【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

安倍総裁、女性衆院議員、次期総選挙で自民党では増えないと答弁 民主党は広き門【追記お詫び訂正有】

2014年03月09日 17時12分34秒 | 第47回衆院選2014年12月アベノミクス解散

[写真]エド・ミリバンド労働党党首(影の首相)=中央と、ハリエット・ハーマン副党首(右)、ハーマン衆議院議員ホームページから。

 3月は女性月間、3月8日は世界女性デーだったとのことです。

 「赤ちゃん抱っこし放題」で女性の活用こそ日本最大の成長戦略という安倍首相の考えに私は賛同します。ところが、自民党総裁として、2014年1月31日(金)に、同党の野田聖子衆議院議員(総務会長)に対して、第47回衆院選(2015年夏~2016年12月に実施)で、自民党の女性衆議院議員が増えない、と答弁したことはいただけません。

 野田さんが、「(女性衆議院議員を増やすのには)いろいろなやり方があると思うんですけれども」「何をするべきかということで、試案でもいいから、思いつきでもいいですから、総理としては、どういうことがこの日本の風土に合っているのかなという、アイデアを御披露いただければありがたいと思います」との質問に安倍首相(兼)自民党総裁は次のように答えました。
 
 「自民党の政治大学院をつくりまして、ここから、今、ここで学んだ人たちが女性の地方議員としてどんどん誕生しておりますので、それを一気に加速化していく」「我が党は前回の(衆院の)選挙で大勝しましたから、既に議席が、ほとんど現職がいるということもあります。そこで、これから比例等も活用しながら、いわば候補者選定の際に、女性の候補者について特に新体制を考えていくということも大切な点ではないかと思います。一気に、今、何%ということは、残念ながら国会議員については申し上げることはできません」

 として、地方議員の女性比率は2015年4月の統一地方選では増えるものの、次の衆院選で自民党の女性議員は、現在の23名からは増えないとしました。 

 安倍総裁は、比例単独名簿も活用したい、としました。ところで、近藤三津枝・前自民党衆議院議員をご存知でしょうか。1953年6月兵庫県芦屋市生まれですから、このブログを書いている時点で60歳と働き盛りです。小泉郵政解散のときに、猪口邦子元男女共同参画相や稲田朋美現行革相のように、ワイドショー政治のなかで、衆院議員に初当選。1期目は与党、2期目は野党でやりましたが、前回の選挙には比例名簿から漏れ、出馬していません

 前の任期の衆議院要覧によると、近藤さんは「経済・環境・アジアをテーマにテレビなどのジャーナリスト活動」をし、衆議院では「経済産業委員、環境委員」を務めました。そして、自民党の新聞局長もしました。その当時、2011年8月9日付の「週刊自由民主」がこちら。



[写真]2011年8月9日付の「週刊自由民主」の一部、記事内の写真は近藤三津枝・自民党衆議院議員(当時)。

 このように近藤さん各界のオピニオンリーダーと対談をする記事がたびたび掲載されました。まあ、おそらく近藤さんは比例単独で出馬し続けることが難しいことも分かっていて、「衆議院議員(兼)自民党新聞局長」の肩書でいろいろと名刺交換しながら、やっていたのでしょう。これでは、昔風の商社で結婚までの腰掛けで働く「一般職」女性のような扱いです。まあ、自民党は派閥政治ということもあり、各人の事情にあわせて人事をやっていてうまいのですが、おっさん風です。

[参考 近藤三津枝・前衆議院議員のホームページから引用はじめ]
自由民主党近畿ブロック比例に不出馬といたしました

皆様には衆議院議員二期7年余、多くのご助言、励ましを頂き厚く御礼申し上げます。
特に、二期目の3年余は自由民主党の歴史的敗北から政権奪還に向けて、国会、党務におきまして専心努力させて頂くことができましたのは、ひとえに皆様のご厚情のおかげと感謝申し上げます。
政権奪還まで今一歩のところまできましたが、私は今回の衆議院選挙には不出馬とさせて頂きました。
今後とも我が国、関西、大阪の発展のために尽くせるよう、研鑽してまいります。
前衆議院議員
近藤三津枝

[引用おわり] 

 さて、民主党。実は第46回衆院選では、日本の政権与党で史上最多の女性候補を擁立しました。そのことを知っている人はほとんどいないでしょう。驚くばかりのアピール下手ですが、それ以上に、女性候補は小選挙区全員落選、比例復活が3名だけという悲惨な状態になりました。

 ただ、20代、30代の女性が民主党の衆議院議員の公募を狙ってみる手はかなりお得だと考えられます。まず全295選挙区のうち130選挙区ほどしか公認候補が決まっておらず、今から手を挙げても、組織力で小選挙区を勝ち抜ける可能性がある選挙区は残っています。

 民主党は2013年12月17日(火)の常任幹事会で、女性候補者の擁立と支援、必要な環境整備に関する提言を受け取り、満場一致で認めました。
  [写真]女性の擁立・支援・環境整備の提言について話し合った民主党常任幹事会、2013年12月17日(火)、東京・永田町の民主党本部、筆者撮影。

 衆議院全体の女性比率は8・1%ですが、民主党は上に書いた事情でわずか3名なので、5・3%です。参議院では全体の16・1%に対して、民主党は15・3%と低い。地方議員ですと、全体の比率の集計ありませんが、民主党に限れば、2457名中261名が女性で、比率は10・6%です。

 ただ、民主党の集計によると、党役員の女性比率は、自民党の11・6%、公明党の10・5%に対して、民主党は13・5%となっています。

 これについては、5年ほど前に、民主党の男性議員が調べたところ、「選挙対策委員長」「国民運動委員長」などの党務委員長の「副委員長」にやたらと女性議員が多いことを集計して、幹事長に直訴し、自分らを副委員長に入れてもらったことがあります。これは、自民党が派閥である程度人事を割り振るのに対して、民主党はその機能がないので、党務委員長が「副委員長の一人になってほしい」とバランスを考えることから生じた現象のようです。つまり、女性は当選してしまえば、女性の人数が少ない永田町では目立つのでポストに恵まれやすい、というメリットがあります。

 それから、民主党は年齢や期数の近い女性議員同士が仲が良い傾向があると私には見て取れます。

 また民主党の資料には興味深い点があります。民主党女性議員が地方議員も含めて空白なのが9県。秋田県、山形県、富山県、石川県、和歌山県、広島県、愛媛県、大分県、鹿児島県とあります。だから、この9県の出身者は、県連出身の公募にエントリーシートを送れば、ハードルが低いと思われ、Uターン就職のチャンスです。なかでも秋田、大分、広島は比較的民主党の組織があるので、当選のチャンスも高いでしょう。

 県どころか、衆議院比例ブロックで、女性の候補(予定)者がゼロは、中国、四国ブロック。さらに九州も全国比例選出の女性参議院議員が県連にいますが、衆議院の候補(予定者)はいません。さらに驚くべきは、北関東(埼玉・栃木・群馬・茨城)南関東(神奈川・千葉・山梨)もゼロです(神奈川県に女性参院議員が1名)。 埼玉、神奈川、千葉は党の組織が強い地域なので、かなりねらい目です。

 まあ、衆議院というのは、できれば世帯全体での不労所得が月20万円前後ある人が立候補した方が長続きしやすいのですが、今の時代そういう人はなかなかいません。

 民主党には「WATER & SEED 種と水 女性新人候補者支援民主党WS基金」というものがあります。この基金から、候補者に対して応援があります。党本部や県連からの支部交付金や公認料(推薦料)に加えて、党本部男女共同参画委員会が管理する「WS基金」から一定の選挙資金を提供し、また要請に基づき、党国会議員らによる選挙応援などを受けることができあmす。また、民主党員である新人の地方議員候補には貸付金の制度もあり、当選すると県連に返済しますが、落選すると免除される場合もあります。

 衆議院は働きやすい場かというと、2月、3月、6月など、一時的に大変仕事が忙しい時期があり、参議院に比べればかなりの体力仕事です。ただ、男女問わず国会議員は自分がイチバンかわいい人だけで作られた職場なので、セクハラ、パワハラはありません。妬みはありますが。保育所の送り迎えはやりやすい職種です。東京と選挙区との二重生活がネックになるかもしれませんが、それも要領次第です。 

 英労働党のハリエット・ハーマン衆議院議員(Camberwell&Peckham選挙区)は1950年7月生まれの現在63歳。法律事務所員を経て、野党期の1982年初当選。政権交代後に政務三役。先輩に閣僚待望組が多く、入閣は遅れましたが、与党3期目の2007年に男女共同参画大臣になりました。逆風の2010年総選挙でも59・2%の得票率で当選8回(補選含む)。 与党期から副党首を兼ねていましたが、下野にともなう首相(党首)辞任により、5か月間、党首代行をつとめました。党首選では、2005年初当選のエド・ミリバンド前経済産業大臣が当選し、党首(影の首相)となり、引き続き副党首に戻って政権交代をめざしています。実は、ミリバンド影の首相の政治キャリアは、ハーマン議員の政策秘書からスタートしています。それもあってか、冒頭の写真のように2期44歳の党首によりそうような8期63歳の副党首がともに、政権交代をめざして野党らしい靴底減らし運動に励む姿があるのです。ハーマン女史の旦那さんも衆議院議員(ジャック・ドロミー)ですから、次の政権交代後は、ハーマン女史は、英国政界のゴッドマザーに収まることまちがえなし。

 一方、現在の内閣。テレサ・メイ総務大臣は、1956年10月生まれの57歳。1997年初当選なので、政権与党・保守党公認で出馬し当選したものの、直後に野党になり13年間耐え、政権交代で総務大臣になりました。

【追記・お詫び・訂正 2016年7月21日】

 テレサ・メイ総務大臣とありますが、テリーザ・メイ総務大臣です。綴りからの想起であり、原音の確認が不十分でした。

【追記終わり】

 2010年総選挙では、英労働党で、2人の29歳の女性イスラム教徒議員が初当選しています。このほか、「党の地区幹部の娘」が若く当選しています。保守党の場合は40代半ばの経営コンサルタントや雑誌経営編集者など、ビジネスで一定の成功を収めた人が当選している傾向があります。

 このように組織の強い労働党では、ハーマンさんのように、野党期に当選して、与党期に大臣をやるというキャリアアップのコースができています。

 日本でも、いきなり与党だと、衆議院の場合はかなり体もきついですから、野党スタートがおすすめです。人生チャンスは一度だけ。20代、30代の女性が、民主党各県連の衆議院議員公募や政治スクールに飛び込んでいただくことをワクワクしながら待っています。

 チャンスですよ。 



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