【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

野田総理の強い指導力で、消費税増税準備法案の素案の年内決定に成功 保守二大政党らしさ成熟 

2011年12月30日 01時48分22秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]総理(民主党代表)の野田佳彦さんと民主党税調事務局長で衆院議員の古本伸一郎
 
 年末のうれしい誤算というよりも、ちょっとした感動を覚えています。

 我が党(民主党)は2011年12月29日(木)午後3時から、税制調査会および税・社一体改革調査会の合同総会を開き、平成21年に天皇陛下が公布した「税制改正法」の104条にもとづく消費税増税準備法案の素案を協議しました。途中からは、国賓としてのインド訪問から帰国した民主党代表で総理の野田佳彦さんも出席し、「2014年4月から8%、2015年10月に10%に引き上げる」という素案を午後11時45分ごろ、決定しました。私は年内の決定は難しく年越しした方が党のためだと考えていましたが、54歳の野田総理の「政治家の集大成」という強い言葉もあり、年内決定に成功しました。男子の本懐です。とくに、反対派が退席するというかっこうをとり、まだまだ足もとに及ばないとはいえ、半世紀にわたる政権政党、自民党に似た、政権担当能力がある保守二大政党として民主党が成熟しつつあることを感じました。万感の思いがします。

 民主党が素案を決定したことで、年明けの自民党の対応が注目されます。

 このほか、消費税増税の際の景気弾力条項、低所得者向けの給付付き税額控除、議員定数削減、行政改革法案の成立、所得税の累進課税の最高税率の再引き上げなども決まりました。

 そもそも、平成21年度税制改正法は第44期衆議院と第21期参議院の議決により、天皇陛下が公布したものであり、その附則104条に、その時点の内閣総理大臣が従うのは、法治国家、デモクラシーにおいて当然のことです。マニフェストに違反したのではなく、マニフェストが甘かったのです。そういったなかで、自民党経験のある藤井裕久税調会長だけでなく、税調事務局長の古本伸一郎さんの力は特筆に値します。古本さんは民主党で初当選し、民社協会員ですから自民党経験はありません。私は恥ずかしながら、与党税調の取材経験がこれまでありませんでした。ただ、12月9日でことしの国会が終わり、旧新生党筋から「税調はおもしろいよ」とのアドバイスを受けたので、平成24年度税制改正大綱の策定作業から、ちょっとだけですが勉強させてもらいました。民主党税調は野党時代から「租税特別措置のシンプル化」の筋を通し続けており、これは政権交代してからもうまく行っています。例えば、「ナフサの免税を恒久化」しましたが、これは「減税の粗特の廃止」であり、野党時代からの民主党税調の基本方針を踏襲したものです。この一連の作業の中で、記者向けブリーフィングを一人任された古本さんは、農林漁業燃料用A重油の免税の粗特が、実は、国税収への影響が28億円減収でしかないとして、こういった差配で、自民党が長年、票と政治資金を集め政権を維持してきたことに驚く、という趣旨のディスクロージャーをしました。そして、党税調という名称はことしが初めてで、どの程度オープンにするかについて、「自民党がどうやっていたのか、ぜひ記者の皆さん教えてください」と頭を下げました。民主党で最も選挙が強いとされる古本さんですが、何度も言及していますが、政権交代直後のNHKスペシャルでは、財務政務官で「いやあ、自民党は長年こんなに大変なことをしていたのか」と発言し、その「弱さのディスクロージャー」は番組冒頭から、使われました。昨年の「税制改正プロジェクトチーム」では中野寛成会長・古本事務局長の「民社協会コンビ」の信頼関係と阿吽の呼吸だったようですが、今年は藤井裕久さんと政権交代直後の「財務省政務三役コンビ」で、総理官邸を何度も訪ねて、野田さんの勇気と含めて、年内にまとめました。やはりトヨタで通用する人はどんな世界でも通用するのだな、と再認識しました。自民党出身者と民社協会員を軸に、「新しい保守政党」として、わが党が、自民党の足もとに近づいてきた感じがします。民主党の青春、民主党の挫折を経て、民主党の成熟を感じます。結党15年目を迎える来年2012年は、結党時にあった総務会(横路孝弘・初代会長)を復活させるのもいいかもしれません。総務会は社会党議員の牙城となったので、廃止したのですが、今後は、政務三役として使えない小沢グループや社会主義政党出身者の連中のガス抜きもかねて総務会をつくってもいいかもしれません。

 民主党の中には、「穏健な多党制が理想」などという訳の分からないことを言う連中が大臣にすら居て、頭を抱えます。しかし、我が党の進む道が、政権交代可能な保守二大政党の片割れであることしかないことはすでに明白です。古本さんと同じ愛知県連所属の社会保障と税の一体改革担当大臣ですが、あまり存在感がありませんでした。2009年5月の代表選では良い判断をした政治家なので、今後に期待します。

 第180通常国会に提出する消費増税準備法案は、「所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)」の附則104条です。この「平成21年法律第13号」とは、平成21年において、天皇陛下が日本国憲法第7条により、13番目に公布なさった法律です。そして、民主党の2009マニフェストはこのあとに発表されたものです。ですから、消費増税準備法案を3月までに提出することは、天皇の国事行為と日本の法体系に基づく内閣の義務であり、民主党マニフェストに優先します。すなわち、マニフェストに違反しているのではなく、マニフェストの見通しが甘かったのです。それを理解できない、小沢グループや社会主義者は、我が党から去るべきです。とはいえ、議席はあるので、当分は、総務会的なかっこうの党内議論に参加し、一定の段階で退席する。そういうことにすればいいのではないでしょうか。

 なお個人的には、たったの10%ではなく、できれば、16%ぐらいまで上げて、自治体へ半分ぐらい配分してもらいたいと考えます。消費税は地域による偏りが比較的少ない税目なので。それにしても、代表無くして課税なし、税とはすなわち政治なりという感じがします。そして、我が党が古本さんというニューリーダーを得たことに希望を感じます。ピンチはチャンス、苦しいときが伸びるとき。まさに「民主党の成熟」です。そういえば、藤井財務大臣、野田副大臣、古本政務官というラインアップでしたね。野田さんも小沢さんの妨害で、副大臣スタートで良かったのかもしれません。

 私も学生として、経世会(自民党竹下派)、改革フォーラム21(自民党羽田派)、新生党、新進党と歩み、その後、新聞記者として新党友愛(民社協会)を担当。そのメンバーがこうやって民主党第1次与党期を形作っていくことに万感の思いを感じると共に、自分の前半生が有益であったことが証明されたことに安堵し、節目節目での自らの選択が正しかったことに誇りを持ち、そして発行部数300万部の新聞社の社命でたった一人の「新党友愛」専従担当記者だった巡り合わせに感謝します。東日本大震災が発生した年の暮れに、国益、国民益に自らの人生が資していると実感できることは日本国民としてなによりも幸福なことであります。ご先祖様もさぞかし喜んでくださっていることでしょう。

 そもそも参議院で法案が可決・成立するのかという大問題からして、我が党の行く手には難題が多々あります。ただ、今回の「体験」は、仮に我が党が第46回総選挙で下野しても、第47回総選挙につながると確信しています。まずは「陛下が公布した法律よりもマニフェストが偉い」という国賊・小沢一郎グループを根絶やし、公認差し替え、第46回総選挙への陣立てを整えるところから、平成24年、2012年という一年を始めていきましょう。

 逃げるなよ!自民党! 

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