【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

労働基準法改正案「高度プロフェショナル制度」提出へ、職種は省令ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)

2015年02月06日 23時59分59秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

(このエントリーの初投稿日時は2015年2月7日 午前8時)

 厚生労働省は、労働基準法改正案を今国会に提出する方針を決め、平成27年2015年2月6日(金)の労働政策審議会労働条件部会に「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書案)」を提出しました。

 「高度プロフェッショナル」は、労働協定のうち、時間外・休日労働協定の締結そのものがなくなり、企業は労働者に時間外・休日・深夜割増賃金を払わなくてよくなります。

 具体的には、研究開発業務、金融商品の開発業務・ディーリング業務、企業や市場のアナリストの業務、コンサルタントの業務、「などを念頭に省令で規定する」としています。だから、省令でいくらでも増やせます。

 一連の報道で「1075万円以上」という言葉がありますが、これは現行労働基準法14条の有期労働契約の定めのなかで、「専門的な知識、技術または経験があって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者」に関する「基準」を定めた省令に「1075万円以上」という文言があることに由来します。法律上は「1075万円以上」という言葉はありません。今次改正法案では「1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上回る労働者」という限定が法律に書き込まれたうえで、「省令で規定する」ことになります。これは私の見込みでは、場合によっては「年収700万円以上」になってくるのではないか、という見積もりもありえると思います。

 前の第46期衆議院で、最後に成立した法律である「高度の専門的知識等を有する有期雇用特別措置法を5年間から10年間に延長する労働契約法の特例法」(議案番号186閣法48号、法律番号平成26年11月28日法律137号)を早くも改正する内容です。この法律は、4月1日から施行されますが、この法律のおかげで、「なんとか大学教授」という肩書の人が、勤務6年目に入れるというハラハラの展開となりました。ただ、無期転換せずに有期が10年になることから民主党などが抵抗し、他の法案(労働者派遣法改正法案)を審議未了廃案に追い込む盾にも使われ、通常国会では衆議院で可決しながら参議院で未了。異例の参議院閉会中審査となり、秋の臨時国会で提出から長い時間をかけて、最終的に両院可決、成立しました。

 この前の任期最後の法律の「高度の専門的知識等を要する」に加えて「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない業務」を、(法律ではなく)厚生労働省令で規定した職業を、「高度プロフェッショナル制度」と、報告書案は読んでおり、法律案にも書き込まれる見通し。これは、第1次安倍内閣(安倍首相、塩崎恭久官房長官)のときに検討された、ホワイトカラーエグゼンプション(WE)の限定版といえるでしょう。

 この労働者は、医薬品メーカーの研究職などを除くと、連合傘下の労働組合に加入していない人が多いので、国政に声が届きにくい人が多いので、狙い撃ちにされやすいでしょう。労働経済で言えば、現在おもに40歳代前半の団塊ジュニアに前後する大企業新卒正社員の総人件費削減が狙いとみて、ほぼ間違いないでしょう。

 報告書は高度プロフェショナル以外の労働者について、時間外労働の上限規制や、インターバル規制(退社から出社まで8時間などあけること)の新設が見送られました。残念です。

 労働安全衛生法(労安衛法)に定められた、産業医による過剰労働による脳・心臓疾患などの発症を防止するための面接指導で、全労働者を対象に労働時間の把握をしなければならない旨を省令に規定することになりました。法律には盛り込めないものの、労安衛法も罰則規定がありますから、省令に書き込むことで、産業医の刑事責任を問うことができるようになるのかもしれません。

 年次有給休暇について、労働者が時季指定をしたうえで取得する有休のうち、5日間以上になると、使用者は義務から解放されることになりました。よって、大型連休の谷間を指定して有休をとっていると、万が一、忌引きなどを使って帰省することになったときに、前後に有休をつけて長く帰省することができなくなることもあるかもしれません。

 上に書いた情報は次の厚生労働省の労政審のウェブサイトから取り出すことができます→http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei.html?tid=126969

 ただまあ、報告書案の一番後ろの文章がイチバン大事でしょうね。

 「労働基準関係法令が十分周知されていないことに伴う法令違反が依然として多数みられることから、一層の周知徹底に取り組むことが適当である。また、使用者は、時間外・休日労働協定などを労働者に周知させなければならないとしている法の規定を踏まえ対応するよう、徹底を図ることが適当である」。

 7日付朝日新聞が昨年中途退職したNHK女性記者20名に取材を申し込んだところ、応じたのは1名だけ。名前はおろか、属性もあまり分からない人でした。新入社員として橋本龍太郎首相番記者時代に、月所定外労働時間180時間以上をしいた、株式会社日本新聞社の鶴田卓彦代表取締役、牧久取締役労務担当(労担)、岡崎守恭政治部長、池内新太郎、中川内克行両キャップを「檻に入れて焼き消したい」などと、宮崎信行の実名でブログに書けるような人物はあまりいないようです。サラリーマンを辞めて10年目となる2015年ですが、そこそこ関心をもって、労働基準法改正法案にのぞんでいきたいところです。

 労働契約法(2008年)をベースにしながら、民法(1896年)も対象にした、労働法制の再整備、シンプル化。これが、国会および民主党に求められているとずっと考えています。

tag (宮崎信行)

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