暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

逆勝手上げ台目の薄茶

2020年12月27日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

(孤高の大欅・・・葉を落とし、逞しい裸体の彫像みたいに堂々と立っている)

 

12月22日はS先生の東京教室の今年最後のお稽古でした。

3つの班に分かれていて、暁庵の属する2班が個人点前をご指導いただきました。

その日の科目は、真之炭手前(Oさん)、大円真(Rさん)、台子の濃茶(暁庵)、台子の貴人清次薄茶(Iさん)、昼食をはさんで、逆勝手上げ台目で薄茶(I氏)、貴人清次濃茶付花月(3班)、壷莊付花月(1班)でした。

・・・そして、いつもいろいろな刺激を頂いています。

 

(白椿の大木・・・炉開きの頃から咲き始め、いつもお世話になっています)

 

その1つ、Rさんが大円真をなさいました。

Rさんの大円真をうらやましく思いながら拝見していました。というのも奥伝はどれも長く、途中で左膝が悲鳴を上げそうなので遠慮しています。

コロナウイルス対策で客は一人、Iさんです。縁高でお菓子が運ばれ、お点前が始まりました。

いつも美味しいお菓子が用意されていますが、この日は練り切りで銘「紅歌(こうか)」(浅草・千茶製)でした。

大円真の菓子は7種なので、Rさんは「紅歌」の他に6種のお菓子を用意していました。6種は主にドライフルーツで、プルーン、デーツ(DATE)、ピーカンナッツ、ナッツ、クルミ菓子、林檎(生)です。中にはRさんの故郷のアメリカから持ち帰ったものや自家製も含まれていました。

今までに何度も奥伝をご指導頂いていましたが、お菓子の持ち出しは思いつきませんでもうびっくりし、 同時にS先生のお稽古に対するRさんのお気持ちがひしひしと伝わってきました。

お茶の稽古とは先生から一方的に学ぶものではなく、教わる方もそれなりの努力をしてこそ良い稽古になる・・・と思っていたので、Rさんに大いに刺激を受け、とても感動したのです。

 

(青空に映える五葉松・・・大好きな木だが2本あったのが1本になってしまった)

 

もう1つは、逆勝手上げ台目薄茶の客をしました。

上げ台目という設定も珍しいですが、逆勝手も新鮮でした。

台目切は、茶室の炉の切り方(八炉)の1つで、出炉の形で点前畳が台目畳のことを言い、点前畳が丸畳の場合は上げ台目切と言います。

興味深いお話をS先生から伺いました。台目構え(台目切炉・中柱・釣棚からなる点前座の構えをいう)について南方録に興味ある記述「台目構えには台子が封じ込められている」があるそうです(詳しくはこれから南方録を調べますが・・・)。

それで、水指、茶入、茶筅などを置く位置が台子と同じなのだ・・・と大いに納得です。

お点前さんはI氏、逆勝手を感じさせないようなすらすらと美しいお点前で、薄茶を点ててくださいました。大海を薄茶器にしたご趣向に目を奪われ、割り高台の萩茶碗や唐津焼水指に魅せられました。

茶杓をお尋ねすると、能がお好きだったという玄々斎作で銘「幽清」と応えられ、一瞬、「ここが能舞台でI氏のお茶事に来たみたい・・・」と思ったほどです。

「どうぞお仕舞を・・・」のタイミングを逸して困っていたら、さりげなく白湯を入れてくださいました。「薄茶も白湯も美味しゅうございました。ありがとうございます!」

 

・・・・S先生と素敵なお仲間とお稽古できることに感謝して、足腰が痛くっても頑張って続けていけたら・・・と願っています。

 

 


2020年師走の花ゆう会

2020年12月21日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 

12月19日(土)は花ゆう会でした。

花ゆう会は花月を中心とした勉強会として2018年3月に会員を募集し、5月にスタートしました。

今年は新型コロナウイルスのため3月~8月まで休会していましたが、9月より再開しています。密を少しでも少なくするために会員は5名です。

その日はUさんがお休みのため、NYさんに臨時の参加をお願いしました。丁度1年前にNYさんから五葉会(七事式の勉強会で現在は休会中)に入りたい・・・というお電話を頂きました。

満席だったのでお待ちいただいている間にコロナウイルスが襲来し、五葉会は休会になりましたが、花ゆう会の臨時会員として待機してくださったのです。

本当にお待たせしました。初めて花ゆう会へお出ましくださって、私も嬉しくお迎えしました。

 

 

床のお軸は「去々来々来々去々」、吉野棚に水指は染付くらわんか文(松月作)、茶入は膳所焼肩衝、棗は香之図棗です。

最初は且座之式です。

且座之式の偈頌は「是法住法位」(これほうは ほういにじゅうす)。予め決められた役割(本分)を果たすことで、他人の領域には立ち入らず、自分のおかれた役職を天職と心得て全うせよ・・・という示唆が含まれています。

この日の且座之式は、東(濃茶)はN氏、半東(東に薄茶を点てる)はNYさん、正客(香)はSさん、次客(花)はM氏、三客(炭)はHさんでした。

初めて参加したNYさんが半東で大活躍し、花が苦手・・・といっているM氏が次客だったのもお茶の神さまの配慮のようでした。

 

 

次は平花月、花月の基本を確認し身に着けるために、平花月を修練するように心がけています。

平花月の途中でNYさんが体調不良で早退しました。きっと緊張していたのでしょうね・・・それとも一酸化炭素中毒かしら? 密閉を避けて窓を2カ所開けておいたのですが・・・。

待合でゆっくり休んでいただいてからお帰りになりました。(NYさん、お大事に! 懲りずにまた来てくださいね・・・

 

 

4人で平花月を続けてもらい、3科目目の壷莊付花月之式へ暁庵が入りました。

月(飾り紐を結ぶ役)は10月に続いてM氏です。紐結びは8分以内の完成を目指してほしいのです。8分にはまだまだですが、前回よりスムーズに結べるようになりました。なんでもそうですが、自分で積み上げていくしかないのです。

濃茶は「金輪」(丸久小山園)、薄茶は「江雲の白」(柳桜園)、お菓子は「おもかげ」(虎屋製)、「菊」(和三盆、豊島屋製)、「イチゴ大福」(石井製で絶品!)でした。

2021年1月の花ゆう会の科目は仙遊之式と平花月を予定しています。来年も楽しく頑張りましょうね。 

 

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去々来々来々去々

2020年12月18日 | 暁庵の裏千家茶道教室

    (春を待つ巣箱    2020年12月に設置)

 

暖かかった師走も半ばを過ぎ、大雪情報が冬将軍の到来を告げています。

片づけ物や大掃除、それから年始の準備にかからなくてはいけないのですが、今一つ気合が入らず、懐石道具や茶道具などの片づけを一日伸ばしにしています。

・・・というのも、ここ連日新型コロナウイルスの新規感染者数が更新中で、用事があっても東京や横浜へ出かける気になれないのです。

でも今日はお稽古があり、Iさんが午後にいらっしゃいます。SYさんもご一緒の筈でしたが、仕事関係でコロナウイルスの感染者が出たそうで、濃厚接触者とはならなかったものの大事をとってお休み中です。

12月16日付の感染者数は国内合計で2982人、都内最多の678人、神奈川県でも最多の287人でした。だんだんコロナウイルスの包囲網が狭まっているのでしょうか?

さて、気を取り直して掃除をし、床のお軸を変えました。

 

 

「去々来々来々去々」

この語句(禅語?)は、今日庵での朔日稽古の折に心花の間ではじめて出会いました(たしか大亀老師の御筆でした)。とても心惹かれて、その後、足立泰道師にお願いして書いていただいたお軸です。覚えているだけで、「秋待つ撫子の茶事」「クリスマスの茶事」など何度も掛けていますが、令和2年の年末に掛けたくなりました。

新型コロナウイルスに始まり、180度世の中が変わってしまった令和2年(2020年)がようやく去っていき、新たな年がやってきます。

どのような年になるのか、ワクチンは普及するのか、オリンピックは開催されるのか、庶民の暮らしは成り立つのか、お茶の未来はどうなるのか・・・・

「去々来々来々去々」・・・歳月も人も病もあらゆることが去ってはまた来る、来てはまた去って行く。

どんなことになろうとも淡々と受け入れて対処し、去って行くのをひたすら待つ・・・そんな覚悟が必要なのだよ・・・と言っているようでもあります。

 

床の花は蝋梅、とても好い薫りがします。まだ葉が黄ばんでいないのが瑞々しくってよろしいかしら・・・と活けてみました。花入は虎竹の二重切です。

今日の稽古科目はIさんが初炭と唐物、そのあとにS先生の東京教室でご指導をお願いしている台子の濃茶を稽古する予定です。

 

  (黒真塗の炉縁に「去々来々来々去々」を発見!)

 

さぁ~っ! 着物を着て、化粧をしましょう。稽古をがんばりましょう」と自分自身に気合を入れました。着物は紺系の結城紬(・・・だと思う)、帯は紅型の名古屋帯です。

Iさんがいらしたようです・・・

「先生、今日も宜しくお願いいたします」

「よくいらっしゃいました!」

・・・いつものように普通にお稽古できることが嬉しい年の暮れです。

 

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晩秋の薔薇園へ・・・その2

2020年12月16日 | 薔薇の茶会・・2021年5月

   「FLOWER GARDEN」にて   2020年12月1日撮影

(つづき)

ブログに晩秋の薔薇園を書いてから、「どなたか御一人からでもコメントがないかしら?」と心ひそかに待っていました。

・・・昨日、TIHOさまからメールを頂き、飛び上がるほど喜んでおります。以下に一部を掲載します。

 

 TIHOさまからのメール

暁庵様

はや臘月も半ばとなりました。暁庵様がお元気に御茶事をされているご様子をいつもブログで拝見しております。

そのブログで、薔薇園の茶会のお話しを読んでメールさせていただきました。

じつは私は若い頃からの薔薇好きなのです。

ブログを拝見してとても懐かしく、薔薇園でのお茶会の折には、是非ぜひお声をかけて頂きたいと思いました。

 高校の敷地内に薔薇の三叉路がありまして、15歳の時に園芸部でバラの世話をして以来、35歳まで薔薇をつくっておりました。

アパートの鉢植えから始まり埼玉在住の頃は、25坪の畑を借りて大株を100本ほど育てていましたが、或る時に薔薇づくりをやめました。

何故、薔薇づくりをやめたか、それは災難というか、事故というか・・・

畑をやっていた頃、5~6月は狂乱の月でした。

朝に薔薇を切るとバスタブいっぱいになり、仕事を終え帰宅してもすぐお風呂に入れないほど。それでバケツ3つほど薔薇を入れて通学路に「ご自由にお持ちください」と出したりしました。

車を止めて花見をする人が隣の畑にブルーシートを敷いて叱られたり・・・好きで作っていたのですが、悪目立ちしたのでしょうね。

 

   (ちょっと寂しい冬場の薔薇園・・・2020年12月1日撮影)

バラは冬場は大株を30~40㎝に剪定し、12月から2月まで作業はお休みです。

1月のある朝、久しぶりに畑に行ってみたら、大きな穴が50個ほど空いていて、そこに植わっていた薔薇がありません。余りのことに驚き、どうしたらよいかわかりませんでした。

借りている土地は鍵をかけるわけにもいかず、今のように防犯カメラも思い浮かびません。

フルタイムで勤めて次男の産休明けでしたので、早朝張り番をするわけにもいかず、結局、2月までに100本の株を全部盗られてしまいました。

盗った人はどう見てもプロ、(大株なので掘る手間とトラックが必要ですし) 各国の珍しい品種を取り寄せ、割り箸のような苗を3年ベランダで育ててから畑に移植していました。

バラの名、産種国、色、香りの名札付です。大きな鉢に植えて売れば、かなりの値がついたと思います。

余りのことに呆然とし、その年の春に畑を解約して薔薇づくりをやめました。

 

 (大輪の黄色の薔薇が咲いています・・・・2020年12月1日撮影)

いま我が家の屋上にある薔薇はプレゼントの寄せ植えに入っていたミニバラばかりで大株はありません。

果物や家畜の盗難のニュースを聞くたびに、ボコッと穴のあいたあの畑の風景を思い出します。

薔薇は大好きだけど、個人の薔薇園は土地持ちのお金持ちの趣味なのだと若い私は思ったのでした。

若い頃の挫折の話を長々と申し訳ありません。

 

20年も夢中でやっていたこともある日やめてしまうことがある、とその時知りました。

ちゃんとお茶を始めてまだ12年くらいです。

「歳歳年年人同じからず」

今年は3月から9月まで茶事はできず、10月に一客一亭で再開したもののまた年内のお約束をキャンセルさせていただきました。来年こそ再開したいと思います。

時間があるので、これまでの茶事のことを反芻していますと、当時気づかなかったことなども気づき、あれこれ考えています。

お茶は楽しく難しく、でも続けていきたいと思います。

暁庵様にもどうぞ良いお年をお迎えください。      TIHOより

 

   (アーチではまだまだ咲いていました・・・2020年12月1日撮影)

 TIHOさまへのメール

薔薇とお茶を愛するTIHOさまからメールを頂き、ありがとうございます。もうもう嬉しく拝読しました。

薔薇園の茶会を開催できるようでしたらぜひお出ましくださいませ。来年5月15日以降の土曜日または日曜日を希望していますが、まだ未定です。

20年間の薔薇との親交の歴史を感慨深く読ませて頂きました。

お仕事と育児の傍らに大切に育てた薔薇100本が盗まれたくだりにはわがことのように悔しい思いがしました。

私は鑑賞するばかりですが、手塩にかけて育て上げ、大輪の薔薇を咲かせる喜びはいかばかりだったか・・・と存じます。

薔薇園のオーナーは土地の方で、造園会社を経営されています。薔薇園の他にも「農場」と称する広大なガーデンを造園中で、そちらもとても魅力的な場所です。「農場」は1回行っただけですが、秘密の花園と呼びたいような不思議なガーデンで、私にとって玉手箱みたいです。

近くにいろいろ魅力的な場所があることを発見できたのもコロナ禍のおかげかもしれません。(時間もあり、少しでも筋力をつけるために歩いていますので・・・)

来年、お茶事やお茶会で元気にお目にかかれることを楽しみにしております。   暁庵より

 

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晩秋の薔薇園へ

2020年12月12日 | 薔薇の茶会・・2021年5月

       (初夏の薔薇園・・・5月21日撮影)

 

今年の5月中旬のことです。散歩の途中で素敵な「薔薇園」を見つけました。

「FLOWER GARDEN」の看板があり2018年の開園みたいです。家から20分くらいの所にあり、今まで知らなかったのが不思議なくらい、小さいけれど素晴らしい薔薇園でした。

 

それ以来何度も散歩で訪れましたが、いつも誰もいないのです・・う~ん??

行くたびに色とりどりに咲く薔薇に魅せられて、「いつかここで薔薇に囲まれた小さなお茶会が出来たら・・・」という夢を抱くようになりました。社中の方たちも見に行ったのですが、「素敵な薔薇園ですね。でも誰もいませんでした・・・」と異口同音。

 

(5月の薔薇園のテラス・・「ここで小さな茶会をしたい!」と夢見ています)

 

口切の茶事が終わったので、散歩の途中で久しぶりに薔薇園へ行ってみました。もう盛りは過ぎたけれど秋咲きの薔薇がまだ咲いているかもしれません・・・。

 

    (散歩道にある銀杏がきれいでした・・・)

       (晩秋の薔薇園・・・11月30日撮影)

華やいだ初夏とは大違い、何か物悲しいような寂しさの中、薔薇はひっそりと咲いていました。

いつものように誰もいませんでしたが、薔薇はきっと寂しくもなく淡々と咲いているのでしょう・・・北原白秋の大好きな「薔薇の詩」を思い出します。 

薔薇バラノ木二
薔薇バラの花サク。

ナニゴトノ不思議ナケレド。

 

道端で偶然出会った男の方が薔薇園のオーナーは我が家近くの某造園会社だと教えてくれました。

天の啓示のような気がしてすぐにメールでコンタクトしました。2日後に会社の担当の方がいらして、「薔薇の茶会」のお話を聞いてくださいました。ご返事はまだですが・・・楽しみに待っているところです。

 

    (晩秋のテラス・・・12月10日撮影)

 

12月6日(日)に社中のKさんが我が家へ用事でいらっしゃいました。早速、薔薇園のオーナーがわかって「薔薇の茶会」の協力を打診している旨をお話しすると、びっくりした様子でした。

「先生、前に頼まれていた「薔薇の詩」を書いてみたのです。お気に入るかどうかわかりませんが・・・今日軸の表装が出来上がったのでお持ちしました。偶然とはいえ、今、薔薇園のお話を伺ってびっくりしたのです・・・」

私もドキドキ胸が高鳴って鳥肌が立ちました。お茶をしていると、時々このようなことが起こるのですが、本当に不思議です。

早速、床の間にお軸を掛けて拝見しました。あの「薔薇の詩」が、Kさんの書体とデザイン、墨の色や濃淡も美しく書かれていました。

あぁ~・・・なんて!素晴らしい書なのだろう。それに、このタイミングでこのお軸を届けてくださるなんて・・・もうもう大感激です。

ありがとうございます!

きっとお茶の神さまも応援してくださって、Kさんにお軸を届けさせたのかもしれません・・・ね。

薔薇とお茶を愛する方々と手を携えて「薔薇の茶会」ができたら・・・と夢見ています。

 

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