の解説と、著書から引用した、若者と老人の話とでは、登場する用語やその役割に若干の違いがみられるが、これはこの30年ほどの間に理解が進んだことを反映しているものと思う。


獲得免疫システムの働き

 こうした複雑な一連の免疫システムの働きは、健康な若者ではスムーズに進むが、老人ではさまざまな障害が起きているということである。一体何が起きているのか。

 再び本「免疫の意味論」の説明を見ていく。実はT細胞と呼ばれる複数種のリンパ球は胸腺(Thymus)で「自己」と「非自己」とを区別するという重要な教育(これについては改めてまとめてみたい)を受け、ここから供給されているので、T細胞という名前が付けられたのであるが、その胸腺がここに登場する。

 「胸腺という臓器について昔から知られていたことは、人間でも十歳代を最高にして胸腺が急速に縮小していくことである。病気で死亡した成人の解剖報告では、胸腺は脂肪に置き換えられて非常に小さい。・・・
 ごく最近のユーゴスラヴィアでの再測定の結果では、胸腺1グラムあたりのリンパ球の数は、生まれて間もなくが最も多く十億個以上であるが、四十歳代ではその百分の1の1千万個に過ぎない。胸腺の重量がそのころは十分の1以下になっているから、四十歳代の人の胸腺にいるリンパ球の総数は、小児の千分の1以下になっているわけである。ということは、胸腺で教育されて末端の現場に送られるT細胞の数も千分の1に減少していることになる。
 胸腺の退縮はますます進行し、七十歳~八十歳にもなるとほとんどが脂肪に置き換わって、痕跡程度となる。(しかし)、決して消失することはなく、リンパ球を作り出している。
 胸腺が退縮するのにやや遅れて、T細胞系の免疫機能の低下が起こる。T細胞に依存した抗体の生産能力、癌細胞などを殺すキラーT細胞機能、ヘルパーT細胞機能などが、だんだんと低下する。(ウイルスなどの)「非自己」に対するさまざまな反応は、遅かれ早かれ低下の一途をたどるのである。
 ところが、「非自己」に対する抗体の生産能力が低くなるころから、「自己」のさまざまな成分、たとえば「自己」の細胞の核と反応するような抗体が作られ始める。・・・目的にかなった抗体を作り出す能力が低下したにも拘らず、血清中の免疫グロブリンの量は年齢とともに上昇する。・・・つまり、ここで反応しているB細胞は、基本的に無意味か、あるいは「自己」と反応するような好ましくない免疫グロブリンを作っているのである。インフルエンザに感染したとき、うまく中和抗体を作ることができなかったのはこのためである。( )内は筆者追記」
 
 とこのような具合である。免疫反応の中核である獲得免疫の中で重要な役割を果たしているT細胞群の量と機能の低下が劇的と言ってもいいくらい老化と共に進んでいるのである。高齢者の死亡が多くなるのはこうした免疫システムの崩壊が起きていることによるのである。

 各国の新型コロナ対策の中心課題は、いかにして死者を出さないようにするかである。日本でも2月下旬に真っ先に採られた、小中高校の休校措置は、子供たちが感染し、これを致死率の高い同居老人のいる家庭に持ち帰ることを防ぐためのものであり、それに続いて、病院や老人ホームにいる老人との面会が制限されたことも、同様の目的であったことが改めて理解される。

 前回紹介した「集団免疫」政策を採ったスウェーデンでも、休校措置は取られなかったが、高齢者施設への訪問は禁止されていた。体力のある若者が中心になり免疫を獲得することで、高齢者・老人への感染拡大を防ぎながら、国全体として獲得免疫保有者を増やす戦略がみえる。

 日本などアジア・オーストラリアの低い感染率と死亡率を説明するいくつかの説も出てきており、治療薬とワクチンの準備も進んでいる。

 今年初めにはその正体がわからず、恐怖感が支配した新型コロナウイルスへの対応であったが、その実態が次第に明らかになってきている。むやみに恐れることなく、科学的に正しい対策を採り、全体としては感染急拡大を抑えながら、医療崩壊を防ぐことで高齢者を守り、経済崩壊を防ぐことで若者を助けるといった対応が世界中で奏効することを期待したい。
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