【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

竹谷とし子公認会計士「明許繰越」「基金」で国の単式簿記で率直な疑問連発に安住淳財務大臣もエール

2011年11月29日 23時59分09秒 | 第179臨時国会(2011年10月)議員立法

(この記事は、2011年初投稿の時点で3つの内容があった記事を1つに切り分けて、2016年6月27日11時半に再投稿しました)

【平成23年2011年11月29日(火)参議院財政金融委員会】

 
[写真]竹谷とし子さん、参院財政金融委員会、2011年11月29日、参議院インターネット審議中継から。

 この後、公認会計士で、昨夏参院議員になった竹谷とし子(たけや・としこ)さん=公明党=から実に興味深い指摘があり、安住さんもしっかり答弁しました。

 竹谷さんは公認会計士として複式簿記の世界で生きてきて、この1年間単式簿記の世界に浸ったことになります。

 国・自治体とも、予算には「繰越明許費」(くりこしめいきょひ)があります。繰越明許費とは、「歳出予算の経費のうち、その性質上または予算成立後の事由に基づき、年度内に支出(歳出)を終わらない見込みのものは、予算の定めるところにより、翌年度に繰り越して使用できる経費」のことです。(『体系 都財政用語事典』)。予算書のなかに、繰越明許はちゃんと書いてあります。とくに事業・購入金額の大きい国土交通省や防衛省は、繰越明許を活用して、大型の公共財を複数年度で整備しています。

 竹谷さんは次のように質問しました。

 「繰越明許は1年間繰り越せることとなっています。3次補正の成立は11月ですから、今年度はあと4ヶ月間です。1年間繰り越せるとしても最低1年4ヶ月間で予算を執行することが前提となります。しかし、(被災自治体の)復興計画の現状を考えると、来年度末までにとても執行できるとは思えません。例えば津波被害を受けた自治体の高台移転を考えると、移転先の検討、津波被害を受けた土地の買い上げがなされるかどうか分かりませんが、新しいまちづくりとの関係など複雑な利害の絡む合意形成が待っています。例えば、(石巻港など)8漁港の復旧には4年間かかる。それなのに予算が1年3ヶ月で終わるとするなら、ホントウに必要でない事業に(今年度第3次補正)予算が使われる可能性があります。この復興の期間と予算の執行の関係はどうなりますか?」

 これに対して、安住さんは

 「繰越明許費は5兆円を盛り込んでいて、来年度に発注してどれだけ工事が進むかを考えると、私は(5兆円を平成24年度執行分として)積んでおかないといけないと考えます」と答弁しました。

 「えっと繰り越せるということですか・・・?」

 「今の繰越は1年間です。来年の4月から」

 「具体的にどういう事業に充てるのですか?」

 「ですので、繰越明許ではなく、基金にすれば(そのまた)翌年にも繰り越せるので、一つの方法かと思います」と答弁しました。

 このような複式簿記・発生主義会計にない、単式簿記特有の「繰越金」、「基金」といったものについて素朴な疑問をぶつけた竹谷さんのセンスをずっと持ち続けていただきたいです。東京都庁のように国の予算システムを複式簿記にするには30年はかかるでしょう。このような質問は同じく、昨夏、公認会計士から初当選した自民党の若林健太さんもしています。

 そして、安住さんは、竹谷さんに次のように答えました。

 「私も国会議員を15年間やってきて、野党でしたけど、この間、一般会計の透明化、国会のチェックはだいぶ進んできたと思います。ただ、基金など複数年度にわたる予算の執行に関しては、まだ国会のチェックは十分でないと思います。ぜひ(竹谷)議員にもご協力いただきたい」

 安住さん、胆力と情だけの財務大臣ではないようです。

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