○五島美術館 『館蔵 茶道具取合せ展』
http://www.gotoh-museum.or.jp/top.html
茶道具取り合わせか、興味ないなーと思っていたのだが、某所でこの展覧会のポスターを見た。黒一色の画面に4つの黒茶碗が、闇に半身を隠すようにほのかに浮かんでいる(上記サイトに画像あり)。小さく添えられたキャプションで、いずれも黒楽茶碗であると分かり、たちまち体温が上昇するのを感じた。私は、伊万里とか九谷とか京焼には理性で好き・嫌いが判断できるのだが、楽茶碗を前にすると理性が飛ぶ。完璧な”楽茶碗萌え”体質なのだ。楽茶碗については、これまでも何度か取り上げてきたが、楽美術館(楽家)のホームページに詳しい。
会場では、入ってすぐの赤楽茶碗『銘・夕暮』(初代・長次郎作)に目が留まった。美しい。楽茶碗の基本は赤と黒で、無限の奥行きを感じさせる黒楽茶碗に比べると、赤楽茶碗はあまりいいと思わなかったのだが、これには吃驚した。見込み(飲み口)の周囲は落ち着いた茶色なのに、その下に細い帯状の白色部分があり、さらにその下に、内側から燃え立つような薔薇色が広がる。まさに夕暮れ空そのままである。解説によれば、赤楽茶碗は、茶渋や修復によって、色が変わることがあるそうだ。だとすれば、この茶碗は、長年使い込まれることによって、この姿と銘を獲得したということか。MSNエンカルタに写真があるけど、全然、実物の風韻を伝えていなくて悔しい。淡い光で見ると、色彩のグラディエーションがもっと明らかなのに。
以下、この展覧会で見られる楽茶碗の総まくり。『銘・十王』(光悦作)は、飴のようにつるつるした赤楽茶碗。見込みの内側にすぼまった感じが、亡者のはまった地獄の釜を連想させる。黄楽茶碗というのも初めて見た! カレーパウダーを吹き付けたような黄釉の下に灰色の土が透けるところが『銘・雪の下紅葉』(三代・道入=のんこう作)か。
黒楽茶碗では、対照的な2作品『銘・悪女』(二代・常慶作)と『銘・三番叟』(三代・道入作)が並んでいた。前者はざらざらした質感、武骨に四角ばった形。後者はとろりと濡れたような釉薬の小ぶりな茶碗で、いかにも掌になじみそうだ。後者のほうが悪女っぽいのに?と思うのは、色事にうとい素人の僻言だろうか。乾山の『銘・露堂々』は、見込みの縁の薄く鋭いところが光悦の作に似ていると思う。光悦の『銘・七里』は、歪み具合も、釉薬のはげ具合も、天才的というより野獣的に絶妙。
それにしても、五島美術館がこんなに楽茶碗の名品を持っているとは知らなかった。五島慶太の好みなんだろうか? 茶碗だけではなくて、のんこう=道入作の水指や、長次郎作の灰器(ほうろく)もあった。赤茶色の灰器は、外側が煤で(?)黒ずんでいて、使い込んだ年月の長さを感じさせた。やっぱり、実地に使われる道具は幸せだと思う。
このほか、鼠志野、古伊賀、織部などの名品もあり。私はお茶をやらないので、炭取とか釜敷とか炉縁とか、実にいろんな道具が必要なんだなあ、と興味深く思った。茶室の立体紙模型『茶室起絵図』(全90点!)も面白かったが、ネットで探してみると、東京国立博物館、慶応大、岩槻文庫などに類例があり、茶人の間では普遍的なアイテムだったようだ。
http://www.gotoh-museum.or.jp/top.html
茶道具取り合わせか、興味ないなーと思っていたのだが、某所でこの展覧会のポスターを見た。黒一色の画面に4つの黒茶碗が、闇に半身を隠すようにほのかに浮かんでいる(上記サイトに画像あり)。小さく添えられたキャプションで、いずれも黒楽茶碗であると分かり、たちまち体温が上昇するのを感じた。私は、伊万里とか九谷とか京焼には理性で好き・嫌いが判断できるのだが、楽茶碗を前にすると理性が飛ぶ。完璧な”楽茶碗萌え”体質なのだ。楽茶碗については、これまでも何度か取り上げてきたが、楽美術館(楽家)のホームページに詳しい。
会場では、入ってすぐの赤楽茶碗『銘・夕暮』(初代・長次郎作)に目が留まった。美しい。楽茶碗の基本は赤と黒で、無限の奥行きを感じさせる黒楽茶碗に比べると、赤楽茶碗はあまりいいと思わなかったのだが、これには吃驚した。見込み(飲み口)の周囲は落ち着いた茶色なのに、その下に細い帯状の白色部分があり、さらにその下に、内側から燃え立つような薔薇色が広がる。まさに夕暮れ空そのままである。解説によれば、赤楽茶碗は、茶渋や修復によって、色が変わることがあるそうだ。だとすれば、この茶碗は、長年使い込まれることによって、この姿と銘を獲得したということか。MSNエンカルタに写真があるけど、全然、実物の風韻を伝えていなくて悔しい。淡い光で見ると、色彩のグラディエーションがもっと明らかなのに。
以下、この展覧会で見られる楽茶碗の総まくり。『銘・十王』(光悦作)は、飴のようにつるつるした赤楽茶碗。見込みの内側にすぼまった感じが、亡者のはまった地獄の釜を連想させる。黄楽茶碗というのも初めて見た! カレーパウダーを吹き付けたような黄釉の下に灰色の土が透けるところが『銘・雪の下紅葉』(三代・道入=のんこう作)か。
黒楽茶碗では、対照的な2作品『銘・悪女』(二代・常慶作)と『銘・三番叟』(三代・道入作)が並んでいた。前者はざらざらした質感、武骨に四角ばった形。後者はとろりと濡れたような釉薬の小ぶりな茶碗で、いかにも掌になじみそうだ。後者のほうが悪女っぽいのに?と思うのは、色事にうとい素人の僻言だろうか。乾山の『銘・露堂々』は、見込みの縁の薄く鋭いところが光悦の作に似ていると思う。光悦の『銘・七里』は、歪み具合も、釉薬のはげ具合も、天才的というより野獣的に絶妙。
それにしても、五島美術館がこんなに楽茶碗の名品を持っているとは知らなかった。五島慶太の好みなんだろうか? 茶碗だけではなくて、のんこう=道入作の水指や、長次郎作の灰器(ほうろく)もあった。赤茶色の灰器は、外側が煤で(?)黒ずんでいて、使い込んだ年月の長さを感じさせた。やっぱり、実地に使われる道具は幸せだと思う。
このほか、鼠志野、古伊賀、織部などの名品もあり。私はお茶をやらないので、炭取とか釜敷とか炉縁とか、実にいろんな道具が必要なんだなあ、と興味深く思った。茶室の立体紙模型『茶室起絵図』(全90点!)も面白かったが、ネットで探してみると、東京国立博物館、慶応大、岩槻文庫などに類例があり、茶人の間では普遍的なアイテムだったようだ。