暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

真の茶事をしました・・・その1

2021年10月27日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

(四畳半の床の間・・・お軸とシュウメイ菊は我が家から持ってきました。

 利休居士の画と鵬雲斎大宗匠の賛がお気に入りのお軸です)

 

10月17日に真の茶事(真引次茶事)をしました。

10月12日に社中のKさんとUさんが茶名を拝受したので、そのお祝いと引次のために真の茶事をして差し上げたい・・・と思ったのです。

(引次の茶事・・先生が弟子にお許しを与え、最後はこの点前を目指して精進するのだと教える為の茶事をいう)

 

お客さまは5名さま(宗等さま、Kさま、Uさま、宗泰さま、宗正さま)で、全員暁庵社中の方です。

亭主は暁庵、半東は宗貞さまにお願いしました。

9月下旬に次のようなご案内を差し上げました。

(ススキの穂波が輝いて・・・写真は「季節の花300」)

 

すすきの穂波が美しい季節となりました。

皆様に於かれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます

さてこの度 日頃の茶道精進が実を結び 

KさまとUさまが 坐忘斎お家元さまから茶名を拝受しました

誠におめでとうございます

つきましては 茶名拝受のお祝いとして 引次の茶事として 真の茶事を行います

真の茶事は一生に一度出来るかどうか 巡り合うかどうかわからない茶事と言われており 

本来は名物道具でのおもてなしですから 私達一般人にはとてもできないことです

・・・ですが たとえ名物道具はなくとも心を込め 社中の皆様のお力をお借りして

左記(10月17日 席入り11時)の如く行いたいと思います

何卒 茶席「加藤」へご来駕のほど 心からお待ち申しております

     令和3年長月吉日           暁庵

 

真の茶事の客を2回、水屋を1回経験していますが、15年も前のことですべて朧でした。

自信がなく、S先生から貴重な文献を送っていただき、何とか無事に執り行うことができました。ありがとうございます!!

また、今回は茶席「加藤」(横浜市中区石川町5丁目)で開催したので、懐石をはじめ「加藤」の皆様には何かとご協力を頂き、感謝です。

詳しく書けませんが、記録として写真や頂いたお手紙などを記しておきます。

 

     (待合の色紙と煙草盆)

待合の色紙は、新古今和歌集の「三夕の歌」の一つです。

  見渡せば 花も紅葉もなかりけり

    裏のとまやの秋の夕暮れ       藤原定家

 

   (向うが腰掛待合、右側が蹲です)

 

当日、10時に「加藤」集合。皆で手分けして準備をし、10時40分に客は待合に集合です。

詰・宗正さまの打つ板木が聞こえ、半東・宗貞さんが白湯をお出ししました。

席入りは11時。迎え付けをして、躙り口から入っていただきました。

 

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茶名拝受の許状式

2021年10月23日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 

10月12日(火)は許状式でした。

KさんとUさんが茶名を拝受しました。

誠におめでとうございます!!

10月10日(日)に「野月の飯後の茶事」があり忙しい最中でしたが、KさんとUさんが当教室で初めて茶名を拝受したのですから、忙しい・・・などと言っていられません。

近々「真之茶事」をしてお二人の茶名拝受をお祝いしたいので、茶事の前に許状式を・・・と思いました。

最初は立会人なしで考えていましたが、ご近所のYさまにお声掛けをしたところ喜んで来てくださり、感謝です。Yさまは小堀遠州流の師範でいらっしゃいます。流派が違ってもきっと好いお話が伺えることでしょう。

11時に待合へ集合です。

Yさまのことはお二人にお話ししていなかったので、嬉しいサプライズだったことでしょう。

お祝いの日なので桜湯をお出ししました。

それから八畳和室へ動座して頂きました。

 

 

床に利休居士の画と鵬雲斎大宗匠の賛のある御軸を掛けました。
花入、香炉、燭台の三具足をかざり、菓子とお茶をお供えします。花はリンドウです。

利休居士が見守る中、坐忘斎お家元の代理として許状をお渡しするのでいつも襟をただし、緊張感を持って臨みます。

 

(利休居士の画像と鵬雲斎大宗匠の賛)

最初にお軸のことをお話ししました。お話はその時の暁庵の心持次第で毎回少し変わります。

鵬雲斎大宗匠の賛は
  今日親聞獅子吼  
   他時定作鳳凰兒        宗室(花押)


  読み下しは、
    今日(こんにち)親シク獅子吼(ししく)ヲ聞ク
    他時(たじ)定メテ鳳凰ノ兒(ほうおうのこ)ト作(な)ル

「獅子吼に耳を傾け、その声に導かれながら、それぞれの茶の道をこれからも精進していきましょう」というようなお話をしました。

次に、坐忘斎お家元に代わり、茶名と紋許のお許しを読み上げ、許状をお渡ししました。

立会人のYさまからお祝いのお言葉を頂戴しました。

流派の違いがありますが、師範をお許しいただいた時のことを思い出し、お話してくださいました。お家元の前で奥伝のお点前をなさったそうです。それもその前に1度だけしかお習いしていないお点前だったとか・・・「もう無我夢中でしたがお許しを頂いて安堵しました」

「本日は誠におめでとうございます。茶名を頂いたこれからが本当のお茶の修行が始まったと思って頑張ってくださいね」と温かい激励のお言葉を頂きました。

それからKさんとYさんが御礼の挨拶をしてくださり、私も万感の思いでお二人のお気持ちを受け止めました。これからも一緒に茶の道を励まし合いながら歩んでいければ・・・と思います。

待合で昼食のお弁当と吸物をご一緒し、その後暁庵の台子点前で薄茶一服を差し上げ、許状式が無事終了しました。

それから風炉で最後のお稽古が待っていました。「真之行台子」です。

KさんもUさんも「真之行台子」をしっかり修練されていて、指導者としてとても嬉しく、お二人を誇らしく頼もしく思いました。

 

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「野月の飯後の茶事」・・・その4終章

2021年10月20日 | 社中の茶事(2018年~)

(つづき)

・・・こうして「野月の飯後の茶事」が終了しました。

実は今まで、茶室の様子が分からず、水屋であれこれ心配していたのですが、この状況にも慣れてきて、亭主と半東に安心してお任せできるようになりました。何かハプニングがあっても二人で力を合わせて対処してくださるだろう・・・と。

茶事後にお客さまから届いたメールで、お客さまが存分に楽しんでくださったこと、AYさんの一生懸命のおもてなしを詳しく知ることが出来て、とても嬉しく思っています。

ご亭主にも礼状が届いていると思いますが、EKさまと小梶由香さまから頂いたメールを茶事の記念として記します。

 

 EKさまから

まだまだ暑い日が続きますが、ビルの谷間にも夕方には涼しい風が吹いております。昨日は帰りの月も美しく、今も昨日の楽しかったお茶事に気持ちが残ったままです。

昨日(10月10日)はAYさんの初茶事にご招待いただき、本当にありがとうございました。彼女も初めての茶事ですから緊張して上がってしまうのは当然ですが、全体的にものすごく水準が高くて感激しました。まだ暁庵先生のところに入門して2年も経ってないのに、AYさんの茶人としての魂の萌芽がはっきりと見えました。これも先生のご薫陶のおかげと感謝しております。

茶事の中でも花や灯火、路地の様子、お道具類、特にあの小棗に合わせた野月のテーマに沿った秋の設えは、これからもずっと心に残ることでしょう。

AYさんが自分の足で探し、選んだお道具やお菓子、お酒、お花など、今までの道具なんて全く興味なかったAYさんの変貌ぶりにびっくりしました。

いろいろと相談はされましたが、彼女なりの考えでなにもかも自分の足で探し、作家や骨董屋さんと話しながら購入しておられます。いつの間にこんなに道具のセンスが培われたのかなと。お道具類も実物を手にとり、話をうかがって、すごいすごい!と・・・。

先生も彼女の意気を感じて総力を挙げて協力してくださったんだなあと嬉しくて・・・。おかげさまで私たち客は経験したことのないお茶事を心ゆくまで楽しむことができました。

特に灯火に浮かぶお茶室の雰囲気は特別でした。まさに虫すだき、遠くから管弦の音が風に乗って渡ってくる、武蔵野の風景。忘れられません。

また小梶由香さんもとても美味しい点心を作ってくれましたし、量もぴったりでした。

お菓子もAYさんらしく全国から美味しいものを集め、濃茶もまったりと美味しかったです。HMさんが薄茶点前を引き受けてくださったので、AYさんとも余裕を持ってお話ができ、お道具の話もゆっくりと聞けたのも有難かったです。

また社中の方がリンドウの花を届けてくださるなんて、なんて彼女は多くの方に応援されているのだろうと本当に嬉しく、彼女の来し方行く末を鑑みては胸がいっぱいになりました。

飯後の茶事も初めてでしたが、いろいろな可能性のある面白い茶事だなと感心しました。AYさんだけでなく、私もともに成長させていただいて、感謝でいっぱいです。またお目にかかる機会があることを楽しみにしております。   EKより

 

 

 小梶由香さまより

昨日は野月の飯後の茶事での懐石依頼、またお招きをいただきありがとうございました。

AYさんの一生懸命な姿は清々しく、お花、「白珪尚可磨」のお軸(先生の親心を感じました)、茶椀、そして見事な細工の香合や茶入など集められたお道具に、AYさんの初めての茶事へのお気持ちが感じられて、何か熱いものが込み上げてきました。

そして中立後に入った茶室の素晴らしかったこと! 初めて経験するゆらめく灯火の下でいただくお点前や濃茶は格別なものでした。

手燭の下で拝見するお道具、時折聞こえる虫の音、相席の皆さまとの会話・・・何もかも初めて尽くしのひととき、忘れられないお席となりました。

茶事から三日経っても、まだあの日の感動が忘れられません。瞼を閉じると、灯火ゆらめく光景が映ります。

もう一つ、お詰めのTKさまと待合でお話ししていた時に、「茶事は失礼があってはいけないので、手順などとても緊張します」と言いましたら、「いやいや、茶事はいままでの稽古の集大成として、楽しまなければ・・・」との言葉をいただき、ハッとしたことが、とても印象に残っています。

本当にいろいろありがとうございました。

そんなお席に、花を添える点心ができたかどうか・・・。

栗ごはん、あとひと塩加えたかったです。量的にはちょうど良い感じかと思いました。吸い物椀を出すタイミングをもう少し早く向付をお出しして、すぐ次に運んだほうが、ご飯ものが食べやすいのではと感じました。

作るひと、食べるひとのどちらも同時に経験するというまたとない機会は気づきでいっぱいでした。今後に必ずや活かしてまいります。

先生に出会った事で、もっともっと茶事を知りたい学びたいという気持ちでいっぱいです。

どんな茶事の懐石でも、亭主の想いを汲み、またお客さまに美味しかったと思っていただけますよう、今後も精進して参ります。  小梶由香より

 

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「野月の飯後の茶事」・・・その3

2021年10月18日 | 社中の茶事(2018年~)

            (後座の床は「白珪尚可磨」)

(つづき)

日の入りは17時13分、露地はまだ明るく灯火はいりませんが、茶室はだいぶ暗くなっています。秋の日は短く、あっという間に暗くなっていき、濃茶の時間は刻々と部屋の暗さが増していく時間でもあります。

後入りの鳴り物は喚鐘です。大小中中大の5点鐘が夕闇近い露地に響きました。

後座では床と点前座横に灯火を置きました。

床のお軸は「白珪尚可磨」、紫野黄梅院の太玄老師の御筆です。

 

     (手前は織部焼の南蛮人燭台です)

蝋燭の灯が揺らぐ中、濃茶点前が進められ、丁寧に練られた濃茶が出される頃には暗くなったので、半東が手燭をお出ししました。

濃茶は坐忘斎御家元好「雅松の昔」、賓水園詰(愛知県西尾市)です。愛知県はご亭主AYさんの故郷でもあり、西尾市は抹茶の生産が盛んだそうで、とてもまろやかで美味しい濃茶です。

茶碗や茶入は1年をかけて故郷の骨董店、旅行先の窯元、茶道具屋を探しまわり、素敵なご縁があったそうで、どれもご亭主の思い入れの溢れたものばかりです。

主茶碗は黒楽、八事窯(名古屋市昭和区)4代目中村道年作です。替茶碗は赤楽、安加比古窯(愛知県蒲郡市)初代加藤竹宝(酉翁)作でした。

茶入は古瀬戸の撫肩衝、形も優しく釉薬の景色も味わい深いものでした。鵬雲斎大宗匠の御銘で「鳴子」、仕覆は紺地花鳥緞子です。

薄茶になり、箕に盛られた菓子が運ばれました。飯後の茶事は菓子茶事ともいわれ、菓子が楽しみな茶事でもあるのですが、全国津々浦々(?)から選ばれた3種の菓子はどれも素晴らしく、ご亭主の並々ならぬ気合を感じます。

「秋やまじ琥珀(甘柿)」は霜月製(京都市北区西賀茂)、「窓(もなか あんバター・栗)」は茶菓工房たろう製(金沢市)、「秋の花(落雁)」創作菓子・悠製(鳥取市)でした。

 

         (箕に3種の干菓子が盛られました)

薄茶点前は半東HM氏がつとめました。ご亭主は安心して半東にお任せして、茶碗や棗などのお道具や、お客様との素敵な縁のお話がいつまでも弾んだことでしょう。

薄器は江戸時代に作られた小棗で箱書き(月廼家宗庵)に「野月棗」とあり、武蔵野蒔絵(月とススキ)が描かれています。灯火に照らされるとススキが揺らめくように見え、一段と味わいが増すようです。

1年ほど前に故郷の茶会でこの「野月棗」に出逢い、その後ご縁があってAYさんの元にやって来たました。

箱裏に和歌が書かれていて、この棗と和歌に因んで「野月の飯後の茶事」としました。

   武蔵野は月の入るべき山もなし

        草より出でて草にこそ入れ   

薄茶は坐忘斎御好「月陰の白」、中村茶舗詰(島根県松江市)です。

最後に茶杓ですが、濃茶と薄茶共に同じ茶杓で、玉龍寺(三重県)の明道老師作、銘「好日」です。

 

     (真っ暗闇の露地)

お終いの挨拶を交わす頃には露地は真っ暗闇、足元行灯だけが浮かび上がっています。

一期一会の万感の思いを込めて、亭主がお客さまをお見送りしました。

東南の空には清々しい野月(月齢3.7)が顔を出し、「野月の飯後の茶事」を祝っているようでした。

(つづく)

 

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「野月の飯後の茶事」・・・その2

2021年10月16日 | 社中の茶事(2018年~)

               (初座の床)

(つづき)

飯後の茶事なので、日の入りの時間を見て、席入り時間を15時としました。

14時40分頃にお客さまがいらっしゃいました。板木が打たれ、半東HM氏が汲出しを運びます。

その日は冷房を入れるくらい暑かったので、冷たい梅ジュースを炭酸で割ってお出ししました。

待合には短冊「掬水月在手」(水を掬すれば月手に在り)、御筆は雪峯師、最初の月でしょうか。

 

 

亭主が迎え付けに出ている間に半東が濡れ釜をかけました。

初座の床は夕去り風に花を生けました。まだ明るいうちに花をお楽しみいただきたいのと、花だけでなく矢筈ススキと達磨萩を置き、武蔵野の野に茶席を設えてみました。

どんな花にするのか、我が家にもいくつか花が咲いていたのですが、敢えてご亭主に用意していただきました。

茶事の数日前から野山を歩いてススキや花を探したり、花屋さんも覗いていたようです。

「先生・・前日に目を付けていた数種のホトトギスが全部売り切れていて、8軒花屋さんをまわりましたが見つかりませんでした。ススキや野の花も良いものがなくって・・・リンドウ、鉄線、利休草、孔雀草を買ってきました」

8軒も花屋さんをまわったというAYさんの熱意に感動し、そのエネルギーが羨ましくもあり、私も新鮮な刺激を頂戴し、しっかりサポートしなくては・・・と改めて思ったことでした。

花入は簗(やな)篭、花はN氏から贈られた山のリンドウ、孔雀草、鉄線です。

 

ご挨拶が和やかに交わされ、初炭が始まったようです。

釜は長野新造の桐文車軸釜です。風炉中拝見の折に炭の置き具合や優雅な桐文の釜をゆっくりご覧いただいたようです。

香合は琵琶香合、琵琶の演奏を楽しみながら野月をみていただくという趣向のようで、香は沈香です。

次は点心です。少し遅い時間なので点心、吸物、八寸を用意しました。三客にお入りの小梶由香さんが腕をふるってくださった点心を暁庵も水屋でお相伴しました。彩りよく、味よく、量も丁度好く、お酒も一献だけ頂き、美味しかったです。酒はご亭主の故郷の産で蓬莱泉「空(くう)」(愛知県設楽町 関谷醸造)です。

 

点心の後に主菓子が出されました。

秋色の上品な彩りの手毬のような菓子です。銘は「秋日和」、鎌倉の創作菓子の「手毬」製でした。

菓子で中立となりました。

 

「野月の飯後の茶事」の献立と次第を記録しておきます。

 

「野月の飯後の茶事」の献立 (小梶由香)

 向付

  栗ごはん 鳥の丸 紅葉人参 銀杏 満月丸十 胡麻生麩照焼き

  菊菜と菊花のおひたし

 吸物   蕪 占地 軸三つ葉

 八寸   落鮎一夜干し  茗荷甘酢漬

 酒    蓬莱泉「空」 (関谷醸造、愛知県北設楽郡設楽町)

 

「野月の飯後の茶事」の次第 (約3時間、時間は目安です)

 待合(板木)- 席入 - 挨拶 ー 初炭 ー  点心・一献 ー 菓子 ー  中立(15分) 

14:50   15:00     15:20  15:40   16:20  16:30 

-(喚鐘)後入り ー 濃茶 -- 薄茶 ー  挨拶・見送り

  16:45   16:50  17:30  18:00

 

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