衆院での代表質問2日目。
きょうは公明党代表の太田昭宏さん(東京12区)、日本共産党幹部会委員長の志位和夫さん(比例南関東)、社民党の照屋寛徳さん(沖縄2区)、国民新党・そうぞう・無所属の会の下地幹郎さん(沖縄1区)。
4人のうち2人が沖縄県選出です。やはり4氏とも沖縄の問題を大きく扱いました。今日の傍聴記は、「沖縄」に絞って、まとめます。
■2007年10月4日衆議院本会議 福田総理の所信表明に対する各党代表質問 太田昭宏(公明党)、志位和夫(共産党)、照屋寛徳(社民党)、下地幹郎(国民新党・そうぞう・無所属の会)■
【「9・29沖縄県民大会」の衝撃、じわり国政各党に】
「沖縄問題」とはもちろん、高校歴史教科書の「軍が民間人に集団自決を強要した」とする記述を、来年度使用分から削除するよう文部科学省が行政指導した問題です。
4人の質問に関して、福田首相と渡海紀三郎文科相の答弁は「文科省単独ではなく、審議会に諮らなければ判断できない」という趣旨で一貫していました。
【4議員とも取り上げた「沖縄歴史教科書問題」】
共産党の志位さんは、福田総理就任などに関した前置きを一切述べず、いきなりこの問題を切り出しました。9・29検定撤回県民大会を受けて、「島ぐるみの問題であり、この問題を起こした責任は政府・文部科学省にある」と断定しました。
社民党の照屋寛徳さんの質問を聞いて涙を流してしまいました。照屋議員の公式ウェブサイトによると、照屋さんは1945年、サイパン米軍捕虜収容所で生まれた人だそうです。
照屋さんは沖縄の離島にする宮川スミ子さんの経験談を紹介しました。
宮川スミ子さんについては9月29日付の沖縄タイムスが報じています。
宮川さんは沖縄の離島、慶良間諸島の(沖縄県島尻郡)座間味村の人です。隣の渡嘉敷村は700人余の島です。以下、沖縄タイムスからの抜粋です。
1945年3月25日、宮川さんは当時、座間味国民学校の五年生でした。米軍が座間味島を空襲した3月23日に、母のマカさんとともに家族で造った内川山の壕に避難していた。
25日夜、マカさんが「忠魂碑の前に集まりなさいと言われた」とスミ子さんの手を引き壕を出た、20~30分後に現場に到着。その際、住民に囲まれていた日本兵一人がマカさんに「米軍に捕まる前にこれで死になさい」と言い、手榴弾を差し出したという。
マカさんは「家族がみんな一緒でないと死ねない」と受け取りを拒んだ。二人はその後、米軍の猛攻撃から逃れるため、あてもなく山中へと逃げた。聞き取りが当時の大人中心だったため、これまで証言する機会がなかった。
スミ子さんは「戦前の誤った教育が『集団自決』を生んだ。戦争をなくすため、教科書には真実を記してほしい」と力を込めた。
(抜粋おわり)
照屋さんは「座間味村は阿鼻叫喚、ありったけの地獄を集めたような修羅場と化したのです」と表現したうえで「総理、お答えください。なぜ沖縄だけに(在日米軍基地など)安全保障の犠牲を強要するのですか?」と迫りました。
「県民大会」出席のため沖縄本島に向かう「座間味村旗」(座間味村役場公式ウェブサイトから)
沖縄県内の地方議員らでつくる政党「そうぞう」の代表、下地幹郎さんは「従軍慰安婦に関する河野談話のように、沖縄戦に関する総理談話を出してください」と要求しました。
【乗り遅れた公明党】
公明党の太田さんも「重要なのは沖縄戦の史実を後世に伝えること」としながら、政治が介入すべきではないという考え方も示しました。一方で「沖縄の心に重きを置かなければならない」とし、最終的には「総理のお考えをうかがいたい」と総理にボールを投げました。
公明党に関してはけさの読売新聞のベタ記事を読んで、アレッ?と思いました。
公明幹事長、教科書検定問題できょう沖縄訪問
公明党の北側幹事長は、沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定問題で意見交換するため、4日に沖縄県を訪問する。仲井真弘多知事と5日に会談する方向で調整している。
私が北側事務所に問い合わせたところ、「本会議終了後に沖縄に向い、(本会議がない)明日の早朝から動きたい考え」とのこと。「最終便のキャンセル待ち」だというのですから、慌ただしい動きです。
この慌ただしい動きに予感はありました。
9月30日付の沖縄タイムスを読んであることに気付いたからです。
「11万人県民大会」には民主党の菅直人代表代行が参加、4段抜きの写真で報じられています。
市田忠義共産党書記局長の感想も報じられています(写真はなし)。
社民党は地元の照屋副党首はもちろん、本部からも保坂展人平和市民委員長が参加し、感想を述べています。
一方の与党。遠山清彦公明党宣伝局長が「県民が怒るのは、文科省が学問的、客観的に運用した検定制度と、戦争体験者の体験がずれているからだ」と述べています。とはいえ、野党3党はナンバー2が来ているのに、公明党の遠山さんは7月の参院選で2回目の当選を果たしたばかりの若手。他党に比べて格下の感はいなめなません。
公明党は第44回総選挙で全国で10人の公認候補を小選挙区に立てましたが、沖縄1区だけ負けました。
私は9年前、沖縄本島の最南端の道路に浜四津敏子代表代行のポスターが張ってあるのを見て、公明党の沖縄での組織力に驚いたことがありますが、与党公明党は、この問題で完全に乗り遅れたといっていいでしょう。北側さんは出遅れを取り戻すため、沖縄に向かったのだと思います。
県民大会に関してですが、自民党本部からの出席者はいなかったようです。
琉球新報に沖縄県選出・出身の国会議員のコメントが載っています。自民党で最も当選回数の多い7回生の仲村正治さん(比例九州)が「会場に向かっていたが大渋滞に巻き込まれて参加できなかった」とのコメントを寄せていますが、これは本当でしょうか?
(嘉数知賢、西銘恒三郎、安次富修の自民党衆院議員3氏は出席したと思われるコメントを寄せています)
「私は渡嘉敷島北山の『集団自決』の生き残りです」と「県民大会」で証言した渡嘉敷村の吉川嘉勝さん(68)=9月20日付沖縄タイムス
《関連エントリー》もごらんください
10月4日(木)の衆院本会議には沖縄選出2人が総理に質問
【教科書問題は審議会政治の終焉か?】
日本政治の特徴として「審議会政治」という言葉を政治学で使います。大臣の諮問機関である審議会を隠れ蓑にして、官僚の意見がお墨付きを得て、国会での議論よりも影響力(power)を持つ政治です。
政治家は閣僚を辞任したり、議員を辞職したりします。では、審議会の責任者はだれでしょう? だれも責任を負わないシステム、それが審議会政治です。
沖縄教科書問題は審議会政治というシステムの終焉を告げているようにしか思えません。
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