折にふれて

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「流星」 ある冬空の記憶

2017-02-28 | ありふれた情景

ある冬の日、空は朝から晴れわたり、しかもその空はそのまま夕刻まで続いた。

「弁当忘れても傘忘れるな」、そんな言葉があるくらい、

北陸の冬空は天気の移り変わりが目まぐるしく、

朝から夕刻まで快晴の空が広がったことは記憶にないくらいめずらしい。

そして、日暮れ間近。

その空が漆黒に変ろうとする時、まるで流星の軌跡のような飛行機雲がいくつも現れ、

その瞬間、ふと、四校記念館の碑に刻まれた詩を思い出した。

旧第四高等学校で学んだ作家井上靖によるものだが、全文を記憶していたわけではない。

青春の日、それから年を重ねて人生の終焉を間近にした日の、

それぞれの思いを北陸の冬の砂丘に現れた流星に託した詩が

鮮やかな情景として思いだされたのだ。

 

「流星」

高等学校の学生の頃、日本海の砂丘の上で

ひとりマントに見を包み、仰向けに横たわって

星の流れるのを見たことがある。

十一月の凍った星座から、一條の青光をひらめかし

忽焉とかき消えたその星の孤独な所行ほど

強く私の青春の魂をゆり動かしたものはなかった。

それから半世紀、命あって、若き日と同じように

十一月の日本海の砂丘の上に横たわって

長く尾を曳いて疾走する星を見る。

併し心うたれるのは、その孤独な所行ではなく

ひとり恒星群から、脱落し

天体を落下する星というものの終焉のみごとさ

そのおどろくべき清潔さであった。

                         井上靖


Stardust - Nat King Cole

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