暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

ひねもすのたり正午の茶事・・・(3)

2024年04月27日 | 再び車で四国遍路

 

(つづき)

銅鑼を4つ打って後座の席入りをお知らせしました。

後で「席入りの時、空に三日月がとてもきれいに見えた」と伺い、不思議な巡り合わせを感じました。

後座の床に花を生けますが、いつも「何の花をどのように生けようかしら?」と迷いながらも、花のことを考える時間が好きになりました。

前日にツレがラジオ体操の帰りに採取してくれた花がとても素晴らしかったので、すぐそれに決めました。でも花入で迷いました。2つの花入に入れて水屋の方に見てもらうと、皆が「こちら」と言った方を床へ。

花は白椿と小さな紫の花をつけているアケビです。最初は青磁の花入(お正客SKさまと出逢った東美アートフェアで購入、川瀬忍作)と思っていたのが、「こちら」の火吹き竹になりました。

   (白椿とアケビを火吹き竹の花入に生けました)

心地よい緊張を覚えながら茶碗を持って点茶盤の点前座に座ります。

帛紗をさばき、茶入を清め、茶杓を清めていくと、次第に無心になって美味しい濃茶を差し上げることに集中していきました。

主茶碗を拭き清め、濃茶を掬いだし、湯を入れました。4年間各服点でしたが、久しぶりに1碗で2人分を練りました。湯加減が合わず、二度湯を足すところを三度足しました。でも、たとえ習いに背くとも美味しい濃茶を・・・と思います。

「どうぞ2名様で・・・」

1碗で2人ずつ2碗を使っての濃茶・・・思えば4年ぶりかもしれません。気心知れたお客様なので、濃茶も薄茶もこの度は各服点をやめました。

「お服加減はいかがでしょうか?」

「美味しく頂戴しています」というお言葉に安堵して二服目にかかりましたが、二服目も湯を三、四回足して納得いく濃度に調節しました。以前は一碗で5人分を練っていたことがまるで夢のようです・・・。

濃茶は坐忘斎お好みの「延年の昔」、星野園詰です。

茶碗は清めずにそのまま拝見して頂きました。一碗目の茶碗は一入作の黒楽、藪内流7代桂陰斎の銘「不老門」です。

二椀目の茶碗は高麗雲鶴、箱裏に小堀政安(蓬露)が和歌を書きつけており、和歌から「玉箒」と名付けています。

お客さまからいろいろな感想を頂戴しながら、「藁屋に名馬」の茶碗の見どころや出会いのエピソードを紹介しました。

茶入は瀬戸正木手の肩衝、表千家流12代即中斎の銘で「松の緑」、仕覆は丸龍金襴です。

茶杓は鵬雲斎大宗匠の参禅の師であった後藤瑞巌和尚の御作で銘「無事」です。

暁庵の大好きないつもながらの茶道具ですが、お客さま、特にお正客様の感想が趣深くステキだったのが印象に残っています・・・。

   (花も一期一会・・・白椿は「限り」という名前です)

濃茶が一段落すると、床の花の話題でにぎわいました。花の周りにごく少量の露を打ったのですが、席入りの時の印象が強烈で、その露が早や薄れていく様子が何とも言えなかった・・・と、皆さまが異口同音でした。

白椿が「限り」という名前だと申し上げると、皆さまそれぞれ思うことがあったようで・・・。

 

濃茶の後は後炭で炭を直し、薄茶点前を半東Y氏にお願いしました。

Y氏も半年ぶりの立礼の薄茶点前なので、しっかり稽古して臨んでくれました。お正客SKさまがY氏のお点前を褒めてくださったのがとても嬉しく、Y氏の日頃の努力が報われた気がしました。

薄茶は「金輪」(丸久小山園)、干菓子は「桜川」(水と桜の和三盆の干菓子、東宮製)です。

茶碗は主茶碗の魚屋(トト屋、韓国、ミン・ヨンギ作)と、青い海を連想して銘「淡路」(琴浦窯、桐山作)の2碗を使いました。

棗は牡丹銀杏蒔絵のある京都の町棗、茶杓は銘「寧」、暁庵の友人の陶芸家・染谷英明氏の作です。

薄茶のお代わりや白湯所望があって、半東Y氏が最後まで大活躍してくださり、「ひねもすのたり正午の茶事」が無事に愉しく、これにて終了です。

 

  (その夜の月・・・4月14日10時頃に撮影しました)

茶事が終わった夜の9時過ぎ、クールダウンを兼ねて夜の公園へ出てみました。

後座の席入りで見たという三日月を私も見てみたいのと、この日まで踏みとどまってくれた桜を見納めに・・・。

   (何とか踏みとどまってくれた桜、夜桜を映す)

こうして余韻を残しながら、「ひねもすのたり正午の茶事」が終わりました。

一座建立の元、また一つ心に残る茶事になりました。

皆さま、本当にありがとうございました! (ウルウル・・・) (まだつづく)

 

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ひねもすのたり正午の茶事・・・(2)

2024年04月26日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

  

      (点茶盤の点前座・・・終了後の撮影です)

つづき)

ご挨拶の後に香盆を用意しました。

七事式を修練したお仲間なので、花月札を回し香元を決めました。

「花」を引いたMWさまが香を焚いてくださり、私も末席でご一緒しました。

火味が心配でしたが、まもなく良い薫りが茶室に満ちて来て安堵しました・・・。

香銘は「春風」、西行法師の和歌から社中Iさんが名付けた香(伽羅)です。

    春風に花を散らすと見る夢は

       覚めても胸の騒ぐなりけり    西行

香の十徳の内「静中成友」(せいちゅうにともとなる)を思いながら、上品で優しく薫る「春風」を皆さまと回して聞くひと時・・・シアワセでした。

 

 

12時になり懐石を差し上げましたが、懐石の給仕は半東Y氏にお願いしました。

懐石担当は小梶由香さんです。今回のお客さまはご自分で懐石を作ったり、茶事の百戦錬磨の方たちなのでどのような献立を考えてくださるのか、実は私も心配だったり、興味津々だったり・・・でした。

いつも季節のシュンの物を上手に使って作ってくださいますが、それに加えて「シンプル」を心がけたようです。事前にいただいた献立とメモ、そして当日水屋で撮影した写真を掲載します。

ひねもすのたり正午の茶事の献立 (小梶由香作成)

飯   一文字
汁   蕗 辛子
汁替  新玉葱すり流し 菜花
向付  帆立 黄身酢
椀物  蛤真蒸 こしあぶらまたはうるい 
    白胡椒
焼物  豆腐田楽 木の芽味噌
預鉢  若竹煮
箸洗  花穂
八寸  海老甘酢漬け グリーンアスパラ
湯斗 
香の物 沢庵 日野菜漬

酒   新潟県村上市の銘酒「〆張鶴」 (お酒に弱い亭主に代わり半東Y氏が、淡麗の銘酒「〆張鶴」がお食事に合わせ易いと選んでくれました)

(メモと写真)

向付は、帆立に黄味酢をおとして春らしい色合いに。

汁ですが、汁替を春野菜が美味しい季節ですので、新玉葱のすり流しに。菜花の穂先を浮かべます。


椀物は蛤の形に作った蛤真蒸。こしあぶらかうるいをあしらいに。

吸い口に白胡椒を振ってシンプルですが、春の海を表現してみました。

焼物は、木の芽味噌の豆腐田楽を、田楽箱か銘々皿で供しようと思います。

預鉢は、若竹煮です。

 

八寸は茹で海老を甘酢に漬けてさっぱりと。
グリーンアスパラは細い物に出会えれば焼きで、通常サイズでしたらさっと煮で、と思っています。
香の物は2種ですが、日野菜漬けのはを細かく刻みますので、見た目には3種となります。以上となります。 

メモを拝見して小梶さんの気合を感じました。懐石でも「春の海」を表現してくださって、私も半東Y氏も当日相伴するのが楽しみでした。美味しかった!

ベテラン揃いのお客様でしたが、強力な助っ人のお陰で懐石も給仕もとても好評で、亭主として嬉しかった!です。

 

   (初炭と後炭は玄々斎好み松唐草炭斗を使いました)

初炭後に中立をお願いし、待合で主菓子をお出ししました。主菓子の銘は「春の海」、ご近所の石井菓子舗(横浜市旭区都岡)に特注しました。

「試作品が出来たので見に来てくださいませんか?」と言われ、注文数も少ないのに・・・と恐縮です。一目で気に入りましたが、海の色が心配だったようです。海の注文は初めてだそうで、貝の型を探すのが大変だったと伺いましたが、若い菓子職人さんも若奥さんも特注が嬉しそうでヨカッタ・・・です   (つづく)

       「春の海」(金団、石井菓子舗製)

        

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ひねもすのたり正午の茶事・・・(1)

2024年04月24日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

     (春の海へ・・・伊良湖岬にて  令和6年3月28日撮影)

 

令和6年4月14日(日)に「ひねもすのたり正午の茶事」をしました。

昨年5月から始めた立礼の茶事ですが、今年もなんとか再開できました・・・

実は半年ぶりに立礼の茶事を4月から再開しようと決めたものの、手術後の体力不足もあり、身体が思うように動かず、なかなか気が進みませんでした。このまま茶事を止めてしまうのも良いかも?・・・と悪魔のささやきが耳元でします。でも、アートフェアで出逢ったSKさまとの約束を思い出し、ご案内の手紙を差し上げました。

・・・すると、スイッチが入って茶事のあれこれを考えるのが楽しくなりました。加えて、半東Y氏と懐石小梶由香さんがお手伝いを快諾してくださったのも心強く、気合が入りました。

 

      (伊良湖オーシャンリゾートから恋路ヶ浜をのぞむ)

 

「4月なのでどんな茶事にしようかしら?」と考えていた時に頭を過ったのが与謝野蕪村の俳句でした。

   春の海 ひねもすのたり のたりかな     蕪村

 

「ひねもす」は「日経(ひへ)もすがら」から転じた言葉という説が有力で、「日が空を通って行く(経る)時間ずっ~と」と言う意味だそうです。

春の海を日が出ている時間ずっ~とぼっ~と眺めているような、のどかな一日をご一緒に過ごしたい・・・と思い、「ひねもすのたり正午の茶事」と名付けました。

お客さまは、SKさま(正客)、MWさま(次客)、KYさま(三客)、ASさま(詰)の4名様で全員が裏千家流です。

お正客SKさまとは昨年10月の東京美術倶楽部のアートフェアで15年ぶりに奇跡的な再会を果たし、他の3人のお客さまも七事式の会や茶事で切磋琢磨した懐かしい茶友の方々です。

 

 

板木が4つ打たれ、さぁ~!「ひねもすのたり正午の茶事」が始まりました。

半東Y氏が相馬焼の汲出しに入れた桜湯をお出しし、腰掛待合へご案内しています。

待合の掛物は坐忘斎家元の寿扇「松風傳古今」、教授拝受の折に頂いた宝物です。

「松林を吹き渡る風は昔も今も変わらないように、茶の湯の教えを変わることなく伝えていきたい・・・」という坐忘斎家元の御気持ちが伝わってくる気がして、そのようにお話ししました。

 

待合に躑躅を生けました。

前日のこと、買い物の帰りに野菜や花の直売所へ寄ると、躑躅の花束が1つ残っていました。本来待合に花はいらないのですが、15年ぶりの茶事での再会がもう嬉しくって、躑躅を唐華文壷(神奈川焼・井上良斎造)に生けると、待合がとても華やかになりました。

むせ返るような若葉に包まれた露地で、お正客様や連客様と嬉しい一礼を交わしました。

 

 

本席の床は「閑眠 高臥対青山」、4月19日に目出度く百一歳を迎えられた鵬雲斎大宗匠の御筆です。

「ひねもすのたり・・・」にもぴったりですが、お正客SKさまが大宗匠の熱烈なファンなので迷わず選びました。

七事式の員茶之式の偈頌「老倒疎庸無事日 閑眠高臥対青山」を思いながら

「いつの間にか年を重ねてしまい、何をするにも面倒になったけれど、お茶だけは何とか続けています。今日は懐かしい皆さまと無事を喜び、春の一日をお茶事でのんびりと楽しく過ごせたら・・・」とお話ししました。(つづく)

 

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令和6年卯月の稽古だより・・・大円草に汗して

2024年04月21日 | 暁庵の裏千家茶道教室

       (帷子川沿いの八重桜の並木・・・4月8日撮影)

        (帷子川の花筏・・・4月8日撮影)

 

あんなに待ち焦がれていた桜、4月7日(日)の「ひねもすのたり正午の茶事」の日まで何とか踏ん張って花を咲かせてくれた桜ですが、たった一日で緑の葉桜になりました。

一方で、4月8日は帷子川沿いの八重桜の並木が満開でした。

 

     (アケビ、苧環、壷珊瑚を生けました)

卯月(4月)も半ばを過ぎ炉での稽古も最後になりつつあります。

卯月の奥伝の稽古は大円草(だいえんのそう)です。

大円草ですが、私にとってとてもユニークで不思議な点前と思っていました。いろいろな疑問がS先生のご指導や解釈のお話で、ベールが剥がれるように分かり易くなってきました。納得し理解できるようになると生徒さんに教えるのも気合が入ります・・・

  (御軸は「白珪尚可磨」、太玄老師筆です)

裏千家流では3月は釣釜、4月は透木釜をかけます。

五徳を使う12月に行之行台子、1月から3月前半にかけて真の行台子と大円真を稽古するようにし、3月後半から4月になると釣釜や透木釜になるので、相伝(奥伝)は大円草を稽古しています。

大円草は円能斎が考案した相伝科目の一つで、大円盆に唐物茶入と唐物茶入、茶巾・茶筅・茶杓を仕組んだ天目茶碗をのせ、2種の濃茶を天目茶碗でお客さまに差し上げるお点前です。格は行之行台子と同等です。

大円盆は円能斎好み(真塗、径1尺2寸5分)と淡々斎好み(大円真用が真塗、大円草用が搔合塗となっている。径1尺)があります。当方は淡々斎好みの真塗を使用しています。

(炉中の炭の美しさに魅せられます・・・雲竜釜は2代畠春斎造

許状を持っている生徒さんが次々と取り組んでいますが、最長かつ複雑な点前なので教わる方はもちろん、教える方も大変です。

最近は体力不足でして、大円草の初心者を続けて2名指導すると、もうクタクタになってしまいます。

それでも初心者が1回ごとに力をつけていくのがわかり、大円草の見学をしてもらったりしながら、3月と4月に2回指導しました。2回目になると、「炉のうちに習得できるかしら?」と内心思っていたのが、本人の努力もあり「まぁ!ここまで出来るようになるとは・・・(スゴイ!)」に変わりました。本人たちも少し自信が出てきたらしく

「先生、やっと大円草がわかってきてお稽古が面白くなってきました」

「風炉でも稽古しますから引き続き頑張りましょうね・・・」

   (アケビと孔雀椿(だと思う・・)を生けました)

点前の順番、位置、所作(茶道点前の三要素)も複雑で大変ですが、茶道具の問答もとても大切です。茶道具の格を考えることで、点前の所作(道具の扱い)に気持ちが通うようになって欲しいからです。

こうして生徒さんに元気をもらったり、教わったりしながら(曖昧な箇所が確認できる)、一緒に大円草に汗しています。 

 

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五事式の茶事に招かれて(令和6年卯月)

2024年04月17日 | 社中の茶事(2018年~)

     (春雨にけむる「私のサクラ」・・・台所の窓からパチリ)

 

令和6年卯月7日、社中M氏の五事式の茶事へお招き頂きました。

あれから日が経ちましたが、随所にM氏のおもてなしの心意気を感じるお茶事だった・・・と、散りゆく桜を台所の窓から眺めながら思い出しています。

横浜市中区の茶席Kで行われ、ご亭主はM氏、半東はKTさまです。

お正客YKさま、次客OKさま、三客暁庵、四客AYさま、詰KRさまで、主客で心を合わせた一座建立でした。皆さま、ステキなお着物がお似合いで、席中で何度も見惚れました。

感激冷めやらぬうちに後礼のお手紙を差し上げました。こちらに忘備録として記します。

 

 M氏さまへ

    春風に 花を散らすと見る夢は

       覚めても胸の騒ぐなりけり     西行

 

今日は春風ならぬ春の嵐に満開の桜が散り急ぐ様子を

「これもまた好しかな・・・」と眺めています

先日は五事式の茶事にお招き頂きまして ありがとうございました

電車のアクシデントに遭遇し、席入りがお遅くなりまして申し訳ございませんでした

待合に掛けられた「喫茶去」、大好きな禅語を嬉しく拝見しましたが、Mさまにさし上げた

ことをすっかり忘れていたのに気が付きました・・・

 

本席の床に掛けられていた「七事式」の偈、須賀玄道師御筆の最後に書かれていた「関」、

M氏さまの茶の道の一つの到達点であり、また、新たな出発点のようにも思えました

我家の「七事式偈」には「喝」とあり、いつも叱られたようで背筋が伸びます

同じ「七事式偈」でも最後の一字で解釈や心持ちが違って来るのが何とも興味深いことです

廻り炭は正に主客共に修練の場でありましたが、皆さま、とても和気あいあいで、炭を上げ、

炭を置き、その置き方を味わい、何よりも埋火が無事に熾るかどうか、皆で心を一つにして

炉中を見つめました そして今回は大成功!でした  おめでとうございます!

火吹き竹で吹かなくっても大丈夫だったくらい火が残っていました

埋火で火が熾ったのは何年ぶりでしょうか、本当に嬉しかったです

ご用意いただいた練香の「千年菊方」、初めて聞く香銘でしたが、徳川家康が長寿を願い

「千年菊方」の調合を残したというお香は優しい薫りでございました

その貴重な練香をご恵贈いただきまして 有難く感謝しております

「春霞」(?)と名付けられた淡い桜色の金団(打出庵大黒屋製)も黄身餡が珍しく甘さ控えめの上品なお味で、濃茶がとても楽しみでした

 

(後座の点前座は全て亭主のお持ち出しでした・・・もう感激!)

後座になって廻り花がとても楽しかったです

花台に溢れるほど春を彩る花々が集まり、一人一人が選んで生けると、選ばれた花がいちだんと好い表情になっていました・・・それも一瞬のかがやき

折角生けられた花がすぐに上げられてしまうことに「色即是空 空即是色・・」の七事式偈を思い出し、執着を無くすことや、たった今を大事にし、精一杯生きることの大切さを教えてくださっているのかしら?・・・と

最後にM氏さまが生けられた花、それまで隠れていて水を注いでから花が現われた瞬間、皆さまも私も「あっ・・!」と嘆声がもれました

コデマリ、白い椿(「限り」という千重咲きの椿?)、もう一種が堤焼花入に見事に生けられていて、もう素晴らしかった!です

 

香になり、お正客・YKさまが焚いてくださったお香(伽羅)を嬉しく聞きました

香銘「雲い」と、香銘に因む凡河内躬恒の和歌をご披露くださり、しばし典雅な香りを皆さまと愉しみ、幸せなひと時でございました

   山高み雲いに見ゆる桜花

      心のゆきて

        折らぬ日ぞなき       躬恒

 

濃茶になり、額の汗をぬぐいながら心を込めて練ってくださった濃茶の

なんと!まろやかで美味しかったこと、濃さも程よく喉をうるおしてくれました

三人分を私一人で頂いてしまいたいほどでございました 

出雲焼の茶碗がとても渋く良い味わいで素敵です

        「薄茶は花月で・・・」

花月の薄茶も和気あいあいと賑やかに進み、二人一碗で点て合ったのも良かったと思います

お持ち出しの三碗がどれもMさまお好みやこだわりを表わす茶碗たちで、薄茶を頂きながら垂涎の声がしきりでした

一二三之式ではお客さまから立派な評価を頂けて、ご亭主Mさまと半東KTさまの一会に臨む真摯なお気持ちとご苦労が報われた気がして嬉しく思いました

その昔、五回連続してお仲間と五事式を修練した熱き日々を、M氏さまの一生懸命の御姿を拝見して、再び懐かしく思い出しております

これからもお茶事に五事式に楽しみながら修練を重ねてくださると嬉しゅうございます

末筆になりましたが 半東KTさまへくれぐれも宜しくお伝えください

お疲れがいかばかりかと存じますが 寒暖差の厳しい折ご自愛ください

長文になり途中で巻紙のお手紙を諦めました どうぞご容赦ください    

本当に・・・ありがとうございました             かしこ

 

   令和六年卯月吉日             暁庵より