暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

鷺草が一輪咲きました

2018年08月31日 | 暮らし


8月28日の朝、鷺草が一輪咲きました!

姫路のSさまから贈って頂いた鷺草です。
「市販の鷺草に比べて開花は一か月ほど遅い自生種ですので来月後半位から開花と思います」とメールに書かれていましたので、そろそろかしら? と。

この猛暑に枯らさぬよう、水遣りと見守りだけは頑張ってきましたが、咲くまで心配でした・・・。
これで一安心です。
鷺草の優雅な姿をカメラにおさめましたので、ご覧くださいまし。




  朝陽があたる玄関前に置いています

京都五山送り火の茶事 in 2018 (その4)

2018年08月25日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)



お客さまから後礼の手紙が届き、嬉しく何度も拝読しました。
いろいろ不手際があったのですが、優しくお心遣い頂き一座建立となりました。
皆さま、本当にありがとうございました!

6月のベランダ茶会に続いてご参席くださったHさまからのお便りがズシ~ンと心に響きました。
ご了解を得て掲載させていただきます。


虫の音も聞こえる昨今 皆様に於かれましては
ご清祥のこととお喜び申し上げます
秋の足音と行く夏を心に落し込むようなお時間を頂き感謝申し上げます

腰掛待合で布袋葵のそばに赤い姿がない淋しさを感じ
お庭の緑に秋の気配を感じ
天からの涙で 露地の灯りを窓越しに拝見することもでき
お心遣いに感激いたしました

ご亭主により凝縮された空間を皆様と共有させて頂き
あちらの世界との結界の中で生かせて頂いている気持ちになりました

ほの暗い茶室の中 般若心経を背負われ 
お点前をなさる暁庵様の覚悟のような姿は
お茶の神様に愛された方の修業の姿のようにも見えました

実は帰りの電車の中で
三十代を共に戦った友人の旅立ちをしりました
一期一会 今日を懸命に生きよう
一日一生 そんな思いが平成最後の夏に出会えた仏様からの啓示のようです

皆様と素晴らしいお時間をご相伴させていただきましたことを
本当に有難く感謝申し上げます
残暑の厳しき折 どうぞご自愛くださいませ  
                 かしこ   Hより



  腰掛待合を照らす予定だったペルシャ紋燭台(鈴木盛久工房)

茶事後に半東デビューのUさんからメールが届きました。

 
今回は貴重な経験をありがとうございました。
ご迷惑をおかけしたとは思いますが、とてもよい勉強になりました。
先生はさぞかしお疲れと思いますが、達成感でいっぱいでしょうか?
(ご主人様の活躍もすごかった!)
この経験をさせていただいたおかげで、次回のお茶事はまた、違った目で見ることができる気がします。
本当に感謝です。   Uより
 

 
ちょっぴり心配していたけれど良い経験になったようでヨカッタ!です。
Uさんとツレのお蔭で、今年も無事終えることができ、感無量です。
暑い中、お手伝い頂き、ありがとうございました!
昨年もですが、この茶事が終わると気が抜けるのか、夏風邪をひいて静かにしています。
また、元気にお目にかかりましょう。       暁庵


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京都五山送り火の茶事 in 2018 (その3)

2018年08月23日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

 「妙法」の「妙」の送り火 (「妙法」とは美しいお経、有難いお経という意味でしょうか)
  (2014年8月16日撮影)

(つづき)
後座の濃茶席は灯火だけにしました。
・・・本当は、7月に訪れた直島・家プロジェクトの「南寺」みたいに真っ暗闇から始めたいのですが、
そうもいかず、昨年点けていた床の照明を消すことだけはしました。
短罫、燭台(床)、手燭は2つです(お正客Rさまと暁庵が持って入りました)。
「南寺」の経験で、最初は見づらかったと思いますが、そのうち目が慣れてきて・・・・。
灯火のゆらぎに床壁に映る影、まるで仏さまが踊っているようでした。


茶道口に座り、膝前に濃茶茶碗を置きました。
「茶事は濃茶にあり」と言われますが、この緊張感のある時間が大好きで病み付きになっているのかもしれません?
気持を集中させ緊張感を持って襖を開けると、暗い闇の中、短罫のあかりが眩しいほどです。

点前座には利休好み丸卓(桐木地)に風格漂う備前焼水指を設えました。
この水指は社中N氏より恵贈されたものですが、箱が無く時代も作者もわかりません。
ですが、素朴な造形とともに土と火と灰が鬩ぎ合って生み出された景色が素晴らしく、使う度に惚れ込んでいます。


  床に般若心経を掛けました

点前座に座り、心中で般若心経を唱えながら四方捌きし
「美味しい濃茶をさしあげたい・・・」一心で濃茶を練りました。
「お服加減はいかがでしょうか?」
「大変美味しゅうございます」(いつもこの一言で安堵します・・・)

茶碗は白楽茶碗の「小鷺」、染谷英明造のお気に入りです。
昨年春の東博・茶の湯展で印象に残った赤楽茶碗「白鷺」(長次郎造、今日庵蔵)と、どこか雰囲気が似ている気がして「小鷺」と命名しました。
茶入は肩衝、丹波焼の石田陶春造、仕覆はブルーグレイの笹蔓緞子です。
茶杓は紫野・寛道作、銘「千代の友」でした。

つづき薄茶で、半東Uさんに薄茶を交代して頂きました。
半東Uさんはその日が半東デビューでした・・・きっときっと緊張していたと思います。
頃合いを見計らって席へ入りました。
丁度20時、京都では五山送り火の「大文字」が点火される時刻でした。
それから約5分おきに「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」が点火されていきます。

薄茶の主茶碗は御本三島、
替えは青磁、まだバリバリ(?)仕事をしていたウン十年前にソウルで購入した、思い出深い茶碗です。
薄茶器は秋草模様の化粧壷を使いました。

Uさんが心を込めてお点てした薄茶はきっと美味しかったことでしょう。
お代わりのリクエストが多いのを嬉しく聞いていました。
そうそう忘れないうちに・・・濃茶は松花の昔、薄茶は金輪、いずれも小山園詰です。


 「船形」がだんだん遠く、小さく、消えていって・・・

京都五山送り火もそろそろ終わりに近づく頃となりました。
京都に居るときは送り火を見に行くばかりで茶会など出来ませんでしたが、
京都を離れて別の形で五山送り火を味わい、懐かしむことができ感無量です。

あの世へ帰るお精霊さまを送る火が消えていく様はいつも物哀しく
「お母さん~まだ行かないで・・・」と心の中で話しかけています。
母が亡くなって8年は経っているのですが、まだメソメソしています。
・・・そんなお話をさせて頂きながら茶事も終わりとなりました。

五山送り火の名称に因むお道具や趣向をあちこちに仕掛け、最後にお尋ねしたところ、
お正客Rさまの計らいでお客さまお一人一つずつ回答して頂き、今年は大正解でした(昨年は少し難しかったみたいです)。

20時50分頃、お客さま方を名残惜しく半東Uさんとお見送りしました。  


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京都五山送り火の茶事 in 2018 (その2)

2018年08月22日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

 夢のような「船形」(西賀茂船山)・・・まるであの世へ帰って行くお精霊船のようです

(つづき)
お客さまお一人お一人と親しくご挨拶を交わし、初炭となりました。

夕去りの茶事が好きです・・・
できたら懐石はなるべく明るい所で目からも味わって頂きたいと思っています。
また、夕暮れ時に障子の色が刻々と変化していく様子、中立で腰掛待合や露地の灯火のゆらめきを楽しんで頂きたいです。

それから初炭、最初に炭を置くか、懐石の後にするか、趣向や動座の都合により自由に決められるのでとても助かります。
今回は懐石を待合の椅子席で召し上がっていただくために動座すること、またつづき薄茶(後炭なし)なので初炭で風炉中を拝見してほしくて、朝茶事のように初炭を先にしました。

風炉は唐銅道安風炉、釜は桐文真形釜、高橋敬典造です。
炭斗は淡々斎好みの蛍籠、八幡市の石清水八幡宮から連れ帰ったキリギリスを初使いしました。


 5年ぶり(?)に陽の目を見た竹細工のキリギリス

香合は屋形舟、大徳寺別院・浮見堂の古材で作られていて誠中斎作、
京都在住の折、恩師N先生から頂戴した思い出深い香合です。
香は沈香を焚きました。

茶事一番の難関は懐石です。
盆休みで食材の入手が難しく、作った料理が傷まないように一入気を遣います。
何度も火を入れたので、色も悪く、味も濃くなってしまったかも・・・。
それでも優しいお客さま方は美味しい!と言って完食してくださり、もう感謝です。

懐石献立(懐石は暁庵ですが、半東Uさんとツレにいろいろ手伝ってもらいました・・・)

  向付   マグロ山かけ 大葉 山葵  かけ醤油
  飯    一文字  
  汁    絹豆腐 ジュンサイ 茗荷  赤味噌  辛子
  煮物椀  海老と枝豆の真蒸  椎茸  紅葉麩  三つ葉
  焼き物  鯛の塩焼
  炊き合せ 里芋 揚げ茄子 青楓麩 オクラ
  もう一品、冷たいものをお出ししたくなり・・・ 
       卵豆腐 海老 茗荷 オクラ   
  箸洗   葡萄ピール
  八寸   山芋のサーモン巻  枝豆の松葉刺し  
  香の物  沢庵  胡瓜 小茄子
  湯斗   こがし湯
  酒    越後桜



  「高砂百合」  (季節の花300)

主菓子「さゆり」を縁高でお出ししました。
「さゆり」はピンク色の百合の蕾の練きり、最近ご贔屓の石井製(旭区都岡)です。

中立のご挨拶で、後座の迎付は手燭交換でいたしたく・・・とお願いしました。

ここで思いがけないハプニングが!
「雨が降り出したみたいです!」と詰Fさまの声で外を見ると、大粒の雨が降り始めていました。
まさに今から腰掛待合へお出ましになる時でした。
天気予報を疑わず、雨の用意をしていませんでした。
利休七則・・・「降らずとも雨の用意」を失念していたのです。
「いつまでも何をしておるのじゃ。喝!」
利休さまのお叱りの声が耳元で聞こえましたが、玄関に予備の蹲踞を用意していなくてあとのまつりです。
待合から足元行燈に照らされた腰掛待合や露地の風情を垣間見て頂き、そのまま手燭を持って茶道口から席入していただきました。
昨年は茶事の最初から雨、今年は中立だけ雨・・・・う~む! 
(つづく) 

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京都五山送り火の茶事 in 2018 (その1) 

2018年08月21日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

   大文字山の火床から京都市内を一望


8月16日(木)に京都五山送り火の茶事をしました。
昨年に続き今年もこのお茶事を開催できたことが嬉しく、猛暑にもかかわらず暁庵へ馳せ参じてくださったお客さまに心から感謝しています。

お正客は鈍翁茶会の折、月清庵にてお心こもるおもてなしをしてくださったRさま、
次客は懐石でお世話になっている佐藤愛真さま、懐石のプロにいつもドキドキしながら拙い料理をお出ししています。
三客は茶友Hさま、四客は6月のベランダ茶会へ初参加してくださったHさま、
詰はいつも茶事を手伝ってくださっている暁庵社中のFさま、今回は客としてお出まし頂きました。


初めて見た大文字送り火(2012年8月16日)

大文字の送り火が点灯されるのが20時なので、席入りは16時半としました。
・・・茶事当日の13時過ぎに電話が鳴りました。
「猛暑でございますので どうぞがんばらないでくださいませ。」とメールをくださった三客Hさまからで、
「頭痛と吐き気がひどく、どうしても行かれそうにない・・・」とのことでした。

昨日まで頑張っていた義母上さまの介護の疲れと連日の暑さによるものだとすぐにわかりました。
「こちらは大丈夫、心配しないでゆっくり休んでね」
「今日のお茶事を楽しみに頑張ってきたので、とても残念です・・・」
「今は身体を大切にしてまたの機会にいらしてね。待ってますから・・・」

他人事ではなく昨夕、私も夕食の支度中に体調が急に悪くなり、ツレにバトンタッチして倒れるように寝込んでしまいました。
たぶん暑さと疲れで、熱中症の一歩手前だったと思います。
2時間ほど涼しい所でぐっすり寝たのが良かったらしく、21時過ぎには夕食が食べれるほどに快復し、当日を無事に迎えられたのでした。ふぅ~~  


 待合の短冊 「千本鳥居」 市川団十郎画

板木が4つ高らかに打たれ、半東Uさんが冷たい梅ジュースをお出ししました。
ベランダの腰掛待合へお出まし頂きましたが、陽はすでに陰り涼風が吹き始めています。
水桶を運び蹲踞へ音清らかに水をあけると、諸々の雑念が流されていくような爽快感を味わいました。
枝折戸を開け、お正客Rさま、ご連客さまと無言の挨拶を交わします。
茶事での最初の顔合わせの瞬間ですが、夕まぐれの心ときめく瞬間でした。

初座の床に花をかざりました。
夕去りなので夕方にしぼんでしまう木槿、芙蓉などの一日花は使えません。
最初に用意したのは「烏瓜(カラスウリ)」、
ところが茶事の日に咲きそうな蕾を前日に採取したのですが、夜20時までに全部咲いてしまいました。

当日、再び烏瓜を採取したのですが、前日の観察で開花は暗くなってから、つまり19時以降なのがわかりました。
初座では16時30分~17時30分までしか花を見る時間がないのに気が付き(懐石は待合のテーブル席へ動座します)、烏瓜はやめて急遽他の花を生けることに・・・


(烏瓜の予定でしたが、開花時間が間に合いません)

矢筈ススキ、高砂百合の蕾、秋海棠を火吹き竹(今一番お気に入りの花入)に生けました。(こちらも間に合って ふ~~うっ 


 秋海棠が咲きだしました

席入後、最初に拝見する花と花入・・・・いかがでしたでしょうか? 
(つづく)


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