暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

三渓園の見学会

2022年08月31日 | お茶と私

          

 

8月20日は三渓園の見学会でした。

秋に行う「三渓園茶会(仮称)」の下見へ6名で出かけました。

その日は曇っていましたが、湿度が高くちょっと動くと汗がじわっ~と噴き出てくるような日でした。

それでも正門を入るとすぐの蓮池に名残りの蓮の花が咲いていて、夏の終わりの庭を彩っています。

三渓園職員のKさんが蓮華院と春草蘆を案内してくださいました。

前回の茶会から3年が過ぎていますが、その間コロナウイルスの蔓延があり、「やっと最近になって小寄せ(社中に限って)の茶会をする方がいるようになりました」というお話でした。

幸いにも10月29日(土)に2つの茶室、春草蘆(しゅんそうろ、重要文化財)と蓮華院(れんげいん)をお借りすることができ、「三渓園茶会(仮称)」に向けてスタートをきることができました。

 

   (蓮池には名残りの蓮の花が・・・)



   竹林の茶室、蓮華院 (こちらが受付と薄茶席の予定です)


今までに春草蘆や蓮華院で3回茶会をしていますが、どの茶会も思い出すと胸キュンになります・・・よろしかったらブログをご覧ください。

① 春草蘆・有楽茶会

② 京都へ行く前にお別れに開催した「蓮華院・名残の茶会」
③ 三渓園・春のクロスロード茶会・・・ブログ「暁庵の茶事クロスロード」の10周年を記念する茶会

 

    (蓮華院・土間にそびえる柱が凄い!です)(宇治平等院翼廊の古材)

最初に蓮華院を見学しました。
「三渓園茶会(仮称)」で蓮華院は薄茶席の予定です。

蓮華院は、原三溪が自らの構想により大正6年(1917年)に建てた茶室で、現在の春草蘆がある場所に最初建てられました。三渓翁49歳のときに「蓮華院」の完成を記念して初の茶事を行っています。

六畳の広間には琵琶床があり、この琵琶床に三溪翁は東大寺三月堂の不空羂索観音が持っていた蓮華を飾ったそうです。土間にそびえる存在感あふれる柱は宇治平等院の翼廊の古材です。このように見所やエピソードがいっぱいあります。

戦後、竹林の茶室として新たなコンセプトのもとに現在地に移築されました。

蓮華院がどのような薄茶席になるのか、担当の方々がいろいろ知恵を絞ってくださることでしょう・・・とても楽しみで今からワクワクしています。


  

濃茶席の春草蘆へ向かいました。

蓮華院から坂道を少し上がると春草蘆があり、途中に奈良・海竜王寺付近で出土した大きな石棺が無造作に置かれています。
坂を登ったところに銀杏の大木があって、秋が深まると黄色い落葉がはらはらと降りそそいで、道も石棺も黄色に染まるのですが、「三渓園茶会」の時にはまだでしょうか・・・。


  (奈良・海竜王寺から出土した石棺)

春草蘆(重要文化財)は大正11年(1922年)に京都・宇治の三室戸寺金蔵院から移築されました。

江戸時代初めころの建築と推定され、織田信長の弟・織田有楽の作と伝えられていますが、確証はありません。
国宝・如庵(有楽作)と同様、春草廬も複雑な変遷の歴史があり、詳しくはこちらをご覧ください。

三畳台目の席ですが、窓が九つあるので少し広く感じます。古くは九窓亭(くそうてい)とも呼ばれていました。

春草蘆に座してみると、タイムスリップして、戦いの前に茶の湯を愛でる戦国武将たちや、仏教美術に傾倒した原三渓翁の茶会の様子が浮かんできたりします。

・・・窓をいくつか開けてみました。
長い時間、人が入っていなかった茶室はひっそりとして寂しさを感じる佇まいでしたが、当日は
濃茶を喫みながら九つの窓から入る光や風、刻々と移ろう窓の景色を楽しんでいただければ・・・と思います。

 

      (百日紅の大木と旧燈明寺三重塔(重要文化財))

最後に待春軒へ。こちらは点心席を予定しているお茶屋さんです。

待春軒へ辿り着くころには全員、汗びっしょりで喉もカラカラ・・・私は熱中症の一歩手前でした。

早々に池のほとりの雁ヶ音茶屋へ駆け込み、みんなでかき氷を食べ、全身を冷やしひと息つきました。

ステーキランチに始まり、いろいろありましたけれど、この時のかき氷の冷たさと美味しさが忘れられません。  

 

 


夏の盛りに粗茶一服

2022年08月25日 | お茶と私

  (お軸は「點笑」、ノウゼンカツラの花と山芋の蔓を鉄灯明台に・・・)

 

やっと夏も終わり近くになりました。皆さま、お元気にお過ごしでしょうか?

8月に入り、いろいろ心乱すことがありましたが、SNさまが暁庵へいらっしゃいました。

ブログ「夏休み中ですが・・・壺屋焼の茶碗」を読んで、お茶飲みに来てくださったのです。

それで、ご近所のYさまにも同席して頂いて、立礼席で粗茶一服差し上げました。

お稽古が夏休み中だったので、5年ぶり(たぶん?)にいらっしゃるSNさまをどのようにお迎えしたらよいかしら? お軸は? お花は? 薄器は? 茶杓は? 茶碗は?  

あれこれ準備に勤しんでいると、塞いでいた心がだんだん晴れ行くのを感じます(塞いでいても仕方ないものネ・・・独り言)。

そして、当日は穏やかな心でSNさまをお迎えすることが出来ました。

SNさま! 来てくださって本当にありがとう!  頂いたメールを記念に記します。

 

 SNさまのメール

昨日は到着が遅くなり大変失礼を致しました。薄茶一服だけいただこうと思っていましたのに、炭手前もしていただき、主菓子と合わせて二服もいただき、さらにはお食事までご馳走になり、お茶事と変わらないようなおもてなしをしていただいて恐縮です。

紫蘇ジュースをいただきながら、またお食事をいただきながらお話を伺いましたが、お茶席でのおもてなしをしていただいて、このような場があるからこそ清談ができるということを実感しました。

お軸の清水公照師という方は知らなかったのですが、調べていて「動いている時無念になれる」「ありのままよりしゃあないなぁ」とおっしゃっていて、「點笑」というのはその人柄のままの言葉だな、点てて飲んで笑ってそれでいい、と言われている気がしました。

私の先生が茶花も教えるようになって、去年の5月に稽古茶事で亭主をしてからずっと毎月習っているのですが、釣花入の丸い形に惹かれました。満月のようでもあり、灯のようでもあり、和ということを形にしているようでした。

 

       (洗い茶巾・・・茶碗は壺屋焼です

点茶盤の点前はオンライン茶道学で見ていましたが実際に拝見するのは初めてで、正座が難しい外国人にもしっかりした立礼がある、と思いを改めました。

すっきりした火箸が印象的でした。責紐釜は炉で見たことがあったのですが、風炉に乗ると小振りに見え、少しお湯を沸かすのにとてもよいサイズに思えました。実際に紐を掛けたものは見たことがないのですが、コロナ禍なのでできるだけ清い水を、と持ち出すのもいいなと思いました。

旅箪笥を洞庫のようにしてお使いなのが斬新で、玉手箱のように替茶碗が出てくるのが楽しく、お茶碗も拝見物も置けて、さらにはすぐに運べるというのが目からウロコで真似したくなりました。

 

 (お菓子は銘「水夏(すいか)」(練切)と豊楽焼・振出しのあられ糖)

振出が少し重さがあって普通のものと違うなと思ったのですが、豊楽焼というものを初めて知って、陶器に漆を塗ったものが珍しく、茶籠にあったものとのことで是非他のものも拝見したいと思いました。蓋を開けた時、内側のエメラルドグリーンが目に飛び込んで印象的でした。

ブログにあった壺屋焼の茶碗は井戸のようにどっしりしながら少し歪みがあったりしておおらかで素朴な感じがとても素敵でした。一人でゆっくりたくさん飲みたい時にとてもいいなと感じました。

茶杓は稽古でお使いのものということで、茶碗だけでなく茶杓も育つということ、時の積み重ねでしか生まれない美しさや味わいがあることを実感し、とにかく続けるということを思いました。

最後に風炉を拝見させていただいた時、藤灰のまかれた風情やお炭がそのままの形で白くなっている様子がとても綺麗で感動しました。

 

 

暁庵先生には沢山質問してしまいましたが、京都へ行かれたいきさつ、これまでの茶事のお話などを伺いながら、今ある縁を大切にすること、チャンスの前髪を着実につかむということ、もうこうでしかなかったというくらいに道を自分で切り開くことの意味を学ばせていただきました。

Y様にもお待たせしてしまい大変失礼致しました。甥っ子さんのお話などを伺って「子供と一緒にお茶を楽しめばいいんだ」と思い直しました。どうぞよろしくお伝え下さい。

これまで暁庵先生のお茶会やお茶事を残念ながら見送ることが多く、思い切ってご訪問させていただきましたが、沢山の夢や勇気をいただきました。

またお会いできますように・・・ この度は本当にありがとうございました。  SNより  

 

 


2022年文月の稽古だより・・・夏休み前に

2022年08月01日 | 暁庵の裏千家茶道教室

   (お軸は「白雲抱幽石」(はくうん ゆうせきをいだく)、玉龍寺明道和尚筆)

   (花は白い木槿と百日紅、花入は鉄灯明台(白洲正子お好み)です)

 

一昨日(7月30日)は文月最後の稽古日でした。

午前中に久しぶりにF氏が稽古にいらっしゃいました。

猛暑の中、着物と袴姿だったのでびっくりし、F氏の気合がひしひしと伝わってきます。午後に奥伝があるので着物を着ていてヨカッタ!・・・と内心安堵しました(着物だとまた、教える側の気合が伝わるような気がして・・・)。

最近、責任ある仕事を受け持つことになり大変だったところに、コロナウイルスの急な展開で人手不足になっているとか。医療最前線で頑張っていらっしゃるF氏、そんな中でよくぞ来てくださったと思います。

 

 

10月末に予定されている茶会に備えて、濃茶平点前を2回稽古しました。

F氏を指導しながら思うことは

「きちんと基本の所作が出来ているので感心しています。きっとご指導された先生(学校茶道)が素晴らしい方だったのね・・・」

「いいえ、きっと先生はなかなか覚えなくって大変だったと思います」

「清流無間断」の如く脈々と伝え教えられていく裏千家流茶道の底力を実感した瞬間でした。

(「清流無間斷 碧樹不會凋」(せいりゅうかんだんなく へきじゅ かつてしぼまず)・・・活動するものは常に新鮮なりの意。不断の努力修行をいうそうです)

基本がしっかり出来ているので、濃茶点前もすぐに上手に出来るようになることでしょう。

姿勢、袱紗捌き、濃茶の清め方と手、引き柄杓など、気が付いたところはやはり基本のところでした。

秋まで焦らずじっくり取り組んで、濃茶点前を自分のものにしてほしいと思います。

 

    (打たれた露を撮りたかったのですが・・・

 

午後になってIさんとNYさんが奥伝の稽古にいらっしゃって、F氏と久しぶりに顔を合わせました。

Iさんは行之行台子の2回目です。

「先生、準備に時間がかかると思い、早く来ました」(なんか!Iさんのヤル気が伝わってきます)

竹台子の組み立てからやっていただけて丁度良かったです。

唐物、台天目などの基本をしっかり稽古しているので、2回目ですが行之行台子の順番や所作の特徴をお声掛けしながらも最後まで集中してがんばっていました。

「行之行台子は一番難しい(・・・と私は思っています)ので、9月と10月に出来たら2回風炉で稽古します。あと2回で自主稽古が出来るようにノートをとってくださいね」

 

  (教えるのに一生懸命で写真がありません・・・

 

次いでNYさんが大円草をなさいました。ベテランのNYさんですが、それでもいくつか気が付いた点やお家元が改められたことをご指導しました。

「NYさんのようなベテランさんになっても、風炉と炉で4つの奥伝を何年も何回も繰り返して、やっと身に付いていく何かが出来てくるの。それがお稽古だと思って、焦らず気長に取り組んでね。」と、奥伝を稽古されている生徒さんたちにお話しています。

「・・・それと、自主稽古をお勧めします。私も奥伝をお教えする時には自主稽古して順番や曖昧な所を確認するようにしています。共に頑張りましょう!」

どのように自主稽古をしていくのか、・・・それは自分なりに考えて、必要な稽古道具も少しずつ買ったりして、時には先輩や茶友と一緒に稽古したり、刺激しあいながら・・・いろいろな自主稽古を是非工夫して取り組んで欲しいと願っています。

 

ワアーイ! 今日(8月1日)から1ヶ月夏休みです。

暑いので、今は何もしたくない・・・けど。   

 

 

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