まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

哲学カフェ@しぞ~か創設記念講演

2013-07-01 14:18:31 | 哲学・倫理学ファック
一昨日は静岡で講演をしてきました。
「てつがくカフェ@ふくしま特別編3」 に来てくれた静岡大学の竹之内さんたちが、
この8月より 「哲学カフェ@しぞ~か」 を始めることになったので、
それに先立って 「てつがくカフェ@ふくしま」 の活動について講演するよう依頼されたのです。
その名も 「哲学カフェ@しぞ~か創設記念講演」、
演題は 「福島で哲学するということ ―てつがくカフェ@ふくしまの取り組みから―」 です。
特別編3のときにすでに頼まれていましたし、
講演会の予定が決まったのもけっこう早い段階だったので、
何を話そうかなあというのは手帳にマインドマップを書いたりしながらずっと考えてはいました。
しかしながら例の通りキリギリスの私ですから、
けっきょく前々日になるまで配付資料をまったく1ミクロンも作っていませんでした。
しかも前日は午前中は共通領域の 「倫理学」 の授業
午後は附属中学校の公開があり指導助言者として分科会に参加しなければなりませんでしたし、
そのあと若手墾の飲み会が予定されていましたので、準備作業を行うことができません。
したがって前々日の1日だけで (正確には終電までの5時間で) 準備をしなければならないという、
極限的な追い込まれ状態になってしまいました。
もはや 「キリギリス」 を超えて 「ギリギリス」 と改名したほうがいいかもしれません。
しかし、ギリギリスはやるときはやるんですねぇ。
追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮するタイプです。
その限られた時間のなかで8ページもののレジュメを用意し、
A3両面印刷で50部プリントして丁合までしっかり終わらせたのでした。
フッフッフッ、どんなもんだい

内容は以下のような構成です。
1.哲学カフェとは何か?
2.「てつがくカフェ@ふくしま」 へ
3.「てつがくカフェ@ふくしま」 の工夫
4.「てつがくカフェ@ふくしま」 の歩み
5.福島の声

1では、「てつがくカフェ@せんだい」 の西村高宏さんによる説明を引用しながら、
フランス・パリで哲学カフェが生まれた経緯や、
哲学カフェがどういうものか説明していきました。
2では、哲学カフェが大阪大学臨床哲学講座の尽力によって日本に輸入され、
2010年5月には仙台に哲学カフェが誕生し、
純ちゃんが 「@せんだい」 でファシリテーターを務めたり、
西村さんに 「地歴・公民学習研究会」 で講演していただいたりしたことを経て、
いよいよ福島でも2011年3月から 「@ふくしま」 を始めることになったこと、
しかしそれが東日本大震災ならびに原発事故のせいで延期になってしまったこと、
そして、苦悩の果てに2011年5月に再スタートすることになったという、
「てつがくカフェ@ふくしま」 創設までの歴史を説明しました。
その上で、「〈てつがくカフェ@ふくしま〉 設立趣意書」 や、
「てつがくカフェ@ふくしまの進め方」 などの内容を詳しく解説することによって、
福島で哲学する場をどのように築き上げていったかを説明しました。

ここまででレジュメ3ページ分、ほとんど引用ですからサクサクと作成できました。
3では、正統な阪大の哲学カフェの伝統に反しているかもしれないけれど、
「@ふくしま」 としてこだわってやってきた工夫点を6つ挙げてみました。
(1)ブログによる広報活動
(2)ホワイトボードにマインドマップ形式での当日の対話の記録
(3)てつカフェ終了後に毎回必ず開催されるシンポジウム (=饗宴、「二次会」)
(4)ブログ上で当日の対話内容を公開報告
(5)ブログのコメント欄ならびにメーリングリストによる議論の継続
(6)会場に合わせた開催形態
この部分は書き下ろしになりますが、
ドカーンとホワイトボードに書かれたマインドマップの画像を取り込んだりして、
実際に書いた分量はほんのちょっとにもかかわらず、レジュメ1ページ分になりました。
(2に関して言うと、そもそもカフェにホワイトボードなんてあるわけないのだから、
対話内容を記録して可視化するというのは哲学カフェにとっては邪道かもしれませんが、
これがあるおかげで(4)の純ちゃんによる 「てつカフェのまとめ」 も可能になるわけで、
毎回の哲学対話がその場かぎりで消え去ってしまうのではなく、
純ちゃんによる再構成という形でではありますが、
これまでの 「てつカフェ」 の全記録が残っているということは、
他所の哲カフェに比べて 「@ふくしま」 が誇るべき貴重な財産だと思っています。
詳細なまとめを迅速にアップしてくれている純ちゃんには改めて感謝申しあげたいと思います。

次に4では、「@ふくしま」 の歩みとしてこれまでの全回の開催日とテーマの一覧を提示しました。
これはちょっと前からエクセルファイルを作っておいたので、それを貼り付けるだけですみました。
もう2年も続いているイベントですので、全26回、ずらっと並べてみると圧巻です。
これは今後のテーマを考えるためにも貴重なデータですので、
そのうち 「てつがくカフェ@ふくしま」 のブログのほうに掲載しておこうと思います。
それにしても、飽きっぽくてキリギリスのわれわれがよくこれだけ続けてこられたものです。
こうして並べてみると、直接、震災・原発事故関係の問題を取り上げたのはたった8回ですが、
それ以外の一般的な哲学的・倫理学的テーマのときにも、この話は出てきましたので、
まあこれぐらいでちょうどよかったのかもしれません。
これもレジュメ1ページ分です。

最後の5のパートにおいては、第1回のてつカフェならびに3回の特別編のまとめ () から、
私なりに重要と思える部分を抜粋して掲載し、「福島の声」 として紹介させていただきました。
これも今回こうやって並べて読み返してみると、
時の流れとともに皆さんの議論の矛先がどんどん変わっていっていたことがわかります。
3.11直後は言語化することそのものがためらわれていたのに比して、
半年経った時点では 「温度差」 や 「負い目」 など、
如実に表れつつあったネガティブな事象を名指すことが可能になってきており、
1年後には、あの出来事を踏まえて新しい変化を生み出していく希望が仄見えてきていました。
ところが2年後になると衆院選での自民党の大躍進も踏まえて、
あの出来事をあたかも何もなかったことのようにしようという空気が広がってきており、
福島の多くの人々は「犬死」 や 「風化」 というような、
それまで以上の絶望と孤立感に苛まれるようになってきていることがわかります。
これがレジュメ3ページ分。
以上合わせて全8ページ、なんだ自分では全然書いてないじゃないか。
だからほんの5時間くらいで完成させることができたんだな。
しかし自画自賛になってしまいますが、
てつがくカフェ@ふくしまのこれまでの歩みを振り返るのに、
なかなかいい資料になっているのではないでしょうか。
私としても、これまではただがむしゃらに突っ走ってきましたが、
この段階でこうして振り返ることができてよかったです。
一般市民どうしが対等な立場で哲学的対話を交わすという文化を、
社会を一挙に変えてしまえるほどに大きく花開かせることにはまだ成功していませんが、
細々とではあれ確実に少しずつ定着させることはできているのではないでしょうか。
その私たちの蒔いた 〈てつがく〉 の種が、
遠く静岡にまで伝播していったことを心から嬉しく思いますとエールを送り、講演を終えました。

なんとこの講演会を聞きに来てくださった方々は50名オーバー。
すでに私たち 「@ふくしま」 の特別編で打ち立てた最高記録を抜かれてしまっています。
しぞ~かの地にはどれほど哲学的対話に飢えている方がいらっしゃるのでしょうか。
静岡大学の全教職員、全学生宛て一斉メールを使って告知したとのことで、
たしかに学生や院生の方々が数多く参加してくださっていましたが、
しかし、それと同数以上の一般市民の方々もたくさん来てくださっていました。
60分間の講演が終了した後に20分も質疑応答の時間が取られていました。
上記のような話でそもそも質問なんて出ないんではないかと予想していましたがとんでもない、
皆さんものすごく熱心で、哲学は自然科学と違いどうやって真偽を決定するのかとか、
哲学における専門性とは何かとか、
地域性が哲学的対話のありように影響を及ぼすことはあるのかとか、
福島の人々は今何を思い、何を語ることができ、何を語ることができないでいるのかとか、
この運動が原発を止めるのにはたして力を持ちうるのか等々、
私が何度も答えに窮してしまうような、鋭く核心を衝いた質問を数多く頂戴しました。
20分の予定が40分近く質疑応答のやりとりをして、最後は本当に疲れ切ってしまいました。

講演会終了後には 「交流会 (=饗宴、2次会)」 の場を設けていただき、
20名近くの参加者を得て盛大に打ち上げとなりました。
たぶんその場に参加してくださった方々がコアなメンバーとなって、「哲学カフェ@しぞ~か」 は、
「@ふくしま」 よりもはるかに大きな規模で運営されていくことになるのでしょう。
8月より2ヶ月に1回のペースで開催されるとのことですが、
御盛会を心よりお祈り申し上げたいと思います。
最後は竹之内さん行きつけのカラオケスナックで2時まで、
歌詞に託してそれぞれの熱い人生哲学を披露し合ったのでした。
「哲学カフェ@しぞ~か」 の盛況ぶりを確認するためにもまた近いうちこの地を訪れたいと思います。

P.S.
ちなみに 「@しぞ~か」 の余韻も醒めやらぬまま、
福島のワインバーで会合を開いたわれわれ 「@ふくしま」 の世話人2名は、
酔った頭でほんの数秒話し合い、第1回 「@しぞ~か」 のテーマ 「自然な死とは何か?」 をパクって、
次回のテーマを 「脳死は人の死か?」 に決めたのでした。
「@しぞ~か」 に負けない熱い議論が交わされることを期待しています。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿