見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

自伝による美術史/日本美術と道づれ(宮島新一)

2008-02-22 23:58:31 | 見たもの(Webサイト・TV)
○日経ビジネスオンライン:宮島新一『日本美術と道づれ』

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20070316/121231/

 日本美術ファンなら、一度は著者の名前を聞いたことがあるだろう。東京、京都、奈良、九州の四つの国立博物館に勤務した学芸員、美術史家の宮島新一さんの自伝的コラムが、日経ビジネスオンラインに連載されている。

 昨年4月に開始された連載だが、私は今年に入って、はじめてその存在を知った。1946年生まれの著者が、いつ、どんな美術と出会ったかを、経年順に語っている。「単調な人生だったので自伝を書くほどでもない」と謙遜する著者の人生のエポックメーキングは、各種の展覧会である。1963(昭和38)年の『群像にみる仏教美術展』(会場は名古屋の松坂屋!)とか、1966(昭和41)年の『中国美術5000年展』(大阪市立美術館)とか、60~70年代の展覧会は、へえ~こんなのがあったんだ、と驚き、興味をそそられるものばかりだ。こうして展覧会の名前を並べたストーリーも、「普及」と「享受」の側面から見た、一種の現代美術史であると思う。

 宗達の『蓮池水禽図』、雪村の『夏冬山水図』など、好みの名作をじっくり語った段も興味深いが、学芸員の仕事まわりを語った「アメリカの美術館運営に学ぶ(印象に残ったのは館長のリーダーシップの強さ、教育担当学芸員、業務分担の徹底)」や「高松塚古墳壁画の現地保存(人間の美に対する欲望が美を損なうことがある)」は、考えさせられる点が多い。特に後者は、考古文化財保存のジレンマをめぐる率直な発言に、胸をうたれた。

 最新回(2008/02/22)「独立行政法人化で試練に直面(博物館の活性化には、学芸員の意識改革が必要だった)」も読み応えがある。そうだなあ。確かに2001年の独立行政法人化の前後で「東京国立博物館は変わった」という(プラス方向の)評価に私も同意する。あの頃から東博に行くのが、俄然、楽しくなった。

 それにしても、こんなすごいコラムが無料で読めてしまうのだから(著者には原稿料が支払われていることと思うが)インターネット時代というのは、贅沢なものだと思う。今後にも期待。

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