見もの・読みもの日記

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関西週末旅行9月編(4)京都国立博物館・日本絵画ほか

2007-10-03 12:50:45 | 行ったもの(美術館・見仏)
○京都国立博物館(平常展示)・日本絵画ほか

http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html
(展示詳細は10月版に更新済)

 今回、特別展も特集展示も行われていない京博に、それでも寄ろうと思ったのは、国宝『風神雷神図屏風』(俵屋宗達筆)が公開中と知ったからだ(9/5~9/30)。もちろん、これまで何度も見ているのだけど、好きなものは何度見てもいいのである。それにしても、昨年秋、出光美術館の『国宝 風神雷神図屏風』展は大盛況で、人の頭を見に行ったような有様だった。今回はゆっくり眺めることができて嬉しい。しかし、この屏風は、本来の日本間か、出光美術館くらいの展示空間がふさわしいように思った。京博の平常展示室は、明るくひろびろしすぎて、いまいち屏風が映えず、ちょっとかわいそうだった。

 それよりも、私が興奮したのは、同じ展示室の壁一面に『鶴図下絵和歌巻』が長々と広げられていたこと。光悦が流麗な筆跡で三十六歌仙歌巻を書き、宗達が金銀泥で群れ飛ぶ鶴を描いた、両巨匠コラボの代表作である。全長13メートルに及ぶはずだが、驚くべきことに、巻頭から巻末まで一挙に開かれている。多分これまでにも、一部分なら見たことはあるはずだ。しかし、これは一気に全体を眺めてこそ真価が分かる作品だと思う。「収蔵品データベース」の細切れ画像なんて、どこが名品なのか、まるで分からないだろう。

 宗達は、群れ飛ぶ鶴の姿を単純化・没個性化し、スタンプを押すようにリズミカルに配している。特に、料紙の上端にくちばしだけを覗かせた鶴が、次第に下降し、下端に脚を残して消えていくところは「天地の限定される巻子画面を逆手にとった見事な構成」という解説に心から同意する。ほんとに天才! あわせて、宗達の『牛図』2件が見られたことも嬉しかった。最晩年の作。「たらしこみ」の名作と言われるが、もはや技巧云々を超えた域にあるように思われる。

 絵巻のコーナーも、いつもながらの充実。いちばん嬉しかったのは『百鬼夜行絵巻』の最古本、真珠庵本が見られたこと。近世以降の摸本はいくつも見たことがあるが、原本は初見かもしれない。ほぼ巻頭から巻末までの公開だった。これまで、摸本はどれも派手な色づかいだなあと思っていたが、原本も、室町時代(15世紀)の作とは思えない色鮮やかさでで、ピンク、オレンジ、黄色など、中間色を多く使っている。それにしても、どうしてこんな絵巻を思いついたのかなあ。

 最後に書蹟、工芸などを流してまわった。工芸の展示室で、小川破笠が考案した「笠翁細工」の小特集をやっていたのが面白かった。小川破笠(おがわ はりつ、1663-1747)は、江戸時代の漆芸家であるが、金属粉を用いる従来の蒔絵に飽き足らず、陶器片・ギヤマン・鼈甲など、多様な素材を埋め込む笠翁細工(破笠細工)を生み出したという。ベトナムのカイディン廟の装飾を思い出してしまったのは、突飛な連想だろうか。

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