暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

2023年の「炉開きと口切の会」・・・(1)

2023年11月27日 | 暁庵の裏千家茶道教室

           (後座の床飾り)

 

2023年(令和5年)11月12日(日)に「炉開きと口切の会」をしました。

茶人の正月とも言われる「炉開き」のお祝いと、5月に新茶を茶壷に入れて保存し、11月になって茶壷の口を切って初めてその年の茶を飲むという「口切」の行事、暁庵の裏千家茶道教室ではその2つを一度に行う「炉開きと口切の会」を開催し、交代でいろいろなお役を担当してもらいます。

2023年の次第は次の通りでした。

待合~ 席入 ~ 挨拶(M氏)~ 初炭(T氏)~ 口切(M氏)~

台天目①(KTさん)~ 昼食・休憩 ~銅鑼で席入~ 後炭(AYさん)~

台天目②(KRさん)~ 薄茶①(Y氏)~ 薄茶②(F氏)~挨拶(T氏) 

 

10時に待合集合ですが、8時半にAYさんがいらして煮物椀づくりを担当し、9時にM氏とY氏がいらして炉中や点前の準備をしてくれました。

茶人の正月なので皆さま素敵な着物をお召しで、お目出度い雰囲気が漂い、私も浮き浮きと笑顔がこぼれます。
(私は薄鼠色の唐子模様の色留袖に錆朱地に鳳凰の帯を締めました。書いておかないと毎年同じになりそうなので・・・

待合の掛物は「紅葉舞秋風」(矢野一甫筆)、紅葉が画で表現されています。その前に青磁の壷を置き、画中の紅葉を生けてみました。

    (待合の「紅葉舞秋風」)

10時過ぎに板木が打たれ、半東AYさんが桜湯を志野の汲出しでお出しし、席入のご案内をしています。

夜来の雨は上がっていましたが、腰掛待合や露地がまだ濡れていたので、玄関の蹲を使い茶道口からの席入となりました。

初座は正客から順にKTさん、KRさん、Y氏、F氏、T氏、AYさんが席入りし、初座の亭主はM氏、後座の亭主はT氏、初座の半東はAYさん、後座の半東はKRさんです。

正客KTさんからいろいろお尋ねがあり、亭主M氏が待合の汲出しや掛物、本席のお軸についてお話しています。

床のお軸は「日日是好日」、柳生・芳徳禅寺の橋本紹尚和尚の御筆です。

毎日をかけがえのない一日と思い、たとえ苦しいことがある日でも悲しいことがある日でも、その日を好日にするべく精一杯生きよう! そうすると、毎日が好日になるだろう・・・大好きな禅語ですが、わかっていても実践は難しく、厳しくも奥の深い禅語です。

「ご都合でお壺の拝見を・・・」と正客KTさんからお声が掛かりましたが、台天目で濃茶が控えているので、先にT氏の初炭になりました。

 

   (釜は霰唐松真形釜(美之助造)、炉縁は根来塗)

T氏が大きな瓢炭斗と灰器(信楽焼)を持ち出し、釜を上げました。初履きをすると、全員が炉辺へ寄って炭手前を拝見します。まだ重いはずの湿し灰がきれいに撒かれ、嘆声が聞こえるようでした。胴炭を始め、大きな炭が順序よく置かれ、点炭がつがれると名残り惜しく思いながら席へ戻りました。

練香が焚かれました。香合は呉須木瓜香合、香は「松涛」(松栄堂)です。

次いでM氏による「口切」です。

最初に床の茶壷が下げられ、口緒と網が外されてから正客から順に茶壷の拝見から始まりました。茶壷は丹波焼・市野信水作、口覆の裂地は笹蔓緞子です。

葉茶漏斗が持ち出され、茶壷の合口に小刀が当てられ、ゆっくりと口を切っていきます。みんな息を呑むようにM氏の口切を見守りました。

やがて蓋がはずされ、「いずれのお茶を差し上げましょうか?」

御茶入り日記を見て正客は「ご亭主にお任せいたします」「承知いたしました」

 

亭主は詰茶を葉茶漏斗に少し開けてから、茶壷の中から半袋を1つ取り出し、「松花の昔(丸久小山園)でございます」

口を切る瞬間も心に残りましたが、詰茶が葉茶漏斗から茶壷に戻されるときも見どころ聞きどころが満載です。

緑の詰茶のサラサラとした動きの美しさ、トントントーンと漏斗を軽く叩きながら茶壷へ戻していくのですが、その時の流れるような所作や音がとても素晴らしいと思いました・・・

再び茶壷の蓋が閉められ、封印がされ、茶壷と御茶入り日記が水屋へ下げられ、「口切」が終了しました。

・・・今年(令和5年)も社中の皆さまと「口切」を無事に出来たことがとても嬉しいです。

次は台天目です。(つづく)

 

   2023年の「炉開きと口切の会」・・・(2)へ続く

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古希をお祝いする茶事に招かれて

2023年11月21日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

 

 

11月3日にS先生の東京教室で共に研鑽に励んでいるYさまの古希をお祝いする茶事へお招き頂きました。

あれから日が経ちましたが、今でもYさまのおもてなしの心意気に満ち溢れたお茶事だった・・・と、ため息をつきながら思い出します。

感激のままにすぐに後礼のお手紙を差し上げました。こちらに忘備録として記します。

 

  

霜月なのに記録的な暑さが続いておりますが、心地好い風を感じながら

一昨日の茶事のあれこれを思い出し、余韻に浸っております。

この度は古希をお祝いする茶事にお招き頂きまして、誠にありがとうございました。

何度もため息が出るほど、好いお茶事でございました・・・Yさまのお茶事への熱い思いや、これまで歩んできた茶の道の歴史が伝わってくるお茶事でした。

 

 

いろいろな場面が思い出されますが、初座へ席入りすると、新しい畳の香りが満ち、広い御床に坐忘斎お家元御筆の「「松無古今色」が清々しく迎えてくださり、正客として身が引き締まる思いがしました。

炉の初炭では、亡き恩師から譲られたという美しい瓢炭斗が運ばれ、ご亭主の初炭手前を新鮮な気持ちで拝見でき、炉の時期の到来を嬉しく思いました。

鵬雲斎大宗匠好みの雲鶴釜の堂々とした大きさや形、青海波の炉縁に魅せられ、連客の皆様と和やかに炉を囲み、初炭手前や後炭を楽しませて頂きました。

 

 お忙しいにもかかわらずご自分で調理されたという懐石は一つ一つ作り方やコツを伺いたいほど美味しく、特に煮物椀の銀杏真蒸が絶品でした。そして懐石では喫架を用意してくださり、本当にありがとうございました。

後座の席入りで襖を開けると、照葉(ジューンベリー)とピンクの西王母が素晴らしい青磁下蕪花入に生けられていて、その空間の見事な美しさに息を呑みました。

火相と湯相も程よく、心を込めて練ってくださった濃茶のなんと!薫りよくまろやかで美味しかったことでしょう。「寿ぎ」という銘の紅白の金団も美味しゅうございました。

そしてYさまが長い時間と愛情を注いで集められた茶道具の一つ一つに、その時の出逢いのご縁や、Yさまのお茶に取り組まれているご様子が垣間見られ、そんなことを想像しながら、濃茶や薄茶を美味しく頂戴いたしました。

今思い出しても、使われた茶道具の一つ一つが生き生きと輝きを放ち、この日を待ちに待って一緒に喜んでいるようでした・・・客としてご亭主とお道具の縁のお話を伺うのが楽しく、とても幸せな時間ございました。

お心入れの茶道具の中で特に印象深いのは、濃茶を頂いた旦入作の赤楽茶碗と茶杓(大宗匠作)です。

小ぶりの赤楽茶碗は各服点にピッタリで、釉薬がとても複雑な景色を生み出して魅力的でした。古瀬戸の肩衝茶入の端正な形や味わい深い色合い、そして珍しい裂地の仕覆が今も目に残っています。

亡き恩師もきっと天国からこのお茶事を見守って喜んで大声で笑っていらっしゃるのでは・・・と、茶杓「呵々(かか)」を拝見しながら思いました。

 

 

いつまで出来るかわかりませんが、とにかく出来るところまで一生懸命にお茶を生徒さんに教え、同時に今自分に出来る「立礼の茶事」に取り組んでいこう・・・と決意して五月の初風炉からやっと踏み出しましたが、その初風炉の茶事にお出ましくださり、刺激を受けたというお言葉が有難く、嬉しかったです。

これからも力強くYさまの茶の道を歩んでいってほしいと心から応援しておりますし、どうぞ素敵なお茶事を大いになさって下さいませ。

末筆になりましたが、半東や水屋を務めてくださった社中の皆さまによろしくお伝えください。

三日間(?)の茶事を成し遂げて、きっと今頃はお疲れがどっと出ているのでは・・・と案じています。

どうぞくれぐれもお体を大切にお過ごし下さいませ。   かしこ

    令和五年霜月吉日        暁庵より

 

 


「野月の名残りの茶事」・・・(4)後礼のお手紙

2023年11月18日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

つづき)

「野月の名残りの茶事」の後礼のお手紙が届きました。

いつも拝読すると茶事の疲れが吹き飛んでいく特効薬です。ありがとうございます! 

お手紙2通を記念に掲載させて頂きます。

 

   EKさまより(EKさまは金剛流をお習いで、今回は社中F氏の代わりとして急遽参加してくださいました)

 

    花薄 ますほの糸を 繰りかけて

        絶えずも人を 招きつるかな     源俊頼 

先日は野月の名残の茶事にお招きいただき、ありがとうございました。

ご招待のお便りのお返事にこの歌を書きましたが、お茶事が終わって、「やっぱり、この歌だわ~」と思いました。これは金剛流の能「薄」の中で出てくる源俊頼の歌です。

五月から立礼の茶事を重ね、今回で6回目と伺い、若葉の頃も、夏の盛りも、秋の暮れも、どれほどのお客様を招き、満ち足りた時を過ごされたのかな・・・と感心した次第です。

これだけ熱心にお茶事をなさり、それぞれの回にお招きしたお客様に因んだ設えや道具組、懐石ときめ細かにお考えになっておられる様子、まったく感服いたします。しかもこの暑く長い夏に!

この度も、遠くスエーデンからいらした方の茶名拝受のお祝いや、私などピンチヒッターなのに私にちなんだものを身に着けていただいたり、使っていただりたりと、それ以外にもいろいろと気づかされる点がたくさんあり、とてもとても嬉しいことでした。

待合から野月を象徴する月見の設え、大田垣蓮月の歌ともぴったりでした。

本席の掛物から美味しい、工夫を凝らした秋の味覚いっぱいの懐石料理。お酒も半東さんのサービス(笑)も素晴らしかったですね。

懐石担当の方とも先生がよく打ちあわせをされのだなと思いました。 とても気が利いていて、お祝いの趣きもあって、美味しい!と最高でした。

そして後座では花寄せの趣向が! 一座、半東さんまで交えて和気藹々と季節の花を楽しみました。

ヨーロッパからのお客様がいらしたせいか、私も長年暮らしたイギリスを思い出し、the last rose of summer (日本では「庭の千草」というアイルランド民謡)という歌を頭の中で口づさんでおりました。

先生がこのあたりの野辺で摘んでくださった秋草の数々、なかなか都心の暮らしでは味わえない情趣を感じました。武蔵野で遊ぶ大田垣蓮月でしょうか (笑)

     (野辺で摘んだ秋草が花台にいっぱい)

ずっと立礼なので足も痛くならず、お料理もお酒もお茶もお菓子も、より美味しく味わい深く楽しむことができました。濃茶も薄茶もそれぞれに面白いお茶碗で頂戴し、いろいろな話に花が咲きましたね。

本当に先生のお招き上手にすっかり乗っかって、楽しい時を素敵な茶友さんたちと過ごすことができました。

そろそろ炉開きの準備もある忙しいなか、本当にありがとうございました。ピンチヒッターでも補欠でも結構ですから、またお招きにあずかるのを楽しみにしております。

どうぞ、水屋の皆様にもよろしくお伝えくださいませ。

感謝をこめて         EKより

 

  

  AYさまより(AYさまは暁庵社中です。3回の野月の茶事で、1回目は半東2回目は水屋、3回目はお客さまとして参加してくださいました)

拝啓  

秋の風に吹かれつつ家路につきました

この度は立礼のお茶事の集大成である野月の茶事にお招きを頂き ありがとうございました 半東として水屋として参加でき大変嬉しく思います

オーネル様とも初めてお目にかかり茶道への思いもお聞きし気合が入りました

先生がオーネルさんへの趣向もとても工夫されており  感動しました

どの野月の茶事も素敵な趣向でしたが  お客で参加する茶事が一番楽しかったです

今年の立礼の茶事は終わりとのことですが  来年も立礼の茶事をすることを期待しています

先生にはさぞかしお疲れのことと存じますが ご自愛下さいませ

それでは略儀ながら書面をもちまして御礼申し上げます

      草々不一    AYより

 

  (茶事の朝に朝顔一輪、輝くように咲いていました)

 

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「野月の名残りの茶事」・・(3)濃茶と薄茶

2023年11月16日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

    (点茶盤で中置の点前で、濃茶と薄茶を差し上げました)

つづき)

濃茶になり、ざわつく心を鎮めてから襖を開けました・・・この瞬間、中のお客さまの様子を窺い、心臓の鼓動を意識しながら襖を開ける瞬間が大好きです。

濃茶は特にいつも緊張感を持って、点前に集中するようにしています。四方の袱紗捌きの呼吸や間合い、茶入、茶杓、茶碗を清める時には姿勢よく、基本をしっかりと心がけて・・・。

その昔、敬愛する師匠が濃茶点前をしながら教えて頂いたことを時々思い出します。

「心を込めて点前をするのは誰でも心がけていることですが、心を込めて・・・をどのように表現して、お客さまにわかってもらえるか、感じてもらえるか、常に工夫し努力しています」・・・と。

「心技体」を点前で実践することが大事ということでしょうか。茶事だから・・・と言って急に出来るものではなく、普段の稽古がとても重要と理解していますが、最近は稽古が思うようにできない状態でお恥ずかしいです・・・

余計なことを書きましたが、その時は「美味しい濃茶を差し上げたい!」と、茶入から濃茶を掬いだし、各服点で4碗の濃茶を一心に練りました。

     (大樋 飴釉茶碗・・・梅山窯・中村康平作)

正客KTさまは黒楽茶碗(一入作)、次客オーネルさまは大樋・飴釉茶碗(中村康平作)、三客EKさまは御本雲鶴、詰AYさまは高麗三嶋でお出ししました。

「お服加減はいかがでしょうか?」「大変美味しく頂いております」のお言葉に安堵しました。

濃茶は「延年の昔」(坐忘斎好み、星野園詰)です。

茶入は薩摩焼胴締め(15代沈壽官造)、仕覆は二人静金襴、茶杓は銘「無事」(紫野 後藤瑞巌師作)です。

後炭を省略し薄茶となりました。

      (薄茶の点茶盤・点前座です)

     (薄茶点前中のY氏)

立礼の茶事を始めてから薄茶は半東にお願いしています。

その日は半東Y氏が中置の薄茶点前を緊張気味に務めてくださいました。暁庵は半東席へ座ってお客さまたちと親しくお話が出来て、とても嬉しい時間です。

Y氏が薄茶を丁寧に点ててくださっている間に茶談義や、オーネルさまのスウェーデンでのお茶の活動ぶりに花が咲きました。

   (オーネル宅のサマーハウスにて)

長い長い冬を過ぎて春になると、ストックホルムの国立民族博物館の茶室・瑞暉亭(ずいきてい)では茶道普及のデモンストレーションや茶会が精力的に行われています。もちろんオーネルさまだけでなくお茶を愛する方たちと協力し合って・・・裏千家茶道に励んでいるスウェーデンの方たちもいます。

お菓子は皆で手分けして餡子からつくるとか。先生が教室を閉められてから自主練習やオンラインの稽古や講義の話・・・どのお話もオーネルさまのお茶を懸命に探求するお気持ちが溢れていて、新鮮な刺激をビシビシ頂きました。

海外で苦労しながらも自分の茶の道をしっかりと歩んでいらっしゃるオーネルさまを今回の立礼の茶事へお招き出来て、本当に好かったと思いました。同席した方々もきっと大いに刺激を受け、感じることが多かったことでしょう。

 

      (祥瑞と瑠璃卯文の茶碗)

和やか中にもとても刺激的なお話を伺いながらY氏が、正客KTさまは銘「淡路」の茶碗、次客オーネルさまは祥瑞、三客EKさまは瑠璃卯文 、詰AYさまは祥瑞の茶碗で薄茶を美味しく点ててくださいました。

薄茶は「舞の白」(坐忘斎お好み、星野園詰)です。

薄器は根来薬器、茶杓は銘「寧(ねい)」(染谷英明作)です。

 

 

・・・こうして今年最後の「立礼の茶事」が無事に終わり、感無量です。

炉の時期は「立礼の茶事」をお休みして、来春までエネルギーを蓄えて、もし出来ることなら再開したいと、今は考えています・・・

皆様、本当にありがとうございました!・・・(4)後礼のお手紙へつづく

 

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「野月の名残りの茶事」・・(2)晩秋の野の花をいける

2023年11月15日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

  (次客オーネルさまが烏瓜と百日草を舟(韓国の杼)に生けました)

 

つづき)

懐石が終わり初炭になりました。

炭斗は6年前の南仏プロヴァンスとスウェーデンの旅の途中、ストックホルムで購入した樺細工の籠です。オーネルさまゆかりの炭斗が久しぶりの登場です。

     (天明写し責紐釜)

釜は天明写しの責紐釜(せめひもがま)です。

戦国時代、茶の湯の場でも毒殺などの恐れがあり、釜の蓋を封印した責紐釜が使用されたとか。口の近くに鐶付がつけられているのが特徴です。責紐はこよりを使うそうですが、今回は紅と銀の水引2本を使い、釜を勝手口へ引いてから責紐を解きました。

いつ、どのように責紐を解くかはその時々の趣向で変わります。亭主はあれこれ考えるのが楽しい責紐釜ですが、お客さまはお楽しみいただけたかしら?

香合は、南仏プロヴァンスとスウェーデンの旅の途中、エクス・アン・プロヴァンスで購入した「独楽香合」です。

印度やネパールなど東洋の産物を売る店「ヒマラヤ」で見つけ、気に入って購入した旅の記念品です。ブータンへ旅行した時、このような塗りものがないかと捜しましたが、南仏でイメージ通リのものに出逢ったのも不思議です。

香は付干(つけぼし、自製)、しばらくすると柔らかく上品な薫りが茶席を満たしていきました。

初炭が終わり待合へ動座して頂き、主菓子・雪平(せっぺい)をお出しし、中立になりました。菓子銘は「龍田姫」、石井菓子舗製(横浜市旭区都岡)です。

(主菓子は銘「龍田姫」・・白い衣を纏った秋の女神のよう)

後座は花寄、前日に採取した晩秋の野の花を思い思いに生けて頂きました。

 (1時間ほど歩くと、晩秋を彩る野の花で手提げがいっぱいになりました)

正客KTさまは有馬篭に薄、力芝、シュウメイ菊、ホトトギス、

詰AYさまは古瓦(写し)に薄、アベリア、野紺菊、野葡萄、葛の花、

三客EKさまはガラス花入(スウェーデン・コスタボダ製)へ薄、背高泡立ち草、杜鵑、秋桜(コスモス)、

最後に亭主に代わり半東Y氏が掛け花入(志戸呂焼)へ力芝、エノコロ草、シュウメイ菊、野紺菊、野葡萄をいけました。

本当は秋の野へ出かけて、皆で野の花をいっぱい摘んで、もっとたくさんの花入から選んでもらって花寄を楽しんでいただけたら・・・そんなことを想像しながら、床の花たちに秋の野の風情を託しました。  

 

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