〔15.3.11.日経新聞:経済面〕
企業活動を巡る海外での訴訟が日本の国富流出につながっている――。財務省の国際収支統計でこんな傾向が浮き彫りになった。企業の社会的責任を問う声が強まる米国などで罰金や賠償金を支払う企業が相次ぎ、エアバッグ大手のタカタのリコールも影を落としている。経常黒字を押し下げる一因になっている。
国際収支統計のうち、官民の無償資金や賠償金のやりとりの状況を表す「第2次所得収支」は2014年4月から15年1月の累計で1兆4002億円の赤字だった。前年同期に比べ55%多く、比較できる1985年度以降で最高だった90年度(1兆7940億円の赤字)に迫る水準だ。
最大の要因は「企業が海外での訴訟で賠償金の支払いを迫られているため」(財務省)だ。地域別で比較できる昨年4~9月には米国との第2次所得収支は2933億円の赤字と前年同期の5倍に膨らんだ。増加した2300億円の多くが賠償金の支払いとみられる。
昨年8月に中国で日本の自動車部品メーカー10社が総額12億3500万元(当時の換算額で200億円)の罰金を命じられたほか、日本郵船や川崎汽船も輸送船の運賃をめぐるカルテルを結んだとして罰金に応じた。
その後も今年1月にはホンダが米国で事故情報に関する報告を怠ったとして米運輸省・高速道路交通安全局に7000万ドル(約84億円)を支払うことで合意した。同局が1社に科す罰金としては過去最高だ。
日本企業が海外で支払うリコール費用の影響もある。サービス収支のうち、海外でのリコール費用などが反映される「維持修理サービス収支」の赤字は昨年4月から今年1月に4581億円となり、前年同期の約4.5倍になった。日産自動車が昨年3月末に北米を中心に105万台でリコールを実施したことなどが響いているもようだ。
最近ではタカタのエアバッグ問題で自動車大手がリコールに追い込まれている。米国ではタカタに対する訴訟が相次ぐ見通しで、巨額の罰金を科せられる可能性がある。
日本の稼ぐ力を表す経常収支は14年度も黒字を維持する見通しだが、海外で相次ぐ訴訟やリコールは経常黒字の押し下げ要因となりそうだ。
▽「第2次所得収支」とは
対価を伴わない海外とのお金のやりとりを表す。具体的には無償の経済協力や賠償金、年金などが含まれる。日本は途上国の支援を実施していることなどから第2次所得収支は赤字が恒常化している。従来は「経常移転収支」と呼ばれていた。
企業活動を巡る海外での訴訟が日本の国富流出につながっている――。財務省の国際収支統計でこんな傾向が浮き彫りになった。企業の社会的責任を問う声が強まる米国などで罰金や賠償金を支払う企業が相次ぎ、エアバッグ大手のタカタのリコールも影を落としている。経常黒字を押し下げる一因になっている。
国際収支統計のうち、官民の無償資金や賠償金のやりとりの状況を表す「第2次所得収支」は2014年4月から15年1月の累計で1兆4002億円の赤字だった。前年同期に比べ55%多く、比較できる1985年度以降で最高だった90年度(1兆7940億円の赤字)に迫る水準だ。
最大の要因は「企業が海外での訴訟で賠償金の支払いを迫られているため」(財務省)だ。地域別で比較できる昨年4~9月には米国との第2次所得収支は2933億円の赤字と前年同期の5倍に膨らんだ。増加した2300億円の多くが賠償金の支払いとみられる。
昨年8月に中国で日本の自動車部品メーカー10社が総額12億3500万元(当時の換算額で200億円)の罰金を命じられたほか、日本郵船や川崎汽船も輸送船の運賃をめぐるカルテルを結んだとして罰金に応じた。
その後も今年1月にはホンダが米国で事故情報に関する報告を怠ったとして米運輸省・高速道路交通安全局に7000万ドル(約84億円)を支払うことで合意した。同局が1社に科す罰金としては過去最高だ。
日本企業が海外で支払うリコール費用の影響もある。サービス収支のうち、海外でのリコール費用などが反映される「維持修理サービス収支」の赤字は昨年4月から今年1月に4581億円となり、前年同期の約4.5倍になった。日産自動車が昨年3月末に北米を中心に105万台でリコールを実施したことなどが響いているもようだ。
最近ではタカタのエアバッグ問題で自動車大手がリコールに追い込まれている。米国ではタカタに対する訴訟が相次ぐ見通しで、巨額の罰金を科せられる可能性がある。
日本の稼ぐ力を表す経常収支は14年度も黒字を維持する見通しだが、海外で相次ぐ訴訟やリコールは経常黒字の押し下げ要因となりそうだ。
▽「第2次所得収支」とは
対価を伴わない海外とのお金のやりとりを表す。具体的には無償の経済協力や賠償金、年金などが含まれる。日本は途上国の支援を実施していることなどから第2次所得収支は赤字が恒常化している。従来は「経常移転収支」と呼ばれていた。