【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

海江田さんの最高の置き土産だ! 日米防衛協力のための指針、来年先送りに成功 2プラス2発表

2014年12月19日 18時45分44秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 現行の1997年日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、「周辺事態」というキーワードを削除して、地球のいかなる地域でも、日本自衛隊が米軍を後方地域支援活動ができるようにもくろんだ、新しい日米防衛協力のための指針の最終報告について、2プラス2は、「明年前半における指針の見直しの完了に向けて取り組むため、議論を更に深めることを決定した」と2014年12月19日発表しました。

 地球の裏側の、日本となんの関係ない地域に、自衛隊が行って、アメリカ軍の戦争に巻き込まれて、後方地域支援の美名のもとに命を落とす事態はとりあえずは回避されました。

 ただし、発表文には「米国政府は、切れ目のない安全保障法制の整備についての2014年7月1日の閣議決定を含む、安全保障分野における日本政府の取組を歓迎し、支持する」「グローバルな安全保障環境において更に同盟を強化し抑止力を強化するとの揺るぎない相互の決意を確認する」との文言が入っています。

 ただ、前回の1997年ガイドライン(橋本首相、小渕外相、高村、柳井外務次官)が1999年周辺事態法など有事関連立法(小渕首相、高村外相、柳井次官)へと落とし込まれるプロセスはいったん断ち切れたと考えられます。来年5月ごろに、政府が「安保法制の再整備の全体像」を示した後で、ガイドラインが決まるのが主権国家および民主政治のプロセスとして当然のことです。

 年内のガイドライン改定を先送りしたのは海江田万里さんの功績です。

 海江田さんは2014年11月17日(月) の民主党代表としての定例記者会見で筆者(宮崎信行)の質問に答えて、次のように語っています。

[民主党代表記者会見録から引用はじめ]

○日米ガイドラインの改定作業について

【フリーランス・宮崎記者】
 日米首脳会談が一昨日あったようだが、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)について引き続き協力していくことで合意はした。ただし、いつまでにやるのかという話はなかったようだ。一部では安保法制の骨子の提示を含めて来年4月くらいまで先送りするのではないかという話もある。海江田さんは、今回のガイドラインの改定をお願いした政権の民主党の代表として、このガイドラインのスケジュール感をどのようにお考えか。

【代表】
 せんだってガイドラインの中間的な取りまとめが行われたところで、実はその後の日程が決まっていなかったわけです。最初は年末とか言われていたわけですが、そういうスケジュール感ではないなということがわかったわけであります。それだけガイドラインの取りまとめが遅れるのであれば、当然この4月の予算が終わった後の国会で法整備を行うということでありますから、その法整備を待ってからということで問題はないだろうと思っています。

[引用おわり] 

 集団的自衛権の行使については、民主党内で意見が分かれており、海江田さんは、北澤調査会と呼ばれた、安全保障総合調査会(北澤俊美会長)を代表直属機関として設けて、 党内実力者を取り込んだうえで、意見対立をなだめることに成功しました。「現時点では、容認できない」とする海江田さんに対して、総選挙では「(7月1日の)閣議決定は撤回すべきだ」という方向性に党内が収斂しました。

 1997年以来の、「通常国会後、秋の臨時国会まで、国政選挙なしの100日間夏休み」になった、2014年夏ですが、民主党北海道連などが、街頭でビラをまいて、底堅い国民世論ができました。

 
[写真]集団的自衛権の行使阻止の「全道キャラバン」を展開した、民主党北海道連、2014年7月、民主党北海道連ウェブサイトから。

 なにか連立与党公明党の抵抗で、先送りしたと解説するような人がいるかもしれませんが、だったら7月1日の閣議決定をさせなければよかったわけだし、その抵抗は、インターネットなどで公開されていないので、今の時代、分かりません。引き続き、公明党は、人殺しの手先になった罪から逃れられていない、と断言します。

 マンガ「沈黙の艦隊」は、政治や軍事がタブーにされがちだった1988年、講談社の成人向けマンガ雑誌で連載が始まりました。海江田四郎・海上自衛隊二佐が艦長をつとめる原子力潜水艦をめぐる物語。連載中に、敵として描かれた「悪の帝国・ソビエト」が、リアル世界でも崩壊する事態に。このころ、作者が人気政治家の菅直人さんに呼ばれて食事をした際に、「どうして日本政治にはドラマが無いんでしょうね?」と言われて、菅さんが大いに刺激を受けた、と新聞で報じられました。


[画像]「沈黙の艦隊」の海江田艦長、かわぐちかいじ、Amazonウェブサイトから。

 ドラマはなかったかもしれませんが、海江田艦長のように、仲間をまとめ上げた海江田代表の功績で、先送りに成功したのです。海江田さんが今後どうするのか分かりませんが、いずれにせよ、最高の置き土産です。

[防衛省ウェブサイトから引用はじめ]

日米安全保障協議委員会共同発表(2014.12.19)

2014年12月19日

岸田外務大臣
江渡防衛大臣
ケリー国務長官
ヘーゲル国防長官

2013年10月3日に東京で開催された「2+2」日米安全保障協議委員会(SCC)会合において、閣僚は、日米同盟の能力を大きく向上させるためのいくつかの措置を決定した。閣僚は、これらの措置の中核的要素としての日米防衛協力のための指針の見直しの継続的な進展を高く評価する。2014年10月8日の中間報告に基づき、この作業は、日本の平和と安全を確保するのみならず、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域に前向きに貢献する。

米国のアジア太平洋地域へのリバランス及び日本の国際協調主義に基づく「積極的平和主義」という政策は、共に、平和で繁栄したアジア太平洋地域を確かなものとしていく同盟の取組に寄与する。これらの観点から、米国政府は、切れ目のない安全保障法制の整備についての2014年7月1日の閣議決定を含む、安全保障分野における日本政府の取組を歓迎し、支持する。

指針の見直しと日本の法制作業との整合性を確保する重要性を認識し、また、見直し後の指針がしっかりとした内容となることの重要性を再確認し、閣僚は、日本の法制作業の進展を考慮しつつ、明年前半における指針の見直しの完了に向けて取り組むため、議論を更に深めることを決定した。

閣僚は、複雑な地域の及びグローバルな安全保障環境において更に同盟を強化し抑止力を強化するとの揺るぎない相互の決意を確認する。日米同盟は、地域の平和と安全の礎であり、グローバルな協力の基盤であり続ける。(了)

[引用おわり]



最新の画像もっと見る

コメントを投稿