【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

安倍首相、「3本の矢答弁」修正 平成25年度税制改正法案が衆院で可決、年度内成立へ

2013年03月22日 14時53分48秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

[画像]安倍首相、きょうの画像ではありません。

【2013年3月22日(金)午前 衆院・財務金融委員会】
【同日午後 衆議院本会議】

 「平成25年度税制改正法案(所得税法の一部を改正する法案、183閣法8号)」が衆院本会議を通過しました。地方税法の改正法案(183閣法12号)も通過し、税制改正法は年度内成立する見通しとなりました。

 平成25年度税制改正法案の委員会討論では、民主党税調事務局長の古本伸一郎さんが「民主党は社会保障と税の一体改革の積み残しについて、自民党、公明党とともに協議してきており、ほぼ民主党の提案に沿ってまとまっている」と評価した上で、最後の条文である付則108条(参照エントリー)に検討課題が盛り込まれた」と評価しました。

 日本維新の会(桜内文城さん)は「我が党がめざす税のフラット化とは真逆だ」とし、「相続税の課税ベースの拡大には賛成するが、税率の引き上げには反対だ」として反対しました。これに先立ち、日本維新の会単独で修正案を提出しましたが、他党はどこも乗らず、否決されました。

 この結果、平成25年度税制改正法案は、「自公民み生」5党賛成、「維共」の2党の反対で可決し、衆参での成立が確実になりました。あまり各党の文字列が見慣れないところです。

 この後、民自公共同提案の付帯決議は、「自公民共生」5党賛成、「維み」2党の反対で可決しました。これは「国税庁職員への配慮」があったので、公務員改革に厳しい「維み」の2党が反対したのでしょう。

 さらに予算関連法案である平成25年度の関税定率法改正法案は全会一致で可決しました。審議では、TPPと関税に関する質疑もありますが、あくまでもことしの改正に関しては全会一致でした。これに「税関職員の処遇改善」を盛り込んだ付帯決議がつきましたが、「自公民み共生」6党が賛成し、「維」1党が反対しました。「共」が賛成で、「維」が反対となると、なにがなんやらてんで分からないという風情ですが、いずれにしろ、日本維新の会はとことん公務員嫌いなのでしょう。

 なお、前日の総務委での地方税法改正法案は「自公民維み」5党賛成、「共」1党反対で可決しています。

 衆議院には押しボタンがないため、この各党の賛否は新聞に載りません。ぜひ、このエントリーに書いた各党の態度というのは、第46期衆議院を見る上で、アタマにたたき込んでおいていただきたいと考えます。

 そして、この夏、自公が衆参過半数をとっても、平成25年度税制改正法付則108条は国の法律となりますから、自公は政権として誠実に施行する義務があります。ここ最大のポイントですよ

 平成25年度税制改正法案付則108条は次の通り。

[引用はじめ]

 付則

 百八条 政府は、次に掲げる基本的方向性により、第一号、第三号及び第四号に関連する税制上の措置については平成二十五年度中に、第二号に関連する税制上の措置については平成二十六年度中に財源も含め検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。

 一 大学に対する寄附金その他の寄附金に係る税制上の措置の在り方について、これまで講じられた措置の効果等を踏まえつつ、対象範囲を含め、検討すること。

 二 給与所得者の特定支出の控除の特例の在り方について、給与所得者の負担軽減及び実額控除の機会拡大の観点から、これまで講じられた措置の効果等を踏まえつつ、適用判定の基準(所得税法第五十七条の二第一項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。)及び控除対象の範囲を含め、検討すること。

 三 交際費等の課税の特例の在り方について、当該特例が租税特別措置法で定められていることも踏まえ、消費の拡大を通じた経済の活性化を図る観点から、その適用範囲を含め、検討すること。

 四 贈与税について、高齢者が保有する資産の若年世代への早期移転を促し、消費の拡大を通じた経済の活性化を図る観点、格差の固定化の防止等の観点から、結婚、出産又は教育に要する費用等の非課税財産の範囲の明確化も含め、検討すること。

[引用おわり] 

【安倍首相「3本の矢同時に射込む」答弁を修正、麻生財務相は「同時にやるべきだ」と閣内不一致】 

 さて、安倍首相は補正予算審議の中で、民主党の後藤祐一さんに対して次のように答弁していました。

 「財政政策、何回も何回もこういう思い切った財政政策をやるわけにはいきませんから、あとはやはり、もう一本の、三本目の矢である成長戦略もしっかりと打っていく。
 この三本の矢を同時に射込んでいく。今おっしゃっていただいたように、三本の矢は折れない。私のところは山口県でありますから、子供のころから言われていたことでありますが、そうした形でしっかりとこの三本の矢を同時に前に進めていくことによって日本を力強く成長させていくということと同時に、今委員が質問されましたように、問題は、賃金に反映させていく、そして雇用をふやしていくということであります。


 この「3本の矢を同時に射込む」との表現。1本目の矢「日本銀行の金融緩和」、2本目の矢「政府の補正予算による財政出動」、3本目の矢「成長戦略」ですが、1本目、2本目は射られましたが、3本目はまだ。同時に射込まずに逐次投入で射込んだら、矢は折れます。

 安倍首相は「3本の矢は大事で、まず金融政策をしないと事は始まらないし、財政支出もしていく。そして、雇用の拡大や、給料の増加で幅広く、都市から地方へと、デフレ脱却による景気の回復を目指していきます」とし、「質問のしかたにより、答えが違っていたかも知れない」として、答弁揺れがあったことを認めました。生活の党の鈴木克昌さんへの答弁。この後、麻生財務相は「3本の矢は同時にやるべきだ」と答弁し、閣内不一致ではないかと委員室がどよめきました。

 また、関税定率法改正法案の質問で安倍首相は「自民党としてはTPPのISD条項に関しても、国益にかなうものでなければならないと申し入れているわけです」と、主語、述語が変な答弁をしました。与党・自民党の得意技、「政府と党の二元体制」が崩れつつあるように感じました。自民党は二元体制で政権のバックアップをとってきたわけですが、現在党の無役の衆院議員で総理大臣を緊急リリーフできる人材は見たりません。安倍内閣のバックアップは民主党であり、いつでも、自民党に代わって天皇陛下をお守りするということで、民主党議員も党員も、あるいは一般有権者も民主党を育てるべし。

 安倍答弁は力強いが、雑です。

 チャンスが来るそのときまで、民主党が息切れしないことが大事です。

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