【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

岡田さん「細野、寺坂はよく頑張った」「我が期(51年入省)は次官が出ない期に」「さびしい」夏

2011年08月04日 20時52分33秒 | 岡田克也、旅の途中

[画像]同期(昭和51年通産省入省)の退職について語る岡田克也さん、2011年8月4日、民主党幹事長記者会見ネット中継から。

 岡田克也さんは2011年8月4日、民主党幹事長としての記者会見で、通産省同期入省(昭和51年=1976年)の細野哲弘・資源エネルギー庁長官と寺坂信昭・原子力安全・保安院長の更迭を海江田万里経産相が内定したことについて、「細野、寺坂と2人は、この重大な局面で全力でがんばってくれた」とねぎらいました。「ただ、結果については、いろいろと感じるところもあるんだろう、と思います」と述べ、経産省と東京電力など原子力発電をめぐり一連の国民の信頼を失いかねないできごとに対して、遺憾を示しました。これに先立ち、「更迭という表現は違う」「人事抗争の結果ではない」として、2人は更迭ではなく、定例の人事による退任だという考えを示し、かばいました。

 そのうえで、「同期で残るのは1人(岡田秀一・経産審議官)だけになった」とし、「少しさびしい気はします」と述べました。海江田経産大臣は、事務次官も昭和49年入省の松永和夫さんから、昭和52年入省の安達健祐さんに交代する、と発表しました。霞が関では、「同期入省のうち事務次官になれるのは1人だけ」「事務次官が出るまでに同期は全員退職する」という全省庁に存在するピラミッド型人事の慣例がありました。以前から、大蔵省や厚生省は”植民地”的な事務次官ポスト(防衛庁、環境庁など)を持っていた時期もあったり、橋本行革での省庁合併により、同期から2人以上の事務次官が出るなど崩れつつありますが、彼らが入省した時点では、それは不文律ながら、鉄の掟でした。

 昭和52年入省の事務次官が出るとなると、昭和51年入省の岡田秀一・経産審議官も経産省を去ることになる可能性が高いと思われます。なお、岡田秀一さんは小泉純一郎首相の事務秘書官を務めて、飯島勲・政務秘書官とともに、ワイドショー型の小泉劇場を演出した一人でもあり、TPPをめぐる議論も政治日程から先送りされる格好となっています。経産審議官はまだ決まっていないようですが、岡田秀一さんも涼しくなるころには、経産省を去ることになるんだろうと思います。岡田審議官は本省ではナンバー2ですし、「エネルギー畑よりも通商畑から」というアイディアもあり、次官コースに復活する可能性があったとされていますが、大臣が発表していますから、もうこれはないでしょう。

 記者会見(午後4時過ぎ)の時点で、この人事を知っていたと思われる、岡田克也さんは、「どうやら我が期は次官の出ない期になりそうです。あるいは(岡田審議官が)チャンスがあるから、そう言っちゃあいけませんが、残念ながらたぶん次官が出ない期になりそうです」と語りました。まあ、岡田さんがちょっとだけうれしそうにも見えたのはなんでかな~~(笑)という気がしますが、経産省がエネルギー官庁に生まれ変わり、歯止めが利かなくなったようにも思える内情が報じられる昨今、いろいろとうかがい知れる面が多々あります。なお、同期には4月に三選した高橋はるみ北海道知事もいて、自然エネルギー(再生可能エネルギー)を積極的に推進しています。

 けさ(2011年8月4日付の)朝日新聞は、松永次官に加えて、細野さん、寺坂さんが「更迭」という横見だしで、1面トップで伝えました。官僚はあくまでも国家公務員一般職で、ここまで大きく報じられることは異例です。


[写真]2011年8月4日付朝日新聞朝刊。
 顔写真は、右から見て、松永和夫事務次官(昭和49年入省)、寺坂信昭・原子力安全・保安院長(昭和51年入省)、細野哲弘・資源エネルギー庁長官(同)

 岡田さんらが通産省に入省する1年前、昭和50年(1975年)の6月に新潮社から、通産省を舞台にした城山三郎さんの小説『官僚たちの夏』が単行本として出版されています。三木武夫通産相の下で、事務次官を務めた佐橋滋さんという名物通産官僚がモデルとされ、「佐橋大臣、三木次官」とも呼ばれたそうです。

 私は入省年次ごとに一定の昇進をする「メリット・システム」は公務員制度としてはすぐれた制度だと考えています。しかし、定年が事実上ない、ピラミッド・システムは止め、事務次官同期も残れるようにすべきですし、東京都庁がとっているシステムを見習い、入省から数年して、キャリア組とノンキャリア組が試験によってわかれる制度にすべきだと考えます。また、府省間の移籍も認め、自治体への転籍も、本人の意思で可能にできるようにしたらいいと考えます。ただ、成果主義だけは絶対に反対です。これは、ゴマすりが上に行くシステムです。

 『官僚たちの夏』の文庫をけさ、引っぱり出して、驚いたのは、最終章のタイトルは『冬また冬』。そして事務次官退任後に健康を壊した主人公がタクシーに同乗した新聞記者から、「競走馬であるまいし、全力で走りさえすればええというもんやない」「ケガしても突っ走る世の中は、もうそろそろ終わりや」などと言われます。そして雪の夜、通産省の建物はまだ明かりがともっているというシーンで終わります。国会待機だったんでしょうか。ひょっとして、城山さんが描きたかったのは「官僚たちの冬」だったのかもしれません。戦後の物資配給、新日鐵に代表される企業再編、日米繊維交渉、オイルショックを経て、やがて規制官庁よりも、石油、ガス、原子力などのエネルギー官庁へとかわっていった通産省。今につながるアメリカ人脈を構築したアメリカ・ハーバード大学への1年間の滞在(留学ではない)から帰った岡田克也さんがなぜ、すぐに通産省に辞表を出してしまったのか。それはだらしない大臣といやしい族議員を見て、官僚としての限界を感じたからのようです。

 まあ、官僚の場合、同期は仲が悪い方がフツーです。一方、国会議員は同期は仲が良いことが多いです。この違いはかんたんな理由で、上述したピラミッド・システムによるものです。人をいかすのもいかせないのも、システムというのはヒジョーに大きな要素です。それは拡大すれば、日本という国全体のシステムづくりであり、政治そのものだという気もします。 

asahi.com(朝日新聞社):経産省事務次官に安達経済産業政策局長 3首脳更迭 - ビジネス・経済

 海江田万里経済産業相は4日夕、更迭した3首脳の後任を含む幹部人事を発表した。事務次官には安達健祐経済産業政策局長(59)が就く。資源エネルギー庁長官には、高原一郎同省中小企業庁長官(55)、原子力安全・保安院長には、深野弘行商務流通審議官(54)が就く。

 12日に閣議了解をする予定。資源エネルギー庁長官は国会で再生可能エネルギー特別措置法案が審議中のため9月1日付となる。

 海江田氏は同日午前、緊急の記者会見を開き、東京電力福島第一原子力発電所の一連の事故対応や、国主催の原子力関連のシンポジウムをめぐる「やらせ」問題の責任を取る形で、松永和夫事務次官(59)、寺坂信昭同省原子力安全・保安院長(58)、細野哲弘同省資源エネルギー庁長官(58)の更迭人事を明らかにしていた。



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