見もの・読みもの日記

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美麗仏画を楽しむ/ほとけを支える(根津美術館)

2017-09-25 22:30:01 | 行ったもの(美術館・見仏)
根津美術館 企画展『ほとけを支える-蓮華・霊獣・天部・邪鬼-』(2017年9月14日~10月22日)

 仏教の多種多様なほとけを、蓮華、霊獣、邪鬼など「支えるもの」という視点から見てみようという趣向の展覧会。なんとなく彫刻の仏像をイメージしていたが、絵画資料が中心である。はじめは『仏涅槃図』(南北朝時代)で、え、どこに「ほとけを支える」ものが?と思ったが、釈迦が横たわる台を「宝床」という。次の『釈迦三尊像』(南北朝時代)では、中尊の釈迦は岩の上のカーペットのような蓮華座に座り、文殊と普賢を乗せた獅子と白象は、ともにくつろいでいる。このあと、文殊像、普賢像が続くが、和装の『稚児文殊像』(室町時代)が面白いと思った。

 立体造形も多少あって、鎌倉時代の毘沙門天像は、顔は怖いが全体の雰囲気は端正。足元に邪鬼を踏みつけている。大日如来・不動明王・愛染明王を板面に描いた厨子(三面鏡みたいに折りたたむ)は珍しかった。中尊は、全身金色で赤い唇の目立つ大日如来。密教の儀軌にのっとり、台座に獅子を配しているが、これがガマガエルみたいなファニーフェイスでかわいい。

 『金剛界八十一尊曼荼羅』は、私が根津美術館所蔵の仏教絵画の中で特に好きな作品。四角と丸を何重にも入れ子に組み合わせて複雑に区切った中に、八十一のほとけが描かれている。解説パネルを読んで、諸尊の蓮華座の下に動物(霊獣)がいることに初めて気づいた。解説によれば、大日如来グループの諸尊は獅子、無量寿如来グループは孔雀、阿閦如来グループは有翼の象、宝生如来グループは有翼の馬、不空成就如来グループは迦楼羅(かるら)というように、グループ(エリア)ごとに整然と描き分けられている。孔雀と迦楼羅は見分けが難しいが、嘴のかたちや首の長さが違っている。また、曼荼羅の中心部に描かれた如来たちの台座は、たくさんの霊獣が集まって支えているが、曼荼羅の周縁部に描かれた菩薩や天部を支えるのは一匹のみで、諸尊のランクに対応していた。

 展示室2も仏画が続く。『七星如意輪観音像』(室町時代)、『魚籃観音像』(江戸時代、ナマズみたいな鯉に乗っている)などの変わり種もあり。本展の白眉は、平安時代・12世紀の絹本着色『大日如来像』である。暖色より寒色が多く、退色のせいか、院政期の仏画としては少し地味だが、台座の小花模様や腕飾りのデザインなど、細部の繊細さが際立つ。確か、中尊寺の仏像の胎内から発見されたという解説がついていたと思う。

 また、伝来や尊容から「〇〇寺の〇〇像」と特定できる図像が特集されていた。たとえば、南円堂の不空羂索観音像や壬生寺の地蔵菩薩像など。赤と緑の対比が、禍々しいほどの迫力を感じさせる愛染明王像(鎌倉時代)は、法勝寺八角堂の像を描いたもの。蓮の茎を束ねて立ち上げたような蓮台に特徴がある。めぐる血管のような火焔光背。逆立つ髪の毛の中に浮かぶような獅子の面。「文化遺産オンライン」の解説を借りると「本画像のような台座や光背の特異な形式、および左第三手に三足烏の日輪を載せる図像と近似するものはわずかに醍醐寺や仁和寺所蔵の白描図像中に知られるのみで、醍醐寺本には『法勝寺図様』とした註書がある」のだそうだ。

 水瓶を持ち、たなびく雲に乗る十一面観音像(室町時代)は、東大寺二月堂の秘仏本尊を描いたものだという。招きに応じて観音浄土から来臨したという縁起を表している。頭上面が高く盛り上がったところが、確かに二月堂の本尊っぽい。『善光寺縁起絵』3幅(鎌倉時代)は、中央に大きく善光寺式阿弥陀三尊を描く。最後に、銅造鍍金の勢至菩薩像(鎌倉時代)は、神奈川県立歴史博物館の観音菩薩像と一対であった可能性が高いという。神奈川歴博のツイッターによれば、善光寺式阿弥陀三尊の脇侍だったと見られ、中尊は所在不明であるそうだ。

 展示室5は「水瓶」と題し、考古出土品の『紅陶水注』から、磁器、銅器、三島や絵唐津の「片口」も並ぶ。ドイツの「髭徳利」やオランダの「藍絵急須」もあって面白かった。展示室6は「菊月の茶会」。

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