見もの・読みもの日記

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原先生に聞いてみよう!/「鉄塾」(中川家礼二×原武史)

2011-07-31 09:39:41 | 読んだもの(書籍)
○中川家礼二、原武史『「鉄塾」:関東vs関西 教えて! 都市鉄道のなんでやねん?』 ヨシモトブックス 2011.8

 今年初め、明治学院大学の公開セミナーで行われたお二人の対談を、河出書房刊『「知」の十字路』で読んだばかりである。期待にたがわず、面白かったので、大満足していたら、どこかの駅ホームでニコヤカに微笑むお二人の写真をオビにした本書を本屋で見つけて、さっそく購入してしまった。

 主な内容は3部構成。「鉄塾1 長距離私鉄について考える」は、2月某日、ふたりで「アーバンライナー」に乗ってみる。アーバンライナー? 何それ?と思ってしまうのは、私が関東人で一般人(非・鉄道ファン)である悲しさ。名古屋~難波間を走っている近鉄特急だそうだ。近鉄名古屋線・大阪線は、伊勢・松阪方面とか、室生寺・長谷寺方面に行くときに利用したことがあるので、車窓の風景が変化に富んでいて、魅力的なことは知っていた。でも、近鉄で名古屋-大阪間を突っ切ってしまおうという発想は全くなかった。本書を読んでみたら、ノンストップなら所要時間は、ほぼ2時間。毎時1本(朝夕はそれ以上)走っているのか。

 本文は実況(ダイジェスト)ふうの車中対談で、車内アナウンスや車窓の風景を紹介。JRの快速や同じ近鉄の普通列車をバンバン抜いていく様子が分かる。最徐行区の中川短路通過の際、名古屋列車区と大阪列車区の運転士さんが(運転しながら)交替するのを見物してきた礼二さんの興奮ぶりが、たのしい。よし!これ、近いうちに必ず乗ってみよう。

 第2部「鉄塾2 都市鉄道の不思議を解明」は、都市鉄道の沿革・現状など、基本となる知識をおさらい。原先生の著書『「民都」大阪対「帝都」東京』や『鉄道ひとつばなし』シリーズで語られ済みの事柄が多いが、礼二さんの素朴な疑問「私鉄王国いうてもスピードでJRに負けてるやん?」等々に対し、原先生が「…というわけです」「…ですね」と丁寧な語り口で答え、ときどき礼二さんの合の手「そうやったんや」「それって…とちゃいますか」等々が入り、最後に「礼二のまとめ」が付く。この編集のしかたは、巧いと思った。

 本書のようなライトな読みものまでは手を伸ばすけど、新書や選書はよく知らないとか、ハードルが高くてちょっと、と思っている層から、原先生の著作を読んでみよう、と思う読者が現れてくれれば、長年の愛読者として嬉しい。ちなみに、礼二さんによる原先生の紹介「なんで原先生かっていうと、えらい学者さんなんですけど」には笑ってしまった。

 最後に「鉄塾3 身近なあれこれ徹底対決」は、再び対談形式。でも、関西・関東の違いを考えると言いながら、実は関西でも会社によってアナウンスが全然違うとか(阪急は必ず「みなさま」と呼びかける、近鉄では「特急○○ゆき」と言わず「○○ゆき特急」と言う等々)、おいしいローカル駅弁が消えていくのは関西も関東も同じ、という結論になっていて、ちょっとテーマと内容が合っていないかも。おもしろいけど。

 特別付録「鉄道あれこれ大アンケート」もおもしろかった。「好きな駅はどこですか?」「好きな駅食は?」等々、原先生と礼二さんの答えを見ながら、ついつい、自分ならどう答えるかを考えてしまった。私も原先生と同じで、ターミナル愛好癖がある。関東人は、ターミナルらしいターミナル駅を知らずに育つからかもしれない。鉄道マニアのための本ではなく、「日常生活の中の鉄道」を愛する人たちに読んでほしい1冊。

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