暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

コロナ禍の「文月の朝茶事」・・・(1)無我

2020年07月29日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

    (本席の床に「無我」のお軸を掛けました)

 

コロナウイルスの第2波(?)が心配される連休中の7月24日、「文月の朝茶事」にお客さまをお招きしました。

早朝6時の席入りです。

3時半に起床。しっかり目覚め、しっかり腹ごしらえをしなくては頭も体も働かないので、先ずは珈琲を飲み、朝食をとりました。

湯を沸かし、炭火を熾し、火入の灰をあたため、懐石の準備をしていると早や5時近くになり、半東Kさんが来る時間です。あわてて2階へ上がり着物に着替えました。着物は薄紫色の絽の無地紋付、帯は絽、落ち着いたローズ色に桔梗の秋草文様です。

Kさんに煙草盆の火入の灰形を調えることをお願いしていました。

ちらっと様子を見ると、自信なさそうに「先生・・・気に入らないようでしたらやり直してくださいね」

「いいえ、そんな時間はないし、上手でも下手でも今日はKさんに火入はやってもらうつもりです」と言うと、やっと覚悟が決まったようで真剣な顔に変わりました。

 

 

  (待合のテーブル席と煙草盆、火入は青磁の香炉です)

出来上がった火入(上出来!です)を煙草盆に入れ、待合と腰掛待合へ置いてから、「在釜」の札を掛けてもらったのは5時40分頃でしょうか。

まもなく、喚鐘が鳴らされ、お客さまが到着したようです。上がり框の棚にアルコール消毒液と喚鐘を置き、手を消毒後に喚鐘を1つ衝いてから待合へお入りいただきました。

お客さまは、お正客N氏、次客M氏、三客AIさま、詰Uさまの4人です。全員が社中で近くにお住まいですが、6時の席入りに間に合うよう車です。

自家製・梅ジュースを炭酸で割り、しっかり冷やしたものをKさんがお出しし、腰掛待合へご案内です。汲出しをお出しする頃に朝鮮風炉に下火を入れ、釜を掛けました。

 

 (山芋の蔓が垂れ下がっています・・・)

 

いよいよ迎え付けです。コロナ禍なので、蹲を使うか否かはお客さまにお任せしましたが、亭主はいつも通リ蹲を調え、心身を清めて(口は濯がず)から迎え付けです。

明け方まで雨が降っていたので、庭の木々や葉っぱに宿る水滴がキラキラ輝き、緑の露地はしっとりと気持ちよく、伸びた山芋の蔓は切らずにそのままにしておきました。

清々しい露地でお客さまと無言のご挨拶を交わしました。

水屋へ戻ると、すぐに「般若心経」のテープを流します。

京都で3年間暮らした時、7月中旬~8月に寺院では早朝座禅会や暁天講座が開催され、参加するのがとても楽しみでした。

朝早く出かけて経を唱え、講話を聴き、座禅の瞑想や朝粥のお接待が懐かしく思い出され、「文月の朝茶事」はそのイメージで・・・と思ったのです。

 

    (「観世音菩薩」  森下隆子作)

 

待合の掛物は観世音菩薩、10年ほど前の「蓮見の朝茶事」の時に布絵作家・森下隆子さんに作っていただいた色紙です。

本席の床のお軸は「無我」、周藤苔仙師の御筆で、味わい深く大好きな書です。

「無我」は、般若心経の重要な教え(真理)を説いています。

無我とは、物事や人は単独で存在することができず、いろいろなものが関連して支え合って成り立っています。従って、物事や人の関係に注意を傾け、そのことに感謝する心が大切である・・・と。

コロナ禍にもかかわらず朝茶事に馳せ参じてくださったお客様、

皆で支え合って心を一にして、早朝のひと時を茶事に没頭できる有難さ・・・「神仏のご加護」や「生きている喜び」を感じながら、これぞ「無我」ではないかしら?・・・と感謝しています。(合掌)

 

   コロナ禍の「文月の朝茶事」・・・(2)へ続く   (3)へ    (4)へ

 

 


コロナウイルスとお茶の葛藤

2020年07月26日 | 暁庵の裏千家茶道教室

  草が高く生い茂った散歩道

 (毎日雨が続き、洗濯ものを出したり入れたり・・・あぁ~早く青空が見たい!)

 

播磨在住の茶友Kさんから電話がありました。

「茶会をいつから再開したらよいか、再開するとしたらどのようなことに注意したらよいか、

 暁庵さんが稽古や茶事をするときのコロナウイルスへの対応や考え方を伺いたい・・・」と。

いつも心ときめく素敵な茶会をしてくださるKさん、

親しく心を割ってお話できる茶友なので、私も改めて考えてみました。

丁度、7月24日の「文月の朝茶事」や東京教室のお稽古があり、まさにコロナウイルスとお茶との葛藤の最中でした。

Kさんといろいろ意見を交わしながら、自分の考えや対応の仕方を確認できたような気がしています(電話をアリガトウ!)。

 

 (お一人で葉蓋&洗い茶巾の稽古中・・・マスク使用です)

 

稽古を再開したのは6月、緊急事態宣言が解除になってからでした。

社中の方それぞれご事情があると思い、希望者ということにしています。

それでも敵・コロナウイルスの正体は目に見えないので、恐る恐る手探りで始めました。

主に次のような対策をしています。

玄関で手をアルコール消毒していただく、控室の洋間にもアルコール消毒液と次亜塩素酸消毒液が置いてあり、適宜使用していただく。

マスクを使用していただく。

三密(密集、密閉、密接)を避けて、お稽古は同時に2人(多くても3人まで)とし、広間八畳の換気を気を付けました。

具体的には、暑くなければ二方の窓と茶道口を開け放す。暑い時は窓を開け、同時に冷房もかけるなど・・・温度と換気に気を配りました。これがけっこう大変です。熱中症や温度などの暑さ対策が大変なこともあり、8月は夏休みとしました。

濃茶や薄茶は各服点、茶碗も茶巾もそのたびに変えてもらいます。使った茶巾は洗わず専用茶巾入れのタッパーへ。

茶碗は別の物を使用、使った茶碗は洗ってもらいますが、後で洗剤&湯で洗い直します。茶巾は次亜塩素酸で殺菌してから石鹸で洗い、乾いてからアイロン掛けします。

お菓子もケースに入ったまま縁高に入れ、干菓子は包んであるものがベストです。

 

  (マスクをして茶箱・卯の花点ての稽古中です)

 

でも、一番大切なことは、お茶の稽古や茶事は社中だけの少人数に限っていることだと思います。

社中といっても小さな茶道教室なので、できることかもしれませんが・・・。

そして、私自身も社中の方にコロナウイルスを媒介したくないので、緊急事態宣言が出た時の自粛状態を今も緊張感を持って保つように心がけています。

4月以来、バスにも電車にも乗っていませんし、車で近くのスーパーへ週2回の買い出し以外は、外出は散歩だけの生活です。(東京教室のお稽古は当分お休みをお願いしました)

慣れてしまうと特に不自由もなく、自主稽古したり、雑多な本を読んだり、お茶事に備えて掃除や庭仕事に精出したり、懐石料理を試作したり、結構忙しく過ごしています。

お茶のお付き合いを当分の間(いつまで・・・と見当がつきませんが)社中の方だけにしているのも、お互いの信頼関係に基づいているからです。

万が一、コロナウイルス感染症に罹ったとしても感染経路は追えそうですし、社中からの感染でしたらそれなりの覚悟はできています。

 

 

・・・・そんなことで、7月24日に社中の方をお招きして「文月の朝茶事」をしました。 

まだ終わったばかりでして、余韻に浸ったり、クールダウンしたり・・・もう少し時間が必要ですが、コロナウイルス禍の朝茶事のことを書き留めておきたいと思っています。  

無事に朝茶事が出来たことに今はただ感謝です! 

 

 

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文月の稽古だより(2020年)

2020年07月20日 | 暁庵の裏千家茶道教室

(煩悩を洗い流す「 直下三千丈」のお軸

 ・・・1週間、雨が滝のように続きました)

 

文月はコロナ禍と記録的な長雨にもかかわらず、皆さま、熱心にいろいろ稽古しました。

7月14日(火曜日)の立礼の稽古では、AIさんが初炭と色紙点、Uさんが立礼の濃茶と薄茶です。文月の朝茶事で半東を担当しているKさんも合流し、取り次ぎを稽古しました。

色紙点に使う御所籠一式が我が家にはないのですが、AIさんがステキな御所籠をお持ち出しです・・・しっかし、10年前に数回やっただけの色紙点をご指導するのはとても大変・・・でした(大汗 )。

色紙点では茶巾2枚を茶巾箱に入れ、各服点をしていただきました。濃茶と薄茶もそれぞれ2人分各服点です。

毎回、濃茶や薄茶の各服点をしているので、スムースにできるようになりました。当分はこの形式が続くと思いますので、それにしっかり慣れることも必要と思っています。

昨年、12月に鎌倉・瑞泉寺で行われた茶会(小間でたしか6人の客)では濃茶が各服点で出されました。遠州茶道宗家の席主さまで、「遠州茶道宗家では濃茶はいつも各服点です。三客さまからは水屋でお点てしてお持ちいたします」

水屋から濃茶を席中に運び出す時に、とてもステキなご趣向があったのですが既におぼろです。きちんとブログに各服点を詳しく書き留めるべきだった・・・と後悔しています。

 

(茶室に点茶盤と喫架を並べて、立礼席の客や半東の動きを体験してもらいました)

 

7月16日(木曜日)、午前10時にSさん、13時半にAさんがいらして、茶箱・卯の花点前をしました。卯の花は茶箱の平点前と称されています。拝見ありで2回、しっかり基本点前をご指導しました。

8月は夏休みなので、9月になったら茶箱の卯の花と花点前を稽古できたら・・・と思っています。何回か繰り返すことで、茶箱の所作が身に付いてくるのが楽しみです。

 

   (茶箱の卯之花で、薄茶一服)

   (こちらは茶箱の雪点前の点前座)

 

7月18日(土)はコロナ禍以来初めての奥伝の稽古日でした。

この日も午前中は雨、「今日で東京は19日雨が続いた・・・」とテレビで叫んでいます。

なるべく多くの方が一緒に奥伝の稽古ができたら、見学し刺激し合えたら・・・と、今年から奥伝の稽古日を月1回設けています。今回は三密を避けて3人とし、科目は真之炭手前と行之行台子です。

直前にお一人が腰を痛めて欠席され(・・・軽いことを祈ります)、N氏とM氏の男性2人がいらしゃいました。

N氏の真之炭手前から始めました。9月に真之行台子の許状式があり、その時に真之炭手前の披露をお願いしています。

奥伝の中でも真之炭手前(風炉)は暁庵にとっても久しぶり、とても新鮮で良い勉強になりました。

次いでM氏の行之行台子点前です。

行之行台子の菓子は5種ですが、その日は3種を縁高に入れました。「撫子」の練り切り、「令和」と名付けられた梅餡の薯蕷饅頭、もう1種は到来物のサクランボ。

天目茶碗の濃茶は正客のN氏が頂き、水屋から濃茶茶碗(2碗)を持ち出して、暁庵と亭主の濃茶を各服で練っていただきました。M氏が3碗目に取り掛かろうとすると、

「代わって濃茶をお点てしましょう。どうぞ、こちらでお菓子をゆっくり召し上がってください」とN氏から声が掛かりました。

お菓子と濃茶を頂いてからM氏は点前座に戻り、客付きへ廻って問答が始まりました。流れが中断されたの心配でしたが、何事もなかったように落ち着いてスムースでした。

難しい行之行台子点前ですが、東京教室のS先生の懇切丁寧なご指導のお陰で、頭の中でだいぶ内容が整理され、判りやすく指導できるようになった気がしています。それでも長いので、うっかり見過ごしたりすることもありますが・・・とにかく、根気よく一緒に頑張りましょう。

 

(大好きな姫檜扇水仙・・・ご近所のYさまからどっさり届きました。鮮やかなオレンジ色の花に元気をもらいました。)

 

たった1週間の内の3日のお稽古でしたが、毎回設え(立礼、瓶掛けで茶箱、行台子)とお点前(立礼の初炭、濃茶、薄茶、茶箱各種、真之炭、行之行台子)ががらりと変わり、切り替えが大変でした・・・とほほ 疲れたわ。

 

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手作りマスクが届きました

2020年07月16日 | 暮らし

(横浜三渓園では今年も早朝観蓮会が7/18~8/2の土・日・祝日に開かれます)

 

 

静岡県大井川の近くに住む親友Mさんから手作りマスクが届きました。

Mさんは薬剤師の仕事を続けながら米や野菜を作り、布絵の制作を愉しんでいます。

 

2週間前、Mさんと電話で近況報告をしました。

「お稽古を開始したけれど、マスクをしたりアルコール消毒したり、手探りでやっているの」

「着物に合わせてマスクを変えると素敵じゃない?」

「そうね。考えただけで楽しそう・・・貴女が作ってくれるといいなぁ~

 着物に合いそうな裂地を持っていると思うので・・・」

(注、布絵作家でもあるMさんは多種類の布や着物裂を蒐集しています)

おねだりできるのも親友だからこそ、いつも甘えています。

 

 

送られた封筒には6枚の和風の布マスクと抗菌シート、それに手紙が添えられていました。

 先日はお電話ありがとうございました。

  横浜の人たちのコロナの状況が少し判りました。

  私も9月の展覧会中止の連絡がありました。

  連日の雨で布マスク作りにいそしんでいます。

  お使い下されば幸いです。    7月7日  Mより

 

ありがとうございます!! 

手持ちの簡易型マスクが残り少なくなっていたので、手作りマスクのプレゼントは大助かりでした。早速、なでしこ柄のマスクをお稽古でつけています。

 

 (ユニークな「茶」の色紙・・・ときどき掛けて楽しんでいます)

 

待合に掛けている色紙は10数年前に親友Mさんこと布絵作家・森下隆子さんに作ってもらったものがほとんどです。

今でも大事に大事に使わせていただいています。

9月に出品予定だった「神奈川原展」が中止になったそうで、森下隆子さんの新作を当分見れないのがとても残念です。

親友の作品は、丹精込めて育てている野菜、近くの漁港で水揚げされる魚、暮らしを彩る椿や草花など、身近なものを題材にしています。

人柄もそうですが優しく温かみがあり、そんな中にも逞しい生命力を感じさせる布絵です。

自分の感性で布を選び、布の個性を生かしながら絵に仕上げていく才能は素晴らしく、とてもうらやましく思いながら、一生懸命応援しています。

コロナウイルスが鎮静したら、またふたりで清川村の別所の湯へ出掛けたいものです・・・。

 

    (「紅い椿」 森下隆子  神奈川原展2015年に出品された大作です)

 

 


雨降りの自主稽古・・・Part Ⅱ

2020年07月14日 | 暁庵の裏千家茶道教室

        (七夕のお軸を床に掛けました)

(つづき)

「七夕のブログを書きたいなあ~」「朝茶事のご案内の手紙を・・・」と思いながら落ち着かず、躊躇するうちに日が過ぎていきました。

1つは、コロナウイルスの感染者が東京近辺(我が神奈川県でも)で増加傾向にあるためです。

緊急事態宣言が解除され、強制自粛からwith コロナウイルスの方向へ舵が取られたので当然のことかな・・・と思いながら、経過を注視しています。

それにアメリカ、ブラジル、スウェーデン、トルコなど感染者が急増しているニュースも気掛かりです(テレビの「オスマントルコ」を見ているので、急に親トルコ派になりました)。

もう1つは、九州豪雨の被害の甚大さに息を呑む思いで委縮しています。何日も降り続く雨・・・横浜でも降り続いていますが、降雨量がまるで違います。たった1週間で年間平均降雨量(1600ミリ)の半分に達したとか。

自然の猛威の凄さに圧倒され、「命を大事に早めに避難して!」と心の中で叫んでいました。

 

(七夕飾りをして、みんなで願い事を吊るしました・・・)

 

気を取り直して朝茶事のご案内の手紙を投函し、11日から自主稽古を再開しました。案内状を書くと、茶事のスイッチがパチンと入るのが不思議・・・。

寝坊助なので早起きをして体を慣らしておこうと、5時半に目覚ましをかけました(当日は4時前に起床の予定ですが・・・)。

起きたのは6時10分前、6時席入りなのでお客さまが到着する時刻です。

前日に朝茶事で使う茶道具を用意してあったので助かりました。

あわてて下火を熾し、湯を沸かし、初炭を稽古します。3回目なので途中で迷うこともなく、炭斗と香合も決まり、立礼にも身体が慣れてきてスムースに出来て一安心。

強いて言えば、朝茶事の初炭は風炉中拝見の後、薬缶を持ち出して釜に水を足し、濡れ茶巾で釜を清めます。後座の濃茶と薄茶で陶器の片口を使うので初炭も片口に統一した方がスマートかしら?・・・まだ決めていません。

懐石の時間になり、一休みしてゆっくり朝食を食べました。

 

   (凌霄花(ノウゼンカズラ)が真っ盛りです)

 

後入りの時間に合わせて、濃茶点前を始めます。各服点なので目分量で一人分(約4g)を茶杓で掬えること・・・がポイントでしょうか。

主茶碗で練ってツレに飲んでもらいました。

「濃茶だけれど飲んでくれますか? お菓子(青梅)もどうぞ」(・・・いつも薄茶ばかりです)

「これが濃茶? 濃茶って甘いんだね」(どうやら、美味しかったみたいでホッとします・・・)

続いて薄茶点前の稽古をし、薄茶も各服点なので次客様まで亭主が点て、三客様とお詰様は半東が水屋で点てて持ち出すことにしました。

これで茶事次第や半東との役割分担を確認できたので、あとは立礼の所作の稽古と懐石準備でしょうか。

・・・朝茶事にお客さまをお迎えする日がワクワクと待ち遠しくなってきました。 

 

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