無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

「ファースト カウ」

2023-12-31 | 2023映画評


「ファースト カウ」 ケリー ライカート監督 米 ✗

 アメリカの西部開拓時代を舞台に料理人と中国移民の友情を美しい自然を背景に描きました。原作は脚本も担当しているジョナサン レイモンドが2004年に発表した小説「THE HALF-LIFE」です。
 ビーバーの毛皮で成り立っているオレゴン州の小さな町へアメリカンドリームを夢見て移り住んだ料理人クッキー(ジョン マガロ)は森の中で逃亡者の男を助けます。二人は後に街で再開し男の家で一緒に暮らします。男は中国人でキング ルー(オリオン リー)と名乗りました。一方金持ちの毛皮の仲買商(トビー ジョーンズ)は乳牛を運び込みます。それまでそのあたりの白人たちにはミルクは手に入らず紅茶にミルクを入れるのは夢でした。かつてパン職人の仕事もしていたクッキーにルーはケーキを焼いて一儲けしようと持ちかけなんと牛からミルクを盗むのでした。ケーキは翔ぶように売れるのですが・・・。

 現在から過去へ遡る導入部分が秀逸です。自然の美しさをそのままスクリーンに再現し、自然の音もうるさくなく心地よく耳に残ります。特に冒頭で森の中でキノコを採るときのキュッという音とそのキノコを丁寧に布で包むクッキーの姿にさりげなく人柄が反映されています。西部が舞台の作品はドンパチや先住民との戦いなど暴力的な内容が多いのですが、クッキーの誰に対しても穏やかに接する人柄は牛だけでなく観客もリラックスさせられます。でもサスペンス的面白さも十分あります。
 教訓としては「欲張るとろくなことにはならない」ということでしょうか。
 当時の先住民の衣装やアクセサリー、小物などの再現がよくできていました。

 タバコは、町にある小さな市場で「タバコ安くしとくよ」という売り込みの声が聞こえたり周囲で喫煙したりする姿はありましたが、主役二人は喫煙しませんでした。

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「PERFECT DAYS」

2023-12-30 | 2023映画評


「PERFECT DAYS」 ベム ベンダース監督 日 ✗PPピース

 2023年76回カンヌ映画祭で役所広司が男優賞を受賞した作品です。
 トイレ清掃員の平山(役所広司)は誠実に仕事をし、毎日淡々と同じことを繰り返しているように見えますが、小さな楽しみや発見に満ちた新鮮な日々を送っていました。フィルムカメラで木々の写真を撮ること、車内で好きな曲をテープで聴くこと、寝る前には古書店で買った文庫本を読むこと、眠りにつくと今日の出来事がまぶたをよぎり穏やかな眠りにつきます。
 そんな日々も闖入者の登場でかすかに揺らぐのでした。

 THE TOKYO TOILETプロジェクトで改修された公共トイレがそれぞれ魅力的で、平山のおかげか(?)大変綺麗です。トイレ掃除のコツがわかります。さすが、TOTOさんが監修しているだけのことはあります。
 アナログな平山の姿はシニア層の観客を喜ばせてくれます。テープを売ったり処分したりすることは止めて久しぶりに再生して聞いてみようと思った人も多いのではないでしょうか。
 隠れた名優をあちらこちらに贅沢に登場させています。
 エンドロールのあとにおもけがあります。明るくなるまで席を立たないように。
 平凡な一日を大切にしたくなる作品です。が・・・。

 タバコは、無煙映画の俳優賞に推薦しようかなと思い始めたラスト近くでなんと腹立ちを晴らすためにアルコールとタバコに頼るという昭和的な姿にがっかりしました。名優二人が喫煙するシーンでの健康被害はスモークハラスメントです。(ふたりとも久しぶりに吸うためか咳き込んでしまう)ドイツにはタバコ規制がないのでしょうか?


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「ナポレオン」

2023-12-29 | 2023映画評


「ナポレオン」 PG12 リドリー スコット監督 米 ✗

 フランスの英雄ナポレオンを新解釈で描いた歴史スペクタクル映画です。
 1789年フランス革命の混乱の中、若い軍師ナポレオン(ホアキン フェニックス)は目覚ましい活躍で総司令官となります。美しい未亡人ジョゼフィーヌ(バネッサ カービー)と出会い結婚します。しかし奔放なジョゼフィーヌの行動でナポレオンは戦地でも落ち着きません。強引な戦略を繰り返しナポレオンはいつしかクーデターで皇帝となるのですが・・・。

 マリー アントワネットの処刑から始まる作品でここでも落とされた首が見事です。戦闘場面にはお金がかかっているようですが、だからといって感動させるものはなく、ナポレオンのプライベートを覗き見るよりは戦争の虚しさを強調させてほしかったです。現実に世界中で戦争の犠牲が出ている時にはわざわざスクリーンで見たくもない場面です。映画ファンとしては停戦を促す作品を期待しています。
 ところで、英語を話すナポレオンというのもいかがなものか、ですね。

 タバコは、当時のタバコが周囲で吸われていました。


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「NO選挙、NO LIFE」

2023-12-28 | 2023映画評


「NO選挙、NO LIFE」前田亜紀監督 ◯

 選挙取材歴25年のフリーライター畠山理仁(はたけやま みちよし)を追ったドキュメンタリー映画です。
 候補者全員の取材をすることを信条に国内だけでなく海外でも取材をして発信している畠山が、2022年7月の参議院選挙東京選挙区の候補者34人を取材する姿に密着します。一人で34人の選挙活動を取材するのは至難のわざで駅の階段を駆け上がったり地方の候補者の応援に出ている候補者から20秒のコメントを取るために片道2時間以上かけてでかけたりする姿には選挙の面白さが伝わります。
 中でも沖縄の知事選の取材は秀逸です。敗れた候補者の名前を印刷した幟がぐちゃぐちゃに捨てられていることに対する畠山のコメントがこの選挙を一言で総括しました。
 金銭的には赤字のようですが、そんな彼を見守る妻と二人の息子、特に「皆さんに迷惑をかけていないですか?」という息子の一言に感動しました。彼の「黙殺」を読んでみたくなりました。

 タバコは、なし。無煙です。


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「ショータイム」

2023-12-27 | 2023映画評


「ショータイム」 ジャン=ピエール アメリス監督 仏 ◯

 経営危機に陥った農場を立て直すために「農家キャバレー」を始めた実話をもとに映画化しました。
 三代続く酪農家のダヴィッド(アルバン イワノフ)は農場を差し押さえられそうになります。なんとか二ヶ月猶予を得て帰りに寄ったキャバレーでボニー(サブリナ ウアザニ)の夢のようなパフォーマンスに魅せられます。農場の納屋でこの演技を見せられないものだろうかと思いつき、たまたま首になった友人のボニーを説得し田舎に連れてきます。半信半疑だったボニーもダヴィッドの一途さに引きずられ、オーディションなどで集めた訳アリのダンサーや手品師などを鍛え上げていくのでした。そして本番にこぎつけますが・・・。

 アルバン イワノフのパフォーマンスが素晴らしいです。筆者は映画を通してポールダンスを見たことが何回かありますが、彼女のパフォーマンスはダヴィッドの家族たちから「今の演出は卑猥だからだめ」とダメ出しされるものから女性が見ても美しいと思えるもの、健康的なものといくつもパターンがありポールダンスに市民権を与えています。
 訳アリの仲間の訳がさまざまで周囲がそれほど気を使いすぎたり遠慮したりしない対応が流石フランスです。フランスと言えばフランス語なのも当たり前ですがいいです。
 邦画のダンス映画の金字塔「フラガール」を彷彿とさせました。

 タバコは、なし。無煙です。


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「首」

2023-12-26 | 2023映画評


「首」 R15+ 北野武監督 ◯

 北野武監督が30年の構想を経て実現した贅沢な俳優とスタッフの起用による、戦国大スペクタクルであり、お笑いであり、そして、彼の思う通りの演出が実現し、たくさんの労働を生み出したという点でも超大作です。
 天下統一を目指す織田信長(加瀬亮)ですが、毛利、武田、上杉と戦は続いている中、荒木村重(遠藤憲一)が謀反を起こし雲隠れします。信長は自身の後継となることをチラつかせ家臣の明智(西島秀俊)、秀吉(ビートたけし)らに村重の捜索をさせます。秀吉は弟の秀長(大森南朋)や軍師黒田官兵衛(浅野忠信)とともに策を練ります。彼らのもとには芸人上がりの情報屋(木村祐一)や、秀吉のようになりたい農民(中村獅童)などが絡んでくるのでした。
 武士だけでなく芸人や農民の物語にしたところが新鮮です。また、たけしと大森、浅野の三人漫才も笑わせてくれました。
 タイトル通り生首がポンポン飛びますが慣れてしまうと生々しさもあまりなく「よくできているなあ」と感心する場面すらありました。
 少年に対するセクハラ事件が問題になっている今、信長と蘭丸などはみんなが知っている関係ですがそれだけでなく、武士たちがそれぞれ恋愛問題を抱えていたとは新鮮な解釈の時代劇です。

 タバコは、なし。無煙です。


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「怪物の木こり」

2023-12-24 | 2023映画評


「怪物の木こり」 PG12 三池崇史監督 ✗✗

 2019年「このミステリーがすごい」大賞の倉井眉介の小説を実写映画化しました。
 絵本の「怪物の木こり」の仮面を被り斧で頭をかち割り脳を持ち帰る、という猟奇殺人が連続しておきます。そして次のターゲットには、目的の為なら手段を選ばないサイコパス弁護士二宮(亀梨和也)が襲われます。なんとかやり過ごしますが、警視庁のプロファイラー戸城(菜々緒)の目をごまかすことはできず犠牲者の共通項を探すことである事実が浮上してくるのでした。

 サイコパス医師役の染谷将太、戸城と組む刑事の渋川清彦、渋川と過去に因縁のあるヤクザな男役の中村獅童などそれぞれ競演しています。
 人間性を大切にね、ということでしょうか。

 タバコは、中村獅童、渋川清彦らが喫煙者で、ラスト近くで亀梨がタバコを咥え火をつけ他の男に(ネタバレになるので誰にとは言えない)咥えさせる場面がありました。
 笑えるのはエンドロールでいつもの「動物には危害を加えていません。」と出ましたが、「人間も、もちろん俳優を含め動物だ。」と言いたいですね。
 特に中村はいろいろある歌舞伎界のホープのひとり、病気をしている余裕はないと思います。大きなお世話ですが、体を大切にね。歌舞伎界のためにも。


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「ゴジラ−1.0(マイナスワン)」

2023-12-23 | 2023映画評


「ゴジラ−1.0(マイナスワン)」 山崎貴監督 ✗

 ゴジラ映画70周年記念の作品です。
 舞台は敗戦の東京でゴジラが暴れゼロから負(マイナス)になり、生き残りの海軍兵たちが「国のため」ではなく「国民のため」に民間の力でゴジラと対峙するという内容です。
 敷島(神木隆之介)は戦時中特攻の任務から逃れ退避場となっていた島でゴジラと対面し自身の不甲斐なさから整備士たちを見殺しにしてしまいます。その罪悪感に苛まれながら戦後の東京に戻り、成り行きで出会った女性(浜辺美波)と連れていた赤ちゃんとの疑似家族となります。お金を稼がなくてはならず危険な機雷除去の仕事につきます。そしてなんと再び現れたゴジラに向かうことになるのでした。
 進化したゴジラがすごいです。最初からのファンとしてはあのテーマが流れると思わず右手は小さなガッツポーズとなり、ゴジラの咆哮に拍手したくなります。
 ゴジラに対する敬礼に対して賛否分かれているようですがあの場面ではなにかしたくなり「バンザイ」をするよりは良かったのかなと思います。
 軍隊賛美というよりは「生きていこう」というメッセージは伝わったのでよかったのではないでしょうか。
 安藤サクラと吉岡秀隆が映画を締めていました。

 タバコは、機雷除去チームの山田裕貴が度々喫煙していました。また、多くの元兵隊たちが集合している場でひとりふたり喫煙している煙が立ち上っていましたが多くの人の中では1本でもみんなに受動喫煙被害になります。スモークハラスメントの犠牲者は多くなりましたね。


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「月」

2023-12-22 | 2023映画評


「月」 石井裕也監督 ✗

 実際に起きた障害者施設での職員による殺傷事件をモチーフにした辺見庸の小説を実写映画化しました。
 元小説家の洋子(宮沢りえ)は小説を書くことができず、売れないアニメーション作家の夫昌平(オダギリジョー)との生活のため障害者施設で働き始めます。熱心なスタッフさとくん(磯村勇斗)がいる一方、差別的な対応や暴力にしか見えない対応などをするスタッフもいました。施設長に言ってもなんだかんだ言い逃れるだけでした。洋子と生年月日が同じ利用者に対し洋子は自分自身の分身を見るような思いもするのでした。
 洋子と昌平の間には病気を持って生まれベッドから出ることも喋ることもなく亡くなった子どものつらい過去を共有していました。障害を持って生まれた子どもと施設の障害者、そして「心がない人は人間ではない。」と言い切るさとくん。そんな中で洋子の気持ちは揺らぐのでした。

 重いテーマです。主な登場人物の宮沢、オダギリ、磯村、そしてもうひとりのスッタフ陽子役の二階堂ふみの4人でまるで舞台劇を見るかのような対話のやり取りの場面が見せ所でした。
 考えさせられながら見なければならない作品です。

 タバコは、磯村がハッパを吸い、同僚のスタッフがコンビニの喫煙所で喫煙していました。また、職場にも屋外に灰皿とベンチがありました。
 喫煙率が高い職種なのでしょうか?


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「燃えあがる女性記者たち」

2023-12-14 | 2023映画評


「燃えあがる女性記者たち」
リントゥ トーマス、スシュミト ゴーシュ共同監督 インド◯☆☆☆
 
 インドの被差別階級の女性たちが立ち上げた新聞社「カバル ラハリヤ(ニュースの波)」を追ったドキュメンタリー映画です。
 北部のウッタルプラデーシュ州にある女性だけで立ち上げた新聞社はスマホの時代となり紙媒体からデジタルメディアへ新しい挑戦を始めます。スマホは英語表記だから全くわからない、と怖気づくメンバーへは丁寧に教え撮影の仕方なども練習します。
 一方、被差別カーストの女性たちを巡る社会や家庭内の父親や夫の対応は厳しいものもあります。それでも14歳で結婚し子どもを親に預けおっぱいをあげながら学び続けた主任ミーラを始めメンバーたちはなんとか折り合いをつけながら仕事を続けるのでした。

 働く女性のたいへんさ、女性だから受けるさまざまな暴力、その上カーストによる差別などの問題を考えさせられました。男たちはといえば「ヒンズー至上主義」みたいになっていて、モディ首相の真の姿を垣間見ることもできました。宗教で対立させ社会の課題を見えにくくさせているのはリーダーとしていかがなものでしょう。
 ジャーナリストが殺されたニュースが入りますが、めげずに屈強な男性たちに囲まれながらも毅然としてインタビューを続ける彼女たちに拍手です。
 テーマは重いのですが親睦旅行の楽しそうな場面やエンディングの音楽が観客の女性たちを「あなたもがんばって!」という励ましになっています。

 タバコは、なし。無煙です。無煙映画・外国映画賞候補



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