[写真]「私は医師として200人の死に水をとってきました!」責任感あるステイツマン、自見庄三郎さん、東京・巣鴨、2008年3月、宮崎信行撮影。
4月22日週の国会を振り替えって、ひと言「やはり小沢は疲れる」というのが率直な印象です。
さて、4月27日(金)の参院本会議で改正郵政法が成立しました。国民新党代表で郵政改革担当大臣の自見庄三郎さんは「あの世で前島密さんにあわせる顔がようやくできた。このままうやむやになったら、合わせる顔がないと思っていた」と喜んだそうです。
この「うやむやになったら」。ここ半年にわたり、国民新党をめぐって深刻な政局があったことはほとんど報道されていません。当ブログでは昨年12月に「内閣が郵政改革法案を撤回し、3党合意で郵政民営化法改正へ」という記事を書いています。これを見てもらえれば、閣法(176閣法1~3号)を撤回し、公明党案を軸にして、民自公提出の衆法(180衆法6号)を提出。改正郵政法では、郵便局と郵政事業が合併し、親会社の下にゆうちょ銀行とかんぽ生命がぶら下がる。郵便局、ゆうちょ、かんぽが一体的にユニバーサル・サービスを展開し、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を政府が3分の1超持ちながら売却する格好になると報じました。
これは株式売却の時期を除けば、私の12月の記事は、大スクープであり、ピタリ賞だったことになります。ではなぜそうなったのか。それは「改革者の仮面をかぶった悪魔」郵政見直し法案の成立を拒んでいたから成立の時期が4月末までずれ込んでしまったから。そして、その「改革者の仮面をかぶった悪魔」とは、何を隠そう、亀井静香・国民新党代表(当時=現在は同党除籍)その人だったのです。
郵政見直し法が成立してしまうと、シングルイシュー政党である国民新党の存在意義がなくなります。そのため、亀井さんは、11月の大阪ダブル選挙で圧勝した橋下徹さんや、清和会(自民党福田派)の同僚だった石原慎太郎さんと、国民新党を解消する形で「新党」をつくり、第3極として国民の注目を集めることを、郵政見直し法を成立より優先させていた、と考えられています。
第179臨時国会で、郵政見直し法と国家公務員給与8パーセント削減法が大きな宿題だったのに、会期が切れてしまいました。そのため、国士である自見庄三郎さんと下地幹郎さんが「亀井切り」を断行し、スムーズに法成立を実現しました。そもそも郵政民営化法の株式売却を一時凍結する法律は、第168回臨時国会(民主党法案の嵐に福田内閣たじたじ国会)で、野党・国民新党の自見庄三郎参議院議員さんが筆頭発議者として民主党と共同で発議し、参議院で可決しました。この法律は先議の参院で可決し、衆院に送付後、1年間たなざらし。他院が可決して送付した法案を1年間つるしたのは憲政史上最長でしょう。第170回臨時国会(麻生解散先送り兵糧攻め国会)で、自見さんが趣旨説明をしました。そしてこれは数の力で当時の与党自民党らにより否決されました。そして、政権交代後に閣法として「一時凍結法」を衆参で可決・成立。そして、きのう、ついに見直し法が武正公一さんらの提案で成立しました。つまり、これをずっと一生懸命に民主党の数の力も借りてやってきたのは、自見さんなんですよ。亀井なんか何も関係ないの。下地幹事長も昨年秋の臨時国会で、郵政関係の株式を早く売りすぎてしまうとよくない、という趣旨の発言をしていますが、下地幹事長は機を見るに敏ですから、さっと亀井切りと他の党員をまとめ上げて、届け出も済ませて、法成立にこぎ着け、その手際の良さは評価に値します。
亀井さんは「あの暑い夏の総選挙」第126回通常国会では、政治改革関連法案を廃案に尽力しました。そして、第40回総選挙で、自民党は惨敗し、細川内閣が政治改革関連法を成立させ遅ればせながら、日本の有権者を政権を選択する権利を得ました。亀井さんは第162回通常国会では、郵政民営化法に反対し、結果として派閥を失い、自民党を除名され、刺客のホリエモンに追い上げられ、地元から離れられない戦況になりました。このように亀井さんはいつも重要法案のゆくえを見誤る傾向があります。国民的人気が不思議でなりません。
国民的人気といえば、新党改革(参院2議席)の舛添要一代表。彼は、衆院送付の「新型インフルエンザ特別措置法」(180閣法58号)について、今月の本予算審議で、「参議院段階で修正しましょうね、(院の)同志のみなさん!」と呼びかけていました。前回のパンデミックのときの、自民党内閣厚労大臣として、参院らしさ、自分らしさを出したかったようです。ところが、私参院内閣委員の名簿を見て驚いたのですが、内閣委員は20人で、新党改革は2議席しかないので、同党の割り当ては初めからないんです。それでどうやって修正協議をするのか、委員会室のロビーで本会議に向けて政党間協議でもやるのか。これについて、芝博一・内閣委員長(民主党)は、4月17日(火)に舛添議員に対して、「委員外質問」を認めて、舛添さんは同委で質問しました。内閣府特命担当大臣の中川正春さんは「具体的なものをきめるときに、是非アドバイスをいただきたい」と答弁しました。しかし、実際には閣法への参院修正はありませんでした。そして、結果、4月27日の本会議では新党改革は「棄権」しています。ヒジョーに度量の狭い男ですね。
亀井、舛添らテレビの世界のヒーローが消えていきます。それを「さみしい」と感じる方は、連休明けに始まる「衆院社会保障と税の一体改革特別委員会」の審議で新しいスターを見つけたらいかかがでしょうか。
[写真]「岡田かつや20年の歩み」岡田かつや後援会報2010年秋特別号から。
20年前から、亀井さんや舛添さんはテレビの人気者ですが。驚くべきことに、20年前の日本はアジアでイチバン1人辺りの購買力平価が高い国でした。そして、新進党解党の直後にシンガポールに抜かれてからじり貧が続きました。東日本大震災があったので、どか品になるでしょう。私は20年前から亀井静香さんは偽者だと感じていました。岡田克也さんも亀井さんが偽者のだと見抜いていた一人です。
それから10年後、2002年5月30日、政権準備政党民主党の政調会長になった岡田克也さんは定例会見で記者から死刑廃止に関する超党派議連に関して、「自民党の亀井静香さんだけは、死刑の適用が必要です」と語り、真意を聞かれ、「今、死刑にしろと言ったのではありません」「彼が会長になるのは皮肉なこと。いろいろかねてから、犯罪についていろいろうわさになる人だから。ある意味で非常に滑稽なことだと思う」と話しました。
この後、 2002年6月6日の民主党議員パーティで、亀井さんは「私が死刑になるのは民主党が政権を取ったときだろう」と語りました。亀井さんは、上の写真にもある平成4年の羽交い締め事件に言及し、「当時から(岡田君は私を)殺してやりたいと思っていたのか」とブラックジョークを飛ばしました。続いてあいさつした菅直人幹事長は「亀井さんは警察官僚のとき誤認逮捕が多く、その穴埋めに(死刑廃止を)やっているのかな」と返礼。あいさつの出番がなかった岡田政調会長は苦笑いしたと当時の新聞は伝えています。
このように、政治においては、お茶の間の人気者を切らなければ前に進まなければいけないときがあります。日本人は優しすぎます。世界で通用しません。改正郵政法は10月1日施行という話があります。法律では公布の日から1年以内に政令で決めることになっています。もっと早く亀井切りをしていれば、この5月1日施行でも良かったかもしれません。日本は時間的に余裕がありません。偽者をドンドン切っていきましょう。また、「サボタージュ」を政治記事にするのが難しい。でしょうが、「消費増税法案に川内博史さん、三宅雪子さんが吠える」などという役に立たない記事ばかり書いて、既存メディアが昨年来の亀井サボタージュを記事にしなかったのは、たいへん遺憾です。
要するに、権力闘争とは殺し合いなんですね。小沢グループはそのことへの理解と覚悟がありません。だから、小沢グループはまとまらないのです。
自見先生、力のある下地幹事長、前参院議員・長谷川憲正さん、公明党の斉藤鉄夫さん、民主党の武正公一さんら、自民党で附帯決議を読んだ「元」刺客の片山さつきさんら、おめでとうございました。
当ブログもこの4年半、郵政法案を追いかけてきましたが、しばらくはホッと。人を想う気持ちで、この国は出来ている。当ブログはこれからも日本郵便とイノッチを応援し続けます。
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