大雨、25度、88% 雷
サザエは主人の実家の思い出につながります。サザエが網の上で焼かれ始めると磯の香りが漂います。クツクツと煮えるとじんわりおいしいサザエの汁が出てきます。みんなのお皿に乗ったサザエ、主人の家族は皆見事にサザエをするりと殻から出します。もたもたしているのは私一人、挙句にサザエの尻尾の内蔵部分は殻に残ったままです。緑色の内蔵部分は嫌いな方も多いでしょうが、この苦味が一番おいしいとも言われます。
自分一人のためにサザエを焼くのは贅沢に思えていました。緑の内蔵が食べたいとサザエを7つ買いました。生きているうちに調理します。普通のつぼ焼きは殻にお醤油とお酒を入れて焼きます。買った時からこのサザエを「エスカルゴ」のようにして食べるつもりでいました。お醤油の代わりに「エスカルゴバター」を落として蒸し焼きにします。
「エスカルゴ」はカタツムリのお料理です。自分で注文することはありません。お集まりの料理に「エスカルゴ」が出てきたらそっと主人に食べてもらいます。カタツムリは私の幼馴染です。食べることなどできません。「エスカルゴバター」は「ガーリックバター」にパセリが刻み込まれています。生憎、我が家のパセリはこの長雨で黄色く変色して使い物になりません。パセリ抜きの「ガーリックバター」をサザエに落としました。鉄鍋に並べて蓋をして焼きます。まだ生きていますから焼いている間は蓋を取りません。可哀想に思います。それでも食べたい。
焼ける間、磯の香りと「ガーリックバター」の香ばしい香りが台所いっぱいです。魚介類の火の入れ方には注意します。十分に火が通ってそれでいた硬くならないように時間の塩梅です。そっと蓋を取るとサザエの殻にスープが浮いてきています。出来上がり。
熱いので気を付けてお皿に取り、まずはスープをすすります。内蔵の苦味がバターでまろやかに臭みもニンニクが消してくれています。貝のスープは身よりもご馳走です。お醤油とお酒より美味しい。次に太い竹箸を差し込んでくるりと回しながらサザエを取り出しました。昔は下手だったのにきれいに千切れずにサザエが出すことが出来ました。 お尻から一口でガブリ。海のものは塩をせずとも塩味がします。自然な塩気にバターが絡みます。一気に7つ、お腹に入れました。
きれいに洗ったサザエの殻は雨の中花壇の淵に並んでいます。こんなトゲトゲの貝を食べようと思った人はよほどお腹が空いていたのでしょうね。