その日の午前中、ひとつ仕事を終えたあべのハルカスでのこと。
大阪の街を眺めながら、なにげなくネットを検索したところ、
肥後橋の国立国際美術館でブリューゲルの「バベルの塔」が展示されていることを知った。
バベルの塔とは、(よく知られた話であるが念のため、)旧約聖書に記された物語で、
「人々が天にもとどく塔を造ろうとしたところ、
それをよく思わない神が、人々の言葉を混乱させ、意思疎通ができないようにしたところ
人々は塔の建設をやめ、方々に散らばった」・・・という話。
そして今回、国立国際美術館に展示されている「バベルの塔」は
オランダの画家、ブリューゲルが描いた宗教画で、
数ある「バベルの塔」の絵画の中でもっとも有名なものとされているもの。
おそらく誰もが「どこかで見たことがある」、と思うはずだ。
「こんなチャンスはめったにない。」
昼休みの時間をうまく使えば見にいけるはず...
そう思って、国立国際美術館へ急行。
...ということで「バベルの塔」見聞録。
その第一印象、行列の先、遠目に「バベルの塔」を見つけたときは「?!」だった。
なにが「?!」かというと、絵画のサイズが拍子抜けするほど小さいのだ。
その大きさ、横の長辺で70センチとちょっと。
壁一面もあろうかと思うほどのスケールを勝手に想像していたのでそう驚いたのだが、
しかし、そんな「拍子抜け」など間近にこの絵を見た瞬間に吹っ飛んでしまった。
ピーテル・ブリューゲル一世が「バベルの塔」を描いたのは16世紀。
この頃から、宗教画に風景画としての要素が醸成され始めたというが、
主題の塔はもちろん背景の農村や海辺の風景などが
ただよう風まで感じられそうなほど写実的に描かれており、
また、それらが小さなキャンバスの中に緻密に凝縮されている。
緻密と書いたが、例えば、わずか3ミリばかりの描写ながら、無数の人間が塔の建設に関わる様子がいきいきと伝わってくる。
外装の漆喰をかぶって真っ白になって作業する人びとに、
滑車を操り、力を合わせレンガを荷揚げする人々など。
まるで「神の怒りにふれた会話」まで聞こえてきそうなほどだった。
ふと思ったことだが...
緻密に描かれた人々の営みこそが、神の怒りにつながるバベルの塔の暗示としてブリューゲルが伝えたかったことかもしれない。
ところで...。
驚きの技巧が散りばめられた「バベルの塔」を大きな感動とともに存分に鑑賞してきた次第だが、
その高さ、「天にもとどく」というがいったいどれくらい?
3ミリに描かれた人間を170センチの身長と仮定すると、
その高さは510メートルにもなるとのこと、しかもまだ建設途上。
ということは、ここ大阪にある日本一高いビル「あべのハルカス」でさえ及ばないということになる。
折にふれての選曲は「見張り塔からずっと」。
オリジナルはボブ・ディラン。
そしてこの曲をメジャーにしたのが早世の天才ギタリスト、ジミ・ヘンドリックス。
その他多数のカヴァーがあるが、今回取り上げたのはデイブ・メイソン。
ボブ・ディランやジミ・ヘンドリックスに比べるとポップでメロディアスな仕上がりとなっているものの、
元来この曲が持つスリリングな疾走感は失われていない。
個人的ながら、先のニ作に勝るとも劣らない傑作だと思っている。
All Along The Watchtower-Dave Mason