呉市かまがり天体観測館

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第6回「日本天文遺産」が決定!

2024-03-13 13:45:07 | 天文ニュース
天文・宇宙に関わる貴重な史料の保護などを目的に設けられた「日本天文遺産」の第6回が
決まりました。

認定されたのは、「レプソルド子午儀及びレプソルド子午儀室 」、「 星間塵合成実験装置」
「倉敷天文台と関連遺産」の3つです。


「レプソルド子午儀」は、1880(明治13)年にドイツで製作され、昭和30年代まで稼働した天体
観測装置(対物レンズ口径:13.5cm、焦点距離:212cm) です。子午儀とは、天体が子午線上を
通過する時刻を精密に観測することによって、その土地の経度を決定する、あるいは時刻を決める
観測に使われるものです。麻布に設置されていた時代は、主に時刻の決定に使用され、この子午儀
の観測によって求められた時刻によって、旧江戸城天守閣の跡地で正午の号砲が撃たれていたそう
です。1924(大正13)年に三鷹に移されてからは、月、惑星、小惑星の赤経(天体の住所)の決定
に、また1937(昭和12)年以降は、主に恒星の赤経観測に使用され、1949(昭和24)年に日本で
初めての本格的観測星表である「三鷹黄道帯星表」、1962(昭和37)年には「三鷹赤道帯星表」を
出版し、役目を終えました。現在は国立天文台三鷹キャンパスの「レプソルド子午儀室」に保管され、
一般に公開されています。

「レプソルド子午儀室」は、1925(大正14)年に、上のレプソルド子午儀を設置するために建設され
ました。 鉄筋コンクリート製で、屋根には子午線を通過する天体を観測するための開閉機構がありま
す。外壁上部には、建設当時に流行していた新しい造形芸術運動であるセセッション様式の流れを汲む
装飾が施された貴重な建築物です。現在は子午儀資料館として、レプソルド子午儀を含めて、歴史的な
観測装置が展示・公開されています。


「星間塵合成実験装置」は、終焉期の恒星の質量放出における固体塵粒子の合成を、マイクロ波放電
によるプラズマを用いて再現する実験装置です。 恒星からの質量放出における、気体から固体塵粒子
が凝縮する様子を再現するため、マイクロ波放電を用いてメタンを原料とした炭素と水素の3000Kの
プラズマを作って赤色巨星の大気を再現し、このプラズマを真空に 放出して急冷させ、固体微粒子を
合成させました。合成された急冷炭素質物質は実験天文学の功績として国際舞台で顕著に認知され、
今でも広く炭素質星間塵を模擬する物質の一つとして引用されています。 また、装置自体はマイクロ
波放電部の設計から導波管の製作、枠組みの溶接に至るまで、製作者の坂田朗(1942-1995)氏らに
より手作業で組み上げられた世界に1台しかないものです。これらの成果は日本のスペース赤外線
天文学の発展を支えることにもつながりました。


「倉敷天文台」は、市民への公開を目的として1926(大正15)年11月21日に日本で初めて設立された
民間天文台です。日本にまだ官立の天文台しかなかった大正時代に、市民への天文学普及を熱心に説いた
山本一清氏(京都大学教授)、水野千里氏(アマチュア天文家)らの「日本の天文学の底上げのためには、
市民に開かれた天文台が必要」という理念に啓発され、倉敷町長も歴任した実業家・原澄治氏が私財を投じ
て設立しました。設立当初より天文同好会(現東亜天文学会)の協力のもと観望会が開催され、大正時代
以降の天文学の普及に大いに貢献しました。スライディングルーフ観測室は、2013(平成25)年に倉敷市が
倉敷天文台から譲り受け、創立当時に近い姿でライフパーク倉敷(倉敷科学センター)敷地内に移築・復元
されています。また、観測実績においても1941(昭和16)年に着任した本田實氏の彗星・新星の発見などの
活躍により、日本の天文学界で大きな存在感を示しました。1952(昭和27)年に建造された5mドームを
備えた建物は、現在は原澄治・本田實記念館として公開されており、天文台設立当初に設置された当時国内
最大級の口径32㎝の反射望遠鏡やその他の観測資材、記念資料などが保存・公開されています。倉敷天文台
は間もなく設立100周年という歴史的な節目を迎えます。


日本各地には貴重な天文史料・史跡が数多く残されているにも関わらず、そのほとんどは
貴重なものだと誰にも気付かれずに朽ち果てようとしています。よく分からない標や石積、
柱、やたらと長い直線道路などなど、一見関係のなさそうなものが凄い史料だったりします。

もしかすると、皆さんの家のそばにもひっそりと天文遺産が眠っているかもしれません。

消えてしまう前に何とかしたいものですね。

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