井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

バーチャルな恋

2014年12月11日 | ドラマ

PCの音声を、女性の声でと指定した男が、その発達したPC機能がきめ細かく発信してくる

言葉に惹かれ、恋してしまう・・・・と、機械に疎いので上手に説明出来ないが、

そんなアメリカ映画(だと思う)をDVDで観た。

相手の実像は無視、恋に恋するという、恋の本質が現れた作品である。

いずれの恋も、相手を知るまでのバーチャル、幻なのだ。

パソコンの出会い系掲示板で生じる恋心も珍しくないが

むろん幻想である。

恋による美化の時期を過ぎ、相手を知る頃になってもまだ続いていれば

恋が愛へと変わり、年数を経るごとに深まって行く。

PCに対してバーチャルな恋をする、と同じ発想で、コミックの原作を書いたことがある。

それが、30年ほども前のことであったから、時代の先取り的には早かったかもしれない。

「少年マガジン」に単発として載り、読者アンケートで2位の評価を得た。

通常アンケート上位に来るのは、連載もので人気が定着している作品なので

単発で2位獲得は異例だった。

売れた本もあり、コミックの世界で順調、編集者の方々にも随分お薦め頂いたが、テレビのほうが面白くてコミックの世界からは、じき抜けた。

題材によってはコミックのほうがいいものもあるし、今なら何か書いてみたいものもあるのかもしれない。

勉強を兼ねてこのところDVDをまとめて観ているが、私はウディ・アレンがどうも

生理的にダメなようだ。

素材はどれも面白く感じるのに、見るとつまらないのだ。

最近見たのは「ブルージャスミン」という映画で、おそらくテネシー・ウィリアムズの

「欲望という名の電車」に着想を得ている。

美意識豊かだが、高すぎる誇りが嘘をつかせてしまい、やっと

男に巡り会うが、その嘘ゆえに破綻してしまい、最後は気が狂って

精神病院送りになる、と「欲望という名の電車」のほぼそのままの

話の仕組みであるが、「欲望」のヒロイン、ブランチの狂気も嘘も

美しく心を打つのに、ウディ・アレンの造形したヒロインには全く

感情移入が出来ないのは、どうしたことだろう。

作家の品位のごときものかもしれない。テネシー・ウィリアムズの作品には

「滅びの美学」があるが、ウディ・アレン版のヒロインには愚かしさしか

感じない。ブランチの嘘は誇りと彼女(と作家)の美意識に根ざして切ないが

ウディ・アレンのヒロインは単に傲慢で、見栄っ張りからつく嘘だけなのだ。

ウディ・アレン版でヒロインを演じるケイト・ブランシャットは、巧みに演じていて

世評も高いそうなのだが、後味が悪かった。

天才と目されているウディ・アレンに対して僭越だが、他の作品は

さておき、「ブルージャスミン」に関しては「欲望という名の電車」から

換骨奪胎したものの、テネシー・ウィリアムズ作品の読み違い、「詩」の高みにまで

純化、達することは出来ずに不発だった。

 


1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ウディ・アレンて面白いの? (民草)
2014-12-12 22:36:17
私はウディ・アレンが好きになれません。
何を書いても、所詮他人事か自虐の笑いにしか感じられないのです。
「欲望と言う名の電車」を見た時は、戯曲で読んだ時には判らなかったブランチの儚さとか強がりが胸に迫り、見終わった後は涙が止りませんでした。
一緒に見た男子は「見栄っ張りな女性だなあ。」とポツリ。
うん、お坊ちゃまでした。若かった私は、手厳しく反論して、その上、お茶を奢らしていました。
〇〇君、御免m(. . )m
返信する