暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

暁天講座2013  建仁寺座禅会

2013年07月31日 | 京暮らし 年中行事
7月2日の半夏生の日に立ち返りますが、
建仁寺塔頭・両足院で半夏生を見た後で、建仁寺へ寄りました。
庫裏の玄関の衝立に
   大哉
   心乎
とあり、ちょうどそこにいらしたお坊さまに読みと意味をお尋ねしました。
すると、
   大(おお)いなる哉(かな)、心(しん)や。
   
と読んでくださり、禅語の意味する処はムニャムニャ・・・・うーん。
「心は自由で大きく、東西南北いずれへも広げられる」
・・というようなお話だったような。

お話を伺って勝手ながら
「関 東西南北活路通」
「応無処住 而生吾心」
という二つの禅語を頭に思い描いておりました。

            

あとで建仁寺開山・栄西禅師の著書「興禅護国論」の序と知りました。

   大(おお)いなる哉(かな)、心(しん)や。
   天の高きは極むべからず、しかるに心は天の上に出づ。
   地の厚きは測るべからず、しかるに心は地の下に出づ。
   日月の光はこゆべからず、しかるに心は、日月光明の表に出づ。
   大千沙界は窮むべからず、
   しかるに心は大千沙界の外に出づ。
   それ太虚か、それ元気か、心はすなはち太虚を包んで、元気を孕むものなり。
   天地は我れを待って覆載(ふうさい)し、日月は我れを待って運行し、
   四時は我れを待って変化し、万物は我れを待って発生(ほっしょう)す。
   大なる哉、心や。

                         

お尋ねしたお坊さまから7月12日~14日まで暁天座禅会があるので
ぜひいらっしゃいと、お声を掛けて頂きました。

            
                 金澤祥子書 「風神雷神」

7月14日(日)6時、建仁寺へ自転車で出かけました。
前日の激しい雷雨が上がり、清々しい気が方丈に満ちていました。
方丈の部屋には座禅用座布団が用意され、
すでに座禅を組み、めい想に入っている人もいます。
まもなく座禅の仕方や作法の教えがあり、腹式呼吸を調えながら
約300名の参加者が座禅に入りました。

眠気に襲われたり、心に雑念を生じると、
手を合わせて身体を前に倒します。
それが合図となり、お坊さまが警策で背中を二度敲いてくださいます。
15分づつ、休みをはさんで30分、雑念を祓い、ひたすらめい想します。
それは心が洗われるような気持のよい時間でした。

              

              

建仁寺の暁天座禅会、なんかやみつきになりそうな座禅会です。
・・・と思っていたら、月に一度、座禅会を開いているとのことでした。
次に建仁寺管長・小堀泰厳老師の講演を拝聴しました。

暁天座禅会の終了後、漬物(梅干と沢庵)と粥がふるまわれました。
その際に、食作法についてもご指導があり、
「器を回しますので、施餓鬼といって
 食べる前に粥を少しこの器に入れていただきます。
 沢庵一切れは残して、最後に湯が出ますので、それで食器を清めます」
さすが、四ツ頭之式で名高い建仁寺の朝粥の作法・・と思いました。

              
                      朝粥の席

              


その後、方丈前の庭を眺めてくつろいだり、法堂天井の双龍図を拝観し、
庭へ出て茶室・東陽坊と露地を見学したり・・・
座禅と講話で清められた心を広く遊ばせて頂き、お接待にただ感謝でした。

                                    


正午の茶事  暑中有涼水

2013年07月27日 | 思い出の茶事  京都編
               (写真がないので・・・)

盛夏の候、正午の茶事へお招き頂きました。

祇園祭が終わり、茶友や息子たちが潮が引くように帰ってしまうと、
急に静かになり過ぎて、ちょっと気落ちしていました。
そんな折のYさんのお招きがとても嬉しく、元気がもらえそうです。

Yさんは小さな別宅をお茶が出来るように改装したそうで、
そのお宅を訪問できるのも楽しみでした。

玄関を入ると、まるで新築のよう・・・。
三畳間の待合は冷房で冷やされていて、何よりの歓迎を受けました。
墨で青松釣舟が描かれた色紙も涼しさを呼び込みます。
まもなく、正客のSさまが到着し、冷たい麦茶が運び出されました。
客4名、渇いた喉を潤してから、外の腰掛待合へ向かいました。

            


水色のカーテンで目隠しされた廊下(?)を通って外へ出ると、
緑あふれる小さな庭がありました。
スギコケなど数種の緑苔がキラキラ露をいっぱい含み、
ソヨギ、トクサ、ギボシも植えられ、目を楽しませてくれます。

ご亭主が水桶を持ち出し、蹲の水を撒きました。
いつもの見慣れた光景ですが、水の持つ清浄感に心が洗われ、
「ザッ~」と蹲踞にあけられる水音に滝の清音を連想するのは
盛夏の茶事ならではの醍醐味です。

席入すると、四畳半の茶室の床に、
「澗水湛如藍」(かんすいたたえ あいのごとし)
福本積応和尚の筆です。
禅語の意味は深いのでしょうが、そこはさらりと
「谷川の水の涼しさを感じて頂ければ・・・」

            

            


懐石の創意工夫が素晴らしく、美味しかったです。
炊きたての一文字に、汁は焼き茄子の赤だし、冷たく、山椒を利かせて。
向付は平目、お酒はえーと・・・コクのある東北産でした。
煮物椀は、鱧、ジュンサイ、管ゴボウ、輪スダチ(青柚子?)、清汁仕立。
ヒントと刺激がたくさん盛られた懐石を感謝しながら頂戴しました。

初炭手前が始まり、炭斗は涼やかな清風籠でした。
眉風炉に霰遠山の筒釜が掛かっています。
さらさらと炭が置かれ、香が焚かれます。
香合は「屋形船」、奈良浮見堂の古材で作られたものとか、
皆でこの舟に乗って川を下り、海まで・・・というご趣向かしら?
火相を気にしながら、ブルーに白い波模様の錦玉を頂きました。
ご亭主の手づくりで、銘「さざなみ」です。

「外腰掛は暑いので、合図があるまで待合で涼んでくださいませ」
・・・嬉しい気遣いでした。

銅鑼の音を聴き、席入すると、
尺八の花入に、ピンクの木槿と矢筈ススキがいけられていました。
夏の日差しの元、無心に花開く木槿は、はっとする可愛らしさです。

             

ご亭主の気持の入ったお点前で頂く濃茶は特別なものですが、
きりっとした渋みが程よく感じる濃茶を美味しく頂戴しました。
宇治茶園の在来種とか・・・茶銘がう~ん?です・・・。

後炭のあとに、風炉が真ん中へ寄せられ、薄茶は流し点です。
風炉の流し点は初めての経験ですが、
ご亭主と語り合いながら頂く薄茶にふさわしい、素敵な趣向でした。

京都在住の作家さんたちの茶碗が次々と登場し、これまた興味津々。
きっとご亭主の思い出がいっぱい詰まっていることでしょう・・・
いつか再び、ゆっくりお目にかかりたい・・・と思いました。
最後に、茶杓銘が「しおさい」と伺って、
一同なぜか「潮騒メロディーズ」を連想しながら、帰途につきました。

             

              
ご亭主のYさんは一人で全てをきちんとやり遂げられ、見事でした。
・・・が、お疲れいかばかりかと心配になり、後日電話すると、
「・・・疲れましたが、とても気持のよい疲れでした」
「良かった! 本当に素晴らしいお茶事をありがとうございます!」

                                   




祇園祭2013-4 献茶式・万亭の茶席へ

2013年07月23日 | 献茶式&茶会  京都編
              「万亭(一力茶屋)」の赤前垂れ
              (茶会記念に内側からパチリです)

ハ坂神社献茶式のあと、茶友と一緒に茶席をまわりましたが、
茶席は9席もあります。
初めてのことで、「どうまわったらよろしいかしら?」

            
            祇園祭らしい粽の菓子(拝副席にて)

最初にこの時しか入れる機会がない「万亭」へ向かいました。
万亭は祇園花見小路に面し、赤前垂れの店と呼ばれるお茶屋さん、
祇園の中で最も格式が高く、「いちげんさんお断り」で有名ですが・・・。

歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」の七段目、祇園一力茶屋の場は、
大石内蔵助(芝居では大星由良之助)が敵の目を欺くため、
「万亭」で遊興三昧の日を送ったことに基づいています。

「万亭」は元々の屋号ですが、「仮名手本忠臣蔵」の芝居が大当たりし、
「一力茶屋」という芝居の屋号で呼ばれるようになったとか。
「万」の字を解体して「一力」・・・洒落ていますよね。

赤前垂れをくぐり、待合へ進みました。
人が溢れる広い待合でお軸や会記を眺めながら、三席目に本席へ。
床には長刀鉾の扇子が飾られています。

            

   あやかれや 長刀鉾の 籤とらず   即中斎筆           

本席のお軸は「今日是好日」而妙斎筆です。
ここでやっと万亭の茶席は表千家・ 而妙会担当に気がつきました。
お点前がないので、すぐに舞妓さんがお菓子を運び出してくれました。
お菓子は「葛焼」(虎屋製)です。

            

            

続いて舞妓さんによってお茶が運び出され、
部屋中が舞妓さんで溢れ、万亭らしく華やかな茶席です。
仁清写の青楓絵の替茶碗(善五郎造)で薄茶を頂きました。
(喉が渇いていたので美味しい薄茶が飲みたかったなぁ~)

            

舞妓さんの容姿や着物が美しく珍しく、つい見惚れてしまい、
お道具はあまり印象に残らなかったのですが、
一つだけ、点前座に荘られた主茶碗に惹きつけられました。
赤楽 銘「白雲」 当代吉左衛門造、形も釉薬の景色も穏やかな佇まいです。、
当代のいつ頃の作か興味を持ちました。

            

            
             三玄会(常盤殿)の優雅な設え

その後、拝服席 今日庵(常盤新殿) 、 副席 三互会(常盤殿) 、
菓匠会(常盤新殿)の三席を茶友とまわり、お腹も心も十分満たされて
帰途につきました。 
来年の献茶式へみんなで来れたらいいわね・・と話しながら。


        
       六種の内から「水藻」を選び、香煎で一息(菓匠会にて)

    
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祇園祭2013-3 ハ坂神社献茶式

2013年07月20日 | 献茶式&茶会  京都編

7月16日は八坂神社献茶式です。

2013年は裏千家流お家元が献茶されるので
朝早くハ坂神社本殿前にKさん、Yさんと並びました。
記録的な猛暑が続いたせいでしょうか、参列者が少ないように思いました。
東京を朝立ちされたOさんも献茶式に間に合い、ご一緒できて良かった!

             
                     献茶式が行われた本殿

本殿の点前座には白木の台子が置かれ、準備の真っ最中です。
天板中央に長盆にのった濃茶器(右)と薄茶器(左)、
長盆の右に台(白木)にのった金の茶碗(木蓋?)、
左には台にのった銀の茶碗(木蓋?)が置かれています。
茶碗は天目茶碗ではなく嶋臺のような茶碗(楽?)に見えました。
唐銅皆具、風炉釜は切り合い唐銅朝鮮風炉です。
台子の前に20センチほどの白木の板が置かれていました(?)。

               
                       本殿の点前座

お家元、来賓の皆さまが席に着かれ、いよいよ献茶式です。
能のように最初に笛が吹かれ、雅楽が奏でられました。
祝詞やお祓いの後、お家元と代表者が玉串を奉げ、参列者一同参拝します。

真之炭手前が始まりました。
神折敷を運び出し、釜の蓋を閉めますが、帛紗は紫でした。
袱紗捌き、羽根の浄め方、火箸の抜き方、そして、流れる様な所作と間合い、
しっかり頭に刻みつけたい・・・と見つめました。
炭が置かれ、香が焚かれ、香合はそのまま折敷に入り、釜が掛けられました。
紙折敷、火箸が羽根で清められ、火箸が杓立へ戻されました。

時間にして10分位でしょうか・・・アッという間で夢のようです。
献茶式とはいえ、お家元の炭手前を間近に拝見させて頂き、感激しました。

              
                      神楽殿に参拝する人

続いて、神さまに献じる御茶が点てられました。
朔日稽古で、「お家元の献茶式の点前は神仏に茶を献じるための点前」
とお習いしたことを思い出し、気が引き締まります。

長盆が下ろされ、白い帛紗を真に捌いて濃茶器が浄められ、
金の茶碗で濃茶が点てられます。
茶筅通しが終わり、茶碗が拭かれ、濃茶を入れる前に
お家元は懐から紙で作られた口覆いを出し、付けらました。
ちょうどそのころに祇園囃子が始まりました。

               

「コンチキチン コンコンチキチキ コンチキチ・・・」

お家元が一心不乱に茶を練っています。
お家元の所作を一つも見落としたくない緊張感の中、
祇園囃子だけが高らかに清らかに響き渡っていきました。

まさに、祇園祭献茶式2013のクライマックス。
「今、此処に居ることができて幸せ!」
・・・何とも言えない感動がこみあげてきました。

今まで経験した中で最高の献茶式でした。
いろいろなご縁に深く感謝いたします。
                                 

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祇園祭2013-2 祇園祭へ友 来たる!

2013年07月18日 | 京暮らし 年中行事
                 ステキな「山鉾・鯉山の見送り」は
                 16世紀ベルギー製のタペストリー 

祇園祭献茶式へ茶友KさんとYさんが関東からやってきました。
15日の宵々山へ繰り出す前に灑雪庵へ寄ってもらい、
粗茶一服差し上げたいと思いました。

特に趣向もありませんが、花屋さんへ行くと、
「この花は?」
初めて見ますが、大好きな檜扇水仙に似ています。
「檜扇(ヒオウギ)です。
 祇園祭の花で、四条通や鉾町では祇園祭にこの花を生けるんです。
 それを見て歩くのも楽しいですよ」
「あらっ、私もこれにするわ。 1本でもいいかしら?」
檜扇は、葉っぱが扇を広げた姿に似ていることから名づけられたとか。 

                  
                                季節の花300提供

床は「滝 直下三千丈」、黄梅院・太玄和尚筆です。
檜扇と山ゴボウを有馬篭に入れました。

Yさんとは2年ぶりでしょうか?
顔を拝見した途端、いろいろなことが次々と思い出されて
「お久しぶりです。よくいらっしゃいました・・・」
両親の介護、母上との別れなど大変な日々を過ごされたことが推察され、
今回の祇園祭を本当に楽しみにいらっしゃったのでした・・・。

ご挨拶のあと、お菓子をお出ししました。
炭手前は省略し、すぐに濃茶点前です。
湯相もよく、濃茶をたっぷり練りました。
「お菓子のあとにキリッとした渋みの濃茶が最高でした」
(・・・あぁ~よかった・・)
濃茶は一保堂の青雲、手製のきんとんの銘はそこ紅、
濃茶茶碗は志戸呂焼・利陶作です。

干菓子の代わりに「したたり」(亀廣永製)をお出しし、
長刀鉾絵と蓮絵の茶碗で薄茶を点てました。
薄茶は洗い茶巾、
茶巾の絞り方、音の聞かせ方などを教わりながら・・・楽しかったです。
それから「いざ!宵々山へ」。

                

                
                     菊水鉾の茶席(遠州流)

初めに初日に訪れた菊水鉾の茶席へお連れすると、15日は遠州流でした。
席は空いていましたが、お点前が終わる所でしたので案内の方へ
「お点前を是非拝見したいのですが・・・」
すると、
「それでは次回へ入って頂きますので、こちらでお待ちください」
と待合席へ案内されました。

三人揃って最前列の席へ座ることが出来ました。
「したたり」が運ばれ、薄茶も美味しく頂戴しましたが、
なかなかお点前が始まりません。すると、隣席から
「毎年、遠州さんの点前を楽しみに菊水鉾の茶席へ来ています。
 ぜひ、拝見したいのですが・・・」
とお声が掛かってお点前が始まりました。

                
                     仕組んだ茶筅の向きに注目

男性の、きちんとした丁寧なお点前に三人とも惹きつけられました。
右腰につけた帛紗、膝上で帛紗をたたむ所作、袱紗捌き、
目の前で千鳥茶巾のように茶巾を優雅にたたみ、柄杓や茶筅の持ち方の違い、
点前の中に濃茶のような所作もあり、もう興味津々でした。
薄茶がYさんへ運ばれてラッキー! これも好い思い出となります。

拝見に回された茶碗が印象に残りました。
厚手の白磁ですが雨漏り手のような内面、胴に呉須で蟹と海老が描かれています。
はてな? と思い、お尋ねすると
「遠州七窯の一つ、古曾部で、江戸時代の作です」
古曾部焼の茶碗は野趣を感じる、味わい深いものでした。

               

菊水鉾を出ると、夕闇が迫っています。
一歩通行のムンムンする雑踏の中へすぐに呑み込まれて行きました。

                                     

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