【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「自民党のおいしいお水」 水にも議員特権がある

2008年01月01日 00時00分44秒 | 人物

写真はテレビ朝日の映像から

【追記 2008-01-01 00:00】
 3ヶ月半前に書いたエントリですが、ぜひお正月の時間に余裕があるときに読んでいただきたいと思い、日付を変更しました。第45回衆院選の公示前にもう一度あげる予定です【追記おわり】


(初投稿日時 2007-09-15)

 自民党総裁選のため、当分国会審議は始まりそうもありませんので、今日はずっと書きたかった「自民党のおいしいお水」という話をご紹介します。

 私が大学に入った1992年(平成4年)のことです。入学間もない私は先輩から誘われて「全国学生交流会」(NSA)に入会しました。この組織は実質的な自民党学生部で、毎月、自民党本部で開かれる勉強会に参加していました。

 自民党青年局学生部長は30歳の当選1回生、赤城徳彦衆院議員(現茨城1区)でした。

 私が「全国学生交流会」に参加したのは自然の流れでした。当時の日本には、自由主義政党は自民党しかなかったからです。

 日本社会党には「社会主義青年同盟(社青同)」、日本共産党には「民主青年同盟(民青)」という学生・青年組織がありましたが、商家で生まれ育った私に社会主義や共産主義は縁遠いものでした。

 月例会ではまず、夕食としてカレーライスを食べながら、執行部の学生が説明するその日の会議予定を聞きます。食べ終わると、カレーライスを下膳して、資料などに目を通しながら、発表者の説明を聞くという流れです。

 場所は自民党本部内の80人ほどが入る会議室。朝は自民党の政調会の部会が開かれています。よくTVニュースで、白い布が敷かれた机に若手議員がぎゅうぎゅう詰めで座る中、中堅議員が立ち上がってマイクで話している姿が流れますが、あの部屋です。

 冷戦崩壊後でバブル末期の1992年ですから、政治に関心を持つ学生は少なく、「交流会」の会員は30~50人ほどだったのではないかと思います。それだとどうにもならないので、月例会ごとに会員の友人を誘って来てもらっていました。

 カレーライスは自民党本部内にある喫茶「リバティ」の配膳のおばさんが出してくれます。専属の喫茶店が出してくれるのですから当日の出席者数に柔軟に対応してもらえるので、執行部の学生としても大助かりだったわけです。

 あるとき、いい季節だったのか、テーマが面白かったのか覚えていませんが、大盛況の月例会がありました。カレーライスに付きものの銀色ポットに入った水がどんどん品切れになりました。

 私はすぐに廊下に出て、配膳係の「リバティ」のおばさんにおずおずと「お水をいただけませんでしょうか?」と聞いたところ、快く「はい、もちろんいいですよ」と柔和な笑顔が返ってきました。

 その女性は水差しから、ポットに水を入れながら

「このお水は先生がお飲みになるお水ですから、おいしいですよ」

と18歳の私に言ったのです。

 私は彼女の言葉を聞いて、がく然としました。

 議員特権というものがあります。日本国憲法では「不逮捕特権」(第50条)、「議院での演説、討論又は表決について、国会外で責任を問われない」(第51条)などの議員特権を定めています。

 が、私は「おいしいお水を飲む議員特権」があるとは知らなかったので驚きました。

 今日、かちかち山の泥船にしか見えない自民党本部の中で、入院中の総理の見舞いにも行かずに後継総裁選びに奔走する自民党国会議員たちの姿をTVで見て、違和感を感じるのは私だけではないと思います。

 しかし、政権与党である自民党の国会議員には「おいしいお水を飲む権利」があるのですから、その権利を守るために奔走するのは、人間の本能として、自然の理(ことはり)と言えるかも知れません。

 配膳の女性は「毎日国政に汗している先生方に少しでもおいしいお水を飲んでいただこう」という職業倫理から言ったのでしょう。

 でも、それが当たり前の言葉として日常的に出て来るのが37年間にわたる長期独裁政権なんだなあ、と大学1年生の僕は思いました。

 その日から15年が経ちました。

 自民党は今日も権力の座にあります。

↓クリックで「下町の太陽」を応援してください!
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ



最新の画像もっと見る

コメントを投稿