【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

野田首相(民主党代表)「民主党綱領はある」との新解釈 すべて一人で答弁のスタート 各党代表質問

2011年09月14日 15時53分47秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[画像]野田佳彦首相の所信表明演説に対する各党代表質問に立った谷垣禎一シャドウ首相(自民党総裁)、衆議院インターネット審議中継から。

【衆院本会議 2011年9月14日(水) 各党代表質問】

 野田佳彦首相の所信表明演説に対する各党代表質問の1日目として、自民党総裁でシャドウ首相の谷垣禎一さんと3期生の古川禎久(ふるかわ・よしひさ)さん=宮崎3区=らが質問しました。これに対して、野田佳彦首相はすべての質問をひとりで答弁しました。関係閣僚が一切答弁せず、首相ひとりがすべて答えるのは極めて異例のことです。答弁者を首相ひとりに絞ることで、答弁ミスなどがないよう、慎重運転する姿勢が見えました。

 野田首相は、谷垣さんから「東アジア共同体構想」について質された部分への答弁で、「私の政権では大きな構想よりも、震災対応などの当面の懸案を解決していく」として、構想そのものは維持しながらも、諸課題を処理する内閣であることを強調しました。

 谷垣さんは「代表選で3党合意を白紙に戻すかのような候補がいた」と海江田万里候補を擁立した小沢グループを暗に批判したうえで、「その候補者は相当数の得票を得て、投票した人が政権(政務三役・党幹部)入りしている」と指摘し、「いくら野田総理が誠実そうに見えても疑わざるを得ない」と不信感を強調しました。また「日教組のドンでである輿石東氏を幹事長に起用した」として、「民主党には構造的な隠蔽体質がある」と指摘し、民主党内への不信を強調しました。これについては、民主党から質問に立った樽床伸二・幹事長代行も「民主党のガバナンスを確立させなければならない」として、党内の統治・被統治能力に懸念があることで谷垣さんと認識が一致する場面もありました。

 谷垣さんは質問演説の最後に、これまでは小沢問題などを念頭に置いて使っていた「信無くば立たず」という言葉を引き合いに出しながら、これを「信無き、正統性なき政権だ」として、総選挙から党内の代表交代に伴う3つめの内閣だとして、解散(「信を問う」)を求めました。

 野田さんは、政党の結成届けには綱領が必要とされているとし、1998年4月の結党時に、綱領にかわる物として、「私たちの基本理念」を届け出ているとしました。これは今までの民主党代表としては初めて示した解釈だと思われます。これについて、私が手元で、調べてみましたら、「政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律」の第5条で、「政党は(略)届け出る場合には、次に掲げる文書を併せて提出しなければならない」「綱領その他の当該政党の目的、基本政策などを記載した文書」と定められてあり、この手続きで、「私たちの基本理念」を中央選挙管理会(事務局は総務省)に出していることになります。また条文を読むと、ほぼ毎年提出していることになります。野田さんは新しい政党として綱領という言葉を使わず「私たちの基本理念」としたと答弁しており、実は結党時には野田さんは落選していましたが、あくまでも法人としての政党党首ですから、この新解釈は今後、定着していく可能性が高いと考えられます。

 議場内交渉の結果、2つの答弁漏れがあり、野田首相が「谷垣総裁、ご無礼いたしました」として、答弁を追加する場面もありました。

 自民党は、第177通常国会で積み残しになった3つの東日本大震災対策の議員立法(二重ローン対策法案、私立学校の建物の復旧のための特別措置法案、国会への原子力事故調査委員会設置法案)の審議をするためにも、今国会を延長すべきだとしました。

 自民党が総理以外の閣僚に答弁を求めなかったことや、会派の持ち時間内で可能な再質問・再々質問をしなかったことは、自民党が各党代表質問に「不完全燃焼感」を醸し出して、早期の予算委員会開催への世論を高めたいねらいが見え隠れしているようにも感じました。

 [民主党綱領である私たちの基本理念]

私たちの基本理念

~自由で安心な社会の実現をめざして~

1998年4月27日民主党統一(第1回)大会決定より

●私たちの現状認識

日本は、いま、官主導の保護主義・画一主義と、もたれあい・癒着の構造が行き詰まり、時代の変化に対応できていません。旧来の思考と権利構造から抜け出せない旧体制を打ち破り、当面する諸課題を解決することによって、本格的な少子・高齢社会を迎える21世紀初頭までに、「ゆとりと豊かさ」の中で人々の個性と活力が生きる新しい社会を創造しなければなりません。

●私たちの立場

私たちは、これまで既得権益の構造から排除されてきた人々、まじめに働き税金を納めている人々、困難な状況にありながら自立をめざす人々の立場に立ちます。すなわち、「生活者」「納税者」「消費者」の立場を代表します。「市場万能主義」と「福祉至上主義」の対立概念を乗り越え、自立した個人が共生する社会をめざし、政府の役割をそのためのシステムづくりに限定する、「民主中道」の新しい道を創造します。

●私たちのめざすもの

第1に、透明・公平・公正なルールにもとづく社会をめざします。
 
第2に、経済社会においては市場原理を徹底する一方で、あらゆる人々に安心・安全を保障し、公平な機会の均等を保障する、共生社会の実現をめざします。
 
第3に、中央集権的な政府を「市民へ・市場へ・地方へ」との視点で分権社会へ再構築し、共同参画社会をめざします。
 
第4に、「国民主権・基本的人権の尊重・平和主義」という憲法の基本精神をさらに具現化します。
 
第5に、地球社会の一員として、自立と共生の友愛精神に基づいた国際関係を確立し、信頼される国をめざします。

●理念の実現に向けて

私たちは、政権交代可能な政治勢力の結集をその中心となって進め、国民に政権選択を求めることにより、この理念を実現する政府を樹立します。(了)



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