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" AS SLOW AS POSSIBLE AND AS FIRST AS NECESSARY "

ポルシェな休日

2015年04月13日 | VINTAGE CARS

 日中の気温が20度を超えるのは何ヶ月ぶりであろうか?空は快晴で肌に当たる風は柔らかく温かい。春の陽気が始った日曜日の朝、スニーカーを履いて外に出ると...。

 

 隣人のK君がガレージでなにやらごそごそしているではないか、

よおっ!

ポルシェは元気か?

 

 愛車の92年ポルシェカレラがボディの修正を終えて帰ってきたらしく、その光沢を角度と場所を変えて眺めながら一人で快悦感を楽しんでいる様に見受けられた。

 

なにっ、

ボディの目に見えない程の小傷の修正に一万ドル(100万円)払っただと。

すげーな、おまえ。

 

...だいじょうぶかよ?

とも思ったりするが、本人を前にしては言えない。

 

 彼はただ単なるクルマ好きではなく、ポルシェにたいしてクレージーな程恋をしており、物事を冷静に尚且つ客観的に考える事が難しい状態なのだ。これは、その対象が恋人であるか真紅のポルシェであるかの違いだけで誰もが通過する過程なのかも知れない。しかし、人生の中で何か夢中になる対象があるって事は実は し あ わ せ な事なのです。

 

 同じクルマ好きでも僕と彼は嗜好(思考)が異なる。

僕は、クルマにはそれ程金を掛けないで、美味しいメシでも食いにいこうぜ!派。

彼は、美味しいものなどは食べなくてもいい、とにかくクルマにはとことん拘りたい!派

お互いクルマに大しては異なる嗜好だが、クルマの話は尽きる事はない。

そうこうしている内に、

 

僕のポルシェに乗ってみるかい?

...

いいのか?

いいとも、

 

じゃー今直ぐに免許証を持ってくるね。

と、家に戻ろうとすると。

 

横に(パッセンジャーシート)にどうぞ!と、

...なんか怖いな、お手やわらく頼むよ。

 

レカロのシートに体を埋めて、背後から響く太いサウンドに心を打たれる。

 

...おいおい、そんなに噴かすなよ。

めだつじゃねーか!

 

俺って、低所恐怖性なんだよ。

スピード恐怖性でもあるんだぜ!

 

真っ赤なレーシーなポルシェが太いサウンドと共に静かな街の日曜日の朝の空気をかき回す。

K君の鼓動が20%程高くなっているのが分る

 

おい、これって憑依現象だよな、

自分をわすれるなよ!

おいおい、そんなに踏込むなよ。

コーフンすんなって、

 

路上の小さな障害を全て避けて走ろうとするので執拗にハンドルをこちょこちょと切る。

 落ち着け、落ち着け、

 

怖ええー、

と思った。

 

英語で怖いはスケアーと言います。

K君はポルシェの運転が

めっちゃ、好きゃねん!

 

でも、僕にとってポルシェの乗り心地は、

めっちゃ、スケァーねん!

...

 

赤いポルシェのステアリングを握ると人格が変わります。

ポルシェは人を冷静に摺るための訓練にはもってこいです。

 

ポルシェこそは優雅に乗りたいスポーツカーです。

あの、栄光のルマンの中に観る、スティーブマックイーンの様に。

 

 K君有り難う、

楽しかったとは言えないが...

怖かったよ!

 

そうか、今度はベアマウンテンに走りにいこうか?

...いい、いい、一人で行け。

Thank you!

 

 でも、スポーツカーのパッセンジャーシートに乗って色々と感じた事があった。スポーツカーを操ると言う事はハンドル捌きやペダルのフットワークの事ではないのだ。コクピットに座ってイグニッションを回すとタコメーターの吹き上がりとエンジンの太いサウンドによって心が高ぶる。一瞬息が止まり、まばたきが止まる。そういう高ぶる自分をいかにコントロールするか、自己を主管出来るかが詰まる所スポーツカーを操る、あるいは乗りこなすという事なのだろう。

 そういった意味でスポーツカーは自己鍛錬に良いのだ。

頑張れ、K君。

 

俺も他人の事はあまり言えない...

 


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