【参院本会議 2010年3月24日】
古川法が成立しました。租税特別措置の執行状況の透明化法のことです。
さる3月24日、古川法案(租特透明化法案)が参院本会議で採決され、投票総数234、賛成234票、反対0票の全会一致で、可決、成立しました。
参院本会議の押しボタン投票の結果
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http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/174/174-0324-v008.htm
これは、現在は内閣府副大臣・国家戦略室長を務める民主党の古川元久さんが、野党・民主党の税制調査会でずっと取り組んできました。古川さんは昨年5月の民主党代表選で、選挙管理委員長を務め、投票翌々日の朝日ニュースター番組で、ジャーナリストの上杉隆さんの質問に答えて、「岡田克也さんに投票しました」と答えました。
それにしても、野党のころはまったく成立の見通しが立たなかったのに、与党になったら、閣法で提出して、全会一致ですから、政権交代すると、変われば変わるものですね。古川法はあす4月1日、施行します。
ナフサの減税や、ガソリンの増税など様々な増減税が入り組んだ「租税特別措置法」はまさに、伏魔殿。私も、粗特法をプリントアウトしようとして、総計834頁とかになるので断念したことがあります。
この執行状況の「伝票」を集めようというのが古川法の狙いです。各企業は粗特の恩恵に浴した減税措置を伝票に書いて国に提出しなければいけません。特定の圧力団体しか分からない不透明な減税措置を白日の下に晒し、2010年度以降の税制改正に順次、いかしていくことなります。
当然企業にとっては、増税(減税の撤廃)になるケースがあります。しかし、政権交代をチャンスとして、企業(法人)への税制を見直し、増税すべきです。法人税に均等割をつくり、欠損企業(赤字企業)にも課税するといった外形標準課税や、法人税率の大幅な引き上げなどに民主党は取り組むべきです。
法人税率の大幅な引き上げにより、日本企業が海外に流れるなどという議論がありますが、これは詭弁です。なぜなら、日本企業の経営者や会社員で英語が流暢に話せる人材はごく一部です。例えば、資生堂が日本と同じ商品単価でアジア各国に進出したり、サントリーが米国でウィスキーを販売して売れるでしょうか?しょせん内弁慶なんですよ。もちろん、味の素やヤクルトなら海外に本社を移転してもやっていけるでしょうが、多くの大企業は経営者すら英語を話せないのですから、日本で細々と食べていくしかありません。「大企業は生かさず殺さず」の税率、例えば60%ぐらいに税率を引き上げるべきだと、私は考えています。
◇
以下、古川法の全文です。
租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律案(第174国会閣法第15号)
租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、租税特別措置に関し、適用の実態を把握するための調査及びその結果の国会への報告等の措置を定めることにより、適用の状況の透明化を図るとともに、適宜、適切な見直しを推進し、もって国民が納得できる公平で透明性の高い税制の確立に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 租税特別措置 所得税、法人税、相続税、贈与税、地価税、登録免許税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油石炭税、航空機燃料税、自動車重量税、印紙税その他の内国税を軽減し、若しくは免除し、若しくは還付する措置又はこれらの税に係る納税義務、課税標準若しくは税額の計算、申告書の提出期限若しくは徴収につき設けられた所得税法(昭和四十年法律第三十三号)、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)、地価税法(平成三年法律第六十九号)、登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)、酒税法(昭和二十八年法律第六号)、たばこ税法(昭和五十九年法律第七十二号)、揮発油税法(昭和三十二年法律第五十五号)、地方揮発油税法(昭和三十年法律第百四号)、石油石炭税法(昭和五十三年法律第二十五号)、航空機燃料税法(昭和四十七年法律第七号)、自動車重量税法(昭和四十六年法律第八十九号)、印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)及び国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)の特例で、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の規定(税務署長に提出する書類の提出期限の特例を定める規定、税負担を不当に減少させる行為の防止に関する規定その他の政令で定める規定を除く。)により規定されたものをいう。
二 法人税関係特別措置 租税特別措置のうち租税特別措置法第三章の規定によるものをいう。
三 納税者 国税通則法第二条第五号に規定する納税者をいう。
四 法人税申告書 法人税法第七十四条第一項(同法第百四十五条第一項において準用する場合を含む。)、第八十一条の二十二第一項及び第八十九条(同法第百四十五条の五において準用する場合を含む。)の規定による申告書(当該申告書に係る国税通則法第十八条第二項に規定する期限後申告書を含む。)をいう。
五 事業年度 法人税法第十三条及び第十四条に規定する事業年度をいう。
六 連結事業年度 法人税法第十五条の二に規定する連結事業年度をいう。
七 適用額 各法人税関係特別措置の適用を受けた法人がその適用を受けたことにより増加し、又は減少した税額、所得の金額その他の財務省令で定める金額をいう。
八 適用額明細書 法人税申告書を提出する法人が、当該法人税申告書に係る事業年度又は連結事業年度において適用を受ける各法人税関係特別措置の内容、適用額その他の法人税関係特別措置の適用の状況の透明化を図るために必要な事項として財務省令で定める事項を記載した一覧表をいう。
九 適用実態調査 財務大臣が、租税特別措置の適用の実態を把握するため、第四条の規定に基づき行う調査をいう。
2 法人税法第二条第八号に規定する人格のない社団等及び同条第二十九号の二に規定する法人課税信託(次項において「法人課税信託」という。)の受託者である個人は、法人とみなして、この法律の規定を適用する。
3 法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の法人税法第四条の六第一項に規定する信託資産等及び固有資産等ごとに、それぞれ別の者とみなして、この法律の規定を適用する。
(適用額明細書の提出義務)
第三条 法人税申告書を提出する法人で、当該法人税申告書に係る事業年度又は連結事業年度において法人税関係特別措置(税額又は所得の金額を減少させる規定その他の政令で定める規定によるものに限る。以下第五条までにおいて同じ。)の適用を受けようとするものは、当該法人税関係特別措置につき記載した適用額明細書を当該法人税申告書に添付しなければならない。
2 前項の規定による適用額明細書を添付せず、又は虚偽の記載をした適用額明細書を添付して法人税申告書を提出した法人については、当該法人税申告書に係る事業年度又は連結事業年度において適用を受けようとする法人税関係特別措置の適用はないものとする。
3 税務署長は、第一項の規定による適用額明細書の添付がない法人税申告書又は同項の規定による適用額明細書の記載に虚偽がある法人税申告書の提出があった場合においても、誤りのない適用額明細書の提出があったときは、当該適用額明細書に係る法人税関係特別措置を適用することができる。ただし、故意に、適用額明細書を添付せず、又は虚偽の記載をした適用額明細書を添付して法人税申告書を提出したと認められる場合は、この限りでない。
(適用実態調査の実施)
第四条 財務大臣は、法人税関係特別措置について、適用額明細書に記載された事項を集計することにより、法人税関係特別措置ごとの適用法人数(当該法人税関係特別措置の適用を受けた法人の数をいう。)、適用額の総額その他の適用の実態を調査するものとする。
2 前項の規定によるもののほか、財務大臣は、租税特別措置の適用の実態を調査する必要があると認めるときは、その必要の限度において、法令の定めるところにより税務署長に提出される所得税法第二百二十五条第一項に規定する調書その他の資料を利用し、並びに行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年法律第八十六号。第六条において「政策評価法」という。)第二条第一項に規定する行政機関(以下「行政機関」という。)その他の租税特別措置の適用に関連する業務を行う団体に対し資料の提出及び説明を求めることができる。
(適用実態調査の結果に関する報告書の作成及び提出)
第五条 財務大臣は、毎会計年度、次に掲げる事項を記載した適用実態調査の結果に関する報告書を作成しなければならない。
一 租税特別措置(適用実態調査を実施したものに限る。以下この項において同じ。)ごとの適用者数(当該租税特別措置の適用を受けた納税者の数をいう。)及び適用総額(法人税関係特別措置にあっては適用額の総額をいい、法人税関係特別措置以外の租税特別措置にあっては納税者が各租税特別措置の適用を受けたことにより増加し、又は減少した税額、所得の金額その他これらに準ずる金額の総額をいう。)
二 法人税関係特別措置ごとの高額適用額(第三条の規定により提出された適用額明細書に記載された当該法人税関係特別措置の適用額について最も大きいものから順次その順位を付した場合における第一順位から第十順位までに該当する各適用額をいう。)
三 租税特別措置の適用を受けた納税者の分布状況その他の租税特別措置の適用の状況の透明化を図るために必要な事項
2 内閣は、前項の規定により財務大臣が作成した報告書を国会に提出しなければならない。この場合において、当該報告書は、作成した会計年度に開会される国会の常会に提出することを常例とする。
(適用実態調査情報の提供)
第六条 行政機関の長又は総務大臣は、当該行政機関が行う政策評価法第三条第二項に規定する政策評価又は総務省が行う政策評価法第十二条第一項若しくは第二項の規定による評価を行うために必要があると認めるときは、その必要の限度において、財務大臣に対し、適用実態調査情報(適用実態調査によって集められた情報のうち、文書、図面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)に記録されているものをいう。以下同じ。)の提供を求めることができる。
2 財務大臣は、行政機関の長又は総務大臣から前項の規定による求めがあったときは、正当な理由がない限り、適用実態調査情報を提供するものとする。
(適用実態調査情報の適正な管理)
第七条 財務大臣及び前条の規定により適用実態調査情報の提供を受けた行政機関の長又は総務大臣は、適用実態調査情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
(適用実態調査情報の利用制限)
第八条 財務大臣は、第六条の規定による場合を除き、その行った適用実態調査の目的以外の目的のために、適用実態調査情報を自ら利用し、又は提供してはならない。
2 第六条の規定により適用実態調査情報の提供を受けた行政機関の長又は総務大臣は、その提供を受けた目的以外の目的のために、当該適用実態調査情報を自ら利用し、又は提供してはならない。
(守秘義務)
第九条 適用実態調査情報の取扱いに従事する者又は従事していた者は、当該適用実態調査情報を取り扱う業務に関して知り得た個人又は法人その他の団体の秘密を漏らしてはならない。
(権限の委任)
第十条 この法律に規定する財務大臣の権限は、政令で定めるところにより、国税庁長官に委任することができる。
(財務省令への委任)
第十一条 この法律に定めるもののほか、適用額明細書の様式、適用実態調査の実施細目、第五条第一項の報告書の作成方法その他この法律を実施するため必要な事項は、財務省令で定める。
(罰則)
第十二条 第九条の規定に違反して、その業務に関して知り得た個人又は法人その他の団体の秘密を漏らした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の規定は、同項の罪に当たる行為が国税通則法第百二十六条の罪に触れるときは、適用しない。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成二十二年四月一日から施行する。ただし、第四条第二項、第六条から第九条まで及び第十二条の規定は平成二十三年四月一日から、第五条の規定は平成二十四年四月一日から施行する。
(適用区分)
第二条 第三条の規定は、法人の平成二十三年四月一日以後に終了する事業年度又は連結事業年度に係る法人税の申告について適用する。
2 第四条第一項の規定は、法人の平成二十三年四月一日以後に終了する事業年度又は連結事業年度において適用を受ける法人税関係特別措置について適用する。
(その他の経過措置の政令への委任)
第三条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
理 由
租税特別措置に関し、適用の状況の透明化を図るとともに、適宜、適切な見直しを推進し、もって国民が納得できる公平で透明性の高い税制の確立に寄与するため、適用の実態を把握するための調査及びその結果の国会への報告等の措置を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
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