見もの・読みもの日記

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国宝・納涼図屏風ほか/東京国立博物館

2006-08-16 23:32:06 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館 久隅守景筆『納涼図屏風』

http://www.tnm.jp/

 本館2階の第7室「屏風と襖絵」に、久隅守景(くすみもりかげ)の『納涼図屏風』が出ているというので見に行った。よく知っている作品だが、実物を見るのは初めてである。立っているだけのような粗末な家、屋根から張り出した夕顔の棚、蓆を敷いて夕涼みする男女と幼い男の子。はじめ、おや、想像していたよりも寂しい絵だなあ、と思った。写真図版では、人物の描かれた部分をアップにしたがる傾向があるが、実際は、広い画面の4分の1ほどしかない。あとの4分の3は不思議な空白である。

 私はこの家族をアップで見て、江戸か京都の市中に住む町人一家をイメージしていた。そうだとすれば、彼らの隣には、同じような家族が軒を並べて住んでいるはずである。夫婦の会話や子どもの泣き声も聞こえてくるだろうし、さまざまな生活の音や匂いが素通しで行き交っているはずだ。ところが、この3人は、まるで世の終わりに取り残されたように、静謐な空白の中に浮かんでいる。だいたい、夫婦+子ども1人の「核家族」なんて、この絵の描かれた当時は、きわめて「異端」だったんじゃないかしら。

 じっと何かを注視するような彼らの耳には、何が聴こえているのだろう。画面の左上には、この絵の本当の主役ではないかと思われるくらい、大きな月。庶民の日常生活を描いたものと思っていたけど、そうも言い切れない、気になる作品である。

 一緒に見られるのは、酒井抱一筆『夏秋草図屏風』。もと、光琳の『風神雷神図屏風』の裏面にあったものである。私は、「夏草」側の上方に描かれた流水(雨雲?)が美しいと思う。でも、繊細すぎて不安を誘う美しさだなあ。

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1 コメント

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家族の肖像 ()
2006-08-20 17:22:51
ひと月か、もっと前だったか、この絵について、NHKの「新日曜美術館」で取り上げていましたね。東京国立博物館の研究者・松嶋雅人氏から発表された説で、転落していった狩野派の絵師、久隅守景とその娘と息子を描いたものではないかということでした。それぞれ子ども達も名の残る絵師になった一家の肖像、どのような思いで描かれた作品なんでしょう。
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