日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

製造業IT化で独中接近 「インダストリー4.0」対応を (重要)

2015年03月29日 | non-category
〔15.3.29.日経新聞:日曜に考える2面〕
 ドイツのハノーバーで今月、欧州最大のIT(情報技術)見本市「CeBIT」が開かれた。デジタル経済を表す「ディコノミー」が今年のテーマで、ITによる製造業の革新を促す「インダストリー4.0」の技術に大きな関心が集まった。

 「第4次産業革命」ともいえるこの動きは、産官学で産業競争力を高めようというドイツの一大プロジェクトだ。一昨年に具体的な提言書が公表されたことで、見本市でも様々な技術や取り組みが披露された。

 なぜ「4.0」なのか。産業革命は蒸気機関によって18世紀に起きたが、20世紀初頭には電気による大量生産が導入され、1980年代にはコンピューターによる自動化が進んだ。

 今度はセンサーや通信技術を使い、製造装置や工場を結んで生産管理や受発注などを完全自動化しようという戦略だ。生産効率を高め、グローバルな工場の仮想化を目指している。

 会場で注目されたのは、インダストリー4.0の推進に向けたドイツと中国の接近ぶりだ。今年は中国が見本市のパートナー国だったこともあり、両国の政府や産業界の首脳が駆けつけ、技術開発や標準化で協力していくことを表明した。

 メルケル首相は開幕式で「独中の協力が世界の製造業のIT化を促す」と強調。中国の李克強首相もビデオ講演で「中国にもインダストリー4.0を広めたい」と協力を約束した。

 両政府の動きにあわせ、企業間の提携発表も目立った。最も話題となったのは、統合基幹業務システム(ERP)世界最大手の独SAPと、中国の通信機器世界最大手、華為技術(ファーウェイ)との提携だ。

 SAPは財務や生産管理など企業向けソフトに強く、華為は無線通信のハードウエアに強い。「インダストリー4.0の技術開発で協力関係が築ける」と華為の法人事業部門の閻力大(エン・リダ)社長は指摘する。

 実はインダストリー4.0とSAPは関係が深い。提言書をまとめたドイツ技術科学アカデミーのヘニング・カガーマン会長は、もとはといえばSAPの社長。SAPにとっても新たなビジネスチャンスなのだ。

 ドイツでは多くの企業がSAPのソフトを使っていることも有利に働く。企業ごとにバラバラだった業務ソフトを共通のパッケージソフトにして成功したのがSAPだ。いわば標準化の地ならしはできている。

 インダストリー4.0の推進組織には、シーメンスやボッシュ、フォルクスワーゲン、ドイツテレコムなどドイツの有力企業が名を連ねており、SAPはその中心メンバーでもある。

 ドイツがこうしたIT戦略を打ち出した背景には、製造業における米国の復権がある。アップルはインターネットで中国との生産分業体制を築き、ゼネラル・エレクトリック(GE)は、センサー情報をビッグデータとして産業機器の効率化に役立てようとしている。

 SAPで新戦略の推進を担うルカ・ムシッチ最高執行責任者(COO)は「ドイツは製造業の現場には強いが、ネットによる効率的なサプライチェーンを築かなければ今後は競争力を失いかねない」という。

 では日本の製造業はどうか。管理部門の業務ソフトは共通化が進んだが、工場の生産管理はいまだに独自システムが多い。「垂直統合型経営の中で各社が自前主義にこだわるからだ」と国内ERP大手、ワークスアプリケーションズ(東京・港)の牧野正幸社長は指摘する。

 米国発のIT革命はこれまで商取引やサービスなどを激変させたが、今度は変革の波がモノの世界に押し寄せている。自動運転車や無人飛行機(ドローン)、3Dプリンターなどだ。日本企業も縦割りを排し、情報連携しなければ、新しいビジネスモデルは描きにくい。

 メルケル首相は今月、7年ぶりに訪日した。安倍晋三首相と会談し、「インダストリー4.0」の重要性を説いたそうだが、歴史認識やエネルギー政策の話題に隠れ、日独の産業協力に対する産業界やメディアの関心は中国に比べると低かった。

 米国への巻き返しを狙うドイツは、インダストリー4.0に中国を巻き込み、ドイツ主導でグローバルな生産体制を築こうとしている。従来のものづくりから抜けきれていない日本は、ITと製造技術の融合を真剣に考えないと、独中連合に行く手を阻まれてしまうだろう。 (論説委員 関口和一)

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