【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

箇所付け事件で審議紛糾 衆院予算委は一般質疑に入る

2010年02月10日 21時26分20秒 | 第174常会(2010年1~6月)空転政治主導

【衆院予算委員会・一般質疑①日目 2010年2月10日】

 本予算審議はきょうから一般質疑に入りました。

 一般質疑はTV中継はありませんし、閣僚は質問者から指定された時間帯だけ、衆院第1委員室に座ります。

 皇居での認証式から帰ってきた枝野幸男・行政刷新大臣もさっそく答弁しました。

 
[写真]答弁する枝野幸男・行政刷新大臣=衆院インターネット審議中継からキャプチャー。

 きょうは午後3時からでしたが、私が問題視している1月29日の「民主党幹事長室から県連への箇所付け内示事件」で審議が紛糾しました。

 ネット上でも、「これがいったい何が問題なの」「そもそも箇所付けって何だ?」との意見が出ています。

 私はこの問題に関して、小沢一郎幹事長の下、副幹事長を務める阿久津幸彦・衆院議員の事務所に断続的に取材の依頼、私が作成した質問書への記入・ファクスをお願いしていますが、現時点で快い対応がありません。

 前原誠司・国土交通相は事実関係として、次のように答弁しました。

 「1月下旬に党側から22年度に向けた検討状況について教えて欲しい、という要請がありましたので、三日月大造政務官が国土交通担当の阿久津副幹事長に関係資料を適宜みつくろって説明した」とのことです。

 この答弁からすると、阿久津副幹事長が県連を3つの時間帯に分けて呼び出し、配布した資料は、民主党幹事長室がワープロで打ち直した資料である可能性が高いと思われます。

 自民党は基本的質疑のトップバッターだった金子一義委員(前国交相)が「国会の予算修正権を脅かすものだ」としました。一方、平野博文官房長官は、「調査した上で担当者を処分する」とした自らの答弁に逃げ腰の姿勢を示しました。また、平野長官は、町村信孝筆頭理事(自民党)のヤジに対して答弁するなど閣僚らしからぬ態度を示しました。平野官房長官は「危機意識」が乏しく、大変不満の残る対応です。

 また報道によると、予算委に先立つ理事会で、民主党の池田元久理事が同党の松原仁筆頭理事につかみかかる騒動が起きたそうです。理事会で同じ政党の理事がつかみ合いになったなどということは初めて聞きました。

 また、私の入手している民主党都連に配った13カ所の事業額の箇所付け表では、阿久津議員の選挙区の事業が3つあり、すべて概算要求を大幅に上回る箇所付けがされています。

 
[写真]阿久津幸彦副幹事長(宮崎信行写す)

 国道468号「圏央道」の八王子分が概算要求の「101億~120億円」が来年度事業額として「115億~135億円」と大幅に増額。国道20号八王子南バイパスは「6億~8億円」→「18億~22億円」。国道16号の八王子拡幅が「1億~3億円」→「4億~6億円」になっています。そして、3つとも備考欄に八王子市・東京都から要望(陳情)があったと明記されてあります。これに対して、阿久津さんは私の質問に答えてくれません。

 この問題については、自民党政権時代の公共事業の予算取りに詳しい記者らにも意見を聞いています。自民党議員は財務省原案や国交省実施計画などを官僚に問い合わせたりして、自分で情報の出し入れしていました。それに箇所付けの内示は中堅議員でもやらない人は全くやらなかった。やる人は徹底しています。自分の選挙区対策のために、事前に星取り表をつくっておき、結果判明後の電話がけも、議員が直接電話する有力支持者、秘書から電話する支持者を仕分けしておいたようです。さらに北関東地方のベテラン議員は、当日だけ臨時オフィスを借りて、アルバイトも調達し、入手した資料の個別箇所に印をつけて、個々にファクスを流す作業を徹夜でしていた議員もいます。

 これを民主党は幹事長室に一元化したというものです。この情報網に依存する体質になっていくと、党幹事長の権勢が絶大になる危険性があります。

 国交省政務三役も箇所付けを予算審議の中に組み込みたいのなら、政府が本予算案を1月22日に国会に提出した当日に仮配分表を全国会議員に配布すべきだったと思います。

 そして、党と国交省の交通整理ができていない平野官房長官の責任は重大です。日本の国会の予算審議というのは、こういう風に押し問答をしている内に2月下旬に与党が強行採決をしてうやむやになることがよくあります。できれば、官邸、党、国交省、第三者による調査委員会を設けて欲しいものです。しかし、それをやると予算成立が遅れる危険性があるのが悩ましいところです。

 予算委に戻ります。

 
[画像]自民党の金子一義委員。後ろは江端貴子・民主党議員。

 金子委員の質問中に与野党の理事が協議し、委員会終了後の理事会で提出されました。金子さんは「大きな前進」としながら、「ここから先の質問は資料を見てから、改めてやります」として、「民主党を支持したかどうかで、税金の配分を決めるたとすれば問題だ。資料を見てから質問する」とし、持ち時間を次回に持ち越すよう鹿野道彦委員長(民主党)に要請しましたが、鹿野委員長は「理事同士で決まったことなので質問を続けてください」と取りなしました。そして野党議員としては異例のことですが、金子委員は「私は持ち時間を放棄します」として引き上げました。鹿野道彦委員長(民主党)はやむなく質疑の終局を宣言し、散会しました。

 報道によると、この後の理事会で民主党は資料を提出しましたが、報道陣への開示を拒否したそうです。

 なお、12日(金)午前9時から「集中審議・鳩山内閣の政治姿勢について」がありますが、今年の国会傍聴記では、一般質疑に集中したいので、集中審議の日は他の取材に時間を振り向ける方針です。よろしく。



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