【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

会社法改正案で民主党の前川清成・議運筆頭理事(兼)法務委員「必要性乏しい」と会期末重大な決意辞さず

2014年06月10日 11時40分50秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

【2014年6月10日(火) 参議院法務委員会】

 入国管理・難民認定法改正法案が審査されました。

 民主党は議院運営委員会の野党側筆頭理事である前川清成さんが質問。議題に先立って、数十分間だけ、「会社法改正法案」(185閣法22・23号)について質問しました。

 前川さんは5月28日に質問主意書を提出し、6月6日(金)に答弁書が閣議決定されたました。内閣参質186第111号で、すでに参議院のウェブサイトに全文が掲載されています(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/186/meisai/m186111.htm)。 

 まず主意書と答弁書から紹介します。

 前川主意書は「会社法改正案に関して参議院法務委員会における審議を通じて、衆議院では明らかにならなかった様々な問題点が明らかになった」と今国会の学級委員長である参議院議運理事として、再考の府「参議院」の存在意義を誇りました。

 そのうえで、「特別支配株主の株式等売渡請求」(改正法案179条以下)について(1)特別支配株主から対価を支払わなくても一方的に定めた「取得日」に株式が移転してしまう(改正法案179条の9第1項)、(2)対価を支払わない場合において株主の権利を擁護する規定が欠落している(3)対価も特別支配株主が一方的に決定するこができる(179条の2第1項第2号、第3号)のに、売渡株主はその価格が著しく不当な場合だけしか差し止めを求めることができない(179条の7第1項第3号)--などの問題を指摘しました。

 これに対して答弁書は「民法の一般原則により、売渡株主等は、対価が支払われない場合には、債務不履行を理由として売買を解除することや、損害賠償請求をすることができる」、「本法案が基準を明記していないのは、少数株主を含む株主の利益に配慮すべき立場にある取締役が善管注意義務に基づいてこの承認をするかどうかを判断しなければならない以上、この基準の内容は明白であるからだ」などとしました。

 さて、委員会室に戻って、前川さんの質問。「質問主意書まで出したけれども、いまだに必要性が乏しいように思う」「立法目的と権利の制限の均衡がとれていない」と語り、本会議の設定も司れる議院運営委員会野党側筆頭理事として、 会期末(6月22日まで)に重大な決意をもって臨むことを否定しませんでした。

 また、参議院修正がかかると、衆議院回付が必要なため、参議院本会議通過は常識的には6月18日(水)までにやらないといけません。それまでに参議院法務委員会の定例日は、12日(木)、17日(火)の2回しかありません。が、17日(火)に桂宮宜仁親王殿下の「斂葬の儀(れんそうのぎ、ご葬儀)」が午前10時から執り行われるので、さらに日程が窮屈になってきました。

 前川さんは主意書で「先進諸国の事例」について尋ねたところ、答弁書で「お尋ねの「先進諸国」の意味するところが必ずしも明らかではないが」と返されたことを紹介し、「いかさか驚きました」と感想を述べると、緊張感にあふれた委員会室に笑いが起きました。谷垣法相は「法務省民事局にはアメリカに行っていた弁護士もいるが、アメリカの会社法はよく分からない」といつも通り正直な答弁。そのうえで法相は、アメリカでは、デラウェア州の会社法が模範とされていて、「ショートファームマージャー」といって9割以上株主が1割未満株主の株を買える制度があるが、「ただ、これは合併を前提にした法律だ」と答弁しました。前川さんは「経済はグローバル化しています。例えばトヨタの米国法人だってある。この会社法(改正案)が(日本国内だけの)唯我独尊でつくっていたとしたら、(法務省民事局の)怠惰だと思う」と批判しました。

 ところで、アメリカに模範となる法律がないとしたら、この改正法案の「株式等売渡請求制度」はどこから出てきた話なのでしょうか。まさか竹中平蔵さんでしょうか。まさか・・・この法案の提出過程には不可思議な点がもう一つあり、先の臨時国会会期末1週間前に提出されています。これが出たせいで、先の臨時国会は与党国会対策委員会は、「閣法成立率100%」の記録を逃しました。記録を逃してまで、成立不可能な会期末1週間前に提出されたことについては、民主党側としては謎で「おそらく成長戦略の関係で年内に出そうということになったのだろう」(閣僚経験者)と推測されています。

 もう一つ付け加えると、前川主意書で「株主は株式譲渡を希望していないにもかかわらず、なぜ時価での売却ではないのか」と質問したところ、政府答弁書で「(非上場のため)市場価格のない株式の場合には、何をもって時価とするのかは一義的に明らかでない。したがって、常に時価をもって、売渡株式の対価とすることは相当でないものと考える」と答えており、寿司屋かよ!、と思ってしまいました。

 法務省民事局は少し、現状が認識できていないように感じます。 

 小川敏夫法務委筆頭理事も過去に議運筆頭理事や会派幹事長を経験しています。さらに江田五月元議長も委員として名を連ね、さらに有田芳生さんまで委員と、民主党はオールスターキャストの印象があります。共産党の仁比聡平委員も昨年から議運委理事を兼ねています。 ところが、公明党の荒木清寛・委員長に対して、自民党の理事2人は1期生であり、法務行政の経験もなし。この委員会は理事4名のため、公明党の理事はいませんが、公明党の委員も1期生です。こういう布陣で迎える会期末となります。

 かなりプレッシャーがかかっているようで、会社法改正案をストップさせて審議した先日の司法試験法改正案の質問では、自民党次席理事がのっけから「法学部卒業だが、司法試験を受けた経験がないような私が今質問しようとしている」と切り出したところ、その後のみんなの党の委員が「私は司法試験を受けたことがないばかりか法学部卒業ですらない」と切り出して質問するという「センセイ」方には珍しい弱気な審議となりました。

 いずれにせよ、野党・民主党も今や「廃案ありき」という無責任野党ではありませんから、国会で最も良い結論を出せると考えています。新聞報道は全然ありませんが、いろいろな弁護士のブログを読むと面白いところですが、弁護士なんだから「国会法第12条によって会期を延長させてでも成立させるべきだ」ぐらい言ってほしいところです。国会法も大学の必修や司法試験の科目に入れたらいいと私は思います。当事者は今週中に意見を国会に届けないといけません。

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