○奈良県立美術館 館蔵品展『安土桃山~江戸時代に生きた人々-肖像画・風俗画・浮世絵-』(2011年6月4日~7月3日)
土曜日は奈良に1泊。翌日、大和文華館に寄るためだが、その前に、日曜朝イチで奈良県立美術館を訪ねる。2006年の『応挙と蘆雪』とか2009年の『神話』とか、けっこう面白い企画展をやってくれるので、好きな美術館なのだが、館蔵品展を見るのは初めてで、興味津々。
解説パネルによれば、同館は、日本画家・風俗研究家であった吉川観方氏(1894-1979)から寄贈を受けた江戸時代の作品を中心とする日本絵画を所蔵しているという。本展では、その中から肖像画・風俗画・浮世絵を展観。冒頭には、肖像主の古い『武田勝頼妻子像』(制作は江戸)を展示。これは、高野山持明院に伝わる勝頼妻子像をもとにしたことが分かっているが、次の「伝・淀殿画像』(~6/19展示)は、さしたる根拠もなく「淀殿とも伝えられている」というだけで、かなりアヤシイ。しかし、たっぷりした着物のゴージャス感は見応えがある。
むしろ北村季吟とか本居大平とか、意外な人物(ややマイナー文化人)の肖像を面白く眺めた。岡田為恭の自画像も。時代は新しいが、鳥文斎栄之(1756-1829)の『伏見落城・関ヶ原合戦絵巻』は、近世にはこんな絵巻があるのか、と興味深かった。淡彩による達者な筆致で、炎のすさまじさが印象深く描かれている。
次室、江戸初期(17世紀)の風俗図屏風が数点。特に最初の『洛中洛外図屏風』2点が面白かったなあ。金彩の雲の間にパラパラと配された人物(あまり多くない)が、泥人形みたいに丸っこくて、なごんだ。『京・諸国名所図貼交屏風』は、軽快で洗練された趣き。どこを描いているか、全画面の解説が欲しかった。ほかにも、『遊楽図屏風』には、男女が縁側に寝そべって腕相撲する姿が描かれていたり(自由だなー)。若衆踊り・唐子踊りなど、○○踊り9種を描いた『踊り絵巻』(伝・野々口立圃)も面白かった。
私は江戸初期の風俗をよく知らないので、女性なのか若衆なのかもよく判別がつかない。髪型も着物も華美を尽くしているのだが、頽廃の一歩手前で踏みとどまっている感じが新鮮で魅力的である。
江戸中・後期になると、現代人にも分かりやすい風俗図が多くなる。柴田義董筆『七夕梶鞠図』は、そうか、七夕星に捧げる白鞠だったのか(※画像あり)。大きな蕪かと思った。森一鳳の『社殿・競馬図』は、先だって見た賀茂の競馬の装束そのまま。吉原の風俗図も、江戸初期(17-18世紀)のものは、建物も女性の衣装も、まだ地味で質実である。文化の中心は上方にあったんだなあ、と感じる。中期以降になると、映画やTVドラマで見慣れた、華やかな情景が展開する。
館蔵品展だと、あまりお客は入らないのかなあ。これ、東京都心の私設美術館にもってきたら、かなり話題になる内容だと思うのに…なんとももったいない。
土曜日は奈良に1泊。翌日、大和文華館に寄るためだが、その前に、日曜朝イチで奈良県立美術館を訪ねる。2006年の『応挙と蘆雪』とか2009年の『神話』とか、けっこう面白い企画展をやってくれるので、好きな美術館なのだが、館蔵品展を見るのは初めてで、興味津々。
解説パネルによれば、同館は、日本画家・風俗研究家であった吉川観方氏(1894-1979)から寄贈を受けた江戸時代の作品を中心とする日本絵画を所蔵しているという。本展では、その中から肖像画・風俗画・浮世絵を展観。冒頭には、肖像主の古い『武田勝頼妻子像』(制作は江戸)を展示。これは、高野山持明院に伝わる勝頼妻子像をもとにしたことが分かっているが、次の「伝・淀殿画像』(~6/19展示)は、さしたる根拠もなく「淀殿とも伝えられている」というだけで、かなりアヤシイ。しかし、たっぷりした着物のゴージャス感は見応えがある。
むしろ北村季吟とか本居大平とか、意外な人物(ややマイナー文化人)の肖像を面白く眺めた。岡田為恭の自画像も。時代は新しいが、鳥文斎栄之(1756-1829)の『伏見落城・関ヶ原合戦絵巻』は、近世にはこんな絵巻があるのか、と興味深かった。淡彩による達者な筆致で、炎のすさまじさが印象深く描かれている。
次室、江戸初期(17世紀)の風俗図屏風が数点。特に最初の『洛中洛外図屏風』2点が面白かったなあ。金彩の雲の間にパラパラと配された人物(あまり多くない)が、泥人形みたいに丸っこくて、なごんだ。『京・諸国名所図貼交屏風』は、軽快で洗練された趣き。どこを描いているか、全画面の解説が欲しかった。ほかにも、『遊楽図屏風』には、男女が縁側に寝そべって腕相撲する姿が描かれていたり(自由だなー)。若衆踊り・唐子踊りなど、○○踊り9種を描いた『踊り絵巻』(伝・野々口立圃)も面白かった。
私は江戸初期の風俗をよく知らないので、女性なのか若衆なのかもよく判別がつかない。髪型も着物も華美を尽くしているのだが、頽廃の一歩手前で踏みとどまっている感じが新鮮で魅力的である。
江戸中・後期になると、現代人にも分かりやすい風俗図が多くなる。柴田義董筆『七夕梶鞠図』は、そうか、七夕星に捧げる白鞠だったのか(※画像あり)。大きな蕪かと思った。森一鳳の『社殿・競馬図』は、先だって見た賀茂の競馬の装束そのまま。吉原の風俗図も、江戸初期(17-18世紀)のものは、建物も女性の衣装も、まだ地味で質実である。文化の中心は上方にあったんだなあ、と感じる。中期以降になると、映画やTVドラマで見慣れた、華やかな情景が展開する。
館蔵品展だと、あまりお客は入らないのかなあ。これ、東京都心の私設美術館にもってきたら、かなり話題になる内容だと思うのに…なんとももったいない。