見もの・読みもの日記

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常設展エリアで遊ぶ/徳川将軍家へようこそ(江戸東京博物館)

2017-09-14 21:54:38 | 行ったもの(美術館・見仏)
江戸東京博物館 常設展+企画展『徳川将軍家へようこそ』(2017年8月11日〜9月24日)

 特別展だと思い込んで江戸博に行ったら、常設展エリアの企画展だった。それじゃあ、ごく小規模な展示なんだなとガッカリしたが、久しぶりに常設展を見るのもいいかなと思って中に入った。江戸博は、東博などと違って、特別展チケットで常設展に入れないので、常設展エリアには滅多に来ないのだ。

 復元の日本橋を渡ると、縮尺模型で江戸城御殿や大名屋敷を紹介し、江戸の町割りや将軍家・大名家に関する歴史資料を展示する。何度か見ているはずなのに、俄然、興味が湧いたのは、私が最近、東京下町に引っ越したせいかもしれない。家康が関東に入った頃の隅田川は、今よりずいぶん幅が広かったのだな。秀忠の時代に小名木川(運河)が整備され、家光の時代に深川が本格的に開かれ、家綱の時代に江東運河がほぼ完成した。永代橋の架橋は1698年、綱吉の時代である。1657年の明暦の大火が墨田川ではっきり焼け止まっているのも印象的だった。また、展示品の中に『信濃松代真田家深川下屋敷図』があったのも目を引いた。永代橋のたもと、今の我が家の近所にあったことを、最近知ったばかりなのだ。庭園は大きな池で占められている。隅田川から水を引いたのだろうか?

 と、思いのほか、最初のコーナーに居座っていたら、下の階にある芝居小屋・中村座の前で「江戸芸かっぽれ」の実演が始まったので、日本橋の上から見物する。月1回、開催されているイベントだが、「10月から来年3月まで博物館の改修工事のため、しばらくお会いできません」という口上を聞いて、半年間の休館を初めて知る。

 さて、企画展示室『徳川将軍家へようこそ』へ。徳川将軍家について、時代順(歴代将軍の就任順)に紹介する。展示品はほぼ全て徳川記念財団か個人蔵(徳川宗家文書)であることに、見始めてから気づいた。家康については、狩野探幽筆『東照大権現霊夢像』(白髪である)など。『会津攻伐軍令状』(会津の上杉景勝征伐に際しての軍令)が生々しかった。2代秀忠にも伝・探幽筆の肖像がある。簡素な墨画のスケッチで、かえって面貌がよく分かる。また、秀忠が征夷大将軍に任ぜられたときの『天曹地府祭都状』は陰陽道の祭祀に使われたもので、黄染紙に朱で祭文が書かれている。徳川将軍家は陰陽道を重視していたのかあ、と意外な発見をしたように思ったが、ちょっと調べたら、江戸時代を通して天皇の即位儀礼としてもこの天曹地府祭が行われており、徳川将軍家は天皇家にならったようだ。

 3代家光には、狩野安信筆の肖像あり。伝・徳川家光筆『架鷹図屏風』は左隻のみ展示だったが、本来は六曲一双。さまざまなポーズの鷹(筆致はやや硬い)が面白い。「長兵衛鷹」として知られる敦賀の鷹絵師・橋本長兵衛の一派によって描かれたものに家光の筆が加えられたのだろう、という解説がついていた。「長兵衛鷹」をググってみて、またいろいろ面白いことを知ってしまった(『福井県史』通史編全6巻より「敦賀の画人」※このサイトは便利。福井県すごい!)。5代綱吉は学問好きらしく、綱吉御手持本(手沢本)の『四書』(小型の版本)と、使い込まれてくたびれた『書袋(しょだい)』も。

 11代家斉の『豆人形』と銀細工『献兎賜盃』も面白かった。後者は、上総請西(じょうざい)藩の林家の故事に由来する、徳川将軍家の正月行事にちなむものだ。12代家慶、13代家定には、ほのぼのした自筆の淡彩画が残っていた。やがて時代は激動の幕末に突入する。銅印『日本政府之印』は、開港・貿易開始に備えてつくられたもので、老中堀田正睦が林復斎や海防掛に諮問(安政4年)して決めたという。ここから実質的な「日本国」が始まった気がして、感慨深かった。

 15代慶喜のあとに16代家達(いえさと)の幼い写真があって、あれ?と思ったが、将軍職は15代で終わっても、徳川宗家は続いたのである。慶喜を初代とする別家徳川慶喜家は慶喜の実子・慶久が継ぎ、徳川宗家の家督は田安家に生まれた家達が相続した。このへんは「家」に関する感覚を失った現代人には、どうも理解しにくい。なお、篤姫や和宮の小袖や単衣など、美々しい衣装も多数、展示されていた。個人的には、天璋院篤姫所用の小袖『萌黄繻子地雪持笹御所車文様 葵文付』が好き。明るい緑色の小袖の腰から下のあたりに「雪の重みに耐えてはね返す」しなやかさを寓意した雪持笹が散らされている。洋装にしたらクリスマスに似合いそうな色とデザインで、品よく愛らしい。

 このあとも常設展エリアの江戸ゾーン、東京ゾーンで、たっぷり遊んで帰った。やはり海外からのお客さんが目立っていて、さまざまな言語の説明が聞こえるなあと思ったら、ホームページに「日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語」の展示ガイド(ボランティア)を提供しているとある。これはすごい。自慢していいサービスだと思う。

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