見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2013秋@江戸の狩野派(出光美術館)

2013-12-09 22:26:28 | 行ったもの(美術館・見仏)
○出光美術館 『江戸の狩野派-優美への革新』(2013年11月12日~12月15日)

 「江戸狩野」に焦点をあてた展覧会。そういえば、春の京博で「京狩野」を取り上げた『狩野山楽・山雪』が開催されたことは記憶に新しい。あれもよかったが、こっちもなかなか。

 江戸狩野の祖は、永徳の孫の探幽(1602-74)で、その弟の尚信(1607-50)、安信(1613-85)、尚信男の常信(1636-1713)などが主な登場人物である。最もよく知られているのは探幽だろう。作品も見分けがつきやすい。淡泊で、品があって、優美で。いかにも戦乱の時代を遠く離れて、平和な時代に生まれた若者の作品という感じがする。実はまだキナ臭い戦国末期の生まれなのだけど。東博で時々見る『鸕鷀草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)降誕図』が出ていて嬉しかった。探幽は、こういう知的な画面構成が好きだ。『叭々鳥・小禽図屏風』は出光美術館の所蔵だというが、記憶になかった。人を驚かせたり、唸らせたりする作品ではないが、やんわりといい。「まあ、こんなもんでしょ」と言っていそうな控えめな作為で肩が凝らない。

 尚信と安信は、なかなか区別がつかなくて覚えられないのだが、本展では「安定した筆力を示す」安信よりも、「筆勢のある大胆な筆致と、濃淡を自在に用いた瑞々しい墨技」「探幽の影響下にありながら、その枠から一歩踏み出したユニークな作品を遺している」尚信の評価が高い。なるほど『猿曳・酔舞図屏風』に描かれた市井の人々の表情も面白いし、金屏風に墨画『叭々鳥・猿猴図屏風』の大胆にデフォルメされたテナガザル(いや、手が長くない)の親子は圧倒的にかわいい。『猛虎図』(東京富士美術館)の赤い舌を出した(てへぺろ)トラもかわいい。

 自分のブログを検索してみると、私はときどき尚信作品の印象を書きとめている。栃木県立博物館所蔵の『龍虎図屏風』とか、京博の『李白観瀑図屏風』とか。わりと好きなので、近衛家熈が尚信の画技を「探幽に比するに、まされる所あり」と高く評価していたと知って、嬉しかった。

 私は常信も好きなので、『波濤水禽図屏風』は堪能した。執拗な(でも、どこかサラッとした)波涛の表現が面白い。『鳥写生図巻』は東博から出陳。江戸城に献上された鳥や飼育されていた鳥を写したもので、これも御用絵師の仕事だったという解説が興味深かった。

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